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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-11.『王国の太陽』

 現在、ヴェストフォル王国の王都前です。

 国境を超えてからもカグヤに乗って一気に王都まで向かい、王都を囲う城壁前にいます。

 ここは商人も冒険者もとても行き来が激しく、王都内に入るだけでも一苦労だ。色んな国々を歩いてきたけどここまでの大国は初めてで気疲れしてしまう。


「どのようなご用件でしょうか?」


 国境でも聞かれた気がするけど。


「観光です。あと、冒険者なのでギルドの依頼とかをやりにきました」


「お隣の方は同行者ということでよろしいですか?」


「はい」


「では、お二人の冒険者カードをお見せください」


 私たちは冒険者カードを渡した。何事もなければこのまま通れる。


「問題ないですね。では入場を許可します」


「ありがとうございます」


 ついに王都内に入ることができる。薄暗い検閲場を抜けるとそこはレンガで作られた家がたくさん立ち並び、馬車はほとんど通っていない。魔道車が道路を行き交う。


「すごい、ここじゃ魔道車は当たり前なんだね!」


「この国で作られたからね。普及率も高いよ」


 今までの街や王都は基本的に馬車が道を占拠していた。魔道車も走っていたが、数はかなり少なくゆっくり走る馬車の後ろをトロトロと走っていた。


「まずは宿に行こう。ここじゃ前みたいな賊はいないはずだ」


「安全なのはわかるけどなんで?」


「ここを守護している人のおかげかな」


「守護?」


「キャー! ひったくりよ!」


 突如として女性の悲鳴が聞こえてきた。場所は近い。

 本能のままに叫び声の場所に向かった。

 場所は本当に近く、すぐある曲がり角を行った先だ。ひったくりの男は近くに止めてあった魔道車に乗り込み急発進した


「止めないと!」


 剣を抜こうとする私に正人君は手で抜剣を遮り、微笑みながら首を横に振った。まるで大丈夫と言わんばかりに。

 急発進した魔道車だったが、目の前に女性が現れて難なく腕一本で大きい車を弾き飛ばした。宙に飛んだ車は逆さに着地してしまい、窓から見える運転手もあまりの衝撃で気絶している。


「よかったですね、今日私が非番で」


 よく見ると女性は串に刺された肉を頬張っていた。

 鮮やかな逮捕に沸く民衆で女性は囲まれていた。


「よっ! 王国の太陽!」

「アナスタシア様に栄光あれ!」

「いつ見ても女神様みたいだわ!」


 沢山の歓声に手を振りながら肉を食べていた。

 て、言うかあの人がアナスタシアさん……! 聞いていた感じよりもずっと綺麗な人だ。


「ねぇ、正人君。私あの人に会いにここまで来たの。何とかして対面できないかなぁ?」


「そういえばそうだったね。じゃこうしよう」


 正人君に連れられてすごく狭い裏路地に着いた。


「こんな所でどうするの?」


「こうやるのさ。月神ディアナと接続開始」


 正人君は戦いでもないのに、急に月神と接続した。まだ昼だからむしろ普段よりも上昇率が低い。それでもやはり神との接続は常人を上回る力だ。


「そこまでです!」


 屋根の上から銀色に煌めく髪をなびかせながら颯爽と現れた。


「街中で神との接続とは穏やかではありませんね。しかもこの魔力……私のものと似ています」


 正人君の想定通りアナスタシアさんが目の前に現れた。


「こちらアナスタシア、反応した場所に現着しました。その場で対処します。騎士団に通告します。目の前の少年は神と接続しています。生半可な力では返り討ちに合うので、その場で待機を命じます」


 腕につけている時計のようなもので何やら会話をしている。魔法道具なんだろうけど、あそこに話しかけて何をやっているんだろうか。


 話が終わり、アナスタシアさんは腰に据えている剣に手を添えた。しかもあの構えは六連一刀流、一ノ型『六連星』という抜刀術だ。


「僕はあなたとやり合いたくない」


「では、なぜ神と接続しているのですか?」


「あなたに会いたい人がいます。その為に神と接続してあなたをここまで呼びました」


「会いたい人?」


 正人君は振り向き、建物の影に隠れていた私を呼ぶように手を振った。


「ど、どうも……」


「えっーと、どなたですか? 多分初対面だと思うのですが……?」


「私はリリィ・アイバ・ノートと言います。普段は相羽リリィかリリィ・ノートって名乗ってますが。お母さんからの手紙を渡すためにここまで来ました」


「アイバ……、ノート……」


 アナスタシアさんは一瞬間を置いた後、駆け寄って私を抱き寄せた。


「よく……ほんとによくここまで来ましたね。会いたかったです。リリィ」


「えっ? えっ……?」


「全体はアイリさん似ですが、目の色は師匠似ですね。あっ、眉もそうですね。とても可愛いらしいです」


 褒められて嬉しいけど、急すぎて恥ずかしい。


「ちょっ、離して欲しいです」


「あぁ、すみません。あなたは覚えてなくて当たり前ですね。まだ赤子の時に一度だけ抱かせてもらったんですが。こほん、では改めまして、私はアナスタシア・ヴェストフォル。陛下より賜りし名は『太陽』。一応第4王女という身分ではありますが現在は国王直属の近衛騎士団長を務めています」


