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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第5章 悪魔行軍
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5-7.『悪魔の世界』

「で、どういうことだ」


「そのままの意味だ。オイラを外の世界へ連れてってくれ」


「それができればとっくにやってる。俺は今この世界に来たんだ。むしろ出口を教えてほしいくらいだ」


「むむっ、そうか。ならお前も外に行きたいのだな。ん〜、とりあえずあいつの所に行こう。あいつも人間だし何か知ってるかも」


「ここに人間いんだな。ならそいつに聞けよ」


「聞いたさ。でもオイラの力じゃ無理って。人間と共になら出れる可能性はあるらしい」


「テイムされてたら出られるわけか……。使い魔にするかどうかは置いておいて、まずはその人間の所に案内してくれ。まずはそこからだ」


「使い魔にしてくれないのか?」


「お前次第だ」


「わかった。ならこっち来い。というかお前見えるのかこんな真っ暗な洞窟」


「魔力を飛ばして感知してる」


「ん〜それじゃ着くのが遅くなる」


 そういうと悪魔は俺に触れ力の一端を使った。


「目が見える。お前暗視の力でもあるのか?」


「んにゃ、オイラは空間の支配をできる……って言ってもちょっとだけだけど。あと時間も操れるぞ。ちょっとだけだけど」


 意外と有能なやつらしい。


「まっ、助かった。これで行こう、早くそいつの所に」


「あいあいさ」


 暗い洞窟を抜けるとそこは太陽もない、月もない、風もない、草木もない、ただ荒れ果てた場所だった。


「これが悪魔の世界……」


「昔はそれこそ普通の世界だったんだ。草も木も風もあったし、人間世界のような太陽と月はないけれど、それに代わったものはあったんだ。でも全て悪魔王のせいでこうなって、それから数千年はたったかな」


「お前、悪魔王のこと知ってるのか?」


「オイラも昔は悪魔王の手下。悪魔大元帥って呼ばれてた。序列1位 時空の羅刹天 ヴォイドって呼ばれてた」


「昔ってことは今は違うんだな」


「元々悪魔王はこの世界を豊かにするためにオイラたちを集めた。そしてそれが成し遂げられた。ある日、人間世界を収めようと動いたんだ。傀儡、奴隷、何でもありの世界、地獄を体現したような世界を人間界に作ろうと。オイラ含めて10人中4人は反対して、力をほとんど失い、死んだかオイラみたいにこの世界を彷徨ってるかのどっちか」


「そっか……。てか悪魔王はどうなったんだ? 復活ってことは何かしら封印されたんだよな?」


「オイラはこの世界での悪魔王は知ってるけど向こうで何をどこまでしてどうなったかは知らない。封印はされたのは確かだけど」


 おそらくマスター達が封印したのだろう。それが解け始めたと言うことは封印が不完全だったということ。厄介そうな敵だ。


「思ったけど、それ何年前の話だ?」


「1000年以上前だな。こっちは人間世界より時間の進みが半分だから人間からしたら2000年前だ」


「こっちは時間の進みが遅いのか」


 いい情報だ。


「着いたぞ。あそこだ」


 道の脇に一軒家がたたずむ。ちゃんとライトもついているから誰かはいるのだろう。


「おーい、人間連れてきた。お前に会いたいそうだ」


 しばらくして扉が開いた。出てきたのは中年くらいの男で、魔法使いのようなとんがり帽子をかぶっている。


「久しいね、人間が来るとは。まぁとりあえず中に入りなさい。訳があるのだろう?」


 言われるがまま家に入り、椅子に座った。


「客は久しぶりでね。お茶の淹れ方を忘れてしまったよ。まずかったら飲まなくてもいい」


「いえ、いただきます」


 飲むとほんとに不味かったがせっかく出してもらったので一気に飲み込んだ。


「で、あなたは何者ですか? ここにいるってことはただ者ではないですよね」


「そうだね。とりあえずヴォーダンと名乗っておくよ。ここに来たのは……もう忘れた。ものすごく前だ。何者と言われると、ちょっと力のあるテイマーだ」


 名前以外はわからないな。


「名乗ったなら俺からも名乗らせてもらいます。俺は……」


「アイバタクトだね。知っているよ」


「初対面ですよね?」


「初対面だが、君が来た時から知っているとも」


 ますます何者だ、この男は。


「この悪魔がこの世界からの脱出方法を知っていると言うから来たんですが、実際知ってますか?」


「あぁ、知っている。何回もヴォイドから出たいと申し出があったからね。でもヴォイド単体でも、今の君の実力でもあの男には勝てはしないさ」


「あなたはあいつを知ってるんですか?」


「あの男は現マスター・テイマーの1世代前のマスター。どこかしらの貴族であり、一族惨殺を行い、悪魔を完璧に行使できる唯一のマスター、セドリック・ブロワだ」


 ヴォーダンという男、どこまで知っているだ。この世界にいて俺のことやそのセドリックという者の名前も。


「で、セドリックは強いから勝てない。だから元の世界に戻すわけにはいかないってことですか?


