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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-15.『初めての②/再開』

 槍の作製を依頼した。

 槍の名前を決めなければならない。とは言ってもすぐに出てくるものではないし、今後一生使うものだから後悔はしたくない。


「悩んでいるようだね」


「まぁね。後悔はしたくないし」


「神器と違って何度でも名前は変えられるわけだし重く考えなくてもいいんじゃないかな」


「そうなんだけど、私ってネーミングセンスないんだよなぁ。正人君はどう付けてるの?」


「そうだなぁ。素材に使われた魔獣から付けられることはよくあるよ。そこに槍の特徴を添えて。例えば君が持つ『紅剣ベルヴェルク』は紅葉の木を素材使われてるから『紅』という文字を入れてるし、僕の神器であるエアドロムは様々な形に変えられるから『千姿万態』と名付けてる。その武器の特徴を入れることで素材となった魔獣のことを忘れないし、何よりも分かりやすい」


「じゃあ、今回メインで使われてるのは『水轟竜ミカハヤミ』だからミカハヤミの部分をもらおうかな」


「それでいいんじゃないかな。どんな槍に仕上がるか分からないから見てから決めてもいいし」


 何にせよ初めての自分専用の武器だ。どんな仕上がりであれ楽しみで仕方ない。

 次の日、また朝早くからリンさんの所へ赴く。最高の素材を使ってるし、マスター・スミスが作った武器だから変なものにはならないと思うが、出来上がりを見るまではやはり楽しみであるが、不安もある。自身が扱いきれる武器なのか、宝の持ち腐れにならないかとかネガティブなことが何個も頭に浮かぶ。

 ドキドキの中、ついに到着した。


「お邪魔しまーす」


「おっ、来たか」


 リンさんは座って待ち構えていた。そしてテーブルの上には完成された槍が布を掛けられていた。


「さて、お披露目といこうか」


 バッと布を取り、出てきたのは見事なほど綺麗な青色の槍だ。装飾の見栄えも良いが、邪魔にならない程度で抑えられている。穂先もシンプルだ


「いわゆる平三角槍というやつだな。素材となった竜の意思が最も適している形を示してきたんだ」


「そんなことってあるんですか?」


「それだけ強力な魔獣ということだ。肉体が死してなお、魂が素材となって生きている。その上でこの形状が使い手としても、ミカハヤミとしても最適解だとさ。他にももう1つ機能があるんだが、それは外に出てからにしよう」


 というので一旦外に出た。


「とりあえず、持ってみて振り回してみな」


 持ち心地は最高だ。重さも長さも申し分ない。


「よし、じゃあ魔力を少しだけ流してみろ」


「魔力を?」


 言われた通り流してみるとカチャリと音がして柄が3つに分かれて、それぞれを鎖で繋がれていた。


「これって、三節棍?」


「あぁ、これもミカハヤミの意思だ。これが、リリィにとっての最適解らしい。槍に、三節棍。2つの特徴を捉えた可変式の武器だ。この武器が持つ能力は水を操ったり、水を圧縮して放ったりできる。要するに水に関わることなら大体何でもできる。水がその場になくても発動可能だ」


「水を操るくらいならラウラがいるから槍が無くてもできなくはないんだけだなぁ」


「ラウラってのは双竜が使っていた魔法使いの魔獣だろう? テイマーが使う魔法なんてのは限度が知れてる。その武器が起こす水は今までとは比べ物にならないくらいの規模だ。神器一歩手前の武器なんだ。そこいらの水属性武器と比較しても天と地ほどの差がある。使えば驚くぜ。お前の中の戦いという概念が変わる」


 そこまで言うなら使ってみよう。まずは槍として使う。


「正人君、試しに付き合ってよ」


「いいよ」


 正人君はいつもの二刀流スタイルだ。

 私は槍を構えた。多少強めに攻撃しても正人君ならきっと受け止めてくれるだろうと思った。


「行くよ!」


「うん、来なよ」


 リベリュール槍術の基本の型である『蜻蛉』を放つ。瞬足の一突きに対して正人君は完璧に合わせてきた。しかし神器であるエアドロムは少しの間せめぎ合った後、砕け散った。


「えっ……? 神器って壊れないんじゃ……」


「エアドロムの本体は僕の体に埋め込まれているからそっちは壊れることはないよ。でもこの2刀も神器である以上簡単には壊れないんだけど、どうやらあの瞬間はその槍が打ち勝ったようだね。でも本体は無事だからまた出せるよ、ほら」


「そうなんだ……よかった」


 てっきり破壊したのかと思った。


「リリィも感じただろう。素で、この強度と威力の槍だ。魔力を込めればさらに強くなるし、使い魔を宿らせれば手に負えないものになる。後は三節棍の使い方を学べばお前はこの世界にいるテイマーの中でも上位の存在なる」


