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2話 2人の天才

「け、決闘開始!」


 ソラの合図でノラとミリアは互いに距離を詰めた。二人の大人顔負けの攻防は次第に激しさを増し、一時は群がった野次馬も二人の決闘と知ると各々そそくさと帰っていった。


「やるじゃない、だけどこれはどう?」


 突然距離をとったミリアに俺は嫌な予感がした。


「まさかあれをやる気じゃないだろうな…。」

「潔く散りなさい、【神の鉄槌(ゴッテス・リヒト)】!」


 神の鉄槌とはまた大層なネーミングセンスだと毎度思うのだが、ミリアの才能の観点からすると神という表現はあながち間違いではないかもしれない。

 ミリアは特別だった。彼女は人が本来使えるとされる属性の上限を無視し、自分の認知した魔法の属性を全て扱えるのだ。

 そして今ミリアが撃った魔法は全属性の複合魔法であり、彼女のオリジナル。

 ミリアは生まれ持った特異な体質に加え圧倒的な魔法のセンスを持ち合わせた正真正銘の天才だった。


「はぁ…、これだから天才は。」

「大丈夫よ、私はちゃんと手加減もできるから死にはしないわ。」


 この距離ならまだ避けられる。だが俺が回避した後の二次災害は避けられない。


「論点はそこじゃない…くそ、対ミリア用必殺剣技【神殺し(ウン・エント)(リヒ・ゼー)(デルヒープ)】」


 対ミリア用に編み出した技で間一髪攻撃を防いだ俺はミリアとの距離を再度詰める。


「そう来ると思ったわ、【強化付加(シュテルケン)】!」

「俺が受けれて無かったらどうしてたんだ!周りのこともちょっとは考えろ!」

「今更あんたがそれを言うの?私のとっておきを毎々完璧に対応しておいて。あんたほんとは魔法使えるんじゃないの?ただの剣圧で私の魔法をかき消すなんてどうかしてるわ。」

「は?ただの剣圧とはお前の目は節穴か?相手の動きも見抜けないから俺に魔法を防がれるんだ。」


 より一層激しさを増す攻防の中で口喧嘩が始まりいよいよ収集がつかなくなってきた。


「いつまでやってるの!!!もう晩御飯で来たわよ!!!」


 怒鳴り声は村中に響き渡り、その声は興奮のあまり周りが見えていなかった二人にも届き動きが止まった。声の主は母さんだった。


「まったく、はしゃぐのも良いけど今日はもうお終い。続きはまた今度にしなさい。」


 気づけば辺りは暗くなっており、父さんも帰って来ていた。そして頭にたんこぶを作っている。

 大方俺とミリアの決闘を面白がって観戦していたところに母さんのゲンコツをもらったのだろう。


「あっ、こんばんはドレイクさん、ハナさん。」

「お父さんに二人を呼びに行かせたのにいつまで経っても戻ってこないからもしやと思って来てみれば…。」

「す、すまんな母さん。しかしいきなりゲンコツはひどいじゃないか。」

「そうね、あなたには後でしっかりお仕置きが必要のようね。それで?ミリアちゃんはご飯食べてくでしょ?」

「は、はい!ありがとうございますいただきます。」


 結局勝負はつかずこれで戦績は3勝3敗1217分。最初の3回は俺が勝ち、ミリアが魔法を使い始めたことで3連敗、悔しかった俺がミリア用に開発したオリジナルの剣技で対抗しそれから今までずっと引き分けだった。


 そしてなんの違和感も無く家族団欒に馴染んでいるミリアはノラを名指しして言った。


「ノラは私のこと散々天才だって文句言うけど、こっちからしたら魔法も使えないのに私とタメ張ってるノラの方がよっぽど天才よ。」

「そうだよ兄さん、普通努力したって剣だけで魔法を相殺出来るようにはそうそうならないよ。ましてや周りに被害を出さないように完璧になんて…。」

「ノラはもう剣術に関しては完全に俺を超えてるなぁ…。息子の成長は喜ばしいがこんなに早く抜かされるとは少し複雑だな。」

「しょうがないわよこの村でノラの年の近い子がミリアちゃんしか居なかったんだもの。」


 俺はミリアの様な特異体質もなければ、それを活かせるセンスもない。だから天才と呼ばれることは不本意なのだが、傍から見れば誰が見ても天才のミリアと当然のように張り合っている俺もまた天才という評価らしい。


「俺は生まれてくる時に魔法の才能をミリアに取られたと思ってるからな。それ以外は勝ってないと俺のメンタルが保たない。」

「何よそれ、いくら生年月日が同じだからってそんなわけ無いじゃない。」

「いや、案外あるかもな。なんたって二人ともこの村で生まれたんだからな!ハッハッハッ!」

「もうお父さんったら…。」


 俺とミリアの出生や村の人からの評価、そして魔法の話など色々な話で盛り上がっている中、母さんが思い出したようにあることを行った。


「そういえばおじいちゃんから手紙が届いたんだったわ。近いうちに村に遊びに来るそうよ。」

「おじいちゃんが?!」


 今まで話についていけず拗ねた表情でご飯を食べていたサラが目の色を変えて食いついた。


「手紙が来たのが数日前だったから、あと一週間以内にはここにつくんじゃないかしら。」

「やったぁ!あたしおじいちゃんといっぱい遊ぶ!」

「良かったね兄さん、あと数日でサラから解放されるよ。」

「あぁ、じいちゃんの体が心配だな。」


 あと一週間ほどでじいちゃんが来る。じいちゃんはつまり俺たち兄弟の祖父に当たるわけだが、あの人は色々すごい。良家の生まれでありながら堅苦しいのが嫌で家を飛び出し、世界各地の迷宮を攻略し旅してく中で国の危機も何度か救ったらしい。そして国民からは国を救った偉大な魔法使い大賢者クロノフと呼ばれ敬われているとか。

 ここの村は辺境の地にあるため王都やその周辺の出来事には疎いのだが、じいちゃんの功績はそんな所にまで話が届くほどに凄い。


「じいちゃんか、早く来ないかな…。」


 小さい頃からミリアと共に可愛がってくれたじいちゃんが来るのを俺は密かに楽しみにしていた。





 しかし残酷な運命は幼きノラの期待を打ち砕くことになる。それはもうすぐそこまで迫っていた。誰も気づかないほど少しずつに、そして確実に…。

読んでいただきありがとうございます!


ノラの背負う運命はもうすぐそこまで…、


次回の展開にご期待ください!

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