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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-32.『手がかり』

 あれから1ヶ月以上経った。王立図書館や王城にある本も読み漁ったが手掛かりは一向に手がかりが見つからない。

 いっそのこといっちゃん(大賢者)に頼んだ方が早いのかもしれない。ただ今回は自身の周りの事ゆえ親友とはいえ大賢者に手を借りるわけにはいかない。


「どうしようか……」


「師匠。ノルマ達成しました」


「では次の型をお教えします」


 現在、三ノ型『天輪(振り下げ)』までは何とか形になっている。当然まだまだ覚束ないが、成長速度が異常に早い。教えがいがある。

 昼休憩を終え、昼からはいつもよりも修行を一歩進めることにした。


「今日は魔獣をテイムしたいと思います。ただ簡単に捕まえられる魑魅(すだま)と呼ばれるものですが」


「力を何倍にも引き上げる魔獣ですね。それなら私でも何とかなりそうです」


「単体としては弱いですから。さて早速行きましょう」


 アナスタシア様にとって王都を出て初めての魔獣との戦い。狙う属性は勿論火属性と雷属性の2体の魑魅だ。


「いました。真っ赤なので火属性なはずです」


「剣を一振りすれば簡単にテイムできるのでやってみましょう。ゆっくり後ろから近づけばいけますよ」


「はい」


 音をなるべく立てずゆっくり近づくが気づいてしまいアナスタシア様と目があった。彼女は驚いて止まってしまった。あんな姿は攻撃してくださいと言っているようなものだ。

 怪我をさせるわけにもいかないので近づくが、どうやら杞憂だった。魑魅はアナスタシア様の周りをふよふよと浮かんでいる。


「し、師匠。これは……?」


「アナスタシア様は太陽神の加護があるので火属性の魔獣と親和性が高いのでしょう。そのまま手で触れてテイムしてみてはどうですか?」


「は、はい」


『陰火の魑魅 ウィル・オ・ウィスプ《火》B級

 →素の力は弱いが他の力との相乗効果で発揮する』


「初テイム、おめでとうございます」


「こんなのでいいのでしょうか?」


「次は雷属性の魑魅なのでそうはいかないかと。まぁ弱いので気を強く保てば大丈夫です」


 単体属性の魑魅は割とその辺にいる。雷属性もすぐに見つかり無事テイム完了し、一旦王都に戻った。


「アナスタシア様、これを」


 渡したのは俺が付けている耳飾りの模造品。


「本来はアシハラノクニにいる六連家当主の六連仁介さんの所で修行をして合格すればもらえるのですが今はこれを付けてください。ですがいつか行ってみてください。そうしたら正式に六連一刀流を名乗れます」


 耳飾りをつけて雷属性の魑魅のライコウを宿らせた。


「六連一刀流にとってライコウは本来引き出せないでいる人の奥底に眠る力を起こして、100%以上の動きを可能するためのものです。一度その状態で居合をしてみてください」


 言われた通りにやるとアナスタシア様はその変化に驚いた。


「こんなもので驚いてはいけません。これは六連一刀流の六ノ型ですがーー」


 彼女の前で六ノ型『填星(三段突き)』を見せた。


「瞬く間に3回の突きを放つ技です。この剣術の奥義で、この動きを可能にするのがライコウです。ではもう一体の魑魅も使いましょう。ですがその前に神器の使い方をお教えします」


 俺はそう言いつつ、最初の場所から離れて訓練場の端に行き、そこに神器ベルヴェルクを置いた。そしてすぐに戻った。


「ではいきます。来い、ベルヴェルク」


 そういうと俺の神器は手に吸い込まれるように宙に浮きながら戻ってきた。


「距離が近いとこのように戻ってきます。逆に……」


 俺は方向を確かめてから神器を王都の外に投擲をした。


「し、師匠!? もしそこに誰かいたらーー」


「俺はアルクトスをテイムしてから風神ボレアスの加護があります。空間の認識が可能で王都外もその範囲内です。もちろん着地点には何もありません。というわけで、来いベルヴェルク」


 手に魔法陣が発現し、そこから投擲された神器が手に戻ってきた。


「離れすぎているとこのように戻ってきます。気をつけて欲しいことはどこでもこれが使えるわけではありません。最近では魔力を流れを阻害する手錠があります。他にもアンチ・アリアと呼ばれる場所に自分か神器が有れば機能しません」


 神器の説明を粗方終わらし、アナスタシア様にはまず神器の限定解放をしてもらった。そしてその後にウィル・オ・ウィスプを剣に宿らせると魑魅の効果として本来纏う炎よりも格段に熱く威力を増した。


「すごい。これが使い魔の力……」


「こんなのは一端に過ぎません。もっと力をつけると出来ることも増えます。今日の所は一から三ノ型を何度も振って終わりましょう」


「はい」


 今日は少し違うが、やることは大して変わらない鍛錬だ。次に進むためにはやはり太陽神に縁のある神器が必要だ。いずれテイムするであろう星の属性フェネクス=ラーに挑むにはまず神器だ。

