4-33.『太陽神剣』
瞬きにも満たない速さでベルを攻撃をする。反応すらできないベル。何が起こったのかわからない。目の前にいたはずだというのに気がつけば背後に回られて、さらに脇腹を斬られた。しかしベルは神器を限定解放をしていたお陰で軽症だ。
「タクト、本気でやりにくるなんて。神器使ってなかったら1発で倒れるよ」
「できれば1発で終わらせたかったんだけどね。アシハラノクニの帝からもらったローブ、さすがだよ」
やはり厄介だ。ならば、それ以上に斬りつける。さらに速度を上げていく。反応できないベルがついに神器を解放した。光に包まれ、傷が完治した。
「神器魔杖モノケロスは一定時間、無敵状態になれる。さらに!」
俺よりも遅いが瞬時に間を詰めて杖で攻撃する。ベルヴェルクで守ったがその振動は身体内部に刺さり吐血した。
「この状態で攻撃するとあらゆる防御を無効にもできる。タクトには悪いけど終わらせる!」
確かに厄介な神器だ。けれど、ベルと俺には根本的な違いがある。
速さに於いてこの世であの観客席にいるいっちゃんを除いて俺に右に出るものはいない!
俺よりも遅いということは攻撃は絶対に当たらない。ベルの言っていることが本当なら一定時間が経てば無敵期間は終わる。
「ベルには悪いけど終わらせるよ」
一ノ型『六連星(抜刀)』の構え。ちょうどアナスタシア様もいるし本物の2連撃剣術を見せる良い機会だ。
ベルの無敵期間が解けた瞬間に六連星を決め流れるように六ノ型『填星(3段突き)』を食らわせた。
「そこまでのようだね。2人ともよくやったよ」
いっちゃんとアナスタシア様が客席から降りてきた。
「見たところ本気は出してないようだったけど、ベルちゃんではまだまだ不足だったかな?」
「7割くらいかな。もう少し強くなってもらわないと本気は出せないよ」
「あれでも本気じゃないんだ……。割とショック受けるよ」
「拓人は本当に強くなったよ。折角だし拓人はお風呂でも浴びてきなよ。ベルちゃんは引き続き僕が与えたメニューを熟すこと」
「はい。大賢者様」
「じゃあお風呂借りるね」
俺の去り際にいっちゃんがアナスタシア様に何か言っているようだったが、構わず一服させてもらった。
風呂から出て、また神器の素材の話をした。南の大陸にある口頭伝承を含める太陽神の伝説を纏めてみた。
そこから見えてくるものは少ないが現在の地図を照らし合わせて太陽神の存在を匂わせる場所を3ヶ所ピックアップした。
「南の大陸には意外と太陽神の言い伝えが多い。絞るのは難しいけど、一晩で何とかなるもんだね」
「中心から全体に伝播していったんだろうな。その中心あたりにおそらく秘密がある。まずはそこに行って探るさ」
寝ているアナスタシア様を起こし一旦ヴェストフォル王国に戻り、王様に探索許可を貰いに行った。
「何せ我が娘のためだ。是が非でも探し出して来なさい」
娘の為なら甘いな、この王様は。と思いつつ、許可が降りたので1日空けてから出発することにした。
「で、アナスタシア様。その荷物は何ですか?」
「南の大陸に向かうので、野宿を想定して様々な物をお父様より渡されました」
本当に甘いな、あの王様は。
「そんなものは必要ありません。野宿なんてしませんし、食料も現地調達しますので。それにサバイバル用の物は一式持っているのでアナスタシア様は神器と必要最低限の物だけ持ってください」
そう言って不必要な物は全て置いていき、小さな鞄1つに収めて南の大陸に向かった。
ナルカミに乗って行くため、1日程度あれば目的地に着く。そうしているうちに第一目的地に着いたが、これがまぁど田舎だ。
聞き取りを行うもこれと言って目ぼしいものはなかった。よくある伝承ばかりだ。
第二目的地も同様で第三目的地の村に行くとそこは太陽神に舞いを捧げる儀式が行われることを知った。さらに子どもたちからは森の奥深くには大きな神殿もあると言う。
この神殿の在処は門外不出らしく本来は外部の人間には漏らしてはいけないものらしい。子どもだから口が軽くて助かった。これはいい結果になりそうだ。
森の中は人が通れそうな道はないので、空から神殿を探した。空から見るとすぐに場所がわかった。
「止まれ、ナルカミよ」
カグツチがナルカミを静止された。カグツチが神殿に向けて火を吹きかけると結界に阻まれた。
「ふむ、やはり。この結界、王女と同じ魔力を感じる」
「そうか? 俺には何も」
「火の属性を持つ当方だからこそ分かるものだ。王女ならこの結界を易々と通れるだろうが、主人なら木っ端微塵だろう」
「アルクトスの力を使ってもか?」
「太陽神をあまり舐めない方がいい。太陽神の力と比べたら風神など見劣る」
「そんなにやばいの?」
「それほど太陽神は偉大な神だ。その神使フェネクス=ラーは全魔獣の頂点というべき存在なのだ」
「入れる道はないか……」
「正規の道があると思います」
アナスタシア様がそう言う。太陽神の力を有するからわかるのかもしれない。
「どこにありますか?」
指を刺す方向に向けて降り立つ。アナスタシア様はナルカミから降りてすぐに結界の中に入った。
「私が通った所なら安全に入れます」
そう言うので恐る恐る手を伸ばしながら入った。スッと安全に入れた。