「そうだね。せっかくの強者が生まれようとしているのにみすみす殺されるわけにもいかないからね」


「でも、あそこに生きている人たちを守らないといけない。だから元に戻してほしい」


「今すぐに戻って何ができる。まともに使い魔を使えないというのに。行っても死ぬだけだ」


 何も言い返せない。正義感だけで人を救えるはずがない。人を守るには力がいる。


「ならどうすればここから出れますか?」


「まずはその呪いを解こうか」


「それはあの神器をなんとかしないと……」


「これはたまたま私が編み出した方法なのだが、魔力を暴走寸前まで体内で働かせるとどうなると思う?」


「体内の魔力を……、話の流れだと呪いを解除できる、ですか?」


「あぁ、そうだ。まるで体内にある異物を取り除くような感じになる。原理は私にもわからないが。さらに多少ではあるが肉体も強化される」


「やり方は?」


「簡単だ。体内の魔力を感じ取り、頭の先から足の先まで血を送るようなイメージだ。最初は落ち着いた環境で、無理のない体勢でやるのを勧める」


 ふむ、難しいな。そもそも血の巡りすら感じることができん。


「で、オイラはどうすればいいんだ?」


「ヴォイドは見ているだけでいい。邪魔をしてはいけないよ」


「そんなんでいいのか?」


「君の役割はもう終わっているからね」


「はにゃ?」


 こうして俺のこの世界での生活が始まった。


 3日経ったがやはり魔力を他の循環のように働かせることはできずにいた。座禅を組み、深呼吸をして、心を落ち着かせてみたものの魔力が体内で動く素振りはない。


「君でもこれは難しいか」


「体内の魔力は感じ取れます。ですが血のように巡らすことはできません。やり方が違うのか、それとも……」


「君の体の中心はどこだ?」


「心臓か腹とかですかね?」


「うん、まずそこが違う。体の中心はヘソだ」


「ヘソ?」


「まだ赤ん坊が母親のお腹にいる時、どこから栄養を取り入れている?」


「へその緒……あぁ、そう言うことか」


「ヘソはただのくぼみではない。この方法においてもっとも重要な部分とも言えよう。ヘソを中心に魔力を循環させるのだ。呼吸は止めるな。常に呼吸を行い空気もしっかり取り入れろ」


「やってみます」


 深く、深く呼吸を行い、空気を取り入れる。そして魔力をヘソを中心に全身に行き届かせるイメージ。


「で、オイラはどうすればいい?」


「ヴォイドは何もしなくてもいい。強いて言うなら身の回りの世話をしてあげなさい」


「それだけ?」


「それだけだ」


 それから俺の修行は始まった。徐々にだが魔力の循環もできるようになるが、集中を切らすと止まってしまう。


「1つ聞きたいことがあります」


「なんだね?」


「あなたは戦況を見渡すことができる目はありますか?」


「なぜそんなこと聞く」


「俺がこうやっているうちも向こうでは悪魔と戦っている。つまり時間はそこまでないと思います。あなたは向こうの世界のことを知ってるのでしょう? なら何日間なら悪魔からの猛攻を持ち堪えられるのかを聞きたい」


「ふむ、なるほど。もっともな意見だ。そうだね、私の見立てだと……14日ほどだ」


「2週間。こっちの世界は時間の流れが半分だから4週間……。ありがとうございます。あと2週間でものにしてみせます。残りは戦いながら持続できるようにします」


「本気で言っているのか? この技術は簡単に出来るものではない。正直、この数日でコツを掴めたことに驚いているが完璧に仕上げるのは無理だ」


「いや、やります。じゃないと住む場所がなくなるんです」


「君は流浪人だ。住む場所なんて……」


「俺じゃなくても、アイリさんやアナスタシア、ヴェストフォルに住む人たちの住む場所が無くなるのはいやだ。俺は守る側の人間です。それを放棄して見捨てるのはできません」


「気概は認めるが、一筋縄ではないよ」


「分かってます」


 それからはヴァーダンさんにやり方を教えてもらいながら徐々にできようになってきた。まだ呪いを解くほどではないがゆっくりと魔力を体内で循環させられるようにもなった。後はもっと早く効率的に、そして維持できればいいのだが。


 こちらの世界での2週間が経過しようとしていた。つい先日までとは一線を画すほどの成長具合だ。そしてついに俺は呪いを解除できた。


「主人よ、無事か!?」


 解けた瞬間に出てきたのはカグツチだ。後からナルカミやラウラ、アルクトスも出てきた。


「君、アルクトスも使い魔にしているんだね」


「まぁ」


「やぁ、久しぶりだねアルクトス。随分と成長したようだ。前会った時はボレアスの後ろに隠れるほどの仔熊だったというのに」


「黙れ、余はお前のことなど知らぬ。誰かと間違えているのではないか?」


「ん〜まぁ、そう言うことにしておこう」


 何なんだこの2人の関係。知り合いか? それか以前テイムしたことあるとか。いや、風神の名前を出したからテイムしたとしても何年も、何百年も前の可能性もある。やはり不思議な人だ。


「はい、みんな注目。現状は理解しているか? してなくても後から言うが、今の俺はあの男に勝てない。だから後2週間、ここでちょっとでも強くなってあいつに挑む。そして今度こそ悪魔との戦いに終止符を打つ!」



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