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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-22『偽りの楽園-2』

「流石です。アイリさん」


「先程神器を探す途中でそれらしきものを見つけていたので」


「バカな……」


 怒りと焦りで震えるアマクサ。おそらくこいつはメイカーだ。戦う手段がないためにあのような大掛かりな装置を作成したのだろう。対して俺たちはソーサラーとテイマー。相手に勝ち目はない。


「これで正真正銘のチェックメイトだ。さぁ、話せ。なぜここに来た人々を閉じ込めたのかを」


 計画書の内容はこうだ。

 来園した人間から武器を回収することで戦闘は起きないと安心させる。そしてアトラクションで遊ぶたびに魔力が吸収されるよう仕組み、疲れたらここの食べ物に空中に存在する魔力をより早く吸収できる薬を盛り込み、またアトラクションで遊び魔力を吸収。それの繰り返し。ただそれを続けることは不可能なため、頃合いを見計らって空を暗くして夜を演出させる。つまりここの施設は超巨大なドーム型ということだ。

 ここまでのことをして何をしたかったのか。そこについては記載されていなかった。今すぐにでも止めるべきだがまずは事の真相を知らねばならない。


「何か言ったらどうだ……?」


「全……めの……め……」


「何て言った?」


「全ては我が夢のため! 人がここまでする理由など限られる。欲、悪、そして夢。私は夢のためにしたに過ぎない! まぁだが、この国の現状と合わさってwin-winな関係を結んだがね」


「この国は確か貧しいと聞いた。やはり金絡みか?」


「それもある。だが私は違う。君は知っているか? ドリームランドを」


「行ったことないけど知ってる。もう閉園した遊園地だ」


「あぁ、そうだ。私にとってあそこは父との最後の思い出。それが無くなればどう思う?」


「悲しいだろうな」


「その通りだ。ここはその再現。亡き父の姿を思い出す場所がここにも欲しかった。ただそれだけだ」


「ならなぜこんなことをしたんだ。それだけを聴くとここまでのことをして金を徴収する意味がわからない。本当の理由があるはずだ」


「はて、もう何年も前のことだ。はっきりと覚えていないな」


「嘘だ。あんたは覚えているはず。話してくれ。できれば刃を向けたくはない」


「えぇい! 何をやっておるのだ。早く目の前の奴を排除しろ。こいつらはこの国の脅威だ!」


 玉座に踏ん反りかえる王が横から割り込んできた。せっかく話し合いができたいたというのに。


「悠長に話す時間はないようだ。お前はこの部屋の武装があれだけだと思っているなら大間違いだ。常に最悪の場合を想定して対応する。それが大人だ!」


 壁が小さく円形に開き、そこから幾本もの剣が射出された。


「神器解放。荒れ狂え、フレズベルク!」


 玉座に暴風が吹き荒れ剣がそこら中に飛散した。しかし剣の応酬は止むことはなく幾らでも飛び出てくる。


「来い、ベルヴェルク」


 短剣を呼び出し、こちらも射出して無力化していく。対応しきれない物は躱す。


「無様だな。さっきまでそちらが有利だというのに今はどうだ。結局、戦いは量に限る」


「本当にそう思うか?」


「どういうことだ?」


「やれ、カグツチ、ナルカミ!」


 俺を中心に炎の渦を巻き、電光が壁にある穴に向けて放たれ、剣の射出が不可能となった。


「これでもまだやるか?」


 アマクサは歯を力一杯噛み締めた。


「何をやっているのだ、アマクサ。そんな子供、さっさとやってしまえ!」


 その言葉を聞き、ポケットから手のひらサイズの棒を取り出した。それは起動と同時に大きさを変え、1本の剣となり、それを持って俺に向かってきた。


「この夢は終わらせん! 父との思い出を決して終わらせるわけにはいかんのだ!」


 足鍔迫り合いの中、強引に怒りを向け押してくる。


「あんたの父親は本当にこんなものを見たかったのか!」


「お前に何がわかる!? 父は死に、母は失踪。育ててくれた祖父母も成人になったと同時に死んだ! 唯一父との思い出場所もなくなった! 私には何もない! ならば、この世界に思い出の一部を建てたっていいだろうが!」


「だからって全ての行いが正当化されると思うな! 大人なら考えろよ!  あんたの父親は! いや。あんた自身は、本当は何が欲しかったんだ!」


 押し合いの末、アマクサの剣は完膚なきまでに砕け散り、アマクサは押し負け床に尻をついた。


「あんたの欲しかった物は何なんだ。今、この国の現状なのか? 違うだろ。そこの王様の言う通りに行動していては、本来とは違う場所に行き着くだけだ。自分の心の中で思い描く理想は、かつて父親と行ったドリームランドなのか。考えてみなよ」


