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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第1章 東国の異形
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1-4.『英雄譚』

 アシハラノクニに向かうことになったわけだが、そう簡単にたどり着かない。

 まず現在位置に問題がある。現在俺たちは東の大陸の中央あたり、目的地は最東端。距離の単位はよく分からなかったが歩いて半月以上かかるという。

 さらにもう1つ、アシハラノクニの領地の境界線は国を守るようにそびえ立つ山々が天然の防御壁にして最強の盾らしい。

 これのお陰で他国から攻められないんだと。逆側は海のため山同様攻められない。しかも鉱山都市のように山をくり抜かれてないので長い坂道を登らなければならない。

 以上の2つが簡単にたどり着かない理由。行きたくないが行かざるを得ないので何とかバレずやり過ごしたいところだ。

 魔獣が現れては剣を抜き、使い魔達と共に戦う。慣れてはきているがやはりまだまだ。ベルは故郷を出てまだ1ヶ月だが俺よりは全然動けている。

 その途中、前々から気になっていたことをベルに聞いてみた。


「魔獣の攻撃受けたのに痛くないの?」


「痛いけどそんなに。全ての人間に“緩和の加護”が神様から与えられているのにタクトはおかしいね」


 ベルはクスッと笑う。


「これは痛みを和らげたり、濃すぎる魔力空間からの保護をする加護。だから痛覚があまりないの。職業を審査してもらう時、光を放射したでしょ? あれはどの神様からの加護かを見定めてるの。それによって職が決まる。カードへの刻印はあくまで後付け作業だよ」


 ベルは続けて話を進める。


「神は4柱いて。ソーサラーの神“ナヴィア”、テイマーの神“ヴォルス”、スミスの神“エルン”、メイカーの神“ラーシル”。世界が創造され最後に生まれてきた4柱の神々。その他にもいるけど今は役割を果たすだけで、一部を除いてこの世界に干渉はしていない。この世界の常識だよ。タクトはほんと何にも知らないんだね」


「そんなこととは無縁の世界で過ごしてたんだよ」


 ちなみにこれはこの世界の人類最古の英雄譚に記されているらしい。

 そこで気になったのは俺はどういう扱いなんだということ。神様の加護なんてないのになぜ職業があるのか。そもそも神様なんて空想は存在するのか俺にはわからない。その辺の謎もおいおい解決したいところだ。

 魔獣を倒して続けて3日、気の緩みも許されないので常に周りを見渡している。正直これは精神的にかなり浪費する。さらに戦い続けると体力と魔力がどんどん消費され肉体的にも疲労してくるしあまり良いことはない。

 剣を杖代わりに何とか歩いて数時間、やっと町にたどり着いた。ベルも魔力があまり無く息を切らしている。

 ドロップした素材を売りお金を手に入れ、ギルドで休憩を取ることに。


「ベル、そろそろクエストでもやらないか? 無意味に魔獣を大量に狩っていても体力と魔力が持たないよ。必要な分だけ倒し、さっさと戦場から離脱。じゃないといつか身を滅ぼす。しっかり地力をつけないと」


「そうだね。しばらくここで滞在してお金貯まったらアシハラノクニに行こ」


 なぜ今までクエストをやらなかったかといえばベルがアシハラノクニに行くために後回しにしていたからである。しかしこのままでは目的地に着く前に死んでしまう。さらにドロップ品だけでは明らかにお金が足りない。いつまでもこのまずい飲み物を口にするのは耐え難いものだ。

 休憩中、ギルドに置いてある本、“勇者アルファズルの冒険”を手に取ってみた。

 内容は誰でも読めるように簡単になっている。


『神々が増え、己が主神になる為に覇権争いを行いその余波が人間が住む大地にまで侵食していった。太陽は身を隠し、月は姿をくらまし、地上には夜の闇ではなく正真正銘の暗黒が訪れた。草木は枯れ、動物たちは行き場を失い狂暴化し、人は愚かにも殺し合いが勃発し取り止めがきかなくなった。


 そんな世界を忌み嫌う人間が現れた。名をアル・ファズル。彼は生まれながらにして魔力さえあれば生きていける特異体質。そして彼には2人の弟がいた。しかし彼のような特異体質ではないため、次第に上の弟は目が見えなくなり、下の弟は栄養失調で亡くなった。上の弟も後を追うように死んでしまう。


