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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-16.『依頼達成!』

 初めてシーザーと共に依頼を受けた。私はテイマーで、シーザーはソーサラーだからバランスは良い。

 それに、強くなった私を見てほしい気持ちもある。きっとシーザーも同じように思っているだろう。

 弱い魔獣はさっさと倒して依頼の内容である魔獣の住処まで向かう。等級はAでそれなりの魔獣だ。情報によれば敵と認識したら突進してくるらしい。


「ねぇ、あれじゃない?」


「間違いないね」


 住処にしているところで何かを守るように眠っている。今ならやれるかもしれない。


「エア<ブレイド>」


 シーザーの放った風属性の刃を飛ばす魔法は標的に命中したが、あまりにも硬い外層の前では無力だった。むしろ起こしてしまった。


「やるしかないか」


「前衛任せた」


 むくりと起き上がる魔獣は情報に聞いていた大きさよりも大幅に大きく、雄々しい牙を携えている。さらに体毛でどうやら魔力を分散している。

 魔力を込めた槍での一撃を食らわせても魔力だけが弾け飛ぶ。皮膚も相当硬いため、高ランクの槍ですら通さない。さらに威力が分断されてまともにダメージを負わすこともできない。


「ねぇ、これ。亜獣種って聞いてたけど私の勘だけど竜種じゃない?」


 亜獣種とは猪や牛など一般的な動物が魔力的要因で魔獣と化したものの総称だ。てっきり猪型と思っていたがこれは猪でも牛でもない。


「見た目は確かに亜獣種だけど、多分竜種。羽がないし鎧のみたいにガッチリとしてないけど鎧竜の一種だよこいつ」


「やばっ! 来るよ!」


 情報通り、敵と認識した途端もう突進してきた。しかも速い。本来の鎧竜はガチガチの装甲故に遅いのが定番だが、少し変わった進化をしたこの鎧竜はスピード型だ。


「羽がないから飛べないし、ジャンプできないのが唯一の救いだ。基本物理攻撃メインで行こう。魔法系はあの体毛が魔力を散らすからリリィへのバフでバックアップするよ」


「オッケー。じゃあバフモリモリでお願いね!」


「モリモリにはしないけどね。ルミナス<フォース >!」


 光属性の力を増幅させる魔法だ。


「行くよ、ミカハヤミ!」


 槍を構えて、水轟竜ミカハヤミに声をかける。こうすれば期待に応えてくれる気がするからだ。


「リベリュール槍術攻式壱ノ型『蜻蛉』!」


 瞬足の一撃だったがバフをかけた攻撃も通らない。まるで分厚い金属の板を叩いているみたいな感触に手が痺れた。


「どうしよ、本当に攻撃が通らない」


「これでもダメならダーク<スルー>!」


 武器に別の魔法が付与された。


「えっ? これじゃあ……?」


「いいから突っ込め!」


 武器に魔法を付与しても結局あの体毛で分散されてしまう。でもシーザーのことだから何か意図があるはずだ。シーザーを信じて突っ込むしかない!

 力を込めた一撃は体毛によってバフを無力化されていく。それでもグッと力をさらに入れて無理矢理にでも突き刺していく。


「ここだ! エア<レート>エンハンスメント!」


 急激な速度上昇によって体毛をすり抜けて、ついに皮膚に穂先が到達し、少しだけだが突き刺さった。


「これなら……!」


「まだだ! ダーク<スルー>!」


 ミリ単位で刺さっている箇所にのみのエンチャント。局所にエンチャントする技術は相当にレベルが高い。シーザーも研鑽を怠らなかったということだ。

 体内に刺さっている穂先に付与してしまえば体毛なんて関係ない。そこからはズブズブと貫通していく。

 しかし鎧竜は激痛により暴れ回った。せっかく刺さっていたのに振り解いた。


「やばいね、めっちゃ怒ってるよ」


 だろうね。次からは簡単には攻撃させてくれなそうだ。母さんはこういう硬い魔獣には体内に向けて攻撃を放つといいと言っていた。体内は絶対にやわらかいからどうにかして体内に攻撃しよう」


「いや、無理だよ。体内に攻撃なんて、口からしか入り口ないんだから」


「そうだよ。口に向けて攻撃して体内で爆発させる。たったそれだけの話」


「それが例えばお父さんやお母さん、アナスタシアさんなら簡単かもだけど、私たちにできる?」


「やるしかないだろ。俺が口の中に手突っ込んで魔法を放つからリリィはあいつの足を止めてくれればいい」


「簡単に言ってくれちゃってさ」


 はぁとため息をつく。けど、シーザーは不思議とやってくれる予感はする。共闘は初めてだけどこれまで積み上げてきた年月がシーザーを信じる理由だ。


「だからって私への魔法は忘れないでよ!」


「当然だろ!」


 ここまで来たら奥の手を使う他ない。きっと周辺の環境をめちゃくちゃにしてしまうからあまり使いたくはないけど、足止めにはちょうどいい。


「水轟竜顕現……!」


 槍を高く上げて地面にガツンと叩きつける。叩きつけた場所を中心に魔法陣が展開される。そしてみるみる内に水が現れて形を成し、竜の姿になった。

 この武器が使える奥の手である『水轟竜顕現』は、この武器の素材となった水轟竜ミカハヤミを呼び出し操る力だ。弱点は自身の魔力を多量に使うこと。


「行って、ミカハヤミ!」


 まさに災害級の一撃が鎧竜に襲いかかる。鎧竜に外的ダメージはないが、溺水させることはできる。どんな生き物でも空気を吸って吐いている以上はこの弱点からは逃れられない。

