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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-12.『特訓開始!』

 お母さんを崇拝していると言うミツヨシさんは、出会うや否や私にダイブしてきたが、もう1人の男によって助けられた。


「ほんまよぉ似てるなぁ。赤ちゃんの時は全然わからんかったけど、今見るとまんまアイリさんや」


「生き写しって感じっすね」


「お二人も私を知っているんですか?」


「まぁ、そりゃ知ってるとも。確かもう1人男の子がおらんかったっけ?」


「シーザーは今は家にいます。私は冒険がしたくて家を出ました」


「そうか。ここまでさぞ遠かったやろ。ゆっくりしていき。困ったことあれば何でもしたるからな」


 よくわからない方言を使う男の人はとても誠実そうだ。もう1人は怖いけど……。


「あの、お母さんからミツヨシさん宛に手紙です。受け取ってください」


「姉さんから!?」


 ものすごい勢いで手紙を受け取り即座に封を開けてふむふむと言いながら読んでいる。タマキさんも覗くようにして一緒に見ていた。


「事情はわかった。しばらくこの国に滞在すると良い。その際の支援もギルドへ優遇措置を取るように連絡も入れておくし、この国での出入りは自由にできるように先方に伝えておくから」


「そこまでしてもらっていいんですか? お母さんの手紙にはなんて書いてあったんですか?」


「要約すると姉さんからはこの国で過ごす間だけ面倒を見て欲しいと書いてあったけど、面倒を見るだけじゃね……。姉さんには色々と返しきれないほどの恩があるからさ。でももう返したくても返せない。だからせめて君にその恩を返したいんだ」


「ミツヨシさん……」


 この人変な人だけどお母さんを想う気持ちは本物なんだろうなぁ。お母さんは昔、ヴェストフォル王国にはもう帰らないと言っていたし、ミツヨシさんもそれをわかっているから代わりの私に色々とやってくれているんだ。


「ありがとうございます」


「いや、僕の自己満足だから……」


「三厳も大人になったな。10代の時から見てるからお兄さん感激やで」


「お兄さんって歳じゃないっすよ」


「余計な一言を。……じゃあ僕からも1つ。これをあげよう」


 渡されたのは時計だ。確かこれはアナスタシアさんもつけていたものだ。


「それは時計でもあり、通話機能もあり、この画面に触れると……」


「何これ……?!」


 時計のちょうど少し上に何やら出てきた。少し時計から浮いているし、時計を激しく揺らしても付いてくる。


「光属性の魔法を色々いじったらできたやつや。それ、指に魔力を込めると触れて操作できるよ。さらに、特定の番号を登録しておくだけで世界中どこでも通話できるから。その中にはアナスタシア様と三厳と僕の番号が入ってる。何かあればすぐにかけてきや」


 なんかすごい……。言葉では表せないけど、とてつもなく高度な技術というのがわかる。


「すごいなぁ……。これ、地図もある。この点滅してるのってなんですか?」


「これは現在地を示してるんや。離してるから正確な位置は分かりにくいけどこうやって指でズームすればこの通り正確な位置までわかるってわけよ」


「これ、世界中どこでもわかるんですか?」


「よっぽど奥深い洞窟とかにいなければどこにいてもわかるで」


 これ、めちゃくちゃ旅に役立つものだ。逆に言えばヴェストフォル王国ではこれが普通なのだろうか。技術大国は生活から根本的に変わるものを日々生産している。だからこそ国として強いのかもしれない。