 団長ってことはこの人、この国の軍事力の最高峰だ。お父さんはそんな人の師匠なのか疑問すら覚えてきた。

 アナスタシアさんの魔力はとても暖かい。太陽みたいだ。全てを包み込んでくれそうなほど大きい。聖母と言われても納得が行くほどに暖かい。


「こんな所で立ち話も何なので王宮まで行きましょうか。お連れの少年も一緒でいいですか? 彼には聞きたいことがありますし」


「はい。正人君も一緒で」


 こうして正人君の作戦通り、アナスタシアさんと接触してさらに王宮の中まで入れることになった。

 場所は変わって、現在アナスタシアさんの王宮内の騎士団長室にいます。


「さて、落ち着いたことですし、言っていたアイリさんからの手紙というのは?」


「これです」


 サッと手紙を渡してふむふむと読むアナスタシアさん。読んでいる姿も凛々しいなぁ。


「要約すると、まずあなたに稽古をつけてほしいということですね。あと、この国に残っている師匠の財産の譲渡してほしいと書かれてあります。未だにたんまりと残ってますからね。一時的に弟子である私が預かっているので後ほど渡しますね。あと王都にあるアイリさんの部屋の鍵も渡します。これも私が持っていますので。こんなところでしょうか」


 こんなすごい人に稽古をしてもらえるなんて身に余る対応だ。

 さらにお父さんの財産はここにあったのか。でも勝手に使っていいのやら。

 先にお母さんの家の鍵を渡された。さらに部屋の隅にある扉に案内された。電気がつくとそこには大量の箱が置いてあった。


「なんですかこれ?」


「お金です。これは師匠が『パラディン』に任命された際の報奨金やこの国でのお給料、ギルドからの直接的な要請でもらったお金はほぼそのまま残っています。使ってはいたんでしょうが師匠は金銭感覚は割と庶民派だったので使い切れずにこんなに残ってしまいました。お陰で一室丸々金庫になってしまいましたが」


 箱が何個あるかわからない。こんなの本でしか読んだことないレベルの量だ。


「全て純金貨なので相当な金額だと思います。銀行で一度に預けると怪しまれるので複数回に分けて預けることをおすすめします」


 こうして私は一気に大金持ちになった。


「そういえばお母さんがミツヨシって人にも手紙を渡すようにと言われてまして。どこにいますか?」


「アイリさんなら彼に何も無いということはないと思ってしましたが。彼はこことは真逆の棟にいます。私は少年と話があります。部下を呼ぶので連れて行ってもらってください」


「えっと……、その……」


「身バレを気にしているんだと思いますが、この王宮内を歩けば否が応でもバレます。それほどまでにあなたのご両親の影響力は大きいのです。ですが、不用意に口外する輩はここにはいません。ですから安心して王宮内を歩いてください。ご両親が過ごした時間がここにはあります」


 なぜだろう。初対面なのにすごく安心して信頼できる感じがする。微笑む姿も相まって否定できない。

 部下の人に連れられて別棟まで案内された。

 魔法師団長室の扉はとても豪華な造りだ。3回ドアを叩いて一歩後ろに下がった。すると人の力無しで扉が勝手に動いた。


「お邪魔します……」


「姉……さん」


「はい?」


「姉さーん! 会いたかっーー」


 突如として私に飛び込んできた男はもう1人の男に伸びる棒の魔法道具を使って殴られた。


 飛び込んできた男は大きなたんこぶを手で押さえながらゆっくりと立ち上がった。


「バカかお前は! 小さな女の子にダイブする奴がどこにいるんや!」


「つい。姉さんそっくりだったんで。いてて」


「すまない。このバカのせいで怖い思いをしたな。改めて、僕は開発担当大臣の能登環や。で、このバカが……」


「宮廷魔法師団長の生駒三厳です。先ほどはすみませんでした」


「いや、ほんと。このバカは僕が叱っておくから許したってな。悪気はない……と思うねん。ただ、君のお母さんのことを崇拝してるから」


「あはは……」


 何なんだろうこの人は……。




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