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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-16.『双竜VS金剛』

 空から降下してくる剣を躱しつつ攻撃しようとすると目の前から剣が現れ阻まれてしまう。狭い闘技場を駆け回り三厳の攻撃を躱している内にわかったことがある。剣は四方八方から現れ、剣で砕くと即座に消失し、地面に突き刺さると5秒はその場に残る。そして妙にリアルさを感じ得ない。


「三厳、これは幻術か!?」


「じゃあ、どうだと思います!?」


 躱しながら、話かけても当然答えは教えてくれない。無限に湧く剣をどう対策するべきか。まずはそこからだ。

 押し寄せる剣を1本掴みすぐにラウラに鑑定の魔法を使わせる。たった5秒しかないので鑑定し終わる前に消えてしまう。何本も掴んで鑑定を掛け続ける。そしてこの剣の真実を知ることができた。


「実幻覚、それがこの剣の正体だ!」


 その言葉を聞いた三厳が動きを止めた。


「その水晶玉は破壊されることで発動する武器。多分インプットされた魔法が使えるとかそんなとこだろ。この剣は本来は幻術の魔法によって作られた幻覚。それをそこにあると無理やり定義付ける。本来あるはずのないもの、つまりこの世界の不純物だからすぐに淘汰され消滅する。それがこの剣の正体だ」


「さすがです。幻覚とは虚ろな存在。そこに何かしらの概念を当てはめることで実体化させています。ですが先輩の言う通り不純物なのですぐに消えてしまいますが、そこの所はあまり関係ないので」


「そうかよ。その水晶玉の武器、壊れても修復可能だから何度でも使えるらしいな」


「一回こっきりの使い捨てとか勿体ないじゃないすか。だから修復機能付きにしてます。ついでに良いこと教えてあげます。この中には計10個の魔法がインプットされてます。ランダムで選ばれるわけですがその中の5つは姉さんの魔法です」


 腰に据えていた剣を抜き水晶玉を割る。すると、そよ風のような髪の毛をなびかせる程度の風が吹き始めた。肌を撫でられているような、優しい風。

 剣を納刀し、一ノ型の動作に入った。そして瞬時に三厳の間合いに入り抜剣する瞬間、突然肌のあらゆる所に切り傷が現れた。態勢を崩してしまい、すぐに距離を取った。

 これはただのそよ風ではない。触れているものを切り裂く風の魔法だ。

 これはもう今まで通りとはいかない戦いだ。極力露出を避けなければならない。俺はキャリアポートに収納してある。新品の装備に換装した。軽装備だがA級の鎧竜を素材にした特注品。


「サンフレイム、ガシャドクロと交代。オロチ、鎧に武装して」


「何してるかわかりませんが、チンタラしてると後手に回りますよ?」


 三厳の言う通り、人は待ってはくれない。俺がこうして換装している間があれば術をかけることも容易だ。しかし今の俺は三厳の幻術を破る方法があるからだ。


「ラウラ、対幻術魔法をガシャドクロに」


 ラウラの対幻術魔法で三厳の魔法が破らなくともガシャドクロの力を使えば、


「はぁぁぁぁぁぁ!」


 力を込め剣を降り落とせば、いとも簡単に幻術を破ることができる。


「本当は団長との戦いまで使うつもりなかったけど、そんな悠長なこと言ってられないから使わせてもらったよ。三厳、これでお前の負けだ」


「それはまだ早とちりっすよ。俺にはまだ8つの魔法がある!」


 また自ら水晶玉を割る。だがもう今の俺に何をしたって通用しない。


「オロチ。やれ!」


 鎧な背から羽のように生える左右4つのオロチの首が一斉に三厳に襲いかかる。今の三厳にこれを防ぐ術はない。体術が不得手の三厳だからこそ容易に通じる。


『勝者、双竜のタクトー!! 第一戦を少し危うくも最後は力でねじ伏せたー!』


 闘技場を後にして治療室で傷の治療と魔力補給を行い。次の戦いに備えた。といってもまだ時間はある。ゆっくりと目を閉じ、深く呼吸をした。真っ暗な空間を漂うような感覚の中、常に自分の中にある染み付いた言葉を連呼する。


