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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第5章 悪魔行軍
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5-9.『マスター・テイマー』

博多弁は自力では無理なので変換するサイト使いました

 動き始め、それはもっと隙が露わになる瞬間。最初から全力でぶっ放す!


「風神ボレアスと接続開始! 神器限定解放!」


 神器の短剣に使い魔を宿らせ、魔力増幅炉を作り放った。その一撃はせいぜい龍を少しばかり後ろに下がらせることしか出来なかった。小さな体で巨体を相手取るも龍にとっては針で刺された程度だった。

 テールで思いっきり弾かれ、そのまま突進してくる。これを防ぎ切らなければ後ろの王都は確実に粉々だ。


「やらせるかあぁぁぁ!」


 瞬時に空に上がり、降下して剣を龍の額に串刺した。刃は届かなかったものの勢いで顔が地面に着き、突進の勢いを殺した。

 たった数分の攻防でこれだけの体力を使うとは。恐れ入るよ。

 なおも続く攻防。たった1つのミスが死に繋がり王都の破壊を意味する。戦いの最中研ぎ澄まされていく感覚。もはやそれはスポーツ選手で言うところのゾーン状態だ。体は間違いなく疲弊している。だがそれでも攻撃は止められない。コツも掴めてきた。確実に敵を消耗させ倒す。魔力に限って言えばこちらに分がある。

 しかしゾーン状態は長くは続かなかった。戦いの中で気づかなかった地面の凹凸。そこにうっかり足を引っ掛けてしまったのだ。体勢が崩れたことで集中が切れ我にかえった時には遅かった。


――あぁ、俺死ぬんだ……


 死を覚悟した。龍の顎が自身を襲う。


「全く、君に死なれては困るんだよ!」


 突如横から人が割り込んできた。そして龍の顎から俺を守っている。


「いっちゃん……」


「あぁ、そうだよ。マスター・ソーサラーのリチャード・ダリアで、一条力だ」


「なんでここに」


「何でってこんな怪物、君1人じゃ手に負えないだろ!? なによりも、放っておいたら大陸まで全滅だ。そんなことより、早くこいつ……吹っ飛ばしてくんないかな……!?」


 はっと意識が完全に戻り、神器の限定解放で龍を少し吹き飛ばした。


「ごめん。理解が追いつかなくて」


「いいよ、別に。とりあえず僕らはこいつの足止めだ」


「足止めじゃだめだ! ここで倒さないと」


「知っているさ。強力な助っ人も呼んである。その人が来るまでの時間稼ぎだ。3人揃った時、僕たちはあいつに勝つよ!」


「いっちゃんがそう言うならそうなんだよな。了解!」


 強敵を前にして戦う俺たち。まともに共闘はしたことはないがそれでも長年の付き合いが功を制したのか何も言わずとも息はぴったりだ。


「来たよ! 拓人、一旦離れて!」


 空から飛来する人影。それはただのパンチで顔を地面につけさせた。


「おおおい、大賢者! こいつがそん怪物か!?」


「そうだよ、いさおさん! 僕たちでこいつを倒す!」


 勲さんと呼ばれる男は俺たちのそばにやってきた。


「双竜のあんちゃん、久しぶりばいね」


 あぁ思い出した。このよれよれでいかにも浮浪者のような服装、アイリさんと行った南の国のテーマパークでいた人だ。


「彼の名前は桐生勲。現マスター・テイマーだ」


「この人が……マスター・テイマー」


「どげんした? そげん見つめて」


「拓人はマスター・テイマーになりたいそうですよ。自己紹介はこのくらいにして来ますよ」


 突進してくる龍をまたしても防御するいっちゃん。


「こいつば倒せばなんぼばってん話たる。集中せんねちゃ、双竜」


「はい!」


「魔装アルティメット、神器解放!」


 勲さんにはめられた指輪が光、彼自身に特撮ヒーローばりのスーツが換装された。


「カッケェ」


「見惚れるんは後にせんね。行くぞ!」


「はい!」


 俺と勲さんがアタッカー、いっちゃんがサポートという最強パーティだ。勲さんの攻撃はド派手で一発一発の威力が凄まじい。そこにいっちゃんのサポートが入るとその威力は言うに及ばずさっきまで暴れていた龍が防戦一方だ。しかし、


