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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第6章 悪魔大戦線
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6-4.『VSマスター・テイマー②』

 なおも激しい攻防が続く。息をつく間もないほどの戦闘。目を1秒つむれば負けとなる殴り合い。どれほど研鑽を積んだとしても一般人には到達できないであろう領域。『戦い』ということを知らない世界で育った2人が繰り広げる戦いは異世界人ですら手出しはできない。

 いい加減隙を見せてもいいと思うが、さすがマスターだ。神器、使い魔、戦闘センス全てに隙がない。何よりもあの神器があまりにも硬すぎる。50連撃目でようやく破壊できるが、50連撃するまでに時間と体力を使う。どう考えてもこちら側が不利だ。


「次の50連で一撃を入れる。頼むぞ、皆んな!」


 正直通用するかは分からないが出し惜しみしている場合じゃない。今持てる全てをこの人にぶつけなければ必ず負ける。

 上げろ、もっと上げろ。速さも威力も全部だ。何かで劣るなら何かで上回らなければ道は開かない。俺が持っていて、この人に無いもの。


「来た! 皆んな合わせろ!」


 ベルヴェルクに使い魔たちの力が集約する。神器も限定解放済み。


「そげな攻撃、防御しゅればなんてこつなか!」


 一瞬を誤るな。1秒あればこの人は体勢を立て直せる。使う瞬間は剣が相手を触れる0.1秒前


「魔眼ニーズヘッグ!」


 使い魔で防御を固めていたが、全て弾け飛んだ。完全に丸腰状態。ベルヴェルクと触れる秒数は0.1もない。50連撃を超えているため神器を破壊。防御不可能となった勲さんは真っ向から会心の一撃を喰らった。これならば無傷とは行くまい。

 魔力が無限とは言うものの、一度にかなりの量を持っていかれ、体力も使うため乱発はできないが、十分な一撃を喰らわせた。あとは追撃して確実に勝ちを取りに行く!


「痛いなぁ、こぎゃん大怪我久しぶりじゃ」


 まだ話せるだけの余裕。早く仕留めなければ。

 地面に寝そべっている勲さんに攻撃を仕掛けた。しかし気づけば俺は空を見ていた。何が起こったかわからない。体全体が痺れる。


「ここまで追い詰められたんはこれで2人じゃ。誇れ双竜、20年ぶりん本気見しぇてやる」


 視界にいた勲さんが消えた。


「もう終いじゃ」


 右腕に集約されたカガリの炎。痺れて身動きが取れない中こんなの喰らえば腹に風穴が開く。

 容赦なく振り下ろされた右腕に当たることなく危機一髪ナルカミが引っ張ってくれた。痺れもナルカミに吸収され、何とか動ける。


「忠犬やのう、ナルカミは」


「拙がいる限りは死なせやしない」


 即死級の攻撃が容赦なく、そして絶え間なく続く。掠っただけでも大怪我を負い、受け止めれば間違いなく即死だ。恐ろしいことにこの攻撃は使い魔による威力ではなく、勲さん本人が繰り出しているという点。避け続けるしか選択肢がないこの状況はまさに最悪の展開だ。早くに仕留めるべきだった。

 もう一発さっきのをやれば倒せると思う。しかしあの人に同じ手が通用するとは思えない。何かしら対策はしてくるだろうし、むしろ今はどの攻撃よりも魔眼を警戒しているはずだ。


「あれ、やるしかないか」


 あれを使って倒せるなら楽なんだが、あの神器はそもそも防御系だ。貫けるのかどうか。


「主人、迷うくらいなら打てば良い。例え倒しきれなくとも致命傷だ。あとは我々が何とかしよう」


「カグツチが珍しくあやふやなこと言ってら。……まぁそだな。それくらい気楽に打つ方が良い。考え込んだって何も変わらない。ならあとは頼むぞ」


「腹決めたか、双竜?」


「本気には本気だ。勲さんにしか見せないからその体に焼き付けるんだな」


 息を整えてベルヴェルクを地面に突き刺してついにその言葉を発した。


「神器“解放”ーー!!」


 神器ベルヴェルクの解放は一生に一度しか打てない秘技。千年以上も溜め込んだ大地の魔力を一度に全て解放して攻撃する。解放の言葉を聞いたベルヴェルクは発射準備に入ったと同時に大地の魔力が体中に入り込んでくる。大地を揺らし、空気さえも反応するほどの魔力。神が張った結界すらも突き抜けそうな程この空間の魔力と空気が共鳴している。


「魔力増幅炉セット!」


 さらにナルカミとカグツチもこの一撃に加える。増幅炉は解放の一撃は上がらないが火と雷のみ威力が上がる。神器の一撃プラス増幅炉込みの一撃。喰らえばひとたまりもないが、


