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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第1章 東国の異形
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1-5.『アシハラノクニ』

まだまだ最初なので主人公タクトのダメダメさを出していきます。

「クエストクリア!」


 ベルの歓喜が混じった声が野原に響く。

 あれから1週間、ずっとクエストを受注し続け何とか怪我せずに生還できるようになったのだ。まだまだ魔獣のレベルは低いがそれでもここに来てから一番頑張ったと思う。


「ねぇタクト、お金も溜まってきたしもうそろそろ先に進んでもいいんじゃない?」


「そうだね。これくらい頑張ればいいか。じゃあ先に進もうか」


 本当は行きたくないけど、ベルに助けてもらってる以上文句は言えない。それにベルの笑顔のおかげで今の今まで頑張ってこれたのは事実だ。無下にはしたくない。

 1週間滞在した町とも別れ、また次の町を目指す。

 太陽が照りつける大地を踏みしめながら着実にアシハラノクニに近づいて行く。

 そんな中ある異常が俺を襲った。そう、足に激痛が走っているのだ。ここ2、3日は我慢できていた。寝れば翌日には痛みは引いていた。しかし我慢できなくはないがそれでも歩くのが辛い。


「タクト、今治癒魔法かけてあげるね」


「助かるよ」


 原因は地面だ。向こうじゃアスファルトで舗装された道路の為平面だ。しかしここはほぼ自然のまま。でこぼこ道を駆け抜けた。


「タクト靴買った方がいい、もうボロボロだよ」


「動きやすいんだけどな」


 靴にも多少原因がある。今履いている靴はアップシューズで、主に野球の練習用に履いたりするものなのだが少しサイズが小さい。それをずっと履き続けたため血の回りが悪く疲労が溜まってしまった。

 我ながら情けないが、ここではあらゆる事が初めてで全てのことに気を払うべきだった。これも勉強のうちだ。どんな些細なことでも学ぶのをやめたらいけない。

 ベルのおかげである程度痛みは引いた。歩くのに問題はないがまたケアを怠れば痛みは再発する。


「ねぇタクト、今回クエストで稼いだお金使い切っていいかな?」


「何で? せっかく貯めたんだから残せばいいじゃん」


「タクト旅慣れてないでしょ? だから使おうと思うんだ。魔動車」


「まどう車?」


「魔力で動く馬車みたいなものなの。ヴェストフォル王国が確か5年前に完成させた乗り物で、東の大陸なら色んな所に置いてあって、でもとっても高いからあまり借りたくないけどタクトの足の状態見てるとそう言ってられないし……」


「どれくらいするの?」


「金貨20枚」


 金貨20枚。ここ1週間朝から晩まで必死になって集めたお金を根こそぎ持ってかれる値段だ。借りたくはない。けれど俺の足はとうに限界が来ていた。


「俺のせいでごめん」


「仕方ないよ。人それぞれだもん。私戻って借りてくるから待ってて」


 そう言って、ベルは前の町まで走り去っていった。

 しばらくすると後方から聞いたことのあるような駆動音が鳴り響いている。向こうの車ほど流線型とは言い難いがそれなりのものに仕上がっている。

 ベルに手を引かれ車に乗り出した。座り心地がかなり良い。これ作った人のこだわりが細部にまで施されてる。


「これで行けるのはアシハラノクニの前にある山まで。山は歩いて越えなきゃダメだから覚悟しててね」


「今度こそ迷惑かからないようにするよ」


 ブゥゥンというなかなかにイカす音を立て、勢いよく出発した。

 運転席と助手席は外にむき出しだから風が気持ちいい。今までゆっくり歩いていたのが馬鹿みたいに感じてしまうほどだ。


「そういやどれくらいで着くの?」


「これだと後4日もあれば着くよ」


「4日か。魔力を吸われ続けてるから交代しながらでもそれくらいはかかるんだ」


「東の大陸は4大陸で1番小さいからマシなほうだよ。1番大きい北の大陸なんて魔動自動車ないから馬車で横断しなきゃだし」


「ひゃ〜。それは大変だな」


「私たちももっとお金あればいくらでも借りれるし、ヴェストフォル王国に行けば純金貨200枚で買えるよ」


「純金貨200枚!? 高すぎるよ!」


「ヴェストフォル王国が決めてるし買い手は何にも言えないよ。それにヴェストフォル王国はダリア王国に続いて経済力と軍事力、技術力を有する大国だよ」


「常人からしたら高いすぎる気しかしない」


 魔動自動車での利益は多分貸借で儲けてるんだろうな。

 ベルの魔力もほとんど無くなり俺に運転の番が回ってきた。ベルは後ろで寝ている。いわゆる後部座席には椅子はなくトラックの荷台のようになっていてそこにゴロンと寝っ転がっている。