「思ったよりダメージが少ない。やはり鱗が硬すぎる」


「そりゃ宇宙から来たんだろ? 無重力かつ空気もない。隕石だらけの宇宙に暮らすなら外皮はとんでもなく硬いだろうよ」


「なんか手はなかんか、双竜?」


「俺ですか? あればもうやってますよ」


「来るよ!」


 このままではただ体力と魔力を消耗していくだけだ。俺やいっちゃんは無限に魔力はあるが勲さんは有限。早いこと勝負をつけなければこちらが不利だ。


「何秒稼げば奴の動きば止めれる?」


「どういうことですか?」


「埒の開かんからまずは足ば狙う。次は片翼、動けのーなったところにっちどめば刺す。動けのーなったっちしても奴は暴れる。そいばなん秒抑えるこつのできればに倒せる?」


「10秒あれば」


「世界最速ん双竜のそげんかかるんか?」


 ニタっと笑う勲さん。これは煽られてるな。


「じゃあ5秒で」


「大賢者聞こえとったな? 今から全力で叩くからフォローしとってくれ!」


「待って、待って! どう倒すのさ。簡単に倒せるなら苦労はないって!」


「君たち、いつまで話するの!?」


 あの龍からの攻撃を避けつつ作戦会議は無理がありすぎる。それに倒し方すら分からないのに5秒で終わらせろっていうのは無理だ。


「双竜、奴ん足ば落せ。そいの作戦開始ん合図だ」


「わかりました」


 くそ、どうすればいいんだ。あいつを落とすためにはあの硬い鱗を破壊して直接体にダメージを与えなければならない。


 考えろ……。時間はそれほどない。それでも今は考えるしかない。いっちゃんと勲さんが足止めしてくれてるおかげで俺は今、2人ほど戦ってない。余裕はある。考えろ……。

 鱗は硬い。俺の神器の限定解放ですらまともに傷はつけられない。なら鱗ない場所、つまり腹の部分は……。いっちゃんがすでに攻撃している。だが確実に傷を負わせてる。つまり鱗のない場所を狙うのがベスト。だが、いっちゃんが狙いすぎてかなり警戒している。


「どわっ!」


 前線で戦っていた。勲さんがはたき落とされた。


「まだ始まらんけんんか、双竜?」


「簡単に倒し方考えつくなら今頃人類は宇宙の龍なんかに怯えませんよ」


「そいはそーか」


「2人とも見たことないモーションだよ。気をつけて」


 激しい攻防から一変。龍は突然大人しくなった。しかし地面から突如皮膚の爛れた人間、心なき魔獣、死霊が現れた。


「ゾンビのごたぁなんの出てきよったの」


「多分だけどこの土地で死んで魂となり、それを呼び起こしたとかじゃないの?」


「だいたい合ってると思うよ。あの龍の本来の力はネクロマンシー。記録がないということはおそらくこの星に降り立って初めて使ったんだろうね。そして、この死霊たちはおそよA級並みの力がある。正確にはあの龍によって引き上げられている」


 数がとんでもなく多い。しかも倒してもすぐ復活するし、いっちゃんの対死霊の魔法を付与して消滅させてもまた地面から次々と出てくる。


「おいおい、こいつら相手しなのら、暴れる龍ば相手するんは手におえなか!」


「気張ってよ、勲さん! 勝機は絶対にある!」


 そうだ、勝機はある。柔らかいところなら確実に傷を負わされる。

 柔らかいところは他には……。足の裏とかは……、どうやって攻撃する。飛んでいる時か? 手ではあるが、さっきから飛ぶ気配がない。ネクロマンシーを使っている時は飛ばないのかもしれない。

 他には……口の中は。どうやって攻撃する。ブレス攻撃をする瞬間。タイミングをミスれば即死だ。だが今の状況なら口の中に最大出力の攻撃を当てられれば大ダメージを与えれる。しかしあと一歩足りない気がする。

