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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-20.『夢の国』

 神器を手に入れて1ヶ月ほど経った。扱いにも慣れてきて今じゃ自由自在に操れる。生活面においては減給されていたお給料も元どおりになり、神器の料金も支払い、貯金に回せるまでに回復してきた。

 そしてある日のこと、アイリさんが私室にやってきた。


「タクト、4日ほど暇を取ることができますか?」


「取ることならできますが、何かあるんですか?」


 そう言うとポケットから何かのチケットを取り出した。


「“夢の国”という所を知ってますか? 南の大陸にある廃れそうになっていた国が、テーマパークとして立て直し遂に先日オープンし、このチケットは有名な方の所に届くようです」


 心の中で俺の所来てないんだけど。と思ったが、アイリさんほどの知名度ではないということが同時にわかった。


「誘いは有り難いですが、三厳と行けばいいのでは?」


「ミツヨシは仕事です。私は管理職なので団員の管理がメインでほとんど国の外には出ません。たまに周辺の村に赴いて住民の生活を確認するくらいです」


「こっちの団長とは真逆ですね」


「騎士団長は脳筋ですのでその辺の仕事は副長に任せてるはずです」


「あぁ、なるほど……」


「ですので、久しぶりに外に出てバカンスにでもと思っていたらこのチケットが届いたのでタクトも誘おうかということです」


 どうしようか。せっかくの誘いだから行きたいけど、王様が許してくれるだろうか……。


「とりあえず王様の許可をもらえたなら……で、どうでしょう」


「そうですね。そうしましょう」


 神器の件で長い間国を開けていたから王様が許可をくれるかはわからない。が、やるだけやって無理なら諦めてもらおう。


 王様は今、玉座にて今後について臣下たちと話し合っている。ちなみに環さんもそこにいる。


「タマキよ、魔法道具の生産の状況の報告を」


「はっ。現在新たに製作中の魔法道具、電話を開発中です」


「デンワは確かダリア王国が特許を有しているはずだが?」


「あれは携帯電話。今回製作中のものは腕時計型です。イメージですが、腕時計のボタンを押すと空間中に電子的な画面を投影させ、そこには様々な機能を持たせるといったもので、光と闇、雷の属性を上手く利用できれば計算上は可能な技術です。その他の製品についてはいつも通り滞りなく進んでおります。


「う、うむ。やはり異邦者の知識は侮れん。詳しくは完成してからじっくりと説明してもらう。以上で会議を終了する。大臣たちは務めを果たすように」


 大臣たちはゾロゾロと一斉に出て行った。


「アイリ、双竜。何用か?」


「陛下はこの件についてご存知でしょうか?」


 アイリさんは夢の国について話し始めた。王様もある程度知っていたが、行く暇と興味がないためチケットは捨てたらしい。


「だいたい理解した。アイリはそれに行くために休みを取ることと、その同行人に双竜を推薦するということだな」


「はい。流石に私一人で行っても面白くはありませんので」


「行くこと自体は構わんが、双竜。お前、最近国を開けすぎではないか?」


「お言葉の通りですが、仕事はしっかりとしてます」


「いやまぁ知っているがな。お前のような人材はできれば国に居てくれる方が安心なのだぞ」


「陛下、留守にすると行っても4日ほどです。それに双竜の足があれば例え国に何かあったとしてもその日のうちに到着します」


「まぁ、普段から何事にもキッチリこなすアイリの申し出だ。双竜よ、アイリの顔に免じて外出許可を下す。確か今日は9月9日。明日出発するとして……帰国日は14日とする。厳守するように。そして帰ってきたら存分に働いてもらう。いいな?」


