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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-30.『太陽の道標』

 夢を見た。何もない真っ白な世界。けれど所々燃え盛っている。でも決して熱くはない。寧ろ包み込んで抱きしめるような。

 ここはどこだろう。歩いても果てが見えない世界に突如として声が聞こえた。


「そなたが太陽の御子か?」


 何のことだろう。自分はただの人間だ。恐れ多くも太陽の御子などと名乗れるほど偉くはない。


「まだ自覚がないのか……」


 何もいないのに凝視されてている感じがする。


「ふむ……。まだまだ幼い。技量もない。人間の世界では少し偉いだけのただの人。あの方も物好きだ。このような女子(おなご)をお選びになるとは」


 わかる。声の主は呆れている。初対面なのになんて言い草だ。そもそも対面すらしていないが。


「だが、決まったことは仕方なし。アナスタシアよ。南の大陸に行きなさい。そこに強くなるための道具がある。()()はそなたが持つにふさわしい」


 夢は泡沫のもの。真っ白な世界は消え見覚えのある天井が目に映るが、何故だろう、まぶたを開く事が億劫で息が整わない。誰か、気づいて欲しい。死んでしまいそうなくらい身体が熱い……。


 ◇


 あれから、10日ほどは経っただろうか。未だにギルドでの事を言い出せてない。

 そもそもテイマーは近距離〜中距離型が多い。こと戦争においてテイマーの数はソーサラーを凌ぐ。そんな武闘派職の最高ランクSSSにアナスタシア様は該当してしまった。才能なら俺もよりも高い。それこそ努力すれば俺なんてすぐに抜き去るほどだろう。

 その日もいつも通りにアナスタシア様の部屋にノックして入ろうとするも返事がない。何回かやってみても変わらない。


「入りますよ」


 一言断ってから部屋の扉を開けると熱気が俺を襲ってきた。目の前には教育係が倒れている。ベッドを見るとアナスタシア様が物凄い汗と呼吸と熱気を発しながら悶えている。教育係はこの熱でやられたのか。熱気からは魔力も感じる。


「ラウラ、この人を外の涼しい所に寝かせて。首元と脇に氷袋と、服は可能なところまでは脱がせて皮膚に冷水を当ててくれ。あと、これを」


 机にあった紙にメモを書き亡霊の魔法使いの使い魔ラウラに教育係を連れて行かせた。

 さて、どうなっている。これは人が放つ熱を優に超えている。額を触ると火傷しそうなくらいだ。


「カグツチ、アナスタシア様から熱を取れるか?」


「…………」


「おい、カグツチ? 聞いてるか?」


「これは放って置いても問題はない。なぜなら時期収まるからだ。王女は今、身体を作り替えられている」


「意味がわからないんだけど」


「そのままだ。テイマーとしての素質、正確には太陽神の加護を王女に備えるための身体変化が起きている」


「太陽神って確かソールだっけか。その神使は太陽神獣フェネクス=ラー。それと何が関係する?」


「大賢者は世界そのものに認められ、主人は風神ボレアスの加護がある。それと同様に王女にも太陽神の加護を備わろうとしている」


「俺はアルクトスをテイムしたからだろ。アナスタシア様は魔獣をテイムすらしたことないんだ。そんなことありえるのか?」


「こればっかりは神の気紛れだ。余程焦ったのかもしれん。理由はわからんが。そもそもSSSランクは希少故に先に手を打ったと言う可能性もあるがな」


 加護は日本やその他の国から来た外部の者(異世界人)以外なら必ず1つは備わっている。代表例が緩和の加護だ。痛みや濃い魔力空間からの障害を緩和してくれる。風神の加護は風の流れや空間の把握ができる。

 しばらくすると陛下や侍従、その他の傍付きの騎士が慌ててアナスタシア様の部屋に来た。ラウラに持たせたメモを見て飛び出したのだろう。


「アナスタシアは大丈夫なのか!?」


「陛下、落ち着いてください。時期にこれは収まるようです」


「そ、そうなのか。これは一体何が起こっているのだ」


 話さねばならない時が来た。黙っていてもいつかはバレる。今正直に言う方がアナスタシア様の為でもある。


「陛下、できれば他の人を交えたくはないです。どこか個室で話します」


「よかろう。ならば私の部屋に来なさい。侍従のものと傍付きはここに残りアナスタシアを護衛せよ。何か有れば私室まで来るよう。それと、ここは熱気が篭る。窓を開けておけ。では行くぞ、双竜」


