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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-35.『太陽神獣フェネクス=ラー②』

 圧倒的パワーで押してくるフェネクス=ラー。対して圧倒的スピードで翻弄する俺との戦いは拮抗していた。だがこの勝負は魔獣対人間かもしれないが実際は違う。これは人間に乗り移った魔獣対人間。どんな高位の魔獣だろうと繊細な人間の身体を本人以上に扱えるわけがない。接近して近接戦闘になった時、フェネクス=ラーの優位は一気に落ちる。

 剣術での勝負は明白だ。このまま押せば勝てる。フェネクス=ラーも剣術で戦ったら負けることは分かっている。ここでこいつが取ってくる行動はただ1つ。魔力を使い俺を吹き飛ばして距離を取る。それこそが隙に他ならない。


「はぁぁ!」


 力を目一杯使い、カグツチ、サンフレイム、アルクトスの力を合わせて放った六連一刀流五ノ型『玉衝』。これは六連一刀流唯一の防御技。剣と剣を強く打ち付けて相手の手を痺れさせることができる。フェネクス=ラーの神器を落としたことに成功した。


「ホルアクティ!」


 彼女が以前テイムした飛輪無窮ホルアクティを使い高速で距離を取ろうと飛翔する。だが、その程度の速さで逃げ切れるはずがない。アルクトスの風の力とナルカミの力を使えば宙に浮き神速で移動ができる。

 フェネクス=ラーは俺と衝突する前に神器を手元に呼び寄せた。しかし間に合うはずもなく俺の蹴りをまともに受けた。


「ぐっっ……」


「まだやるか?」


「……そうだな。私とてプライドがある。この戦いは負けてはならぬ」


「だけどもうやめた方がいいぞ。お前は人間と同じようには動けない」


「知っている。そもそも魔獣が人間の身体を満足に動かせるはずがない。違う生き物なのだから。それでもそうするのは主人のため。そして我が主神の願いを叶えるため。やむを得ん」


 なんだ……。急にフェネクス=ラーが静かになった。


「太陽神()()()に接続開始」


 そういえばこいつはまだ神との接続をしていなかった。熱気、圧力、そして圧倒的神々しさ。アルクトスとは本質が違うようにも感じる。


「あぁ、我が主神よ。貴方を()()()とお呼びすることを許し給え」


「俺と同じ神との接続なのか? それとも神の格の違いか。何にせよ俺よりも深く神と一体化してる」


「お前では踏み込めぬ御業だ。太陽神使エンコ、力を貸しなさい」


 荒々しく燃える炎だ。フェネクス=ラーをより高い次元に押し出した。


「星の属性はただ神と接続するだけにあらず。より深く繋がることで神そのものに近づき、最後には神をこの身に降ろす。それすらも分からぬ未熟者に私を破ることはできない」


 つまり、今のフェネクス=ラーは俺よりも次の段階と言うことか。


「より深く……か」


 どうすれば良い……。


「余所見している暇はあるのか、双竜!」


 高威力の攻撃を受けるところだった。地面が熱で溶けている。あれを食らえばどうなることやら。


「双竜、海の中に沈むように神に意識を委ねろ」


「アルクトス……?」


「足を止めるな、死ぬぞ。動きながら聞け。神を想像できないなら余の姿を想像すれば良い。時間はかかるが確実にフェネクス=ラーと同じ次元に行くことができる」


「何でもっと早くに教えてくれないんだよ」


「聞かれなかったからだ」


 それだけかよ。


「まぁいいや。けど意識をお前に委ねながらこれを避け続けるのは流石に無理がないか?」


「ならばヤマタオロチに任せると良い。奴も人間に乗り移り操ることができるだろう? 逃げるくらいなら問題はない」


「そんな指名を受けたオロチさんは逃げる事はできるか?」


「容易いな、逃げることなぞ誰でもできよう。それにナルカミがいるのだ。当たる方が難しい」


「なら頼んだ」


 俺は俺のやることをやる。

 身体はオロチに任せて俺はアルクトスに意識を同調させた。アルクトスから流れる風の魔力は次第に形を成し人型へと変わった。


『この方こそ、風神ボレアス様だ。この方の姿を細部まで記憶し、想像する。そうすることでより一体化に近づく』


 頭の天辺から足のつま先までを見ていく。逆立った髪、額に第3の目、筋骨隆々の肉体、背中からは風の魔力で作られた翼、腕にも似たような小さな羽がある。足も鍛えられている。服は白い布を黄金の留め具で留められているだけの簡素なものだ。


『ふむ、アルクトスにはあれほど親切にしてやれと言ったのにのう。やれやれ、彼奴は昔から恥ずかしがり屋なのだ。許してやってくれ』


 誰の声だ? まさか風神ボレアスか?