「ありがとうございます」


 王様の許可を得た俺たちはすぐに夢の国に行くための準備を始めた。

 家に帰り、持っていくものをカバンに詰めた。


「歯ブラシ良し、着替え良し、携帯食料良し、目覚まし時計良し」


 全ての準備を滞りなく進めていたが、俺がアイリさんと出かけると知った三厳が家に押しかけずっと文句を言ってくる。


「先輩はいいなぁ、姉さんとデートなんて」


「デートじゃないよ。付き合ってもないし」


「潔くデートって言ってくださいよ。じゃないと俺はブロークンハートに……」


「いや、何言ってんの」


 いい加減鬱陶しいので荷物をキャリアポートに収納してさっさと家を出た。

 入管を出た場所で集合してそこからはナルカミに乗って南の大陸までひとっ飛びだ。

 着くとすぐに神器はキャリアポートに収納した。


「神器と剣、預かりましょうか?」


 と、いうのもここでは武器の使用は禁止。当然使い魔と魔法もだ。武器は入国時に預けて、帰るときまた返してくれるシステム。荷物も基本預かりで財布のみ持ち込み可だ。


「いえ、構いません。ここに預けて置きますから」


「そうですか」


 列に並んでいると自分たちの番が来てチケットを見せて遂に夢の国に足を踏み入れた。

 そして俺はその光景に驚愕した。そこにはジェットコースター、観覧車、急流すべりなど、向こうの世界に存在するアトラクションがあったのだ。ジェットコースターなどの全てレールは魔法で再現されている。何という完成度だ。


「まさに夢の国の再現。て感じだな。驚いたよ」


「タクトはこういうの知ってるんですか?」


「まぁ、俺の居た国やそれ以外の国もこういうのはありました。魔法はないのでレールとかは金属でできていますが」


「もしかすると異邦者が関わっている可能性もありますね」


「かもしません。が、せっかく来たんですから楽しみましょう」


 入り口で貰った動物のカチューシャを渡した。そう、俺はもう遊ぶ気満々だ。久しぶりのテーマパークだ。


「楽しまなきゃ損でしょ?」


 アイリさんはにっこりと笑い、カチューシャを受け取り頭につけた。

 それからは時間なんて忘れてひたすら遊んだ。疲れてもドリンクを飲めば吹っ飛ぶし、腹が減るとご飯を食べてはまた遊んだ。アイリさんはこういうのは初めてのため色々と説明しながらアトラクションを楽しんだ。

 一通り遊んだ後、トイレに行きアイリさんを待っていると人とぶつかった。これだけの人だ。当たってしまうのは仕方ない。


「すみません」


 すぐに謝ると当たってきた男は俺の顔をじっと見た。


「あんた、双竜じゃなかか?」


 訛りのある言葉を発する男が言った。男は髭を生やし黒く汚いローブを見に纏った身なりをしている。40代くらいだろうか。ここは今、4大陸中の貴族や有名人が多く来ている。この男の身なりからしてあまりふさわしくないような、そんな格好だ。


「そうですけど」


「やっぱりそうか」


「ここは人のえらいたくさんて落ち着かん。あんたはどげん?」


「楽しんでますけど……」


「そうか。おれは帰る」


 何なんだ、いきなり話しかけられて。それに帰るって、もったいないじゃないか。こんなに楽しいのに。


「何で帰るんですか? せっかく来たんですから楽しみましょうよ」


「おれには肌の合わんけん。そいに、双竜も気ばつけろ。ここは危なか。はよ目ば覚ましゃなかっち取り返しんつかん事になる」


 そう言って男は去っていった。最後まで訳のわからない事を言う人だ。目を覚ます? 一体何に? 考えているとアイリさんが戻ってきてので、また遊びを再開した。

 しかし、あの男の言葉がどうしても気にかかってしまう。今の俺は楽しめてない。どうしても考えてしまう。けれど身体はそれを拒む。夜になってアイリさんとは別室だがホテルに入りベッドの中で悶々とする。

 それでも目を瞑れば自然と眠ってしまい、悩んでいたことも忘れてぐっすり寝た。

 ふと、尿意が迫り目が覚めた。トイレに行き、時計を確認するも、時計がこの部屋になかった。なんてサービスの行き届いてないホテルだと思い、持ってきた目覚まし時計をキャリアポートから取り出して時間を見た。そこには驚きの数字が刻まれていた。


『9月14日』


 時刻は午前3時を過ぎたくらいだが、問題はそこじゃない。日付だ。ヴェストフォルを出たのが10日。その日の朝に出てその日の内に着き、1日中遊んだ。つまり今の日付は11日のはず。

 忘れていた悩みがまた頭の中を曇らせた。何がどうなってるのか。ただの時計の故障、それとも設定ミスなのか。そしてある言葉が俺の頭の中で一筋の光が指した。


 ――はよ目ば覚ましゃなかっち取り返しんつかん事になる。


 その瞬間、曇っていた頭の中は一気に晴れていき全ての事に気がついた。


「ここは危険だ。アイリさんに知らせないと」


 俺は部屋を出てアイリさんの部屋のドアを何回も叩いた。



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