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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第6章 悪魔大戦線
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6-8.『悪魔王②』

 激しい攻防が続く。

 俺たち2人で連携しても確実に技を捌き、間を縫うようにわずかな隙間から攻撃を仕掛けてくる。こいつは技巧派だ。僅かな魔力、僅かな動きで戦う。俺たちは魔法、剣術や魔獣を使っているが、ゲシュタルトは未だそういったことはやっていない。


「余裕そうだな」


「そうでもない。お前たちは人間の割にはよくやる」


 褒められてはいるんだろう。敵からだが。

 本気にならないなら、なる前にやるのがいいだろう。

 剣と拳が何度も何度もぶつかり合う。ゲシュタルトはニヤリと笑いながら受け流してくる。そして時々力を込めて殴ってくる。俺は若干押されながらも耐え、攻撃の手を緩めない。

 いっちゃんも俺のサポートに入りながら、攻撃をしている。

 俺たちからの猛攻によりゲシュタルトの手が回らなくなり始めると、俺から遠ざかろうと強い攻撃をしてくる。この瞬間こそが奴にとっての隙だ。1秒を無駄にすまいと間を詰めて攻撃する。

 これを繰り返す。だが、流石にこれだけではゲシュタルトに決定打は与えられない。

 通常攻撃に加えてベルヴェルクの短剣をゲシュタルトの背後に配置して射出する。一手加えたことで奴も今までの対応だけでは捌き切れない。いっちゃんもサポートから一転して、近距離での攻撃に加わりさらに追い詰める。


「ふん!」


 体を中心に闇のオーラの様な物を発動させて、後退を余儀なくされた。余程今の攻撃が嫌だったのだろう。


「これで余裕は無くなったんじゃないのか」


「どうだか。ただ言えることは、人はまともに戦えるようになったのだなと思うだけだ。あの時代、まともに戦える人間はほんの数人。それ以外は死ぬか、生きながら苦しむかのどちらかだった」


 とか言っているが、明らかに俺たちを遠ざけてるのは間違いない。


「いっちゃん、サポート頼む」


「言われなくとも」


 ベルヴェルクを鞘に納めて抜刀の準備をした。

 一呼吸をしてから最速の六連一刀流、一ノ型『六連星』を繰り出した。ゲシュタルトはそれを読み数歩下がり距離を取る。さらに俺は読み、抜刀するふりをして奴の前を通り過ぎて背後に回る。ゲシュタルトの振り向き様に一ノ型を命中させる。


「ぐっ…………!」


 さらにゲシュタルトの死角からベルヴェルクの短剣を射出し見事に3本突き刺さった。六連一刀流は二連撃剣術だ。一ノ型と瞬時に3回の突きを繰り出す六ノ型『填星』を繋ぎ合わせて攻撃した。


「神器限定解放!」


 最後にいっちゃんの神器の限定解放による超パワーがゲシュタルトに炸裂する。建物の瓦礫が意味を為さないほど後ろに吹っ飛んだ。


「多少手応えがあって欲しいね」


「こんなんで倒せるなら王とは名乗らんだろ。むしろあいつを怒らせたまである」


 予想は的中した。少し離れたところから瓦礫が宙を舞いそこからゲシュタルトが出てきた。与えた傷もすでに塞がっていた。


「多少は効いたぞ」


 本当に多少効いたのかわからん。かなりピンピンしている。


「少しだけ褒めてやる。これを抜かせた人間はお前たちで2人目だ」


 ゲシュタルトの横から黒い円が現れ、そこから一本の剣が出てきた。


「拓人、あれやばいよ。なんて言えばわからないけど人の世界にあってはいけないものだ」


 だろうな。

 あれは神器の性能を遥かに超えている。性能だけじゃない。格が違う。俺の本能があれに近づいてはいけないと警告している。自然と息も荒くなる。

 どうする。どうすればいい。神器は壊れないから突っ込んでも大丈夫だが、体があの剣の威力に耐えうるのか。

 気がつけば俺はゲシュタルト目掛けて剣を振りかざした。いっちゃんが静止したのを無視していた。


「神器限定解放!」


 剣同士がぶつかった際にベルヴェルクを限定解放した。至近距離ならばと思った。しかしそれは無意味で、無謀で、下手をすれば死を意味した。

 ゲシュタルトに向けて放たれた魔力砲は全て跳ね返され、ゼロ距離でまともにベルヴェルクの攻撃を受けた。

 すぐに駆け寄ってくれたいっちゃんが回復魔法で癒してくれなければ完全に気絶していた。


「やはりその剣。土神レイヤにまつわるものか。ならば我の剣とは相性が悪いな」


「なん……だと?」


「我が剣の銘は『地母神剣テラマーテル』。土神レイヤが自らの魔力を糧とし、月神ディアナに造らせた神具。さらに悪神アングラによりその威力と能力値を数段上げている。お前の剣のようにレイヤにまつわるものならば無条件で無効化か、反射できる。他にも効果は多数あるがな」


