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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第6章 悪魔大戦線
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6-5.『復活』

 マスター・テイマーになってから数ヶ月経った。それにより今までは『パラディン』の勲章持ちの騎士団所属だったのが、ヴェストフォル王国名誉騎士となり、本格的に仕事が無くなった。ギルドの仕事も『パラディン』の勲章があるお陰で受けることができない。一応お金は入ってくるがやることと言えば、郊外に出る魔獣退治を自主的にやったり、マスター・テイマーとしての仕事のみで完全にフリーターに成り下がっている。やってくる挑戦者が多いため、今まで王都内に住んでいた家を離れ、郊外にログハウスを建てた。

 しかし変化もあった。俺はついにアイリさんにプロポーズをして結婚まで至ったのだが、彼女は魔法師団長としての仕事が多いため、基本王都内暮らしである。休みの日にこちらに来て短い夫婦生活を営んでいるのだ。


「最強のテイマーともあろう人が、朝からこんなだらけきった生活でいいのですか? 騎士団にいた時の方がしっかりしていたのに」


「多いけど毎日挑戦者は来るとこはないし、魔獣も狩りすぎてそんなに出ないし、やることは鍛錬くらいで毎日暇なんですよ」


「マスターというのも考えものですね。お友達の大賢者は忙しそうなのに」


「あそこはちょっと特別なんで。宇宙龍ほどではないけど、強い魔獣でも現れてくれたらそれなりに張り合いにはなるんですけどねぇ」


「そんな魔獣がポンと現れては世の中破滅しますよ。さぁ、起きてください。せっかく晴れているのに布団を干さないのはもったいない」


 平和だ。それだけ人が穏やかに暮らしている証拠でもある。戦争をしたいなんて考える輩は今の時代かなり少ない。特にヴェストフォル王国はマスターである俺や、今や諸外国にも名前が轟いている一番弟子、王国の『太陽』と呼ばれているアナスタシアがいる。そんな国に戦争を仕掛ける馬鹿はいない。良い土地と良い治世、良い人が集まれば国は安泰だ。

 今日も鳥の鳴き声が心地いい。ピクニック日和というのものだ。何事も起こらずこのまま年を取りたい。なんてことを考えていた。人と人の戦いは起きないが、魔獣との戦いはこの世界において絶対であり、小さい戦いなら常に起こっている。この日この瞬間に感じたものはこの平和な時間とはかけ離れたもので、歪であり、この世あらざる魔力だった。これを感じ取れた人は何人いるだろうか。水面下で何かが起こっている。実際隣にいるアイリさんは気づいていない。


「アイリさん、すぐ戻ってくる!」


「ちょっ、タクト!? どこに!?」


 この魔力が感じる方向はこの世界と向こうの世界が通じている扉がある所だ。

 向かう途中、友人であり、マスター・ソーサラーであるリチャード・ダリア、向こうの世界では一条力と呼ばれていた男と会った。


「拓人も気づいたんだね。そりゃそうか。これは間違いなく悪魔種の魔力だ」


「それも一線級のな。何が狙いだ」


「すぐにわかるさ。もう追いつくよ」


 見えてきたのは2体の悪魔。片方は何か黒く丸い物体を持っている。何かはわからないがこの魔力の正体はあれだ。あの丸い物体から放たれている。


「あれを破壊すればゲームセットだな」


「だね」


 殺気を感じ取った悪魔たちは分身した。これを斬り伏せ確実に本体へ近づく。


「取った!」


 本体を斬った……いや、この感触は分身だ。さっきまで確実に本体を目の前にしていた。つまりあの悪魔は斬られる寸前までは本体だった。


「騙すのは領分ってか。クソッ、出遅れた!」


 やはり悪魔たちの狙いはこちらと向こうを繋ぐ扉だ。この距離ならギリギリ間に合うか。


 扉が白く光り出し、向こうと繋がった。悪魔は黒く丸い物体を扉に投げ込んだ。その隙を狙い悪魔を完全に排除したが、あれがこいつらの狙いなら、何か向こうで起こるはず。後先考えずに扉に飛び込み地球に戻った。

