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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-14.『初めての①』

「う〜ん……」


「眠たいならお昼くらいに行けばいいのに」


「アナスタシアさん、マスター・スミスに連絡してくれてるから遅すぎるのはどうなのかなって」


 目を擦りながら歩く。

 時刻はまだ陽が登ってすぐだ。それに場所は少し離れた場所にある。王都を出て、しばらくしたら海が見える。港に向かい遠くに見える孤島群の1つにマスター・スミスがいる。

 本来は船を使うのだが、私の場合海に棲息していた竜種シーサーペントを使い魔にしているため正人君と一緒に背中に乗って島まで行った。

 あとは道なりに進むだけだ。ありがたいことに看板まであるから迷うことない。途中ちらほらと家があったから無人島ではなさそうだ。


「あれだね」


 家が2つくっ付いたような形をしている。煙も上がってるしあそこがアナスタシアさんが言っていた『リンズ武具店』だ。


「僕は外で待ってるよ」


「一緒に見ない?」


「僕は神器持ってるし必要ないかな」


 そっかと言って、お店の中に入った。すると新聞を読みながら待ち構えていた。


「お前さんが王女様が言っていた子か。話は聞いてる。お前さんの武器を作ればいいんだな?」


「はい、できれば槍で」


「双竜とアイリ嬢の娘なのに槍とはねぇ」


 私を物色するようにジロジロ見てくる。


「お父さんとお母さんのこと知ってるんですか?」


「双竜を知らない奴なんてこの世界じゃそうそういねぇよ。母親の方は昔からよくつるんでたんだ。お前の母さん友達少ないから私が遊んでやってたんだよ」


 お母さん友達少ないんだ。村だと人気者なのに。


「思い出話をしても腹は膨れねぇ。早速槍を作りたいんだが、槍となると穂の長さと持ち手の太さと、全体の長さを測らなきゃならん」


 そう言うとリンさんは店に飾ってある槍を手に取って私に渡してきた。


「太さはこれくらいか?」


「もう少し細い方が持ちやすいです」


「となると、この辺りか……」


 もう一本別の槍を持ってきた。


「これくらいがちょうどいいです」


「太さはそれっと……。長さなんだが最近身長伸びたか?」


「し、身長ですか? どうだろ……。自分じゃ実感できないからわかりません」


「まだ伸びるなら少し長めに作るんだがなぁ。そういや外に連れがいたろ? 冒険者仲間か?」


「正人君ですか? そうですね。一緒に旅をしてます」


「ならそいつに聞こうか。外の奴! 入ってこい!」


 ガチャリ、と扉を開けて正人君が入ってきた。


 すると何かを感じ取ったのか、リンさんが突如として槍を手に取り穂先を正人君に向けた。顔は今さっきまでの穏やかな表情はなく、敵に向ける張り詰めた表情だ。


「お前……何もんだ!」


「楠木正人、ただのテイマーですけど」


「アシハラ人……か。いや、ただのテイマーなはずがねぇ。私は何人ものテイマーを見てきたが、お前から感じ取れるものは常人のそれを遥かに逸している。当代のマスター・テイマーですらまだ常人の範囲にいる。答えろ、お前は何もんだ」


「……と言われても、僕はただのテイマーなのでそれ以上のことは何も」


「おい、リリィ。悪いことは言わねぇ。こいつ異常だぞ。お前と似たような年齢でこれだけのオーラを出すやつなんて見たことない」


「な、何が見えたんですか?」


「言葉にはできんが、人には絶対に抑えられないものがある。俗にオーラ、気とか呼ばれるやつだ。これはあくまで見た者が直感的に感じるものだから、魔力のように専門的に研究がされてきたものじゃない。感じ方はそれぞれなんだが、こいつのオーラは深い闇に包まれているような。それをさらに覗こうとすると何かに噛みつかれるようなオーラだ。まるで俺の正体を見るな! と言ってるような……」


 正人君の正体……。確かに不思議なことは多い。私と同じ年齢であれだけの戦闘技術を収めていたり、星の属性の使い魔を2体所持していたり、あまりにも戦闘慣れしすぎていたり……。違和感を上げればキリがない。


