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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-25.『決別』

 帰ってきたから数日、クソ兄貴との生活に段々苛立ちを覚えた。少し自転車を走らせバッティンセンターで憂さ晴らしをしていると隣で見覚えのある人が入ってきた。


「なぁ、太郎……か?」


「へ?」


 お互いが顔を合わせ認識した。目の前にある人物は力馬凛太郎。ニックネームは太郎。野球観戦仲間だ。

 太郎は一緒に来ていた友達と代わってもらった。俺も最後の打球を打った後、打つ場所から離れて近くのベンチに腰掛けた。


「こんなとこで会えるなんて奇遇だな」


「なぁ、拓人。会えたのはすげー嬉しいけどさ、俺個人としては正直怒ってるんやぞ」


「……わかってる。俺もいっちゃんも勝手にどっかいったから太郎には俺らを怒る権利がある」


「俺なぁ。拓人が消えた後、警察に事情聴取されて色々面倒いことばっかで大変やった。そりゃ拓人と最後にいた人間やししゃーないけどな、どっか行くならせめて一言は欲しかった。それだけで俺はもっと楽に生きれた。お前のおらん野球観戦なんて何もおもんいし、行ってもただただ虚しいだけや」


「でも、それ聞いて野球は続けてるのは何で?」


「俺は賢ないからこれしかないし。高3の時の甲子園もそりゃ活躍しまくってプロ入りも目前まで来たけど、指名なし。なら大学入ってまた選ばれるよう頑張らんと多分俺は一生親不孝者になるからやってる」


「太郎はすごいよ。俺は……」


 友達がこれだけ真剣に野球に取り組んでる姿を知った。昔から野球に関しては誰よりもうまく誰よりも真剣だった。それを今も変わらず続けていることに敬意を表するほど。俺もこのままだとダメだと思い、太郎には全部話した。当然いっちゃんのことも。


「いや、嘘やん。そんなん」


「本当の話。俺の身体に付いてる紋様も刺青じゃないし」


「いや、でも何でそんなこと俺に話すん? 信じるかどうかも分からんのに」


「太郎はきっといつか信じてくれる。何年の付き合いと思ってんの? それにまた俺はあの世界に戻るつもりでもあるし、ここで話さないとずっと誤解されたまま終えそうだったから話しただけ」


「それを母親に言うてんのか?」


「まだ。でも太郎の姿見て何かスッキリしたし、これで心置きなく向こうに戻れそう」


 じゃあな、と一言言って立ち去った。太郎はまだ信じ切れてない感じだけどきっといつか、長い先の未来で理解してくれるだろう。もしかすると案外早いかもしれない。どちらにせよ力馬凛太郎という男は単純だが心の底では誰よりも友達思いで熱い奴だ。

 急いで帰り、母の目の前で「今日の夜話すことあるから」と一言だけ言って部屋に戻った。

 そして夜。晩ご飯の最中に話を切り出した。


「話あるって言ったけど今言うよ。……俺は今まで--」


「なぁ、それ言って何か意味ある?」


 兄拓実が口を挟んできた。


「お前がどっか消えて迷惑かけて、そんで今までどこそこ行って頑張ってましたってか? そんな都合良い話あるか?」


「確かに迷惑かけた。でも、それでも聞いてほしい」


「まぁ、拓実。一度は聞いてやってもいいだろう」


「チッ」


「……俺はずっと別の世界にいた。白門神社の鳥居はその世界と繋がっていていつ繋がるかは分からないけど、俺はあの日に向こう側に行ったんだ。嘘と聞こえるかもしれないけどこれが真実」


 俺は上のジャージを脱いだ。


「これは刺青なんかじゃくて向こうでは4つの職業に分かれていて、魔法使い、鍛冶師、魔法道具師、魔獣使い。俺は魔獣使いでこの紋様にはその魔獣が宿ってる。地球は魔力とかないから出せないけど向こうではこいつらと一緒に旅してた。今は一国の騎士として雇われてるけど休暇もらって戻ってきたんだ」


 その他にもベルやレオンと出会い。その途中にあった出来事をできるだけわかりやすく伝えた。

 皆んなが黙ってる中、1人笑いを堪え切れない奴がいた。


「何の話すんのかと黙ってたけど、聞いてみりゃとんだ御伽話じゃん。とーさん。ちゃんと聞いたかよ? 自分の息子がメルヘン拗らして帰ってきたんだぜ? これ以上笑える話早々ねーんじゃん」


