表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
56/101

4-28『第4王女 アナスタシア』

 アルクトスをテイムした次の日。玉座にて事の経緯を全て話した。


「うむ。遂に我が国にも星の属性を持つ者が出たな。喜ばしいことだ。そして同時にお前はこの国最強の力を手にしたことになった。その意味を理解した上でこれからは力を行使するといい」


「はい」


 国王は一度ゴホンと咳き込んだ。それは何かを合図する様な。国王の側近の1人が何か文書を渡し、それを開いた。


「話は変わるが、これより双竜タクト。お前に新たな命を与える! これより我が娘、第4王女アナスタシア・ヴェストフォルの傍付き騎士に任命する! 以後騎士団の任務は放棄しアナスタシアを命を懸けて守れ。以上、これにて解散とする。各自、与えられた命を全うせよ」


「ちょっ! お待ち下さい、陛下!」


「何だ、今言った通りだが?」


「いきなりその様なこと申されても。それに何故傍付きにえらんだのですか?」


「お前はこの国最強の騎士だ。そんな最強の騎士が多方面へと向かう騎士団の任務していたらいざという時どうする? それに双竜よ。ここ最近、お前は神器の素材集め、故郷に帰るなど様々な理由でこの国から離れすぎだ。そこにアナスタシアの傍付き騎士が辞任するというので、空いた穴を埋める為任命した」


「いささか勝手ではないでしょうか?」


「勝手だとも。私は王でお前は配下だ」


「……承知しました。これよりアナスタシア様の傍付き騎士としての任務を遂行いたします」


「うむ。傍付き騎士は一目で役職がわかる様専用の制服がある。すでに私室に置いてある。着替えてから向かう様に」


 その場を後にして私室に置いてある制服に袖を通した。白を基調に赤のライン、大きなマント。動きづらい。こんなもの普段から着ないといけないのか。

 アナスタシア様のお部屋に着くと老齢な教育係が待ち構えていた。敬礼の姿勢を取り


「双竜タクト。この度、アナスタシア様の傍付き騎士に任命されました」


「陛下より聞き及んでおります。それでは入る前に1つ。姫は極度の人見知りです。いきなり男の人に声をかけられたら怯えるでしょう。なので姫から話しかけない限りあなたから話すことのないように」


「存じています」


 アナスタシア様は教育係の言う通り極度の人見知りだ。王族としての公務は到底行うことはできないと判断されたほどだ。ほとんどの日数を部屋に閉じこ籠っている。国民の前に出たとしても見えないよう何歩か後ろに下がってずっと遠くを見つめている。故に顔をしっかり見たことがある国民はごく僅かで第1王子と違い話題にすらならない。それがアナスタシア様だ。

 扉を開け、遂にアナスタシア様とのご対面だ。銀色の髪とライトブルーの目を持つ彼女はテーブルに向かい何かの勉強の最中のようだ。


「姫、先日にお話した双竜タクトです。ご挨拶を」


 アナスタシア様はスッと立ち上がり、ドレスの裾を少し上げ頭を下げた。


「第4王女アナスタシア・ヴェストフォル。これからよろしくお願いします、双竜」


 どこか心がこもっていない感じがした。本当にこの教育係も含めて業務程度の付き合いでしかないのだろう。


「では、双竜。あなたはあそこの椅子に座って置いてください。明日からは本を持ってきた方がよろしいかと」


「わかりました」


 部屋の端にある椅子に座り後ろ姿のアナスタシア様を眺めていた。アイリさんとは色は違うが綺麗な髪だ。すらっと伸びた髪、綺麗な姿勢はとても映える。

 そして何時間も過ぎた頃段々と眠気が襲ってきた。前任はどうやって暇を潰していたのだろう? ある意味苦行だ。

 夕方、アナスタシア様の一日はここで終わり、食事の為別室に移動した。俺も後ろからついて行くと食事をする部屋の前で第1王子アルベルト様とばったり会った。しかし何か話すわけでもなくお互い無言で部屋の中に入った。俺も入ろうとすると、腕を強く握られた。