 最悪だ。

 数少ない大技で大ダメージを期待していたのに。

 剣はまだ他にもある。昔使っていたオロチの剣。しばらく使っていないがマスター・スミスである朝比奈凛さんの元で研ぎ直してもらったが、流石に心許ない。その他にも念の為と思い何本か買っておいたがオロチの剣よりさらにランクが低い。現状限定解放さえしなければとりあえずは何とかなる。

 実際剣同士がぶつかっただけでは何も起きていない。あくまで限定解放によるもののみだ。


「そういや神具って言ってたな。何かわかるか?」


「いや、初耳だけど。察するに神器の更にランクが上のものだよきっと。人の手で作られたのが神器で、神の手で作られたのが神具と呼ぶんじゃないかな」


「ほんと嫌になる」


「これは僕の予想だけど、おそらく土神レイヤの関係者、あるいは南の大陸にいる星の属性『万象の大精霊ベルグローテ』の関係者だと思う」


「土神の神具を悪魔が勝手に使える訳がないよな」


 回復が済み立ち上がれるようになった。回復中だというのに襲ってこないのは完全に舐められてるな。


「とにかく君は限定解放は使わないこと。あと剣というより使い魔を駆使した方がいい。近距離では不利すぎる」


「わかってる。じゃあ作戦を変更しよう。いっちゃん前衛で、俺が後衛」


「了解」


「話が済んだようだな」


 ベルヴェルクを鞘に収めた。

 そして雷炎弓オルレウスを取り出して、メインの使い魔を魔法が使えるラウラにする。

 いっちゃんの杖は仕込み杖だ。剣を抜きゲシュタルトに攻撃する。杖の部分は宙に浮かせ攻撃させる。

 杖の銘は『自律型魔法杖オーロッド』。使用者の意思を読み的確に動きサポートしてくれる。現代風で言うならAIが搭載された杖だ。さらに魔法の威力を上げてくれる。900年物の素材を使った超高性能かつ高級な大型の杖だ。ちなみにそこに仕込まれている剣も一級品である。

 いっちゃんが使う流派は『重剣』という。3つの巌型(いわおのかた)と3つの柔型(やわらのかた)がある。一撃に重きを置く巌型とさらに進化させ、一撃に重さとしなやかさと緻密な魔力コントロールを加えることで攻撃範囲を倍にする柔型が存在する。

 2つの型を自在に繰り出し対抗する。いっちゃんは神器による超パワーのおかげか互角に張り合っている。

 俺はオルレウスの矢にカグツチの一部を付与し、矢を自在に操る。いっちゃんの邪魔をせず、確実にゲシュタルトの嫌がることを徹底した。


「これはこれで楽しいものだな。飽きなくて済む。

 だがな――」


 ゲシュタルトの剣が紫色に光出した。そして空を斬るように剣を振るった。紫の光を放った。

 土煙をあげ辺りがよく見えない。数メートル先にはいっちゃんがいる。自身の周りを固めいつでも受けれられるようにしている。ゲシュタルトも少し離れた場所にいる。何がしたかったのかわからない。ただの目潰しにしては雑だ。

 ほんの一瞬考え事をしていた。奴の狙いは何なのか。その一瞬でゲシュタルトは俺の目の前に現れて剣を横に振った。反射で背中を反りその場で一回転した。瞬時に弓から剣に持ち替えて一ノ型『六連星』を繰り出す。


「貴様は本当に戦闘センスが抜群だな! あの体勢から瞬時に切り替えて攻撃に転ずるとはな! だが、忘れていないか。この剣は土神の神具だということを!」


 土煙が命令を受けたように集まり無数の圧縮弾になった。それが俺との距離30センチもない所に囲むように生成された。考える暇もなく圧縮弾の餌食になった。いっちゃんも同じように倒れている。


「大地由来ならばなんでも無制限に操れるのだ。ただの目眩しもこの剣にかかれば回避不可能な攻撃の完成だ」


 ゲシュタルトは倒れている俺を蹴飛ばし、いっちゃんの上に転がる。


「ふむ……」


 無様に重なり転がる俺たちに向かって踏みつけた。


「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 とんでもない圧力をかけられて踏まれる。地球上の重力が一点に集中しているような圧力。このままだと圧死してしまう。


「ヴォ…………イド……。頼む…………!」


 時空の羅刹天ヴォイドの能力、空間転移を使いその場から抜けられた。転移した場所は空。おそらく空にいた鳥と入れ替わったのだろう。鳥には悪いが何とか一命を取り留めた。


「いっちゃん……」


「わかってる。回復魔法を……」


「ふぅ……」


 地面に到達するまでもう少しある。


「ヴォイド。お前の奥の手を使う」


「オイラの? いいのか?」


「あぁ。お前、あいつぶっ飛ばしたいだろ?」


「ぶっ飛ばしたい! オイラ、あいつに目にもの見せたい!」


「決まりだ。いっちゃんもガンガン攻めてくれよ」


「何やりたいかわからないけど攻めればいいんだね」


 ひとつの奥の手を使ったところで勝利に直結はしないだろう。

 だがやらねばならない。この星も向こうの世界も終わらせないために。



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