 夜がきた。夕方あたりで俺の魔力は無くなりずっと休憩している。夕飯はいつも通り魔獣の肉。魔力がすっからかんのためいつもより倍食べた。味付けは塩だけでシンプルかつワイルドにがっつく。これがまた美味いんだ。

 朝、ベルに起こされ眠気を飛ばし、朝食を食べて出発した。

 魔動車は速すぎてそこらの魔獣には追いつくこともできず、ただ早く通り過ぎる景色を眺めながら、そんな日が3日続きついにアシハラノクニに最も近い町にたどり着いた。

 魔動車を返却し、まずはギルドに行く。クエストを複数個受けお金を少しだが稼ぎ、山を登るための準備をした。

 次の日、山を登る途中、大型の虫型魔獣である魔虫種が襲いかかってくる。火を使うと山火事になるため、その他の属性攻撃で何とか倒して行った。


「タクト大丈夫?」


「何が?」


「足、痛くないの?」


「まぁ何とかね。そんなことよりこの虫どもが生理的に受け付けないんだけど。てかこの気持ち悪い虫の体液を早く落としたい」


「我慢するしかないよ。あと少しで山頂だよ」


 ここに来るまでかなりの数の魔虫を倒し、体液まみれになりながら登ってきた。登り始めて何時間経ったかわからない。少なくとも朝に出て、太陽が真上にあるのを見ると4時間は登ってる。富士山ほど高くないと思いたい。

 道なき道を登っていき、念願の頂上が見えてきた。俺は最後の踏ん張りを見せ、最後の1歩を力強く踏みしめた。


「頂上に着いたどーーー!」


 周りに声が反射するような山なんてないからやまびこは起こらない。


「見てタクト! あれがアシハラノクニ!」


 振り向き、下を見ると小さく家々が点在しているのがわかる。

 遠くからでもわかる。昔の日本のような家屋が立ち並ぶ。煙もたくさん上がっていてそれなりの国であることがわかる。

 あとは降りるだけだ。下りは速い。流れるように降りていき途中の虫型魔獣も勢いでスパッと斬り倒す。もうすでに体液だらけだから余計に体液付着しても気にならない。


「とうちゃ〜く」


 山を完全に下りきりついにアシハラノクニの大地に足を踏みしめた。


「ねぇ、結界師いるよ」


「けっかいし?」


「結界を張ることを専門とするソーサラー。さらに強固にしてるんだね。結界師が1人1人確認して中に入れるって感じかな」


 特に怪しいもの持ってないから普通に結界をまたぎ、アシハラノクニの中に入った。街並みは江戸かそれより前の時代といったところだ。


「なんかタイムスリップしたみたい」


「ん? 何か言った?」


「んにゃ、何も言ってない」


 街を歩いてわかった。思っていたよりもあんまり活気がない。それなりに賑わっているが思い描くような商人の街とは程遠い雰囲気だ。

 とりあえずいつも通りギルド、ここでは詰め所と呼ばれる所に行く。中は他と違い畳が敷かれ、いかにもな和風仕様。そして風呂に入り、俺が出てきた頃にはベルがもう休憩していた。


「座り心地悪いね」


「畳が慣れなくて座り心地悪いのはしょうがないよ。他の国じゃあ普通椅子だし」


「タクトはこの国出身なだけあって慣れてるね」


「まぁそういう家だったから」


 実際俺の住んでいた家は和風建築で一戸建て。高祖父、つまりひいひいじいちゃんが購入した建物で代々住んでいる。今でこそ奈良県住みだがご先祖は伊勢に住んでいて墓参りは伊勢にまで行って、神宮の外宮内宮を歩き、おかげ横丁で食べ歩いたのもいい思い出だ。


「さて、まずは気になることからやりますか」


「タクトどうしたの?」


「ベルは休憩してていーよ。受付の所に行くだけだから」


 受付嬢は大和美人で落ち着きのある感じの人だ。とりあえずこの人に聞きたいことがある。


「すみません。聞きたいことあるんですけど」


「はい何どすか?」


 おぉ、まさかの京都弁。ここは京の都なのか?


「えっと、何か活気がないというか、人の目というか、特に女性の目が死んでる感じだったんですけど何かあったんですか?」


「この国に居てなんも知れへんのどすか?」


「えぇ、そんなこととは無縁の所で育ったので」


「まさか藪椿(やぶつばき)出身やったりします? そないな辺鄙な田舎なら知れへんのも無理はない。何せこの国は今500年続いとる危機に瀕しとるのやし」


 500年という年月に驚いてしまった。何を500年この国を危機に貶めているのか、俺はどうしても聞かずにはいられなかった。



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