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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-12.『反逆の狼煙』

誤字修正しました(8月22日)

「これより騎士団、魔法師団、この国の全ての軍事力を総動員してダリア王国を討つ! 皆の者、戦の支度をせよ!」


 国王がそう宣言したのである。そんな暴挙許してはならない。勝ち目がない戦などただ兵を減らしこちらの軍事力の低下を招くだけだ。

 俺は騎士団の隊列から抜け国王と真正面に向かい合った。そして、


「陛下、その宣言を撤回することを申し立てます」


「双竜よ。其方の意見など聞かぬ。これは我が決めた最重要事項である」


「しかし、その戦は何の利益があるのでしょう? 大賢者に勝利する見込みが陛下にあるのですか? 今の戦力では少なくともダリア王国に勝利するのは不可能であると私は思います」


「ほう。其方は大賢者に勝てぬと? ハハハハハハハハハハ! この東の大陸で名を挙げた双竜ともあろう者がそんな弱音を吐こうとはな。見損なったぞ、双竜よ」


「情けながら、それが現実です」


「そうか。騎士団長」


「ここに」


 団長が呼ばれ前に出てきた。


「団長……」


「騎士団長よ。即刻双竜を捕らえ戦が終わるまで地下牢に収監せよ!」


「なっ!?」


「悪いな、双竜。これは決定事項だ」


 俺は歯と拳をグッと噛み締め募る感情を抑え、両腕を団長に差し出した。手枷を施され完全に罪人扱いだ。

 連れて行かれる間際、団長が耳元で呟いた。


「我慢してくれ。いずれ助けは来る」


 その言葉にハッとし、連れて行かれながら団長の背中を見て全てを察した。

 地下牢に入れられた。環境は硬いベッド、トイレ、机に椅子のみ。当然水はない。地下だから太陽の光すら届かない。手枷には魔法が施させており、使い魔や魔法は一切使用不可。


 ベッドの上に寝っころがり何もすることがないのでとりあえず天井を見ながら考えた。団長の言うことが本当なら誰か助けに来てくれる。確証はないが信じて待つ他ない。助けに来てくれた場合、その後の行動について。環さんや三厳は捕まっていない。3人でダリア王国に行き説得をしなければならない。可能かどうかはわからないがやるしかない。後は時間が過ぎるのを待つだけだ。

 待てど暮らせど誰も来ない。そもそも何日経ったのかすらわからない。これほど無為な時間を過ごしたのは久しぶりだ。本当にすることがない時はテキトーに「あーーーー」と声を出して気を紛らわせている。その度に看守に怒られるが何となく会話が成立してるみたいで嬉しく感じる。

 そして本当に何日経ったわからないが誰か来た。俺は牢屋の格子にへばり付く。遠目から見えたのは金髪の女性。すぐに誰かわかった。


「お久しぶりです。タクト」


「アイリさん……」


 涙が出そうになるがそこは堪えた。


「あれから3日経ち何とか余裕を作りここに来ました」


 たった3日しか経っていないのか……。


「状況を説明します。今は物資の補給をしている最中です。そしてそれがもう終わりそうなところまで来ています。おそらく2日もすれば戦が始まるでしょう」


「物資さえ揃えばあとは攻撃あるのみ。戦まで時間がないことはだいたい分かりました。それでアイリさんはなぜここに?」


「本当はと言うと騎士団長がここに来る予定でしたが向こうは魔法師団より多忙を極めるので私が代わりに来ました。あと私は魔法師団長なので本来ならあなたの味方にはなれません。ですが今回は騎士団長も容認し難い事態ですので仕方なく協力しています。それだけは忘れないでください」


「じゃあこれからどうすれば……?」


「グラム殿下の言う通り大賢者と話を付けてください。協力者もいます」


 そう言うとアイリさんは牢屋の扉を開け、手枷も外し、俺のオロチの剣も渡してくれた。


「あとこれどうぞ」


 袋に入っていたのはローブだ。しかしただのローブじゃない。気配遮断の魔法が組み込まれた特別製だ。


「頼みますよ、タクト」


「はい、必ずやってみせます」


 ローブを被り地下牢、さらに王城を出た。ローブのポケットの中に1枚の紙に書かれた場所にまっすぐ向かった。そしてそこにいたのはいつものメンバー、環さんに三厳。その顔を見てホッとした。