 扉を抜けてすぐにあの物体は見つかった。空高く浮いているだけで何も起きていない。ナルカミを呼び出すも応答はなくあれに近づかない。


「この世界じゃ魔力はないんだった。これじゃこの剣もただの木剣だな」


「拓人、まずは戻るんだ。扉が閉まる。すぐに何か起こるわけじゃないだろうから作戦を立てよう」


 いっちゃんの言う通りだ。この世界じゃ何もできない。

 俺たちはダリア王国に戻り作戦会議をすることになった。と言ってもあれが何で、どんな力があるのかはさっぱりだが。


「悪魔たちが大切にしていたこと、元々向こうの世界にあれを送ることの2つしか分かってないわけだけど」


「向こうの世界に送った理由は安全だからだろうね。こっちはマスターやその他強者が多いから安全な場所で何かをしたかった。悪魔たちにとってあれはとても重要なものであることを考えるに、悪魔王の復活が目的なんじゃないのかなって思うんだ」


「まぁ、ここ近年起こっていることを考慮するとそうなるわな。レギオン大陸に行った時もそうだったけど、大量の悪魔たちが揃って悪魔王の復活を唱えてたし」


「安全な地にて悪魔王の復活を目論み、向こうの世界をそのまま制圧。それが終わればこちら側も攻めに来るだろうね」


「そうはさせない。向こうには両親とか友達とか大切な人がたくさんいる」


「けど、向こうには魔力がないから守ることもできない。単純だけど作戦としてはこちら側はすでに負けている。これを覆すには魔力を向こうにも流すことだけど、簡単じゃないだろうね」


「方法はあるのか?」


「僕たちは何もできないさ。けどこの状況を神々が見過ごすとは思えない。重い腰を上げて何かするのは間違いないけどいつになるかはわからない」


「なら今俺たちがやるべきをやろう。本当にあれが悪魔王なら封印が解けたということ。ならまた封印し直せばいい」


「封印具を作るにしても悪魔王を封印するためには僕だけじゃ無理だ。アランと朝比奈さんにも手伝ってもらわないと」


「え、俺は?」


「君はいつでも動けるように待ってくれればいい。戦闘特化した職業なんだから、こう言う工作は僕らの出番だ。もちろん僕も戦うよ」


 とりあえずすぐに何か起こることはないらしいから一度俺は家に戻った。そしてこの状態をアイリさんに伝えた。当然驚いたがアイリさん自身も何かあれば戦うと言ってくれた。


「いや、でもアイリさん。今は辞めた方が……」


「わかっています。何かあれば大賢者に頼むようにお願いするつもりです。戦える人は多い方がいいでしょう。アナスタシア様や三厳にも声をかけておきます」


 そう言ってアイリさんは家を出てすぐに王都に戻った。

 一方で、向こうの世界に残された黒く丸い物体はまだ何も起きていないが、通報を受けてヘリコプターで警察官が近づいた。回収に試みた瞬間だった。物体から触手のようなものが出てきて、ヘリコプターを捕まえてそのまま物体に飲み込まれていった。当然この様子は全国に配信され、多くの人が目撃した。さらにそれを受けて自衛隊も派遣され最小限の武装をして再度回収を試みた。また触手で飲み込まれそうになるも機関銃で抵抗したが虚しく二の舞になった。そして誰もが目を覆いたくなることが現実に起こった。物体はついに触手で街を攻撃した。建物は一瞬で破壊され、人も木も関係なく無慈悲に殺された。丸い物体は姿を変え、人の形へと変化した。


「ふむ、悪くない体だ。出来損ないの部下にしては良い依代を探したものだ。死んでしまったがな。まぁいい。手始めにこの世界を掌握しようではないか。あの時のようにな」


 これは向こうに送り込まれてから10日後の出来事である。



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