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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-26.『星の属性 アルクトス』

 いつかのアイリさん誘拐事件で使われた北の大陸と繋ぐ装置を使い旧奴隷商人邸の所に来た。そしてそこから見える塔こそが《星海の塔》。天高くそびえる塔は風の神ボレアスが物語にある戦いの後に築いたとされている。

 大陸の覇者、即ち星の属性を持つ御使いは各大陸に1体ずつ。北の大陸は北辰の叡智アルクトス。南の大陸は水神の御使い、水天竜王メルクリウス。西の大陸は土神の御使い、万象の大精霊ベルグローテ。東の大陸は太陽神の御使い、太陽神獣フェネクス=ラー。これらの御使いは常に門を開けている者もいればアルクトスのように門を閉め外界との繋がりを持たない者もいる。


「さてと。久々の戦いだけど、勘を取り戻すために少しそこらで魔獣狩りでもしますか」


 向こうに帰っている間は剣の1つも振っていない。鈍りに鈍っているのだ。いきなりあの塔に入り込んでもただ死ぬだけだろうからまずはウォーミングアップに魔獣狩りだ。

 そしてその日の明朝前までずっと野宿をしながら魔獣を狩り続けた。わざと魔獣の巣に入ったりして危機感という物を身体にもう一度味合わせてみたり、大型魔獣と一騎討ちしたり、倒した魔獣は数知れず。


「あぁ。もうそろそろ扉が開くな」


 太陽が昇り始めている。俺はすぐに塔に戻った。

 戻るとそこには沢山の冒険者がいた。一端の防具や剣を揃えて、我こそが手に入れると言わんばかりの自信に満ちた顔をしている。ここにはお試しで来る奴はいない。


「はぁ。風呂でも入るべきだったか……」


 こんなに魔獣の匂いをムンムンとさせ魔獣の血が沢山付いた服と整っていない髪で来たのは見る感じ俺くらいだ。少し場違いな感じが否めない。

 木にもたれ待っているだけだが妙に視線が向いている。「あいつ東の大陸の双竜じゃね?」や「何なんだあの武器は?」と他にも色々言われているがここに俺がいるのは何ら不思議ではない。神器持ちは他にもちらほらいるし、それに百戦錬磨の有名冒険者やどこかの国の軍の小隊もいる。ただ意外なのはマスター・テイマーがいない。こう言う話はマスターなら食いつくと思ったんだが。実はもういるのか? 目立たないよう魔力を抑えているのか。何にしても自身が確認できる範囲内にはいない。せっかくなら会ってみたかったんだが。


『ここに集いし冒険者たちよ。扉の向こうで余が、無限の魔力が待っている。乗り越えた者のみがこのアルクトスの前に来るがいい。さすれば無限の魔力は其方の手に』


 その瞬間、扉は開かれた。扉の先は見えない。オーロラの様な虹色のベールで隠されている。そして開き切った時、多くの冒険者が一斉に雄叫びをあげながら入っていった。


「さて、俺も行くか」


 扉の向こう側に入るとそこは床のないただ落下しているのか、それとも上昇しているのかわからない無の領域。


「来い、ナルカミ」


 ナルカミに跨り姿勢を安定させた。どうすれば良いものか。先に入った人もどこにもいない。


「幻術の可能性もある。まずはこの空間から出るのが先だ。神器限定開放」


 神器ベルヴェルクが煌々と輝き始めた。そして剣を振り下ろすと空間に裂け目が現れ景色が瞬く間に変わった。そして目の前に映った光景は、魔獣たちが冒険者たちを襲い、中には喰われた者もいる。

 塔の中はとてつもなく広いが見晴らしが良いが塔の壁はしっかり見える範囲だ。そして上に上がる階段は塔の壁と付随している。


「カグツチ、ナルカミやるぞ」


「当方の力は主人の為に」


「仰せのままに」


 その場から動き出したと同時に魔獣たちが襲ってきた。今更そんなもの出てきたところで所詮は烏合の衆。カグツチの炎で焼き払った。

 無我夢中で、階段に向けて走った。途中出てきた魔獣はカグツチとナルカミの敵ではない。階を重ねるごとに魔獣たちの力が増してくるが、そんなものは歩みを止める理由にはならない。激しい戦いになるにつれ脱落者が増えてくるがそんなものも気にしてられない。俺はただ魔獣を屠り上へ上がる。

 もう6階ほどだろうか。この階に上がっているものはもういない。たった1人で今、目の前にいる巨大な4足の竜種を狩らねばならない。階の天井ギリギリまである巨躯。耳を押さえてもなお鼓膜が破れそうなほどに大きい雄叫びが空気を揺らす。そしてブレス攻撃を仕掛けてきた。