 悶々とする日々。手掛かりがないことがここまで辛いとは。

 俺は自分の思いを折る必要があるのかもしれない。


「いっちゃんに聞いてみよう。それが一番早いかもしれないし」


 いっちゃんに手紙を送り3日後には返ってきた。


『教えてあげるけど詳しいことまでは僕にもわからない。タダで教えるのは面白くないからお弟子さんと一緒にダリア王国に来なよ』


 と記されていた。

 何を企んでいるのやら。俺はこのことをグラム陛下に言い、急ぎダリア王国に行く準備を済ませた。

 アナスタシア様にとっては初めてのダリア訪問となる。当然身分を隠して行くわけだが、そう大事には至らないだろう。

 ダリア王国は隣国だからすぐに着く。首都にある王宮に行くといっちゃんが出迎えてくれた。


「へぇ〜この子がお弟子さん?」


「そうなんだよ。アナスタシアって言うんだけど」


 身分を隠しているためいつも付けている敬称も敬語も使わない。違和感で本当に歯が浮きそう。


「初めまして、稀代の魔法師マスター・ソーサラー。お会いすることができて嬉しく思います」


「礼儀正しいね。どこかの貴族のご令嬢?」


「まぁそんなとこ。そんなことより聞きたいことは手紙で伝えた通りだ。太陽神に縁がある神器の素材の在処を教えてほしい」


「そうだね。正確な場所はわからないけど、南の大陸にあると言うのは聞いたことがある」


「縁もゆかりも無さそうな場所だけど……?」


「太陽神ソールは雲隠れしてその隠れた場所が南の大陸なんじゃないかって話さ」


 なるほど。確かに地上は神々から隠れるのにはもってこいだろう。


「そんなことより拓人。君にサプライズがあるんだ」


「ん? 何だよ?」


「入って来てもいいよ」


 扉から現れたのはかつて共に旅をした仲間、ベル。アシハラノクニでの出来事を経てクロンヘイムの姓を与えられた少女。


「久しぶり、タクト」


「ほんと久しぶり。2年ぶりかな」


「師匠、この方は?」


「ベル・クロンヘイム。この世界に来てから少しの間共に旅をした仲間だよ」


「タクトには弟子がいるんだね。そう思うと考え深いよね。会った当初は剣すら握ったこと無かったのに、今は双竜と呼ばれてて弟子までいるなんて」


「縁があっただけさ」


 懐かしい思い出を話しているといっちゃんが2人で外を歩いてきたらと言われたのでアナスタシア様を任せて外に出て、近くにある喫茶店に座った。


「私と別れてから何があったのか聞かせてよ」


「別れてから1人で旅をしていたんだけどさ、魔獣の巣に嵌っちゃって、絶体絶命って時に俺の考え方とか生き方を変えてくれる人に助けられたんだ。それ以降はその人としばらく旅をしてたんだけど、ある依頼を受けた時に亡くなったんだ」


「ごめん、そんなことあったんだ。知らなかった……」


「いや、謝らなくていいよ。多分それが人生の転換期でそんな出来事があったから今の俺がいんだなと思うよ」


 後はヴェストフォル王国のことを話した。


「私はね、正式に入学して大賢者様のお教えの下で沢山魔法を習ったんだ。おかげで2年生だけど校内トップの実力を身に付けれたよ。卒業したら大賢者様の下の位の賢者の枠に入れさせてくれることになって将来はとりあえず安泰かな」


「そうかぁ、お互い旅はできそうにないな」


「うん。でも隣国だしそう遠い距離じゃないしいつでも会えるよ」


 何気ないこれまでの話をする。

 お互い別れた時とは顔つきが変わり、良い意味でこの世界に染まったのだと思う。


「何でこんな所でお茶してるのさ。折角何だから観光でもすればいいのに」


 会話に割り込んできたのはアナスタシア様を連れてやってきたいっちゃん。


「俺たちの勝手だろ」


「まぁ、そうなんだけどさ。そんなことより2人とも、久しぶりに会ってお互い成長したわけだから、やってみたくはない?」


「大賢者様、いいんですか?」


「もちろんお互い同意すればだけど」


「タクトはどう?」


「もちろんやるよ」


 断る理由はない。今の実力をベルに見せるいい機会だ。

 俺たちはダリア王国内になる闘技場を借り切り準備を済ませた。観客席にはアナスタシア様といっちゃんがいる。


「ベルの武器はやっぱり杖なんだな」


「まぁね。大賢者様お願いします」


「この席からコインを落とすから落ちたらスタートね」


 いっちゃんはコインをそっと落とした。俺は抜刀の構えをして落ちるのを待つ。

 地面に落ちた瞬間、先に動いたのはベルだった。


「神器限定解放!」


 ベルが限定解放をした途端光に包まれた。そして雷属性の攻撃を放った。

 そんな攻撃が当たるはずもなく全て躱したはずだった。

 先にはベルがいて杖の先で叩きてきた。当たることは無く寸前の所で躱した。


「どう? 驚いたでしょ?」


「あぁ、驚いたよ。こんな速くてまともに当たればそれなりのダメージだった。まるで『雷鳴(かんなり)』みたいだ」


「私の近接戦闘は()()()の模倣だからね!」


「そうか……。そうならベル。遅すぎるよ」


「遅い……? 私が?」


「あぁ、遅すぎる。だから見せてやる。速いってのがどんなのかを」


 ナルカミを通して伝わる雷の魔力。剣に手を添え抜刀の構えをする。それを見て固唾を飲むベル。2年間の努力はこれに全てが注がれている。



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