「私は……」


 アイリさんが近寄ってきて、アマクサの前で膝を折り、目線を同じ高さにした。


「私はタクトたちとは違い、ドリームランドや向こうの世界のことは知りません。ですがこちらでも変わらないものは確かにあります」


「……何だというのだ」


「それは愛情です。私も親の愛情を知らずに育ちましたが、沢山の人と出会い、教えてくれました。人である以上どの世界でも根っこは変わりません。ですからあなたも一度沢山の人と出会ってみてはどうでしょう。いつかはあなたに共感してくれる方も現れます」


「……」


「安心してください。ここの人々は刺激を求めています。これだけの物を作れるあなたならいつでも大歓迎です」


「……あぁ、そうか。私は父との思い出を盾にしていたのか」


「もう終わりにしましょう。亡きお父様が悲しみます」


「そうか……。そうだな。私は父のことを考えているようでそうではなかったようだ」


 アマクサの感情は怒りから平静に戻った。これでもうこんなことは起きることはないだろうと、そう思った矢先。


「アマクサぁぁぁ! 何を勝手にやっておるのだ! まだ終わってなどいない!」


「お前の目論見はこれで潰えた。もう終わりだ」


「まだだ。まだあれを使ってはおらん! アマクサ、今すぐアレを起動させろ! こいつらを早く殺せ!」


 アマクサは立ち上がり、王さまの前に跪いた。


「王よ。我々の負けです。私も王もメイカー。この者らに幾ら楯突いても勝つことはできません」


「そんなことを聞いておらん! やらねばやられる」


「この者たちにそのような意思はありません」


「貴様ぁぁぁ!」


 怒り心頭の王さまが玉座から離れ、アマクサの胸ぐらを掴み殴ろうとしたその時、


「バベッジ王はいるか!」


 その言葉に反応し、王さまは手を離した。そして顔が青ざめていく。

 中に入ってきたのは白を基調にブルーのラインが入った制服を身に纏っている。


「やぁ、バベッジ王。久しぶりだね」


 後から入ってきたのは手で支えながら歩く男。


「あなた様は……」


「君のことはよく調べさせてもらったよ。これほどに悪に染まっていたとは」


「あぁぁぁ……」


 王さまの手が震えている。ということはこの人たちはおそらく大陸の管理者の1人、南の大陸担当のテリス・アストライアだ。なぜこんな人がここに……。


「滅相もございません。私はただ、国のために」


「だからといってやっていいことと悪いことはある。それをわからない君じゃないと思っていたのだけど、検討違いだったのかな? それはそうと今回の件について色々聞かないといけないから、皆んな、彼を連行してくれる?」


「はっ!」


 王さまは腕を掴まれ、どこかに連れていかれた。今度こそ一件落着かと思いきや、


「やぁ、アマクサ君」


「当然、君も対象だ」


 部下の人たちがアマクサに集まり王さま同様腕を固く掴んだ。


「ちょっと待ってください。この人は自身の罪を認めています。このような過ちはもう起きません。だから連れていくのは――」


「ダメだよ。彼もまた主犯格だ。罰はしっかりと受けてもらう」


「でも――」


「いいんだ。これから何をするにしても、まずはケジメをつけてからだ。だが君の名前を知りたい」


「ヴェストフォル王国の相羽拓人」


「相羽拓人。次会うときは名前で呼ばせてもらうよ」


 アマクサはそう言って連れていかれた。

 今回の騒動は正真正銘決着した。この後、彼がどう歩むのかはわからないが、おそらく良い方向に向かうのは確かだ。またいつか、どこかで会いたいと、そしてどう変わったのかを見てみたい。年下の自分がそう思うのはおこがましいかもしれないがどうしてもそう思ってしまう。


「さて俺たちも帰りましょうか」


「そうですね。それより1つ聞きたいことがあります。なぜ今回ことに気がついたのか。それが知りたい。目覚まし時計だけではないはずです」


「実は俺に向かって、『ここは危ない。早く目を覚ませ』と言ってきたひとがいました。それなりに訛りのある発音でしたが意図は伝わって、それから頭の中モヤモヤして、ふと時計を見て全てのことに気がついたという感じです」


「その教えてくれた方は一体誰なんでしょうか?」


「俺にもさっぱり……。貴族とはではないと思います」


「そうですか。世の中には勘の鋭い方もいるということですね。……さて、話もここまでにして帰りましょうか」


「そうですね。多分1日くらい休日をオーバーしてるので早く帰らないと」


 そうして俺たちはヴェストフォル王国に帰った。

 後日、夢の国の運営は遠くに飛ばされていたバベッジ王の息子が引き継ぎ、正常に運転を再開しているようだ。



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