 水の中で苦しそうに暴れ回る鎧竜はついに動きが止まった。ちょうど水轟竜の力も尽きた。


「やった……?」


 シーザーが確認のために近づく。


 しかし鎧竜は最後の力を振り絞って雄叫びを上げながら立ち上がった。


「シーザー!」


 助けようとするも魔力がほとんど失ったためその場で膝をついてしまった。


「リリィは心配性だな。勝負はもうついてる」


「え?」


 シーザーは振り向き怒り狂う鎧竜を背に余裕を見せている。


「なんだ。もう終わってたのね」


「あぁ、俺が油断なんてするわけないだろ」


 指をパチンと鳴らすと鎧竜は何かを吐き出したくて仕方ないような表情をしている。それが何回か起こり、ついに内側から破裂して弾け飛んだ。


「立てる?」


「ちょっと無理かも」


「やっぱりいつまで経ってもリリィはリリィだな」


「えへへ……」


 肩を貸してくれてるおかげでなんとか歩けているが疲労はかなり溜まっている。早く家に帰って寝たい。

 ゆっくり歩いていると向こうの方から何人かの人が飛んで走ってきた。この魔力はアナスタシアさんだ。


「王都の外ですごい魔力を感知して駆けつけてはみたんですがやはりあなたでしたか」


「おかげでヘロヘロです」


「早く戻って休んでください。……お隣の男性は?」


「申し遅れました。シーザー・ノートと言います。母からあなたに頼りなさいと言われたのでここまで来ました」


「あなたがシーザーでしたか。初めまして……ではないのですが、アナスタシア・ヴェストフォルです。今は騎士団長を務めています」


「かっこいい……」


「ん? シーザー?」


「いや、何でもない。姉が色々とお世話になっております」


 実際めちゃくちゃお世話になってるから何も言えない。


「ここで話すのも何ですから、王城まで来てください。師匠のお子さんであれば、兄王様も歓迎しますよ」


 何とも情けない姿で帰還することになったけど、シーザーと会えて、共闘もできて満足のいく依頼だったと思う。今度は正人君とも一緒にできればなぁと心の中で思った。正人君の強さとシーザーの向上心はきっと噛み合うからだ。

 お城ではシーザーが歓迎されて小規模なパーティーが催された。ついでに私も主役として招かれた。父と母の旧知のみの参加だが、メンツがあまりにも凄すぎた。王様を筆頭に王族の方々。魔法師団の団長のミツヨシさん。大臣のノトさん。近衛騎士団元団長で今は指南役の父の上司。その他役人や当時お世話になったという人たちが何人か。


「まさかこうして『旋風』と『双竜』の意思と遺伝子を継ぐものがここに帰ってきてくれるとは思わなかった。本来ならばここに2人の姿があり、懐かしい話をたくさんしたかったが……。うん、辛気臭い話はやめよう。みな、今日は楽しんでくれ」


 王様の合図でパーティーが始まった。シーザーを方を見るとアナスタシアさんの方に行って話をしている。私も誰かと話さないと浮いてしまう。

 と、思ってたら後ろから肩をトンとされた。振り返ってみると父の元上司の人だ。


「初めまして……ではないんだが、覚えているはずもないか。ヘンドリック・デルプフェルトと言う。当時は双竜の上司で、近衛騎士団に誘った経緯もある」


「母から聞いています。初めまして、リリィと言います」


「双竜の娘だから少しはおてんばかと思ったんだが、その育ちの良さは母親譲りだな」


「父はそんなに問題がある人だったんですか?」


「基本的には命令に忠実なんだがな。自身の利となるなら命令も無視するし、休み期間勝手に延長してどっかに行ったと思ったら強力な魔獣捕まえてくるし、その他にも双竜のエピソードなら事欠かないぞ」


 意外だ。父はかなりアグレッシブだったらしい。


「だが、それでもあいつの強さは本物だ。元からある天才性ではなく、徐々に強くなる為の努力は騎士団のみならず魔法師団の奴らにも影響を与えた。だから今でもあいつの強さは国の象徴だし、双竜を目標にしてる奴もこの国では多い。実際問題のある部下ではあったが双竜のおかげで乗り切ったことは多い。双竜を見習えとは言わんが、今後外に出て世界を回るのなら地道に力をつけると良い。まだまだ強い奴はごまんといるからな」


「ありがとうございます。いつかはここを出ようとは思ってるので、その時までに今よりも強くなろうと思います」


「お前さんくらいの年なら前だけ向いていれば良い。背中を守ってやるのは我々大人の役目だからな」


 話したいことだけ話して元上司はシーザーの下に行った。こうして父が良く思われていると思うと自分も何か誇らしくも感じる。これで大悪党なら目も当てられないしね。

 緩やかにパーティーは終えて私とシーザーはお母さんの家に向かい寝床に着いた。



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