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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-7.『クリス・シートン』

 ある程度その場から離れて、最寄りの街に向かった。

 正人君は女の人にとってはヒーローのようで目をキラキラさせて正人君と話している。

 私はというとカグヤとおしゃべりをして交流を深めている。


「ねぇ、カグヤって月の神様の神使なんでしょ?」


「そうですが」


「じゃあなぜここにいるの? だって普通おかしいよ。月の神様は人間の世界に干渉していないはず」


「特殊な事情ゆえ話すことはできません。が、いずれ知ることにはなる。その時まで待ちなさい」



「ん〜、すっごく気になる」


「少なくともは味方です。それだけわかっていれば十分。それに知れば後悔することになる」


「どう言うこと?」


「言葉の意味そのままです。そんなことより、ほら、見えてきましたよ」


 カグヤは話を折るようにして先に見える街を目指した。

 西の大陸屈指の芸術都市『アルテシモ』。ここは古今東西あらゆる芸術が揃う場所である。何百年も前に都市を大改造して街の造りも芸術的に作られている。上から見るとよくわかる。綺麗な円形で、外周には高い壁があり、真ん中にかけて建物が順々に均一に建てられている。都市の真ん中には大聖堂がある。

 朝日が昇り始めて、日の光が大聖堂に当たると鐘が鳴り響いた。これから芸術都市の1日が始まる。

 アルテシモのギルドに寄り、攫われた人たちの送迎を職員に引き継いだ。最後まで正人君はモテモテで住所の書かれた紙をたくさんもらっていた。


「モテモテだね。……そんなに貰ったけどそこに行くの?」


「僕も旅人だから次行くのは年単位で先だから流石に行けないよ。ただこれ個人情報だから街の外に出てから燃やそう。申し訳ないけど」


 その言葉にホッとした自分がいる。別に独占欲とかはないけど何故か安堵した。


「せっかくの芸術都市だし、観光しようよ」


「良いけどまだ早朝過ぎてお店はどこもやってないよ」


「そうだなぁ。じゃあそれまで依頼をしてお金稼がないとね」


 ここのギルドは24時間受け付けている為早朝からでも依頼を受けられる。正人君と一緒にお出かけができる。ルンルンな気持ちで掲示板に行き、目ぼしい依頼を探す。正人君がいるから多少自分にとって無理な依頼でも大丈夫だ。


「これにしよう」


 掲示板に貼ってある紙を取ろうとした時、別の人の手と重なった。


「ご、ごめんなさい」


 咄嗟に謝ってしまった。


「あぁ、いやこっちも悪かった。まさか同じ依頼を頼むとは思ってなくて」


 そう言う男は中肉中背の銀髪で、綺麗なエメラルドグリーンの目をしている。


「リリィ、どうしたの?」


「あ、いや、受けたい依頼がこの人と重なっちゃって……」


「この子のお連れさんかい? ならこれは君たちに譲るよ」


「……」


「どうしたんだい?」


「あなたもこれを受けようとしているのか?」


「まぁ、一応は」


「なら一緒に受けよう。報酬額は半分そっちで、こっちは4分の1ずつにするよ。今すぐお金が必要ってわけでもないし」


「それだと君たちの報酬額が減るんじゃないか?」


「依頼くらいまた受ければいいさ。お互い受けたい依頼があるのなら、たまには別の人とパーティ組んだ方が気分転換になる」


「そうか、君は見た目の割に大人なんだな。わかった。じゃあよろしく頼むよ。俺はクリス・シートン。S級ソーサラーで、得意な属性は火と光と闇だ」


「僕は楠木正人。SS級テイマー」


「私はリリィ・ノート。てか私が1番低いなぁ。一応A級テイマーだよ」


「フォーメーションも俺が後衛、2人が前衛でいいね?」


「いいよ、それでいこう」


「だ、大丈夫かなぁ……」


 ひょんなことからクリス君とも一時的にパーティを組むことになった。

 都市を出て目的地まで行き、目当ての魔獣を倒していく。正人君は流石の一言だ。魔獣を見つけるや否や速攻で次々と薙ぎ払っていく。

 私も負けじと魔獣を倒していく。

 クリス君はというと、私たち2人にバフや遠距離攻撃で適所に攻撃を挟みサポートしてくれた。

 その日の依頼はすぐに終わった。けど思っていた以上に私たち3人はこの連携にどハマりしてしまい、来る日も来る日もパーティを組んで依頼を受けた。日数にして1ヶ月以上を費やしてアルテシモので討伐系の依頼を無くした。

