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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-10.『クリス・シートン③』

 殺気立つ2人には過去の旅の思い出はとうに消えていた。今は敵同士として鬩ぎ合っている。


「マサト、君はそんなもんじゃないだろう!」


「お前こそ、隠してたんだな!」


 クリスは旅の途中、力を制限していた。今までは補助魔法をメインに動き回ることで実力を隠していたのだ。無論、正人も力を制限しているが。

 2人の攻防は街にも広がった。正人は極力街の被害を抑えようと迎え撃つも、クリスはお構いなしに攻撃魔法を放ってくる。


「ルミナス<フラッシュ>!」


「カグヤ!」


 目潰しの魔法を掛けてきても月光神竜カグヤがある限り効果はない。

 攻撃もさることながら補助魔法も一線級であるクリスだが、正人自身も数多くの補助魔法を見てきた経験により瞬時に判断して無効化をしている。


「マサト、君は本当に何なんだよ。月神の神使を操り、土神の神使も完璧に扱えている。沢山の技術を納めているからその状況においての最適解を導き出せる。マサト以上のイレギュラーを俺は知らない」


「自分でも思うよ。なぜ僕だったんだろうって。でもやることがあるから。その為にも今邪魔者(クリス)には死んでもらう!」


 二刀流が基本戦術である正人は剣を1つに集約させた。そして腰に手を当てクリスをジッと見つめる。


「そんな隙だらけの抜刀術が俺に当たるか!」


「普通の抜刀術ならね」


 正人は地面が抉れるほどの力で蹴った。常人では目で追えないレベルの神速剣。さながら双竜が多用していた六連一刀流、一ノ型『六連星』だった。


「がはぁっ!!」


 クリスは客観的に見ても一流のソーサラーだ。しかしそれは人の中での一流に過ぎない。

 クリスは腕を一本と胸に横一線の深い傷が刻まれ、地面に横たわった。


「さっさと殺せよ……。痛いじゃないか」


「聞きたいことがある。クリスはリリィのことどう思っていたの?」


「ただのターゲット。俺は組織から受けた命令で動く。『情』なんて言葉はとうの昔に捨てている」


「僕には本当にそんな風には見えなかった。この旅を楽しむ2人を見ていて微笑ましいと思っていたよ」


「…………」


「クリスは本当は命令なんて無かったらリリィのことをーー」


「やめてくれ。そんなものはタラレバだ。……俺は小さい頃両親が死んで今のボスに拾われた。名を捨て、自我も捨て、何もかもを捨てて架空の男になった。クリス・シートンもその1人だ」