「で、僕に聞きたいことがあったのでは?」


「ん? あ、あぁ……そうだったな。リリィはここ最近身長は伸びたか?」


「そんなに伸びてないと思いますよ。訓練用の槍を問題なく扱えてるので、長さは一般的な槍と同じでいいと思います」


「とこいつは言ってるが、それはどれくらいだ?」


「一応持ってきてます」


 収納できる使い魔からいつも使っている木槍を取り出した。


「長さはこれを目安にして、太さはさっきのやつにするか。後は素材だな。こっちに来い」


 店の裏に通じる扉が開けられた。


「正人君は?」


「せっかくだし見に行こうかな」


 扉を抜けると熱気がむわっと漂ってきた。こんなところで何時間も武器を作ってるなんて凄すぎる。私ならすぐにギブアップしそうだ。


「よっこらせ……っと」


 床にある扉開けて、リンさんは下に降りて行った。私たちも後に続いて梯子を降りた。


「ここは地下倉庫だ。お前の父のように素材を預けたり、売ったりした物を保管している。ちなみに地下2階まである。双竜から預かってる素材はここだ」


 棚は綺麗に整理してある。誰からの預かっているのかわかるようにタグ付けされていた。

 棚1つ分全てを使って保管されているものに『アイバタクト』とタグが貼ってある。


「リリィが得意な属性はなんだ?」


「水と風です」


「だとすればこの辺りか……」


 手に取った素材を渡してきた。


「それは水属性の海獣種の牙だ。ランクはAだから武器として申し分ない。あとこれは風と水の複合属性を持った海獣種の素材だ。こっちはBランクだが、2つの素材を合わせて武器を作れば冒険者が持つ物としては十分過ぎる槍ができる。メインは水属性で、水との親和性を高めるためのBランク素材ってとこだな」


 マスター・スミスが言うんだからこれが1番最適なんだろう。


「じゃあそれーー」


「せっかくならこれを使いなよ」


 正人君がいきなり素材をポイっと投げてきた。硬い金属の様だ。


「ちょっ、テメェ。人から預かってる素材を投げ……」


「どうしたんですか」


「お前、目ざといな。……それは限りなくS級に近いA級の竜種、水轟竜ミカハヤミの心臓だ」


「限りなくS級に近い? それに心臓なのに金属みたい」


「双竜によればあと1ヶ月遅くに討伐されれば1000年生きたことになっていたらしい。つまり999年物の素材ってことだ。一般的な武器の中ではマスター・ソーサラーが持つ杖と同じ格の素材だ。あいつが持つ武器の素材も999年物だからな。金属っぽい理由は知らん」


 つまり一般武器の最高峰ってことだ。こんな素材滅多にないからそりゃ出し渋るよね。私がリンさんと同じ立場でも1つ目の素材を渡す。

 そんなことよりも気になることがある。


「お父さんは何でテイムしなかったんだろう?」


「あいつはS級の水属性の竜種を持っていたことと、得意な属性が火と雷だからな。下位互換となるやつなんていらんだろ。後は相性」


 確かにそれならいらないかも。


「まぁ、双竜の娘だし使っても文句は言わんだろ。もう死人だしな。あと、さっきのBランクの素材も混ぜるぞ」


「風の属性ならこれなんかどう?」


「お前、さっきから……」


 次は瓶に入った血だ。


「今度はどんな素材ですか?」


「A級、風狼王アイオロスの血だよ」


「双竜によれば風を操る狼の群れの王の血だ。こいつらが一斉に遠吠えすれば雨雲を呼び寄せて豪雨を降らせ落雷を落とすらしい。つまり水属性との親和性も抜群だし、元の素材であるミカハヤミの邪魔をしないうってつけの素材だ。こんな武器作ったら神器並みの値段が付くぞ」


「うっ……」


 お父さんのお金あるけど大丈夫かなぁ。


「でも素材はお前の父のものだし今回は技術料だけ貰っとく。明日また来な。槍の銘考えておきなよ」


「ありがとうございます!」


 どんな武器になるんだろう。楽しみだなぁ。それと名前も決めないといけない。明日になるまで待ちきれない。



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