神殿の中はかなりに複雑そうだ。しかしアナスタシア様は何かに引っ張られるように迷いなく神殿内を歩く。俺もその後に続いた。
地下2階ほどだろうか。歩いた先には扉があった。アナスタシア様がその扉を開けた瞬間、3体の魔獣が襲いかかってきた。彼女の肩に触れ強引に後ろに引っ張り、そのまま3体の魔獣を蹴散らした。
「何者だ。ここを守護している魔獣だろうとアナスタシア様を傷付けるのなら容赦はしない」
「御子を傷付けるなどあり得ない。我々は貴様に牙を向けただけだ」
「そうか。ならいい。アナスタシア様が御子と知っているならここに来た理由も知っているな?」
「当然だ。この水晶が目的だろう?」
そう言うのは虎型の魔獣だ。他にも烏と鷹の魔獣もいる。
その魔獣らの背後には確かに水晶がある。上から太陽光の柱が降りていて神秘的だ。ここは神殿の中心でその頂上には光が入るように穴が空いているのだろう。
「分かっているなら話は早い。それをマスター・スミスのもとへ持っていき神器にしてもらう。異論は無いな」
「太陽神様より話は聞いてる。持っていくと良い」
これでやっと目的が達成できた。後は帰るだけだ。
「それじゃお暇させてもらうよ」
「待て、御子よ。あなたさえ良ければ我々を連れて行って欲しい」
「えっ……? 私のですか?」
「我々は何千年も前、地上にて太陽神様の守護をした魔獣。神々の対戦後に太陽神様のお力の一端を授かり
今日までここを守護してきた。そしてここに辿り着いた御子がいるなら力を貸し与えよという命を授かっている。必ずや御身を守ることを誓う」
アナスタシア様が俺の顔を見てきた。
「あなたは太陽神の力を持つ者です。太陽神に縁のある魔獣や武器は相性がとても良いのでテイムしてはどうですか? 最終的にはフェネクス=ラーのテイムですがこの魔獣たちを持っていても損はないかと」
「分かりました。では私と共に行きましょう」
『太陽神使 エンコ《火》、日輪の霊鳥 ヤタ《火》飛輪無窮 ホルアクティ《火》
→太陽神の力を一部だけ持つ。攻撃や撹乱可能なエンコ、偵察可能なヤタ、スピード特化のホルアクティ』
その日の内に帰路に着き、その足でマスター・スミスである朝比奈凛のもとに持っていった。
「お前が持ってきた紅葉の木よりもやばいな。こんな素材生きていても早々見ることなんてできねぇよ」
「数少ない太陽神にまつわる素材ですから。一級の神器にしてくださいね」
「こんな良い素材をどうしたら劣悪な神器にできるんだよ。まぁ明日までは待ってな。目ん玉飛び出る物作ってやる。王女様は明日までに神器の銘を考えてくださいな」
俺たちは素材を凛さんに預けた後、アナスタシア様を部屋まで送り、その日はすぐに寝た。
次の日の早朝には凛さんの工房に足を運び、神器が出来上がるのを待った。そして奥の扉から凛さんが出てきて風呂敷で包まれている神器を机の上に置いた。
「さて、お披露目だ」
風呂敷から出てきたのは煌々と照らす太陽の様にオレンジがかった刀身が細い剣だ。
「はっきり言っておく。性能だけなら条件さえ揃えば断トツで最強の神器だ。その条件は王女様が持っているから問題ない。逆に言うと王女様専用の神器。それがこれだ」
「なる……ほど。その条件はなんですか?」
「あぁ……? 太陽神の加護があることだ。ない人間がこの神器使ってもほんの少し強いだけの神器に過ぎない」
確かにアナスタシア様専用だ。今後未来に太陽神の加護を授かる人間が産まれない限り。
「さて、王女様。銘はもう決まりましたか?」
「はい。ですが師匠が許してくださるかどうか」
「いや、許可なんて必要ないですよ? 付けたい名前をつけていただければ」
「その……ベルヴェルクと名付けたいのです。私にはベルヴェルクかシラヌイしか神器を知りません。それに私は師匠の弟子ですから剣には同じ名前を付けたいのです」
「…………」
「おい、師匠のお前はどうするよ? 別に同じ名前でも構いはしないが、ある程度分けた方がいいのは確かだ。ベルヴェルクが2本だとどっちのそれか分かんなくなるからな」
「じゃあ……」
固唾を飲むアナスタシア様。ベルヴェルクに強い想いがあるのはわかった。ならば――
「ベルヴェルク・オルタナティブ。なんてどうですか? オルタナティブとは別のという意味です。なんで『別のベルヴェルク』です」
「オルタナティブ……。いいですね。師匠、ありがとうございます。それではこれからこの神器は『太陽神剣ベルヴェルク・オルタナティブ』です」
神器がアナスタシア様を認めた。新しい神器を腰に下げる彼女は本当に太陽の様で美しい姿だった。
『太陽神剣ベルヴェルク・オルタナティブ
限定解放
→天候が晴れもしくは晴天以外の時のみ発動できる。天候を強制的に晴れ状態にする。夜の場合、人工太陽を生成する。
解放:
→太陽神の加護を有しており、太陽が出ている間、身体全ての能力値が10倍まで跳ね上がる』
身体能力の10倍とは。
普段の私生活を数字にした場合1として、戦闘時は5とする。
神器を使用した場合身体能力は50になり、さらに太陽神の加護としての力も加算されるため太陽が出ていたら素でもとんでもない力を発揮できます。
拓人とアナスタシアをただのパンチで比べると神器を解放したアナスタシアの方が数倍強い。
ただし拓人は速すぎるのでパンチが当たるかどうか別。