『目の前には太陽神ソールの子か。中々に手強いがお前さんの実力であれば問題なく勝てる』


 あぁ、なら俺に早く……


『力を貸そう。ソールの子に負けるのは癪だからな。委ねると良い。身体も意識も全てをワシに寄り添え』


 そうすると意識は現実に戻ってきた。

 どうやら何とかオロチは仕事をやり切ったようだ。


「いつでも行ける。アルクトスやるぞ!」


「やるもやらぬも双竜次第だ。余はただ導くのみ」


「風神ボレアスに再接続」


 想像しろ、風神ボレアスを。

 海の中に沈むような感覚。深淵までたどり着いた時俺は新たな次元に入った。

 ボレアスと同じ翼、纏わりつく風、そして第3の目が発現した。


「すごい、前よりも魔力が溢れてくる」


「前を見ろ、双竜。何か見えないか」


「魔力の流れがわかる」


「第3の目の力だ。空間をより支配するボレアス様の力をお前も使える。そしてお前の速さが加わればもう攻撃に当たることはない」


「あぁ、だろうな」


 剣を納刀して一ノ型『六連星(抜刀術)』を繰り出した。その一振りはフェネクス=ラーの炎を消し去るほどだ。

 凄まじい剣戟についていくのでやっとのフェネクス=ラー。距離を取ろうとするもすぐに追いつく。さらに第3の目で魔力の流れが分かるから攻撃すら当たらない。

 一ノ型『六連星』を決める為に一度納刀する瞬間の隙を使いフェネクスは攻撃に転じた。その攻撃も抜刀術でいなし、六ノ型『填星(3段突き)』を放った。突きによって発生した風圧によってフェネクス=ラーは派手に後方に吹き飛ばされた。体勢を直してありったけの魔力を使い攻撃しようとする。


「1秒遅いぞ、フェネクス=ラー!」


 胸ぐらを掴み地面に叩きつけた。胸辺りに足を置き、そして剣をフェネクスの顔の真横に突き刺して身動きを取れない状態にした。


「チェックメイトだ。フェネクス=ラー」


「……あぁ、そのようだ」


「これで証明できただろ。俺の方が強い。そしてアナスタシア様の師はこれからもずっと俺だ」


「あぁ、認めよう。双竜、お前は強い。マスター・テイマーにいずれは追いつく存在だ」


「最強の魔獣にそう言われるのは光栄だな。そんなことよりお前は引っ込んでアナスタシア様を解放しろ」


「そのつもりだ」


 彼女の身体からフェネクス=ラーの気配が消えた。


「あっ、あの師匠……?」


「ん?」


「できれば離れていただきたいのですが……」


 そういえば今、とんでもない体勢だった。


「申し訳ございません、アナスタシア様! これは戦いの流れでつい」


 さっと避けつつ。全力の土下座をした。


「いっ、いえ。大丈夫です……多分。師匠は私に怪我をしないように戦ってくれていたのも知っています」


 騎士を目指していると言っても歴とした王女様だし下手に怪我さしたら王様から何言われるか。


「……師匠はいつまで私を様付けするのですか?」


「えっ?」


 いつまでって言われても身分が違うから一生なんだが。


「まぁ、ずっとですかね。あなたは王女で、俺はただの流れ者の騎士です」


「……」


 顔を合わせてくれない。ずっと背を向けて話してくる。


「で、では王女として命令します」


「はい」


「今後、私のことを様付けしてはなりません。そして敬語も不要です。師匠は師匠で私は弟子です。そこに遠慮や敬意は不要なので」


「えっと、絶対命令ですか?」


「はい、父上が何と言おうとも絶対です」


「わかりまし……じゃなくて、わかったよ、アナスタシア」


「よろしい。ではこれからもお願いしますね、師匠」


 何とも言えない感じだ。王女に向かってタメ語なんて。いずれは慣れるのだろうけど、慣れるまでは違和感だな。

 一件落着したのち、俺たちはヴェストフォル王国に帰還した。そのまま王様の所に行き報告した。


「ふむ、これで我が国に星の属性が2人。その1人が私の娘か。しかも2人は師弟関係。はっはっはっ! 情報量が多いな」


「そんなに嬉しいのですか、陛下? どことなくいつもより変ですよ」


「娘の成長が目まぐるしくて、父としてついて行くのがやっとなのだ。おかしくもなる」


 普通はならないと思う。


「我が国の軍事力は格段に上がったがここで問題がある。それは星の属性を2つ持つ者がいることで周辺諸国との均衡が崩れる可能性だ。しかしそれを全て向かい打つと数の暴力ではないが似たような状態になる」


「ですが、それは仕掛けてきた国が悪いのでは?」


「本来はな。弱い国同士の同情が発生する。端的に言うと『弱いものいじめ』だ」


「そうなりますかね?」


「可能性の1つだ。幼稚かもしれんが我が儘で傲慢な王もいるのは確かだ。お前たちに言いたいのはその力の使い方は常に意識しておくことだ。努努忘れるでないぞ」


「わかっています」


「父上がそう仰るならそうします」


「うむ。では2人ともゆっくり休むといい」


 やっとアナスタシアの教育がひと段落した。ここからはみっちりと鍛えていかなければならない。『太陽の騎士』にするために。



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