 ピリリリ……。

 と、早速連絡が来た。


『突然、知らない番号の登録があったのでかけてみたらリリィでしたか』


 アナスタシアさんの顔が映し出されている。


『こちらも彼と話が終わりました。どうでしょう? 早速特訓してみますか?』


「おっ、お願いします!」


『では、修練場にて。ミツヨシ魔法師団長、彼女を連れて来てもらえますか?』


「承知致しました」


 プツリと切れた。


「では早速行こうか」


「僕はもう仕事に戻るな。リリィちゃんゆっくりしていきや」


「はい、ありがとうございました」


 私はミツヨシさんに連れられて修練場まで向かった。

 修練場の前にはすでにアナスタシアさんが待っていた。けれど正人君の姿はない。


「正人君は?」


「彼ならギルドに用があると行ってしまいました。ではこちらに」


 連れられるまま中に入って行った。ドーム状で、中はとても広い。


「真剣だと危ないので、これを渡します。では準備運動をしてから始めましょうか」


 木剣を一本渡された。ベルヴェルクに慣れすぎているからか、少し重く感じる。重さなんて次第に慣れるだろう。そんなことよりも準備運動しないとね。

 屈伸、前屈、開脚前屈をして十分に体をおぐしておく。


「リリィ、あなたとっても柔らかいんですね」


「えっ?」


 さっきからジロジロと見られていたから何だろうと思っていたけど。


「そうなんですか?」


「私なんてここまでしかいきませんよ」


 同じく開脚前屈をしてたが確かに私よりも少し硬い。


「ちょっと失礼しますね」


 アナスタシアさんは私のひじを曲げて、腕を背中へとぐっと押し下げた。


「本当にすごい柔軟性ですね。痛くないですか?」


「いえ、全く痛くないです」


「…………。すみません、では準備運動はこれくらいして早速始めましょう。リリィは六連一刀流以外に使える流派はありますか?」


「それだけです。お母さんからしか習ったことないので」


「分かりました。ではあなたは六連一刀流の剣術を使ってください。まずは私がそれを見てます」


 六連一刀流は抜刀術を一ノ型として、その後二〜六ノ型へと繋げる2連撃剣術だ。もちろん単発としても使えるし、状況によっては過ぎ去り際に刺す技や、防御系の技もある。

 全ての技を順番に繰り出すが、その度に簡単に止められ、さらに反撃を許してしまう。剣に対しての理解度が違いすぎる。構えから抜いた後も全てに無駄がなく隙もない。完成された剣だ。


「一先ずこれくらいにしましょう」


「はぁはぁ……。ありがとうございます……」


「アイリさんに習ったこともあって型の基本は全てできていますね」


「でも、全部受け切られてますし、全然アナスタシアさんに届きませんでした……」


「それは年季が違うのと、私には『太陽神の加護』がありますので。普段は抑えてますがそれでも漏れ出てしまう力があって完全に制御しきれていません。なので日中において、純粋な力ではどんな屈強な男の人でも私には敵いません」


 突撃してきた魔道車を片手で弾き飛ばすだけの力があるからなぁ、この人。

 一般人には緩和の加護がある。これは濃すぎる魔力から身を守ったり、痛みを和らげたりしてくれる加護だ。この世にはそれ以外にも加護が存在する。

 それこそ神に愛された加護。太陽神、水神、風神、土神の加護だ。それぞれに特性があり、どれも唯一無二の加護だ。正人君は特別に『月女神の加護』があるけどあれは例外中の例外だ。


「では、休憩もこれくらいにして始めましょうか」


「はい!」


 それから私たちはひたすらに剣を撃ち合った。しかしその日は最後まで一本も取れずに終わった。力量差があまりにも違いすぎる。数日で追いつこうなんて思っていないけど、少しくらいは自身の血肉に変えないとここまで来た意味がない。

 その日は別れの挨拶をして真っ直ぐ家に戻ることにした。


「いてて……」


 歩く度に打ち付けられた箇所が痛む。加護有りでこれだから無かったらと思うとゾッとする。


「リリィ。今帰りかい?」


 振り向くとそこには正人君がいた。そういえばギルドに行っていたんだった。


「うん。今日はもう終わりだよ」


「そっか。じゃあ、僕は宿に戻るから気をつけなよ」


「正人君は家に来ないの?」


「君のお母さんの家だろ? さすがに泊まれないよ。それにリリィのおかげで僕もおこぼれをもらってね。宿泊費が半額なんだ。お金は依頼を受ければ簡単に集まるし、しばらくはそっちで過ごすよ。何かあればギルドを通じてくれればいくらでも駆けつけるよ」


「う、うん。わかった。じゃあね」


 この国では正人君とは別行動になりそうだ。久しぶりに1人で過ごす夜になる。

 お母さんが持たせてくれたメモに書いてある住所に着いた。2階建てで、小さいけど庭付きだ。鍵を開けてゆっくりと扉を開けた。


「お邪魔しま〜す……」


 誰もいないのは分かっているけどつい言葉が出てしまった。

 何十年も前なのにしっかりとキレイだ。本当に定期的に掃除がされているらしい。廊下を歩きすぐの扉を開けるとそこはリビングだった。奥にはキッチンもある。


「これは……すごすぎる……」


 田舎育ちの私でも知っている超有名家具屋のソファーにテーブル。この引き出しもアンティークで、絶対に値が張るものだ。食器棚に入っているお皿とカトラリーも一度は憧れる一品揃いばかり。


「お母さんたち、よっぽどのお金持ちだったんだなぁ。向こうではそんな感じしないんだけど。まぁお父さんの貯金額を考えればこれでもまだマシなのか」


 いや、お父さんは庶民派って言ってたからきっとこれはお母さんが個人で集めたものだ。そうなるとお母さん1人でどれだけ稼いでいたんだろうか。なんか怖くなってきた。

 家の中を探索していると寝室があった。シングルサイズのベッドが2つあり、間には小さなテーブルが置いてある。そこには1枚の写真立てが伏せられていた。

 何の躊躇いもなく写真を手に取った。そこにはお母さんともう1人、男の人が一緒に写っている。


「これが、お父さん……?」


 私が付けている耳飾りと同じものを身につけ、腰にはベルヴェルクを携えている。何より正人君と同じアシハラノクニらしい顔立ちだ。

 これはいつ頃の写真だろうか。2人ともとても若く見える。やっぱり20代かな。お互いかしこまった服装ではないからきっと王都外で撮られたものだ。お母さんは微笑んでいて、お父さんはニコッと笑っている。仲が良かったんだろうなぁ。


「あれ……」


 ポロリと涙が流れてきた。ずっとお母さんからの話と噂しか聞いてこなかったから。やっと出会えたお父さんの姿に涙が止まらない。


「ちゃんとお父さんいたんだ……」



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