「けど、リリィはクリスとして見ていたよ。信頼のおける1人だと思って」


「そう思ってくれたなら俺の任務は達成されたということだ。我ながら頑張ったと思うぜ。5ヶ月もずっと……」


「5ヶ月でクリスは何も思わなかったの?」


「なんっにも思わなかったよ……」


「嘘だ……。クリスは嘘をついている」


「っ!? ……なぜそう思うんだ」


「直感だよ。クリスとリリィが過ごした5ヶ月には僕も含まれている。ずっと見てきたんだ。クリスはリリィに友人以上の感情があると」


「…………。マサト、一回しか言わねぇ。ちゃんと見逃すなよ」


 クリスは目で何かを訴えかけている。瞬きを何度も行い、正人に伝言を伝えた。


「ありがとう」


「もう死ぬ身だ。トドメを頼む」


「わかった……」


 正人はクリスに最後の一撃を入れた。クリスはそれにより完全に生き絶えた。

 しかしクリスから受け取った伝言を頼りにリリィを探すことになる。


「その前にお前たち、さっさと出て来いよ! そんな所に隠れていてもわかってる!」


 正人がそう言うとスッと黒ずくめの人が3人出てきた。


「この男は組織の中でもやり手だったのだがな」


「このままどこかへ行けばいいものの。こうして3対1を望むとは」


「バカだなお前は」


「そういうお前たちもバカだ。この距離だから安心と思っているのか? お前たちはもう僕の射程圏内だ」


 神器エアドロムは形を自在に操ることができる。正人は剣を得意としている為基本形態は剣だが、それ以外の武器も扱える。

 3人の黒ずくめたちの首は瞬時に斬り取られた。3人が気づく間もなく。


「斬れる鞭に形を変えればこんな距離、距離とは呼ばない」


 正人は死んだ3人の持ち物を漁った。リリィへの手がかりがあるかもしれない。実際に何やら地図があった。それには何個もバツ印が書かれている。


「中継地点かこれは……? これが本当だとすると行き先は……」


 バツ印を辿ると途中で消えていた。最後の印から察するに目的地候補は3つあった。


「しらみ潰しで行くしかないな」


 そこから全速力で駆け抜けて最後の街にてリリィの残存魔力を発見して領主の家に飛び入った。

 クリスから受け取った伝言はリリィの状況と五箇所ある中継地点の内第3中継地点までだった。クリス自身も駒の1つであり、最後の詳細までは聞かされていなかったのだ。


 ◇


「とまぁ、そんな感じだよ。クリスはきっと任務なんて無く、普通の青年だったら今頃リリィに……」


「それこそタラレバだよ。この世に『もしも』なんてない。でも、クリス君がいたってことは胸に刻むよ。クリス君は敵だったかもしれないけど、過ごした5ヶ月は本物だから」


「忘れてはいけない存在だ。僕も覚えておくよ。……見えてきたよ」


 出来事を話していたら街に着いた。空から見ても一部荒れているのがわかる。あれが正人君とクリス君が争った跡だ。


 街に着くとすごく偉そうは人が宿の前に待っていた。


「待っていたよ」


「どなたですか?」


「私はこの街の市長だ。今回の争いについてなんだが」


「それなら謝ります。街を壊してしまい申し訳ありません」


 正人君は深々と頭を下げた。私も真似をするように頭を下げた。


「いや、とんでもない。今回の事件に関与していたある組織の情報が手に入ったのだ。街はまたお金をかければ直る」


「組織について何か知っているんですか?」


「この街に限らないが近隣の街を含めて誘拐事件が多発していてね。しかし尻尾を全く見せないから捕まえようにも無理だった。今回は奴らの遺体が4体もある。何かしら重要な手がかりになるはずだ」


「そうでしたか。ではこれも渡しておきます」


 正人君は話しにできた地図を市長に渡した。


「これも重要な資料だ。感謝する。君たちはこれからどうするのだね?」


「東の大陸のヴェストフォル王国を目指します」 


「そうか。では魔道車を貸そう。北と東の大陸間にある海峡の街に行き、そこの支部に返してくれれば問題ない」


「ありがとうございます。お言葉に甘えてお借りしますね。リリィ荷物をまとめて行こうか」


「そうだね。早くに行ったほうがいいかもね」


 今回の事件があったから早くヴェストフォル王国に行き安全を確保しないと正人君に申し訳ないしね。今までは冒険だからと徒歩だったが今回ばかりはそうは言ってられない。

 魔道車の運転はもちろん正人君だ。そもそも私乗ったことないから運転できないんだけど。運転者の魔力を使用して動くこの車は正人君ととても相性がいい。疲れさえなければ神様と接続することで無限に運転できるからだ。


「気持ちいい〜」


「リリィ、危ないぞ」


「こんなに速いなんて思わなかった。こっちの大陸は進んでるなぁ」


「いつかはこの車が普通になる日が来るよ」


 エンジンを吹かしてどんどん目的地に近づいて行く。魔獣なんて置き去りだ。

 目的地である海峡付近の街にて返却し、そこからはカグヤに乗って一気にヴェストフォル王国に向かう。大陸間は晴れていたら薄らだが海岸線が見える範囲なので、すぐに東の大陸に突入した。


「見てみなよ、あれがヴェストフォル王国の入り口だよ」


 少し乗り出して覗いてみると国境には大きな壁が張られている。


「そろそろ降りようか」


 カグヤはゆっくりと下降していきヴェストフォル王国入り口の目の前で降りた。


「早く行こう。昼頃には王都に着くよ」


 やっと目指していた場所に着く。

 お父さんとお母さんが出会った場所。2人の思い出の場所。私にとっての第2の故郷が目の前だ。




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