 こんな話しても信じてもらえるとは最初から思ってないけど、これは特に2人には無理そうだ。


「私は信じるよ」


 クソ兄貴の笑い声、父は一切表情を変えない。そんな誰も信じる気のない最中に澪ねぇが言った。信じる? こんな話を最初から信じてくれるのかと少し心の中で安堵した。


「おいおい、澪。こんな話のどこに信じる要素なんてあんだよ」


「だって私、そこ行ったことあるから」


「……わかった。まだ俺が赤ん坊だった頃行方不明になったって」


 これはまだ幼かった時の話。澪ねぇは昔3日ほど行方不明になったことがある。3日後澪ねぇは普通に戻ってきたけど、そのことを誰にも話さなかった。


「拓人、鳥居の先にあったのは家がある浮遊島?」


「うん」


「拓人は下に降りたんだ。私は降りられなかったからずっとそこにいたけど」


 澪ねぇは父の方を見た。


「拓人の言ってることは側から見るとおかしな話だけど、本当の話。私も行ったことあるからわかる。信じてほしい」


 父は一度ため息をつき、俺の方を向いた。


「澪と拓人の言ってることが本当だとしよう。で、拓人はこれからどうしようと言う? お前はこれから遅れた分もそうだがそんな血生臭い世界で生きてきてこれからどうするんだ。この世界で何の役に立つのか。何で戻ってきたのか。それをはっきり話しなさい。お前の言いたいのはそんな武勇伝ではないだろう?」


「はぁ? とーさん何言ってんだよ。こいつ、一度手を血で染めんだろ? そんな犯罪者予備軍のこいつにあれこれ言わせても意味ねぇって。すぐに警察に連絡が筋だろ?」


「拓実、今話しているのは拓人だ。黙りなさい」


 父の威厳に黙り、拓実は「ちっ」と舌打ちをした。

 言うべきことを言う最後のチャンスだ。けれどせっかく戻ってきたのに、母や澪ねぇをまたガッカリさせたくはない。


「お前は優しい子だ。家族を悲しませたくないと思っているだろうが相羽家の男児なら言うべきを言え。父さんは弓でしか伝えることはできんがお前と過ごした17年間でそれを教えたつもりだ」


 そうだった。俺はこちらで過ごした17年で何を学んだんだ。父はずっと真っ直ぐに真摯に弓道から沢山のことを教えてくれた。父はずっと俺の話を真剣に聞いてくれていた。ならば、俺が言うべきことは、


「俺はまた向こうの世界に行く。まだ成し遂げてないことがあるんだ。ここに帰ってきたのは決別するため。もう戻って来ることはないと思うから最後に皆んなの顔を見て何の後腐れなく向こうでしっかり生きたい」


「そうか。それはまた寂しくなるな」


 母は感極まって涙を流している。澪ねぇも少し目に涙を浮かべていた。


 ◇


 別れの日、渡しのを忘れていたいたいっちゃんからのプレゼントを母に渡した。そして1人で行くからいいと言ったのだが澪ねぇが頑なに拒否して付いてきた。特に話すことないのでずっと黙ったまま。

 もうそろそろ神社に着くという所で「ここまででいい。ここからは流石に1人で行く」と言うとわかったと頷いてくれた。

 別れを行って背けた時、澪ねぇが後ろから抱きついてきた。


「ちょっ、澪ねぇ!? 何やってんの」


「拓人は私のことどう思ってる?」


「……話がわかる姉、かな?」


「まぁお姉ちゃんだし、あんな家族の中にいたらいやでも同じになりたくはないよ。拓人、私は拓人が思ってる以上に見てる。無愛想かもしれないけど」


「確かに無愛想かもね。でも澪ねぇがあの時言ってくれて助かったよ。感謝してる」


「うん。拓人絶対に死なないでね。死んだら特にお母さんが立ち直れないと思うから」


「死なないし死ぬつもりもない。これでも向こうでは強いんだ」


「よし。これで言うことなし。向こうでも元気で」


「うん。そっちも」


 澪ねぇは腕を解き、それを最後に澪ねぇの姿を見ずに神社に向かった。澪ねぇは泣いていた。そんな姿を最後に見たくない。見て欲しくもないだろう。俺もこんな顔を見て欲しくはない。最後は家の前で見せた笑顔で十分だ。

 神社の前にはもう2人がいた。


「先輩、どうしたんすか? 少し泣きっツラですよ?」


「色々あったんだよ。とりあえず無事揃ったんで向こうに帰りましょう。開いたらほんの数秒で閉じるらしいのですぐに渡ってください」


 いっちゃんから渡された物を手の中壊した。すると鳥居が光出しこちらと向こうを繋ぐ扉が現れた。俺たちはすぐに渡って戻った。

 そしてその瞬間、何の因果なのか。全世界の人々にあることが知らされた。


『余は風神ボレアスの御使いが1人、北辰の叡智 アルクトス。余の力を発する者よ。2日後の明朝、北の大陸にある《星海の塔》に来るがいい。そして汝らの覇道を示せ。さすれば汝に無限の魔力を与えよう』


 世界中に響き渡った。下にいる冒険者たちが歓喜に沸いている。


「先輩。これは……」


「北辰の叡智 アルクトス。北の大陸の覇者、星の属性を持つ最強の魔物の1体。その門が開かれたんだ」


「戻ってきたばっかやのに忙しくなりそうやな。拓人、準備はできてるんか?」


「マスターになるなら星の属性は必須。いつでも準備はできてます。俺はこのまま向かいます。陛下や他の人に伝えてください。帰りが遅くなることを」


「任しとき」


 一礼して、ナルカミを召喚して跨り北の大陸に方を向いて飛び立った。



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