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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第5章 悪魔行軍
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5-5.『万端乖離 アダマス・プルト』

 レイピアを駆使して巧みに俺の剣を受けるオーレ・ルゲイエ。眠気のせいで剣筋がブレブレだ。完璧に受け切られている。


「くっ……。ねむ……い」


 まだだ。ここで寝たら串刺しだ。耐え抜け。勝機を見逃すな。


「中々限界も限界。むしろよくここまで戦えていますね。あなた、本当に人間ですか?」


「人間以外に見えんのかよ」


「我々からしたらあなたはとうに人間を辞めている部類に入る。今この世では大賢者とマスター・テイマーぐらいと思っていましたが、あなたも大概です。作戦変更です」


「何がだ……!」


 チャンスを狙い、高速でルゲイエをきる。


「人間には食欲、性欲、睡眠欲の3つがある。性欲は無くても最悪生きてはいける。食欲は必須だが、睡眠欲は食欲をも超える欲求だ。例えば腹が減っても眠いなら寝る。次の日には何事もなかったように過ごす。睡眠こそ人間にとっての最大の弱点と私は考える」


 言っていることはよくわかる。今は眠くて眠くて倒れそうだ。気力だけで持ち堪えているものの時間の問題だろう。

 ダメだ、もう眠い。このまま寝て、次起きた時には元通り……


「そんなわけないだろう……!」


 俺は地面に頭をわざと打ちつけた。


「そんなことをしても眠気は覚めません。これは私の呪いなんですから。精々寝るまでの時間稼ぎにしかならない」


「あぁ、知っている。だから俺は戦わない」


「なんと?」


「オロチ、こいつとの戦いは任せた。俺は寝る」


 俺はガクッと地面に倒れて眠りに入った。


「ハッハッハ。所詮人間とはその程度よ。眠ってしまえば無防備そのもの。次起きた時はもうあの世です。さようなら、双竜」


 手をかける瞬間だった。瞬き以下の速さで何かが襲いかかり片腕を持っていった。


「マスターともあろう者が眠気などに負けよって」


「貴様、誰だ! 双竜ではないな!」


「お前と似たような存在よ。人に乗り移り操ることができる魔獣の類。そして魔獣は基本寝ることはない。魔力の温存のため寝ることはあっても敵の気配は常に察知しているものだ」


「双竜も持っていたのか。まぁいい。貴様みたいな下級魔獣なぞ葬ってやる」


「我を下級とほざくか! しかと聞け! 我が名は水神の天災ヤマタオロチ! お前の命ないと思え!」


「面白いですね。ですがその前に貴様の命が果てるのみ」


 オロチは俺の身体を自由自在に操れる。まるで人のように。そして双竜としての力、つまりカグツチとナルカミ、その他使い魔も完璧に使いこなせる。唯一使えないのが神器ベルヴェルクのみ。剣として使えるが神器としては使えない。しかしこの相手ならば神器の限定解放なんてものは必要ない。過信しすぎたルゲイエに対しとどめの一撃を食らわせた。


「マスター、望み通りこれで先に進めようぞ」


 オロチの憑依が消え去り、俺の意識が身体に戻った。


「あぁ、これで城に行ける。助かったオロチ」


 城の中は兵士たちの亡骸が物のように散らかっていた。無残な死に方をした者もいる。だが、1人1人見て回る余裕はない。屍を超え、爆発のあった場所まで走った。


「ようやく見つけたぜ。お前がファルチェの国王だな? 俺の目的は神器アダマス・プルトを手に入れること。あれの所有者はお前だと言うことは知っている。早く契約を解いて俺に渡せ」


「お前になど、やらん! あれはこの国が成立する前から代表者が守ってきた。そしてアダマス・プルトはただの物ではない! 1人の少年が命捧げて作った神聖なる神器。お前のような野蛮人に渡さんぞ!」


