表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第5章 悪魔行軍
73/101

5-10.『パラディン』

 3日後、俺は眠っている間の事の顛末を聞いた。素材は俺、いっちゃん、マスター・テイマーの3人で分配となった。かなり粉々ではあるが、鱗は硬質なためあの爆発にも耐えたそうだ。

 宇宙龍を討伐したことで俺の名声はさらに上がり、世界中で次代のマスター・テイマー候補に上がった。約20年マスターの座を守ってきた桐生勲さんがついに敗れるのかと世界中で噂になっている。


「拓人、君にこれを渡しておくよ。大陸の管理者からの通達だ」


 大陸の管理者とは、文字通り各大陸をスムーズにより良く運営するための存在。基本的には干渉はしてこないが余程のことを起こした場合は表立って出てくる。近年だと南の大陸で起きた出来事なんかがそうだ。


「いっちゃん紙ある?」


「あるけど、どうするのさ?」


「こんな体じゃ行けないだろ。なのに手紙じゃ目覚め次第来いってきてる。さすがにまだちゃんとは動けん。だから向こうに手紙送って……」


「それなら、ほい」


 いっちゃんの魔法のおかげで大体の怪我は治ってしまった。


「さすがに管理者の招集命令は僕でも無視できない」


「それなら眠っている間にやってくれよ……」


 これで行かざるを得なくなった。

 呼ばれた場所は4大陸の中心にある島群。そこには巨人アトラスの石化像がある。その核を素材に作られたのがいっちゃんの神器だ。今思うとこんな巨人が跋扈していた大昔はスケールが違うな。

 島には当然店もある。一般人も当然出入りできるだけでなく各ギルドもあり、冒険者もここに来ては依頼をやっている。本土では見ない珍しい素材が時々見つかるのでそれ目当てに訪れる人は少なくない。

 そして島の中心に立つ巨大な敷地と豪華な建物こそ俺たちが呼ばれた場所だ。手紙には弟子も同伴可と書いてあったのでアナスタシアを連れてきた。

 ここは4つの棟に分かれており俺たちは東棟に向かい使用人に案内されるままついて行った。


「ここにご主人様がいらっしゃいます。くれぐれも粗相のないように」


「ありがとうございます」


 扉を開けると椅子にずっしり座り、威厳のある人物が待ち構えていたことはなく、汗まみれになりながら腕立て伏せをしている半裸がそこにはいた。


「もう少し待ちたまえ! 今日のノルマがあと100回で終わる」


 いや、なげーよ。俺たちは半裸の男を眺めながら筋トレが終わるのを待った。


「実に申し訳ない。で、誰だ!?」


「ご主人様、双竜とその弟子アナスタシア様です」


「あぁ、君が双竜か、強そうな見た目じゃないか! 君も女性でありながら実に強そうだ。凛とした立ち姿とは裏腹に可憐さもある。どうだい、これから私と街でお茶でも……」


 アナスタシアは俺の後ろに隠れた。使用人は男の頭を持っていたトレイでぶん殴った。


「いつも申しておりますがその女癖は治した方がよろしいかと。他の管理者様に面目が立ちませんので」


「エレインは本当に冗談が通じんな。私はこの世でただ1人君しか愛していない」


「いつもおっしゃってますが私は使用人でありますので。ご主人様にはご主人様のお似合いのお方がおりますゆえ」


 その後もやり取りが続いた。何を見せられているのやら。


「いや〜申し遅れたね。私はクロエ・フルール・アロンダイト。名前に関しては聞かないでおくれ。私が生まれた時祖父が私を女だと勘違いしてな、そのまま役所に提出してしまったんだ」


 聞くな言うくせに自分で言うのか。なんかツッコミ要素多そうな人だな。


「双竜の相羽拓人です。こっちは俺の一番弟子のアナスタシア・ヴェストフォル」


「ふむ。君の活躍はこっちまで届いているよ。宇宙龍を倒したんだね。さすがとしか言えない。そしてここに呼んだのは他でもない。宇宙龍を倒した功績により君を『パラディン』に任命するためだ」


