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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-17『双竜VS旋風』

 その頑強な盾と変則的に襲ってくる剣の所為で攻めきれない。団長はその硬さに定評があり、その影響で2つ名も金剛を与えられた。その名前は伊達じゃない。ガシャドクロの力を持ってしても貫けない盾は、まるで壁の如くずっしりと頑丈に佇んでいる。壊れそうになっているオロチの剣も盾に接触する度に悲鳴をあげている。

 もう魔力、体力、剣の耐久全て猶予がない。一か八かの勝負をする時だ。


「カグツチ、ナルカミ。準備はいいか」


「委細承知」


「拓人様のためならば」


「よし、これが最後だ」


 カグツチが剣に纏い、赤い炎を吹き上げる。最大限距離を取った。ナルカミの力を最大限まで引き出し全ての準備は整った。

 地を蹴り、最速で駆け抜ける。金の衣を纏い、紅蓮の剣を突き出した。銀色に輝く盾はキリキリと音を立てる。


「俺の盾はそう簡単には貫けん! 金剛を舐めるなぁ!」


 盾の能力である硬化を使い、さらに硬くなった。けれどここで立ち止まるわけにはいかない。もっと、もっと魔力がほしい。この盾を貫けるだけの魔力が。


「仕方なし。我の魔力を存分に使え。後は明日の分をひねり出せ」


 ――ありがとう、オロチ。お前は良い使い魔だ。


 オロチの魔力をブーストしたそれはさらに激しく燃え始めた。剣がまるで炎を燃やすため薪のようにすり減っていく。

 そして剣が折れた同時に銀色の盾も貫かれ、炎によって次々に溶けていく。今の団長は完全に無防備な状態だ。折れた剣で団長の鎧をも貫通させ胸に突き刺さった。勢いあまり足と身体が合わず地面に打ち付けられたが、限界に近い身体を酷使させ無理やり立ち上がった。しかし団長は立ち上がろうともせず寝っ転がったままだ。


『あっ、えーっ、これはどうなってるんだ?』


 司会者もこの現状に驚きを隠せない。当然観客も。会場は完全に静まり返っている。


『今、審判の判定が下り、結果は双竜の勝ち。決勝戦に進出したのは双竜だーー!』


 そのアナウンスを聞いて地面に腰を下ろした。流石に疲れた。救急班が団長を運び出し、俺も運ばれた。

 と休憩も束の間すぐに決勝戦が待っている。相手は当然アイリさん。強敵に次ぐ強敵だ。魔力、体力の補給を済ませたはいいが、肝心の剣が今の俺にはない。まさかオロチの剣が折れるなんて思わなかった。貸し出しの剣は頼りならない。だが、剣がないとせっかくのアイリさんとの戦いが台無しになる。ヒョロヒョロの剣しかない中で一番まともな物に手をかざした瞬間だった。部屋の扉が勢いよく開かれた。


「双竜、あなたにお届けものです」


 と言われ渡された。風呂敷を広げ中に収まっていた物は剣だ。ただの剣じゃないことは見てすぐにわかった。


「これは誰からの?」


「本人の希望で名前は伏せさせていただきます」


 誰からかはわからないがこれは誰もが認める業物だ。それに手を掛け持ち上げた。持ち心地良し、重さ良し、長さ良し。まるで俺のために作られた剣、そして今までずっと持っていたと錯覚するほどに見事な剣だ。これなら万全を尽くせそうだ。