「はい」


 国王専用の私室にてギルドに向かった経緯、そこで起きた事、ギルドカード、今日までのアナスタシア様の状況を全て話した。


「むぅ……、このカードが全てを語っているな。現実なのか、これが……」


「不本意ながら。アナスタシア様の性格上テイマーはないと考えてはいたんですが、まさか最高ランクのテイマーとは思いもしませんでした」


「これからどうすべきなのか……。貴重なSSSランクだ。可能なら騎士にして戦力にしたいがアナスタシアには無理がある。あのひ弱な身体ではテイムおろか剣すら持てないだろう」


「まずはアナスタシア様の本心をお聞きになってからでよろしいのではないでしょうか。戦いたくないなら無理して戦場に出す理由はありませんし」


「そうだな。まずはそこからだ。その際は私も同席しよう。王である前に私はあの子の父親だ。本音を聞かねば先には進めない」


「わかりました。目が覚めて正常なら陛下をお呼びします」


「うむ、頼んだぞ」


「はい」


 すぐにアナスタシア様の部屋に戻り経過を観察していた。正午になるにつれ熱量がピークに達し部屋にあった金属製の物が溶け出した。そして正午が過ぎ日が暮れる頃には完全に収まりアナスタシア様は目を覚ました。記憶や目、身体の異常はこれ以上ないので陛下を交えた。


「アナスタシア、身体は大丈夫なのか?」


「はい。不思議と身体が軽いというか力が溢れるというかそんな感じがします」


「そうか。太陽神の加護だったか。おそらくそれのおかげなのかもしれん。しばらくは要観察だ」


 その後も話はするが中々に切り出せない陛下の背中を指でつついた。陛下は大きく咳き込み、


「アナスタシア。お前はこれからどうする?」


 やっと今日言わねばならない事を言い出せた。


「どう、とは?」


「テイマーのSSSランクだ。国としてはお前を騎士として向かい入れ戦力にしたいというのが本音だ。だが、お前は王女で、ましてやこんな細い身体で剣など振れる筈がない」


「…………」


「アナスタシア、お前の意思を聞きたい。騎士となるか、それとも今まで通り過ごすか」


 アナスタシア様は少し考えてから陛下の目を見た。


「お父様が騎士となれというのなら、私は騎士になります」


「アナスタシア、それはお前の意思ではない。素直な気持ちを聞きたいのだ。騎士になったら戦地に赴き戦わねばならん。そうなってから後悔しても遅い。決めるなら今だ」


「……夢でーー」


「ん?」


「夢で私のことを太陽の御子と言われました。女性の声で。……双竜に聞きます。太陽の御子とは何ですか? 何かテイマーとして特別なものなんでしょうか?」


「太陽の御子という言葉は初めて聞きます。まぁ、太陽は古来より特別な意味を持ちます。私の生まれ故郷でも太陽のみならず自然のものは神格化されてる事が多い。中でも太陽は最も神格が高く、崇められる存在です。生まれ故郷の神話じゃ、御子と呼ばれる者は太陽神に言われて地上に降りてますから」


「双竜のいた世界でも太陽神はいたのですか?」


「いますよ。寧ろ主神ですね。女神ですが広く民衆に愛された神かと」


「主神が女神とは意外です」


「男神説もあるにはあるんですが、女神としての認識が殆どですね」


「そういえばその後御子はどうなったのですか?」


「その後は平定して国を作りました。それが私の生まれ故郷です」


「平定ということは武を交えたのですね……」


「国を作ることは本来そこにいた土着の民を自分の懐に入れるわけですから相入れないこともありましょう。ですがその君主がしっかりと民を先導すれば自ずと民は付いて来てくれます。つまりは責任です。御子という言葉に縛られる必要はないですが太陽神があなたを認めたのならそれに対して答えは必須です。騎士に……いや、『太陽』の騎士になるかならないか。それを答える義務と責任があなたにはある。私はそう思います」


 少し強引だがアナスタシア様が決断するきっかけになってくれればそれでいい。


「……双竜、私にも国のために出来ることはあると思いますか?」


「あの装飾屋の店主も言っていたでしょう? アナスタシア様は国を照らす太陽になる存在だと。あなたはいずれこの国を背負って立つ人になる。何か出来るとか出来ないとかはもっと力を付けてから考えてはどうでしょう? その時の自分次第でどんなものにもなれます」


「……わかりました。今まで部屋に引き籠もっていた自分を変える一歩かもしれません。お父様、私は騎士になります」


「そうか。よく言ってくれた」


 陛下はアナスタシア様を抱きしめた。アナスタシア様もまた陛下の抱擁に応えた。その時の彼女の目には涙が浮かんでいた。年端も行かない女の子にSSSランクを与えた神に、そして安易にギルドに連れて行って事実を突きつけた自分を一生恨む。俺は何としてもアナスタシア様を立派な騎士にしなければならないと心に誓った。



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