 弟たちの死でやる気を失ってしまい、1人閑散とした小屋で寝込んでいた。すると頭の中で声がした。ゆっくりと重い(まぶた)を開けるとそこには形がはっきりとしない精霊がふよふよと浮かんでいる。


 精霊はアル・ファズルに微弱だが力を与え、言伝を頼んだ。その力は武具や不思議な道具を生成し、動物たちを鎮め、魔を持って力を示した。


 アル・ファズルは各地を回り、人々に対しある祈りを捧げるように懇願した。


 それと同時にアル・ファズルは太陽と月を呼び戻す為、東の大陸の最東端リーデンブルクと呼ばれる地に向かう。そこの人たちは太陽と月を呼び戻す為の儀式が連日行われていた。不思議と現地人との争いはなく、アル・ファズルは快く受け入れられ儀式に参加し、見事太陽と月を呼び戻すことに成功した。


 しかし空を覆う雲が太陽と月を隠す為、アル•ファズルは動物たちの力を借り、雲を割る。太陽は顔を出し、地上に再び陽が射した。


 それでも神々は争いをやめない。アル・ファズルは魔を使い馬を魔獣と化した。馬は天を翔け神々がいる天界にたどり着き、彼と共に神々と戦い、そして勝利を収めた。


 人々はアル・ファズルに言われた通り祈りを捧げ続けた。すると彼に力を与え体内にいた精霊は4つに分かれ、ソーサラーの神“ナヴィア”、テイマーの神“ヴォルス”、スミスの神“エルン”、メイカーの神“ラーシル”と成り以後天界を収め、自身の力を人々に与え、平和をもたらした。


 アル・ファズルは此度の戦歴と活躍により初代“マスター・テイマー”として名を残すことになったそうな』


 この話は東の大陸おろか全大陸で知られており、現存する人類最古の英雄譚。勇者アル・ファズルを主人公に展開される物語だ。

 気になったのは最東端リーデンブルクくらいか。これがおそらくアシハラノクニだろう。やはり俺の住んでいた日本と同じくアシハラノクニは太陽と月に何か縁があるに違いない。

 休憩をやめ、ベルとどのクエストを受けるか見ていた。ベルが指を差したものは、


『グレープニール討伐6体報酬銀貨5枚』


 グレープニールは狼型の魔獣で、強さは中より下レベル。今の俺たちにとって簡単に倒せるものではないがこの数なら負けることもない。

 この世界で売り買いをしてお金の価値に触れたわけだが、銅貨は日本円にしておよそ100円、銀貨は1000円といったところ。金貨と純金貨はまだお目にかかってないのでわからないがおそらく桁が1つずつ増えると思われる。今回の報酬はおよそ5000円。

 この世界には様々な魔法道具がある。例えば職業を査定してくれるものもその1つである。クエストの内容が書かれた紙も実はその1つ。なんと討伐数を自動でカウントし、さらに裏面には出現場所までの地図も記してある。

 というわけで地図を見ながら目的地へ行く。近場だから迷うことなく到着するといきなり殺気増し増しでお出迎えしてくれた。


「行くぞベル!」


「うん!」


 剣にサンフレイム、指輪にウィッチクラフトを宿し、グレープニールに向けて火属性の攻撃をした。1匹ずつ確実に屠っていく。

 6体のつもりがかなり多めに倒している。さらに悪い状況としてまだまだ奥の方から現れて、数が減っていない。

 これはまずい。今の俺たちにこの数は処理しきれない。倒すのが無理なら逃げるのみだ。


「ベル、逃げよう! 勝ち目がない!」


 ベルの手を引き、ウィッチクラフトと魑魅の力で乗算された火で無理やり道を作り、逃げ切った。


「はぁはぁ……。何とかクエストクリア」


「ごめんね、タクト。足引っ張っちゃった」


「どっちが悪いとか関係ないよ。2人とも生き残った。それでいいじゃんか」


「そう言ってもらえると嬉しい……かな」


 ベルは息切れながら笑みを浮かべた。

 初クエストにしてはカッコ悪いけど、そんなことはどうでもいい。向こうに帰るためならどんなにカッコ悪くても生き残る。それがこの世界でできる俺の使命。

 その後ギルドに行きクエスト報酬を受け取り、その日はそのまま眠りにつくことにした。


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