「遅いっすよ先輩」


「捕まってたんだから仕方ないだろ」


「まぁ何よりこれで揃った。と言いたいが後1人必要な人物がいるやけども、おそらくちょっとばかし邪魔が入るかもしれんからな」


「誰ですか、その最後の人物は?」


「そりゃあの人しかおらんやろ」


 そもそも集合場所の時点で悟っておくべきだった。


「グラム殿下ですね。この事知ってんすか?」


「姉さん曰く、おそらく殿下は自分自身がダリアまで行くとは微塵にも思ってないと言ってました。俺たち3人で何とかしてくれると思ってるとも」


「ぶっちゃけ僕らだけで会談が成立するとは思わん。今回は国と国の関係やからな。けどそこに正統性を伴えば別。その役割に王族であるグラム殿下が必須なわけ。正直それだけで成立するか分からんから後は拓人と大賢者にかかってる」


「わかりました。大賢者は任せて下さい」


 話は済ませ、後は殿下を連れて行くだけだが、警備はもちろん固い。それを突破し、誘拐紛いの事をやってのける必要がある。四の五の言っていられない。三厳の幻術に、ローブの気配遮断で確実に殿下の部屋に侵入する。入るのは俺と環さん。音一つさせず殿下の部屋に侵入した。ぐっすり眠る殿下を持ち上げ窓から脱出し、王城を速やかに出た。

 途中、三厳と合流して殿下を背負い王都をさながら盗人の如く、目的地ダリア王国に向けて出発した。

 ある程度王都から離れると環さんが「こっちや」と誘導してくる。そもそもダリア王国とは真逆の方向から王都を出た事も気になる。

 背負っていた殿下の目が覚めた。状況が察せず困惑状態だ。暴れて無理やり俺から離れ落ち、走っていた足を止め殿下に駆け寄る。


「待て! 色々あるのはわかる。だがまず説明が先だと私は思うんだが!?」


 かなり混乱しているようだ。分からなくもない。ベッドで寝ていて目が覚めたら外なんだから。


「では僕が説明いたします。今回は特別な事情故かくかくしかじか……」


 大雑把に説明し、ある程度理解できた様子。


「うむ……。納得はした。自分が言い出した故、自分が解決せねばなるまい。しかしこう突然だと流石に付いていけないというか……」


「殿下、ここまで来たわけですからもう後回しにはできません。元々はあなたが言い出した事であり、国の一大事ですので」


 今の一言が俺たちの本音だ。逃げ場をなくし確実に付いてきてもらう。寝ているところを攫った理由だ。

 苦悩を強いられている殿下。「むむむ……」と眉間に手を当て数分間悩んだ末、出した結論は……


「仕方なし。これも国の危機。そして私も王族の一員として尽くそう」


「ご決断ありがとうございます。ではまず第1目的地に参りましょう」


 殿下の事で忘れていた。一体どこに向かっているのだろうか。


「着いた」


 環さんに従い付いて行くとそこは森の中。俺がヴェストフォルに来る最中通った所だ。その中に入ってすぐに魔動車が置かれていた。中には人がいて俺たちの存在に気付き出てきた。


「エリスちゃん。わざわざごめん」


 中にいたのは騎士団員、双剣使いのエリス。俺が知るのは名前だけだ。


「環さんの役に立てるなら私は何でもするよ」


 こんな状況下なのにすごく親しげに話す。環さんの顔を見るとほころぶ顔。エリスの顔を見ると頬を少し潮紅している。すぐに察した。この2人両思いだ。


「ゴホン! 環や、早く行かねばならぬのではないかね?」


 わざとらしい咳き込みをしながら殿下が間に入った。環さんも当初の予定に戻り、車に乗りエリスに別れを行って森を車で駆け抜けた。

 森を抜け、王都を迂回し、その後は一直線でダリア王国に向かう。が、今は夜だ。魔獣がわんさか湧いており道を塞いでいる。弱い魔獣はそのまま突っ走るが、目の前に現れたの全長2メートル強の魔獣だ。


「まずい、あれは流石に無理だ!」


 運転する環さんが叫んだ。


「俺が行きます! 殿下、窓開けるんで避けてください!」


 俺は窓を開けそこから出て、車の上に立った。そしてナルカミを呼び、跨った後剣を抜き、すれ違い様に真っ二つに切り裂いた。一先ず危機を乗り切ったが、前方にはうじゃうじゃと群れる魔獣たちがいる。ナルカミの速度を落とし、環さんと並列する。


「魔獣は俺が何とかするのでそのまま突っ走って下さい。スピード落とさないでくださいよ!」


「向こうじゃ1発免停くらいそうや」


「弱気言わないで下さい!」


「わかっとるよ。安全運転が売りの僕も今日だけは暴走族や!」


「では行きます!」


 ナルカミの速さは魔動車を超える。何メートルも先にいる魔獣も一瞬のうちに切った張ったの血祭り状態。ナルカミの速さとカグツチの破壊力が噛み合うと簡単には止められないコンビだ。


「ナルカミ、このままダリア王国まで行くぞ!」


 戦まで後2日。俺たちは反逆の狼煙を上げた。



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