「ここに入っていいのは陛下の護衛人だけだ。俺たちは外で待っておくのが礼儀の1つだ」


 そう言うのは第1王子の傍付き騎士。


「すまない。今日任命されたばかりでその辺のことが全くわからないんだ。助かったよ」


「ああ、聞いてるよ。双竜タクトがまさか傍付きになるとは誰も思わなかった」


「俺自身が1番驚いてるよ」


 雰囲気の良さそうな人だ。これから何とかやっていけそうだ。


「あなたも俺と似たような服着てますね」


「柄は基本統一されていて、色は王子と王女が好きな配色によって決まる。殿下は暗い色が好きなお方だから紺色の色なんだ。……と他の方も来られたようだ。これからは私語は謹んだ方がいい」


 続々と王子、王女が中に入って行き食事の時間になった。前王の場合、個人で食事していたが現王は家族で食べることにしている。これも王室内での変化の1つだ。

 食事が終わると各自自室に戻る。俺もアナスタシア様の後ろに付いて行った。部屋の前にいた教育係アナスタシア様だけを中に入れた。


「あなたの部屋はこれから隣の部屋です。最低限のものしかないので必要なら持ってくるといいでしょう。では私はこれにて。姫のこと頼みますよ」


「はい。任せてください」


 教育係はどこかに行ってしまった。寝るまではずっとアナスタシア様の護衛。なんなら寝てる時も警護。これは相当堪えそうだ。

 それから毎日護衛の日々。アナスタシア様もそうだが自由が少ない。公務をしていないアナスタシア様はもっと少ない。勉強と読書を延々と繰り返している。生まれてから14年、今までずっとこの生活となると飽きてきてもおかしくない。

 勉強がひと段落して教育係が部屋から出た時だ。この日は珍しくアナスタシア様が話しかけてきた。


「ねぇ、双竜」


「はい、何かございましたか?」


「いえ。あなたは外をどれだけ知ってますか?」


「外……ですか? いろんな所に行きましたので一言では言えませんがある程度は知っているつもりです」


「そうですか……」


 沈黙が続く。何が言いたかったのだろうか。


「双竜。私、外に行きたいです」


「えっ?」


「外がどんな所か見てみたい」


 驚いた。珍しく話しかけてきたと思いきや、外に出たいと言うのだから。


「わかりました。では今からいきましょう」


「今から? でも休憩が終わればまた勉強が……」


「勉強しない日が1日あったところでそんなに変わりませんよ」


 俺は色々な物を収納できる使い魔キャリアポートで冒険者をしていた頃の装備に換装し、さらにローブを出してアナスタシア様に着せた。


「まぁ、でかいですが顔は隠せますね。それではアナスタシア様、お手を」


 そっと手を出すと恐る恐る手を合わせた。手を引きアナスタシア様をだき抱えて窓から出た。


「王都に出るのは初めてですか?」


「メイン通りなら見たことあります」


 それはあまり見たことにはならないなぁ。いざ出てみたものの何を見せれば良いのやら。考えておくべきだった。しかしメイン通りを知っているならそこに行けば何かしらある。その辺を歩けば寄る所は沢山あるだろう。

 メイン通りは沢山の人がいる。ただ通り過ぎる人。ショッピングをする人。話している人。ご飯を食べている人。アナスタシア様にとって平時の街並みは初めてのこと。俺の背に隠れながら周りをキョロキョロと見渡している。


「行きたい所あれば言ってください。せっかくなんでどこか寄りましょう」


「はい。………………あっ」


 ゆっくりと俺の袖を掴みながら歩いていたアナスタシア様が急に足を止めた。目線の先にはブティックがある。アナスタシア様の服装は華美だ。あそこで市井を歩くための服を買うのはいいかもしれない。

 カランカランと音のするドアを開けると綺麗なお姉さんが笑顔で出迎えてくれた。


「いらっしゃいませー! あら、双竜じゃないですか。あなたが何故ここに?」


「この子の為の服を買いたくて」


「ふむふむ」


 店員はアナスタシア様に近づいた。それと同時アナスタシア様は少し後ろに下がってしまった。


「相当な恥ずかしがり屋さんですね。ローブの下もかなり派手ですね。貴族のご令嬢ですか?」


 貴族どころか王族なんだが。余程顔を知られてないんだなと改めて思う。



「まぁそんな感じ。街を歩く普通の服がないんだ」


「なるほど。なら少し控えめでいきましょうか?」


「フッションには疎いんだ。この子が気にいる物をお願い。なんなら仕立ててくれてもいい。お金の心配いらないからさ」


「かしこまりました! では少し向こうにいきましょうか?」


 店員はアナスタシア様の手をそっと手に取り試着室に消えていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