「これ食らったらただでは済まないな。圧死か窒息死、五体満足でいられるかも怪しいな」


 こいつの覇気で普通の人なら気付かないが、上からはとてつもない魔力を持つ奴がいる。おそらくこいつは所謂中ボス。こんな所で立ち止まるのは双竜じゃない。


「この塔にある奴は全員風属性。ならカグツチは奴の風を熱で防げとは言わんが抑えてくれ。サンフレイムを解除。来い、ガシャドクロ」


 今までは魔力攻撃をメインで戦ってきたがここからは威力は落ちるが切れ味を加えた。ガシャドクロに切れないものは数少ない。目の前にいる魔獣であろうと切り裂く。

 巨大な竜種の魔獣は子分の竜種たちを従え、攻撃してくる。いくら切っても止まることを知らない。


「クソッ! どんだけいるんだよ!」


「拙が思うにやはりあの魔獣を倒さなければ」


「わかってるけど、近づくのもやっとなんだ!」


 子分の竜種は強くはないが量が尋常じゃない。一掃してもすぐに変わりが出てくる。防戦一方の中俺の背後を守る役割を持つオロチが出てきた。


「マスター。1つ手がある」


「言ってくれ」


「魔力を絞り取ることにはなるがこの小蝿どもは我に任せろ。我の武装を解除して単体として戦う。マスターはあの巨大な竜種だけを見ていればいい」


「具体的には?」


「ここは奴らの領域だ。それを覆す」


「わかった。魔力はいくら使ってもいい。目の前のデカブツを叩かない先に行かないからな!」


 オロチを解除した。8つの首と1つの胴体を有するオロチはさらに大きくなり、大きさは目の前の竜種と遜色ないほど。


「覚悟はできたか、風の神の眷属よ」


 オロチは大きく吠えると身体中から水でできたオロチの首が現れて次々と子分の竜種を喰っている。


「行け、マスター! これで小蝿は気にならんだろう!」


「あぁ、これで風通しが良くなったよ!」


 一気に間を詰め、まずは一差し、そして首、胴体、尻尾まであらゆる所を切り裂き、血が吹き出し、喚く魔獣にトドメに目尻を串刺してくり抜いた。魔獣は力尽き床に倒れ込んだ。


「マスターよ。何故目を取り出した?」


「こいつはS級だ。もしここじゃなかったらテイムしたけどできないからせめて目だけでもね。魔力で包んで保存しておけばいつか使うかも知れないだろ、魔眼としてさ」


 魔眼はS級の魔獣で、不意に視力を失った場合のみ開眼できる。売ればかなり値がつくがこれは自分で持っておく。ちなみにここ、星の属性がいる領域では魔獣はテイムできないようになっている。

 魔力をかなり使い果たしたが、余力で階段を登った。今までよりも長い階段をゆっくりと一歩ずつ。そして登り切り最上階に足を踏み入れた瞬間、空気が張り詰めていた。冬の早朝のつんと空気が張っている様な。


「ここまで来た者はたった1人か。称賛に値する、双竜と呼ばれる者よ」


 大きさはさっきの竜種よりもうんと小さい。というより竜ではなく熊だ。薄い翡翠色の毛、銀色に輝く鋭い爪を持つ。胴体や顔にはそれ用の武装している。


「会えて嬉しいよ、アルクトス。さぁやろうか。ファイナルマッチだ」


「その様な魔力切れの状態で余が戦うとでも? 余はそんな吹いて消える様な奴とは戦う気はない。暫し猶予をやる。その間に魔力を充填せよ。ここは魔力に満ちている故回復は早かろう」


「気遣いどうも。でもそんなものはいらない。神器限定開放」


 これは神器の効果を利用した技。限定開放した時俺の魔力そのものと神器本体が接続される。それを身体から神器へと流すわけだが、それを逆流させれば当然神器に貯めた魔力は俺身体へ戻ってくる。


「これで文句ないだろ? さぁやろう。俺もあまり時間はないんだ。お前は覇道を示せといってたな? なら見せてやるよ。俺の覇道を!」


 六連一刀流一の型『六連星』をアルクトスに決めた。確実に手応えあり。


「うむ。よく練られた技だ。しかしこんなものはかすり傷にすぎんな。すぐ治る」


 アルクトスの方を振り向くと傷が癒えていた。そして魔法で編まれた輪がアルクトスの頭に発現していた。


「無限の魔力がどんなものか教えてやる」


 アルクトスから放たれる魔力量が俺の身体に重りのようにのしかかってきた。いっちゃんの時とは違う。圧倒的威圧感と自身の身体が支配されている様な感覚。空気と風を操る獣。これは激しい戦いになる。剣を握りしめ、己を鼓舞し、アルクトスとの戦いが始まった。



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