 アルテシモ内での冒険者の知名度は道を歩けば知らない人から声をかけられるくらいには名声が上がった。


「なんか思ってたよりも長く滞在しちゃってたね。気づかなかったよ」


「俺もあまりの居心地の良さに忘れていた。すまない、足止めしてしまった」


 このことに気づいたのはギルドの受付員から討伐系の依頼がないと言われた時だ。言われなかったら未だに没頭していたと思う。


「マサトが近距離、リリィが氷魔法での中距離、俺が遠距離かつ補助。たった3人で全て担えているし、逆にこれ以上増えると役割が被ってしまうからパーティとしての完成度はかなり高いよな」


「そうだよねぇ。って、正人君聞いてる?」


「ん? あぁ、ごめん。聞いてるよ。実際動きやすいパーティではあるよね」


 正人君は時々上の空だ。何を考えているのか分からないけど、一歩身を引いて第3者のように振る舞う時がある。


「マサトは年齢の割に技術がすごいと思っているけど、何かやっていたのかい?」


「僕はただひたすらに鍛えただけだよ。けど、教えてくれた先生が良かったのかも」


「なるほどね。良い師匠に出会うかどうかっていうのも大切なことだ」


 私もそういう意味なら良い先生に教えてもらった。お母さんだけど、強いし賢いし非の打ち所がない。


「さて、この街でのやることは終わった。俺は街を出るよ」


「そうなの? 私達せっかく良いパーティだったのに」


「俺たちは臨時パーティだ。それにいく場所だってバラバラだろう。君たちはヴェストフォル王国。俺は北の大陸にある街だ」


「ん〜。なんかもったいないなぁ。ねぇ、正人君はどうなの?」


「どうって……。僕たちのルートはここから北の大陸に行ってから東の大陸に入るわけだし、途中までなら一緒に行けると思うよ」


「そうだよね。せっかくだし途中まででいいから行こうよ」


「マサトはいいのかい?」


「良いも悪いもここまでの仲だし。リリィが残念そうだから」


「そうか。じゃあ途中までだけどよろしく頼むよ」


「うん!」


 私たちは3人のパーティを再結成した。そしてアルテシモを離れて次なる街に出発した。

 クリス君はすごく周りがよく見える。気配りもそうだが、欲しい時に欲しいものをくれる。戦闘中は特に顕著だ。欲しいバフや欲しい遠距離攻撃を随所で放ってくれる。正人君も信頼しているのか、例え針に糸を通すようなクリス君の攻撃魔法も自身には当たらないと思い突っ走る。レベルが高い2人だからこそわかる呼吸のみで判断できる信頼は、私から見れば熟練の冒険者のようだ。


「今日は外で野宿なの?」


「たまにはこう言うのも粋だろ? 満天の星空の下で仲間たちと1つの火を囲みながら寝るの。それに外で寝るということを慣れていた方がいい。冒険者ならどんな環境であっても寝れる技術ってのは重要だ」


「クリスの言う通りだよ。複数人いるパーティだと寝るのを交代して見張りをしなくちゃならない。例えば短い時間、環境が悪くても目を瞑り体を休めるっていうのはリリィが思ってる以上に大切なことだよ」


「それくらいはわかってるよ。私も正人君と会うまでは1人だったし。でもねぇ……」


 私、一応女の子なんだよね。前まではアルテシモを拠点にしていたから何てことなかったけど、外で男2、女1という状況は周りから見たら中々に危なそう。2人に限ってそういうのは無いと思うんだけど……。


「わかった。リリィは僕が作った部屋で休むと良い。それなら安心できるでしょ?」


「うん。その方が助かるかな」


 クリス君も気が効くけど、正人君も同じくらい気が効く。また土の部屋を作ってもらい、私はその中で仮眠をとった。

 土の扉が開き、正人君が起こしに来た。次は私が見張り番だ。ここから朝までだから土の部屋も解除してもらった。


「リリィ、大丈夫?」


「何が?」


「いや、何でもない」


 変なことを聞くなぁ。


「おやすみ」


「おやすみ。リリィ、よく注意するんだよ」


 正人君は心配性なのだろうか。

 でも正人君の心配は今の状況じゃないような気がする。もっと長い目で見た時に何かあるんじゃないかと思わせる、そんな心配事だ。クリス君も不思議な人だけど、正人君も同じくらい不思議な人だ。たまに何を考えているかわからない。



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