『自分のペースでゆっくりと。遠い彼方に行くには休憩してまた歩く』


 レオンの最期の言葉だ。レオンには旅の中で数え切れないほどのことを教えてくれた。その1つであり最期の言葉が一番印象的に頭の中に染み付いている。

 何度も何度も頭の中にそれを巡らせる。同時に彼との思い出が彷彿させる。まだ彼の強さに追いついてはない。けれど着実に一歩ずつ前へ進む。

 数時間待った後、第2試合目に突入した。そして続く3回戦、4回戦も突破し、5回戦準決勝の相手はあの近衛騎士団長、ヘンドリック・デルプフェルトと相見えることとなった。


「できれば決勝で戦えると嬉しかったんだが、お前は不本意そうになさそうだ」


「団長も超えるべき相手ではありますが、俺にとって真の相手はアイリさんです」


「はは、同じ流派同士だから決着つけたい気持ちはわからんでもない。だが、俺を倒さないとそれすら叶わなくなる。覚悟はいいか?」


「当然。対団長対策もしてます」


 戦いの合図がなり、すぐにカグツチ、ナルカミ、オロチ、ラウラ、ガシャドクロ、ライコウを武装して一ノ型『六連星』を繰り出す。団長は大きな盾を使い防いだがガシャドクロの力で盾を切り裂き、団長の間合いに入る。刃が通る瞬間、重い岩を投げつけられたかのような感覚が身体にのしかかった。


「何なんだ、その2頭の闘牛は……!」


「これが俺の使い魔、雷牛アルデバラン。こいつらの突進は生半可な受けだと貫通してしまうぜ?」


 2頭の闘牛は雷を身体中に走らせ、足で地面を蹴っている。そして団長は背中に伏せていたもう1つの盾を手に取り構えた。雄々しく猛る2頭の牛と重厚な鎧と盾。その姿はまさしく重戦車に相応しい。


「どうした? 降参なんて言わないよな?」


「俺は死んでも降参なんてしませんよ。むしろここからです」


 ナルカミの力を使い、神速で駆け抜けるもそれと同等の速さでアルデバランが追撃してくる。団長には一切近づけさせない意思がこの使い魔に感じる。

 やっとの思いで接近し、剣を振りかざすもガシャドクロの力を使用しても盾に傷つくことはなかった。一撃を放てばアルデバランが追撃してくる。闘技場を縦横無尽に駆け回る。


「主人よ、耳だけこちらに向けてほしい。あの男よりも先に使い魔を先にやるのが正攻法と当方は進言する」


「その方が良さそうだ。あの厄介な使い魔をさっさと鎮めないと」


 追いかけ回されることをやめ、真っ向からアルデバランに挑んだ。2対1の勝負は今までにない白熱とした戦いになった。しかし、


「ガキィィィン! 」


 という金属音が鳴り響いた。その時、剣を持っていた手がブルブルと震えた。何度も剣とアルデバランが交差し続けている内に剣が衝撃によって割れ始めていたのだ。予備の剣はない。幸いまだ中にヒビが入っただけだ。長期戦は見込めない。


「オロチ!」


 オロチでアルデバランの動きを止めようとしてもそれよりも速く動くため捕らえることができない。


「カグツチ、範囲攻撃!」


 炎で焼き払うが、それを突き抜けて突進してくる。

 徐々にアルデバランもダメージを蓄積していき速さが落ちてきた。そして闘技場の床に激しい戦いによってできた窪みに足を取られアルデバランの動きが止まった。


「行け、オロチ!」


 その瞬間を逃さずオロチで拘束、そして身動きできない所を斬り払った。やっとの思いで一頭を倒した。残りは1頭のみ。もう一頭のアルデバランを睨みつけると雷牛は少し後ずさった。これも好機。ナルカミの力で瞬時に背後に回り込み、アルデバランが振り向くと横腹に深く突き刺さり遂に雷牛アルデバランを制した。


「まさか倒されてしまうとはな。さすが双竜。だがその体力で俺の盾を貫けるか? それにその剣、もう壊れかけ寸前だ」


「やってみなきゃ分からないですよ」


「いいねぇ。ならここからは盾と矛、どちらが先に壊れるか……。騎士団長ヘンドリックが受けて立つ!」


「負けるわけにはいかないんだ。そのためなら例え団長であっても全力でその盾をぶち破る!」



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