 闘技場に姿を現し、アイリさんと対面する。


「その剣は……」


「知ってるんですか?」


「えぇ、近いうちにあなたもお世話になると思いますよ。では早速始めましょう」


 アイリさんはポケットから1枚のコイン取り出した。


「六連一刀流同士なのでそれらしいやり方にしたいと思います。指定した面が出たら納刀した状態で始めます。それでどうでしょう?」


「いいですよ。道場を思い出しますね」


「ではタクト、あなたが選んでください。私はその逆でいきます」


「じゃあ裏で」


 アイリさんはコインは空に上がり地面に何回かバウンドしてカタカタ音を立てて止まった。


「出たのは表。では私が納刀、タクトが抜刀した状態から始めます」


 互いに構えた。目は相手を捉え、身体は迸る熱を抑え込んでいる。


『では勝負、開始!』


 その合図とともにアイリさんが動いた。一ノ型『六連星』。納刀した状態から繰り出される技はそれだけだ。ここは受けの一手。俺が繰り出す技は、


「五ノ型『玉衝』ですか……」


 六連一刀流唯一の防御技。衝撃とともに電気を相手に流し込み手を麻痺させる。


「ですがその技を使うくらい想定内です!」


 押し切られアイリさんから2連撃目、あの態勢は六ノ型『填星』だ。この技だけは受けに回ることはできない。さらにもう射程圏内。可能な限り後ろに下がり最低限のダメージで済ませた。

 さすがはアイリさん。俺よりも練度が高い。普段なら無傷で済ませられることもこの戦いではそれだけでは済まされない。


「どうしました? これで終わりではないでしょう」


「当然!」


 神速で駆け抜け翻弄する。そしてタイミングを合わせ3歩でアイリさんに近づく。アッド<ストレングス>を決めアイリさんを後方へ押しやる。それだけでは終わらない。すぐに間を詰めまたアッド<ストレングス>を繰り出す。しかし2度も同じ手は通じない。モア<ディフェン>で守った。


「開け、魔眼ニーズヘッグ!」


 モア・ディフェンスを魔眼の力で破り、完全に攻撃圏内に入った。しかしアイリさんはニヤリと笑い、狙ったかのように受けた。

 俺の身体に魔法陣が付与された。次の瞬間突然の身体が殴打された感覚に見舞われた。痛覚麻痺のお陰で痛みはないが感覚としてしっかりと刻まれた。


「驚きました? 風魔法だけしか使えないわけではありませんよ?」


「驚きはしません。魔法師団長になるくらいですからおそらく出来るだろうと思ってましたがこんな魔法が飛んでくるなんて思いませんでした」


 あくまでここまでは序章だ。アイリさんとの戦いはこれから。

 互いが同時に動き出し、剣と剣が交わり火花が散る。銀光を発する剣は綺麗な軌道を描く。一方で、半透明で伸縮する剣は予測できぬ太刀筋で相手を翻弄する。銀光を発する剣は一直線に落とされる。いとも簡単に防ぎ次なる一手を繰り出す。2人の剣術は派手さこそないが剣を突き止めんとする者らの戦いは人々を魅了する。

 戦いは拮抗し、一向に勝負がつかない互角の戦い。剣技での戦いは終わることはない。2人の剣技に差などない。勝敗の行方はどちらかが先に剣に揺らぎを見せるか。つまり体力の問題だ。

 一瞬、双竜の剣にブレが生じた。それを見過ごすアイリではない。剣を弾き、無理やり後手に回させる。こうなってしまえばもう何もできない。技を繰り出し反撃の間を与えない。防戦一方の戦いはすぐに終幕に向かった。最後、剣を弾き飛ばされ、首筋に剣を向けらた。


「あなたの敗因は騎士団長との戦いで消耗しすぎたこと。やはり体力が最後まで持ちませんでしたか」


「魔法で回復したから大丈夫と思っていたんですが、身体は正直です」


 息を切らしながら話す。それすらも苦しい。だが悔いはない。全力でやった結果なら満足……とは素直に行かない。やはり負けるのは嫌なものだ。例え稽古であっても大会であっても。


「この剣を貸してくれた人には申し訳ないな」


「そう思うならいつでも相手になりますよ。次は万全の状態で戦いましょう」


「はい」


 これで全ての戦いに幕を閉じた。1日かけて行われた後、大会のトロフィーがアイリさんに渡された。準優勝の俺にはメダルが授与された。


 

騎士団長との戦いは派手に使い魔を使った戦い。


魔法師団長との戦いは序盤、魔法と使い魔あり、後半剣技のみの地味な戦いです。

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