「これだと後ろに吹っ飛ぶだろうからアルクトス頼んだぞ」


「任せよ」


 風の逆噴射により自身を固定。これだけじゃダメだ。もっと魔力をこの一撃込めなければならない。


「風神ボレアス。有り余るその魔力全部俺に渡せ!」


 限界まで魔力を吸い取って全てこの一発に注ぐ。いつ暴発してもおかしくない。だがそれでいい。


「はっはー! これは本気で守らんっち死ぬな。逃げても余波で体は蒸発必至! 下手に迎撃したばいら一瞬であん世だ!」


 今ある魔力を魔装アルティメットに集約して修復。そして残りの魔力は全て防御に回す。


「頼むぞお前たち。ここで死ぬか生きるか。人生ん大1番じゃ!」


 向こうも準備はできたらしい。あとは剣を振り下ろすのみ。


「いっっっけぇぇぇぇーーーー!」


 放った瞬間走馬灯のように誰かの記憶が頭の中に流れた。そこにいたのは女性だ。荒廃した大地に木を植えている。何かを拝むようにまだ小さな苗木を撫でて何かを言っている。この神器の元となった紅葉の木の記憶だろうか。これまで見てきたかのように記憶が頭の中に溢れてくる。ある女性と沢山の妖精がその木を何かの象徴のように育てている。きっとこれは意味のあるものなのだろう。

 ついに放たれた一撃は勲さんに直撃した。地面は砕け、島全体が崩れ落ちた。神の結界に衝突するも、まるでガラスのごとく簡単に突き抜けて破壊した。海の上を通過した一撃だったが、触れることなく蒸発し、海に滝ができてしまった。反対側にあった陸を大幅に削り取り、最初からそこが無かったかのように海岸線を大爆発とともに消滅させた。この爆発と余波はレギオン大陸と4大陸中に広がり、天候すらも変えてしまった。近い街では突如突風が巻き起こり、屋根や家屋が吹き飛んだという。遠いところでは晴れていたというに急に雲が広がり雨が降り出したという。もはや天災とも呼べる一撃を放った。

 全ての力出し切り、島もなくなり、荒れ狂う海に落ちそうになるところをカグツチに助けられた。


「はぁはぁ、あの人は…….」


 神の接続は切れ、他の使い魔たちも完全に力を使い果たした。これ以上立たれているともう何もできない。水飛沫が晴れるとそこには海の上に立つ男がいる。水神竜の力で立っているのだろう。あれほどのものを真正面から受けてなお、神器こそボロボロだが人の形を保っている。震える腕を上げ指を差した。


「勝鬨をあげぇ、双竜。お前の勝ち……じゃ……」


 その言葉だけを残して勲さんは海へと沈んでいった。


「勝った……のか?」


「勝敗は決した。相羽拓人を勝者とし、次期マスター・テイマーとする」


 突如現れたのは紛れなく神だ。この神々しさ、威厳、品格全てが俺の体にビシビシ伝わる。疑うことなくテイマーの神ヴォルスだ。もっと概念的な存在と思っていたが、まさかの姿に驚いた。


「見事な戦いであった。褒美だ」


 体の傷、体力と魔力が全て回復した。そしてヴォルスは海に目をやり、2本の指をクンッと上にやると海に落ちていった勲さんが出てきた。


「20年もの間よくマスターでいた桐生勲」


「ははっ、久しぶりじゃのう。20年ぶりか」


「お前はこの世界において死ぬにはまだ惜しい。特別に生かしといてやる」


「相変わらずじゃの、まぁ生かしてもろうた命、大切に使わしてもらうわ」


 テイマーの神ヴォルスはすぐに消えた。


「神ってもっと概念的なものだと思ってました」


「この世界の神は実在して、高次元の世界に生きてる。ワシらん世界には滅多に干渉せんのずっと見よる。そげなことより仲間の見に来とうんやろ、はよしょっち行き」


「そうでした。ありがとうございます。この戦いは俺の中でも特別で成し遂げなければならないものでした。いつでも相手するので勲さんもいっぱい戦いましょう」


「ワシはもう年じゃ。40過ぎの老体にゃきつい」


「はは、まだまだ現役ですよ。それじゃ!」


 みんなが集まっているところに向かった。誰よりも早くこのことを報告したい。ついにこの日俺は数年間目標にし続けたマスター・テイマーとなった。天国で見ている親友もきっと成長を喜んでいると思う。親友が志半ばで途絶えたマスターの座を職は違えど成し遂げ、あの時生かされたという意味を見出せた。これで俺の目標は1つ終わりを迎えたがこれからは挑戦を受ける側なり、誰にも渡すことなく寿命を迎えることが次の目標だ。



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