 口の中に攻撃したとしてどうすれば落とし切れる。口の中……、くちの中……。


「あぁ、そうか。体内に直接攻撃すれば良い」


 体内に俺が入るか? いや、入ったら即死だ。おそらく口を通れば食道があって、胃がある。となればあの巨体の酸性の体液を浴びれば即死なのは間違いない。ということは生身の人ではダメだ。溶けないものか、口に入ったとしても壊れないものに限る。壊れないもの……。


「あるじゃないか。俺の手に」


 あとはどう体内に入れる手段。手で投げるか? 流石に速度的に胃まで達するとは思えない。勲さんならどうだ。あのスーツに身を纏っているなら……無理だ。あれは神器。ということは所有権が俺にある神器を持つことができない。いっちゃんも同様だ。俺が投げるとして勢いもあってちゃんと真っ直ぐに飛ばす方法は……


「作戦は決まった。あとは……」


 2人に近づき作戦を伝えた。


「おっけ。それで行こう。まず僕が動きを止めるからあとは頼んだよ」


「じゃ、作戦開始だ」


「神器解放」


 いっちゃんの神器の解放は超人的パワーと石化。石化には条件がある。1つは物体であること。死霊はほぼ霊体なため効かない。2つ目は自分より実力が上な相手には効かない。しかし動きを少しの間止めることならできる。当然あの龍はいっちゃんより上。石化は発動しないが動きを止めた。


「頼んだ、ガシャドクロ」


 何でも切ることができる使い魔ガシャドクロ。さっきはあの鱗は切れなかった。今はいっちゃんの補助魔法をてんこ盛りにして、ありったけの無尽蔵の魔力を全部込める! 腹の底から叫びながら力を込めた。次第に鱗に切れ込みが入り、ついに片足を切断することに成功した。無限の魔力の供給が追いつかないほど魔力を込めてやっと片足を奪った。まだ終わらない。ここから5秒後に全てを終わらせなければ俺たちは負ける。


「次は俺ん番だ。カガリ! ヤマト! 全力じゃあ!」


 勲さんから溢れてくる強大な魔力。火と雷が合わさった攻撃だ。


「あれは……」


「四神竜の炎神竜カガリと雷神竜ヤマト。当方が使う火とナルカミが使う雷は含めて、全ての火と雷を扱う魔獣の上位互換とも言える存在。あれを上回るのは星の属性のみだ」


 カグツチとナルカミよりも上。あれがマスター・テイマーたる所以か。

 勲さんの一撃は片翼を奪った。しかし勲さんはスーツ状態を保てず元の姿に戻ってしまった。

 足は削がれ、飛ぶ翼はない。完全に動きは封じた。あとは俺だ。


「アイリさん、使わせてもらいます」


 戦う前にもらった弓の武器、雷炎弓オルレウス。弦を弾くと矢が装填される。しかし今回の矢は俺の神器ベルヴェルク。まさかこんなところで弓の技術が生かされるとは。


「行っっっけえええぇぇぇ!」


 神器の短剣の輪を作り魔力増幅炉に神器を通した。神器に秘められた魔力は何十倍にも膨れ上がれ、一直線に龍の体内へと入っていった。


「終わりだ。神器限定解放」


 体内で大爆発を起こした神器の攻撃は体内では収まらず体を破壊した。


「戻ってこい、ベルヴェルク」


 神器は傷ひとつ付かず俺の手元に戻ってきた。手に戻った瞬間俺は力が抜けて地面に倒れた。


「一件落着だね、拓人」


「あぁ、そうだな。勲さんは?」


「あの人は倒れてる。最後に魔力使い切ってもう立たないよ」


「そっか。すげーよあの人は」


 俺はいっちゃんのサポートと星の属性であるアルクトスの力を使ってやっと片足だった。けどあの人は自力だけで片翼をもいだ。流石だ。

 でも考えないでおこう。今は勝利に浸りたい。これでやっと全ての一件が決着した。ファルチェ王国から続いて、悪魔の国と宇宙の龍。これ以上続いたらもう動けない。

 あとはこの荒れ果てた大地をどうするかだ。木々は折れて、近くの街や村は壊滅。死者はどうやら無さそうだ。王都は守られた。損害はあるが最小限の被害と言えよう。俺は動けない体なので、いっちゃんの魔法で運んでもらったが、途中寝てしまった。そして目が覚めた時にはすでに3日経過していた。



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