「でも、三節棍なんて使える人なんて……」


「僕が扱えるから大丈夫だよ」


 そうだった。正人君は何でもありな人間だった。


「で、この槍の名前は決まったか?」


 武器の特徴をそのままつけるならこれ一択だ。


「『可変式三槍棍ミカハヤミ』。これにします」


「ちょっと子供っぽいが、いいんじゃないか。兎にも角にもこれで依頼は完了だ。昨日も言ったが、今回は技術料だけ貰っとく」


 値段を見てビックリしたが、お父さんの残したお金のおかげで難なく支払えた。


「もし、神器を作りたくなったら言えよ。素材は簡単に見つかるもんではないがな」


「はい、ありがとうございます!」


 こうして私の初めての専用の武器を手に入れた。今後はベルヴェルクと合わせて使っていこう。槍の状態だと持ち運びが不便なので、三節棍にして折り曲げて腰に帯びることにした。

 お城に戻ってアナスタシアさんに報告した。性能面はやはり他の武器と比べても一線を画すものだと言う。実感はないが彼女がそういうならそうなんだろう。

 稽古も訓練用の槍ではなくミカハヤミを使った模擬戦をひたすらに繰り返した。手に馴染むくらいの使い込まなければ、例えどんなに良い性能であっても宝の持ち腐れだ。同時に三節棍の使い方も並行して教えてもらい扱いにも日数が経つにつれて慣れてきた。


「対人戦はこれくらいでいいでしょう。次は魔獣と戦ってきてください。ギルドに行けば高難易度の依頼書があるはずです。広い場所、狭い場所、薄暗い場所などの環境でその槍を使って討伐するのです。今はこの広く誰もいない環境のおかげでストレスなく戦えてますが、実戦ともなればいついかなる状況であっても対応しなければなりません」


「はい」


「ギルドには高難易度の討伐依頼を残しておくように伝えておきますので、ぜひ行ってきてください」


「わかりました。では行ってきます!」


 アナスタシアさんに手を振って別れた。王城の正門から出ると正人君が待っていた。


「せっかくだから付き合うよ。ギルドで依頼をするんでしょ?」


「うん。対魔獣での槍の使い方を知るためにね」


「じゃあ行こうよ。僕、今日暇なんだ」


 正人君が一緒なら万が一は起こらない。安心して槍の実践が積めるというものだ。

 ギルドに入ると受付には1人、何やら一悶着しているようだった。近づいてみるとその後ろ姿は見たことがある。


「ん〜? もしかしてシーザー?」


 私の呼びかけに応えて後ろを振り向いた男は紛れもなく私の双子の弟であるシーザーだった。


「リ、リリィ……。あっ、お姉さんごめんなさい。探してた人見つかったよ」


「それは何よりでございます。またのご来店を」


 弟よ。ちょっとやりすぎたっぽいよ。お姉さん、少し引いてるし。


「そんなことよりも、なんでシーザーがここにいるの?」


「リリィが出て行った後、俺も旅をすることにしたんだ。何でかな。旅をしているリリィに少し憧れてしまって。本当は母さんとこれからも過ごす予定だったんだけど、母さんにはバレてしまって、後押しもされて気づいたら俺も旅に出てた。リリィは西の大陸経由だったけど、俺は東の大陸のアシハラノクニ経由で来たんだ。だから思ってたよりも早くにここに着いたよ」


「そうなんだ。でも、シーザーにもこうやって会えたんからよかった。あ、ごめんね正人君。紹介するよ。私の双子の弟のシーザー。ソーサラーだよ」


「姉がいつもお世話になってます。シーザー・ノートと言います。以後よろしくお願いします」


「楠木正人、テイマーだ。リリィとは西の大陸から一緒に旅をしているんだ。君のことはリリィからよく聞いているよ。とっても優秀なソーサラーだと」


「俺なんかまだまだで、この旅で思い知ったよ」


「世の中なんてそんなもんだよ。名も知らない強者はごまんといる」


「本当にそう思うよ」


 シーザーも今回の旅で、色々思うことがあったらしい。私もたくさんのことがあったからすごくわかる。シーザーは何でも卒なくこなすけど一歩外にでたら所詮は弱者側だったのだ。私もそうだ。だからこうして日々鍛錬を続けている。


「そんなことよりもリリィ、依頼は彼と行ってきなよ」


「えっ、いや、でも……」


「姉弟水入らずで近況報告でもしながらやればいいさ。それじゃあ」


 正人君は背中越しに手を振ってギルドを出た。


「彼に気を使わせたみたいだな。次あったらお礼をしておくよ」


「そこまで深い話じゃないと思うけど会ったら一応お礼は私から言っておくよ。せっかく久しぶりの2人なんだし依頼やろうよ」


「そうだな、どうせなら難しいやつにしろよ」


「わかってるって」


 強くなった私を見てシーザーどう思うかな。びっくりするだろうか。何にしてもとても楽しみになってきた。



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