「おいおいおい。渡してくれたら兵は引くし、あんたは生き残れる。その条件を与えてやってんだぜ? それを無にするつもりかよ」


 廊下からでも聞こえる大きな声で張り上げるのはファルチェ国王。急ぎ部屋に入る。


「陛下!」


 グラム国王が傷だらけになりながら転がっている。天兵十二騎の人たちも満身創痍だ。


「おい、てえめ何もんだ?」


「ヴェストフォルの双竜、相羽拓人。お前こそ何者だ。そして何をしている。その手を離せ」


「お前が双竜か……。ということはルゲイエはやられたんだな。まぁあいつは弱い。お前なら来るとは思っていたが案外早かったな」


 ファルチェ王から手を離し何かしらの武器の能力を発動させた。何もないところから魔力でできたメリケンサックを出した。すでに戦闘態勢だ。


 先に動き確実に敵の首に刃を仕向けた。首をメリケンサックと同じく魔力の塊で防ぎ、応戦してきた。だが俺の目的はファルチェ王の安全。距離を取る時に瞬時に抱き抱えた。


「すまない。先に十二騎が落ちようとは……」


「彼らは彼らの任務を全うしました。王の命を守ること。誇るべき臣下たちです」


 俺はファルチェ王をおろし立ち上がった。


「まっ、見ていてくださいよ。双竜の実力ってやつを」


 ゆっくり歩み寄る。敵の目の前でぴたりと止まり、抜刀術で斬った。しかしまたしてもガードをされてしまい傷を負わすことができない。


 硬すぎる。悪魔に憑依されてる以上神器ではないはず。俺の神器を持ってしても破壊できない武器は神器に限られる。ならばこの男、なぜ神器を扱えるのだろうか。考えられる可能性は1つ。


「お前、人間か……?」


「やっと気づいたのか。遅かったな」


「人であるお前が、何で悪魔にに力を貸している。許されることじゃないぞ」


「はぁ〜。これだからいい子ちゃんはよぉ。別におかしなことはねぇよ。人にも善人と悪人がいる。俺はただ悪人の方が肌にあってたってだけだ」


「じゃあなぜお前は人の国を襲う。悪魔とともに」


「我が王のためだ。そのために俺たちは動いている」


 悪魔たちが歌っていたあれに関係することか? なんであれ、あいつを倒さないとこの国はやられる。


 電撃を走らせ加速度を上げるが全て神器によって防がれる。相手は俺が防がれた一瞬をついて攻撃してくる。徐々にダメージを蓄積してくる。


「ははは! 天下の双竜がたかが人間の俺に歯が立たないとはな」


「…….ぶっちゃけた話するとさ神器を限定解放すればお前なんて一発なんだよ」


「でもできない。お荷物があるからな」


「否定はしない。戦えない人間が戦いの場にいるのは邪魔だ」


「なら殺すか」


「俺はこれでも善人側なんだよ。逃がすって手もあるがお前の狙いはおそらくそこにある神器だ。俺が一瞬でもいなくなるのはまずいからな」


 もう人を殺すのはごめんだ。あんな思いはしたくはない。


「でも戦わない人を守らないと国が回らないだろ。この世界は戦えない人も必要なんだよ。この方たちはそこが戦場だ。俺たちの役目はこの方たちが考える理想の国を実現するための剣。そしてお前はその理想の国に不要な部外者だ」


「……つまらん。これだからこの世界は一度滅びた方がいい。我が王の言う通りだ。とっとと死ね!」


 剣とメリケンサックが激突する。どれだけ速く動けたとしても神器が自動で防ぐ以上攻め手がない。だが俺にダメージを与えているとはいえ少量に過ぎない。どちらも逆転を狙える一手がない。


 しかし敵はあろうことか攻撃をファルチェ王に向けた。間一髪で助け出したが次は気を失っているグラム王に狙いを定め攻撃した。


「守るものがいると動きが鈍いな、双竜!」


「……クソ、さすがに部が悪いか」


「我が手元に来い、万端乖離アダマス・プルト!」


 ファルチェ王が叫んだ。神器を手元に呼んだのだ。俺も敵も部屋に掲げられているアダマス・プルトを見た。しかしそれは何も変化せずただそこにあった。


「この神器は初代マスタースミスとその息子のそのもの。この土地を愛した2人が残していった護国の結晶。正しい者が使い、正しく使われるべきもの。双竜、一時的にそなたに預ける。あいつを倒してくれ」


 ファルチェ王の手には神器があった。つまりあれはレプリカ。


「わかりました。お借りします」


 一時俺の神器を収納の使い魔キャリアポートに入れた。そして王から渡された神器を手に立ち上がった。


 手に取った瞬間、神器から様々な想いが流れてきた。これは本当にただの武器ではない。この土地を、初代マスタースミスが眠るこの地を守ってほしいと言う想い、人の平和を願う想い、悪を斬り善を守る想いが強く流れてくる。そしてヘンリーという男の過去も。話で聞いていたものよりもひどいものだ。思わず涙が出てしまった。


「戦場で泣いてる暇なんてねぇぜ、双竜!」


 動きが止まっている俺に攻撃してくる敵に気付き、大鎌の刃で斬りつける。服がかすっただけだったがそれで何かを察知して距離をとった。


「その神器ヤベー代物だな。話で聞いている以上にな」


「かもな。だが手加減はできない。お前はここで倒す。最後だから名前くらいは聞いてやるよ」


「名前なんてとうの昔に捨てた。魂を悪魔に食われた時にな」


「そうか。じゃあ行くぞ、ここがお前の墓場だ」



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