「『パラディン』ですか……。あの龍を倒したのは俺だけの力じゃありません。いっちゃ、マスター・ソーサラーとマスター・テイマーがいてこそです」


「確かにそれも大いにあるが『パラディン』に任命する理由はそこだけではない」


「確か追随を許さない最高火力の持ち主でしたっけ?」


「そうだ。『パラディン』になれる条件はテイマーであること、大陸を脅かす存在を撃ち倒すこと、追随を許さない最高火力を持っていること、そして勇気ある戦士だ」


 ちなみにソーサラーを『ロード』、スミスを『アルケミア』、メイカーを『プロフェッサー』と呼ぶ。


「俺を任命して何になるんです?」


「『パラディン』になるということはつまりこの世界を守護する存在。『ロード』も同じことだが、ヴェストフォルだけでなく世界中にある危機を止める。謂わば抑止力だ。名声というのは責任が伴う。『パラディン』の名声を使いあらゆることに対して抑止を行い戦を止める。今はそういう立ち位置なのが『パラディン』や他の職業の役割だ。私が生まれるもっと前は違ったらしいがな」


「規模がデカすぎるんですが。俺はそこまで手を広げられるほど器用じゃないですよ」


「知っている。たった1人だとあのマスター・テイマーでも無理だろう。しかし『パラディン』は信用の意味でも使える。名を出すだけで相手はどんなに偉かろうとしたがなければならないし、反論は許されない」


「その国の政治に関われと?」


「いや、『パラディン』が動かせるのはその国の軍事のみだ。だが軍事を動かせれば戦は起きない。『パラディン』とは世の中を平和にするためのものだ。我々も戦争なんてものは見たくない。昔は管理者に仕える優秀な騎士に対して送っていたものだが、時代の変化とインフレにより身内だけでは守るものも守れないとされて、条件を満たしたたった1人に与えることになったんだ」


「ならマスター・テイマーがお似合いでしょう?」


「彼にも以前にも声をかけたのだがそもそも来ることすらなかった。やっとの思いで見つけ出し、最速で手紙を送ったというのに」


 あの人世界中を旅してるって言ってたな。


「君は双竜として確立してるし『パラディン』になればさらに名声は上がる。今以上に顔がきくだろう」


 おそらく悩んでも無駄なんだろう。来た時点でもうこの話は終わっていたんだと思う。


「で、何をすればいいですか?」


「式典に参加するだけでいい。そこで私から『パラディン』の称号を授与する。他に聞きたいことは?」


「なぜ弟子を一緒に呼ぶようにしたのかくらいですね」


「未来の『パラディン』候補だからだ。ちゃんと見ておかねばな。噂通り、実際強そうだ。王国の太陽と呼ばれているそうだね」


「実際太陽神の巫女ですからね」


「太陽神ソールの加護を受けられるなんて滅多なことじゃない。そして極めて強力だ」


「素の殴り合いなら俺やマスター・テイマーよりも強いですからね」


「おそらくいずれ君よりも強くなり『パラディン』になることだろう。そのために連れて来させた」


「なるほど。話戻しますけど、いつ式典は始まるんですか?」


「エレイン」


「正午に始まり、夕方には終わります。参加者には各国の代表者が参列し、当然全ての管理者が一斉に集うことになります」


「正午ってもうそろこうじゃん。早く案内してくれ」


「はい、その前に正装に着替えてもらいます。これも伝統ですので悪しからず」


 正装とやらにさっさと着替えて式典会場に向かった。


「やぁ、遅かったね」


 そこにいたのはいっちゃん。


「なんでいんの?」


「そりゃ僕も世界の脅威を倒したからね。『ロード』になったんだ」


「逆にまだ『ロード』じゃなかったんだ」


「今までそれほど世界の脅威とは出くわしてないからね」


「あんなのが頻繁に起こってたまるかって話だよな。じゃあさっさと行こうぜ」


「そうだね。僕も早く終わらせて休みたいよ」


 足並みを揃えて会場の中へ。各国のお偉いさん、もちろんうちのところの王様も来ている。


「これより叙勲の儀を取り行う。両名は前へ」


 元来騎士に与えた勲章ゆえ、儀式もそっちよりだった。

 胸に光輝く勲章をもらい、その日はこれでお開きとなった。


「師匠おめでとうございます。弟子である私も光栄の極みでございます」


「一般人の俺がなれたんだ。太陽の巫女ならいつかなれるよ」


「私にはまだまだ重い勲章です。でもいつかそれに見合うように頑張ります。なので、帰ったら早速手合わせ願います」


「帰ったらな」


 これでまたいつもの日常が戻る。だが忘れることなどない。マスターの座をめぐる戦い。これだけは絶対に譲れない。それだけの力をつけてきた。待っていろ、マスター・テイマー桐生勲。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