4-11.『第1王子と戦の予感』
場所はヴェストフォル王国領東側。そこに厄介な魔獣が現れた。竜の骨のアンデット。こいつの討伐が今回の任務だ。ちなみにエドガー率いる部隊が受け持っている。
このアンデットの大きさは大体2階建ての家1つ分くらいでそれなりの大きさを有している。そしてこいつの何が面倒なのかというと、爪で攻撃することだ。エドガーは防御することに長けている。その防御を一振りで破壊する破壊力と貫通力が1番厄介だ。一度発動すればいいだけの防御を破壊されるたびにまた展開し直すため魔力の消費が著しい。よって短期決戦が望まれる。しかしただの骨と思ったらその時点で死が確定する。硬い、鋭い、以外に速いの三拍子揃っている。
「みんな、避けろ!」
俺は隊の皆に呼びかけたが全員に届かせることができなかった。鋭い爪が何人かの隊員を巻き込み、血の雨が降り注いだ。
「カグツチ、準備いいか?」
「我が主の望むままに。当方はその全てに従う」
今、あいつの周りに誰もいない。だからこそ放てる大技。
「やれ、カグツチ!」
炎の渦がアンデットを包み込む。
「隊長、今のうちに態勢を整えてください!」
「わかっている!」
エドガーは指示を出している間、俺はアンデットを見ていた。アンデットではあるが元は竜種。さらに破壊力も抜群にいい。
「双竜、準備が完了した。その炎を解け!」
指示通り炎の渦を解いた。少しの間苦しめられたアンデットは怒り心頭のようで暴れながら突撃してくる。
「回り込んで、総攻撃だ!」
エドガーの指示で隊の皆が左右に隊列を組みながら避けた。アンデットのスピードを考えて突然止まれるはずがない。エドガーもそれを考慮したのだろう。そして巨体ゆえに起き上がるのが遅い。これはチャンスだ。
他の隊員が左右に移動してる中、俺はアンデットの頭上にジャンプした。
「行け、カグツチ、ナルカミ!」
2体の竜は螺旋を描きながらアンデットの背骨を狙い、地面に軽く埋め込ませた。小さな姿たが、その威力は絶大だ。完全に動けなくなったところをテイムした。
『死屍竜骨 ガシャドクロ《闇》《風》A級
→元は全てを切り裂く爪を持つ元竜種。それが冒険者によって狩られ、死体となった。肉は腐食し骨のみが残り死霊種として生き返った姿。しかし完全な死霊種ではなく竜種としての面もある』
右太ももに宿った。何気に下半身に宿ったのはこいつが初めてだったりする。
周りを見ると何やら騒がしい。何となく理由はわかるけど。
「双竜、なぜトドメを刺さずテイムした?」
「なぜって。トドメを刺すのは勿体ないからですよ。討伐しろってことは『この国の脅威になり兼ねないから倒せ』ってことですよね? 脅威を無くすなら別に討伐でなくテイムした方が有用です。特に今回の魔獣においては」
「いいか双竜。任務内容は討伐だ。なら倒す以外の選択肢はない。つまりお前は与えられた依頼を無視したことになる。その意味わかるか?」
「わかりました。以後気をつけます」
荒事を起こすのはナンセンスだ。正直言いたいことはあるがここは自分が頭を下げた方が事が進む。
◇
任務が終わりエドガーは騎士団長がいる私室へ向かった。
「団長、お話があります」
「おう、座れ」
エドガーは椅子に座り背筋を伸ばした。
「団長。双竜のことですが……」
「あいつがどうした?」
「双竜はおそらくこの国の不穏分子の存在にになり兼ねません」
「理由は?」
「1ヶ月共に任務をこなしましたが、先日の身勝手な行動や隊列を乱す行動、任務を蔑ろにするなど要因は様々。これ以上双竜を野放しにするのは危険かと思います」
騎士団長は手で顎を触り『うーん』とエドガーの発言に対して深く考えた。
「双竜は元冒険者だから自身の益となるものと判断すれば結果が良ければそう行動してしまう。冒険者は自分本位な奴多い。それが染み付いてるんだろう。それに、だ。おそらく双竜はこの国の最高火力を持つ男になるだから不穏分子だからと言って簡単には手放せない」
「大陸の主人が決めるアレですか……」
「エドガーには負担かけるが今は我慢してくれ。いずれ丸くなる。それに双竜は基本善人だ。お前が思うような不穏分子にはならないと思うぞ」
「団長がそう言うなら従いましょう」
そう言ってエドガーは騎士団長の私室から出た。
◇
任務を終えた後、環さんのラボに赴き新しい魔法道具作成の見学やってきた。
「何作ってるんですか?」
「まぁ内緒。今教えたらおもろないやろ?」
作成と言ってもまだ構想段階なので出来上がるのはもう少しかかりそう。
ラボ内を探索しているとアイリさんがやってきた。
「タクト。やっと見つけました」
「アイリさん、何でここに?」
「何があるのかは後で言います。急いで城まで来てください。タマキも一緒に」
と言われ頭の中ハテナだらけだがとりあえず言う通り城まで向かった。
「って、ここはっ!」
環さんが驚いた口調で言うのも無理もない。連れて来られた場所は玉座とは真反対の方向に位置する。そこは次期国王になられるお方の部屋だ。つまり王太子がこの扉の奥に鎮座されている。
「本来ならミツヨシも呼ばれていましたが仕事中なので代理で私です。準備はいいですか?」
「「はい」」
扉をノックし一呼吸置いた後、
「アイリ・エーヴェルト・ノート、ノト・タマキそしてアイバ・タクトです」
「うむ、入りなさい」
「失礼いたします」
そう言って扉を開け、目の前に鎮座しているお方こそ王太子グラム・ヴェストフォル。王族らしく華美な装飾や服を着込んでいると思いきや、質素で目の前にいるのが本当に王族なのかと思うほど普通の服装だ。銀髪の髪、ヒゲを蓄え、目や頬にほうれい線がうっすらと入っている。現在年齢46歳、現王との年齢差は20歳。割と高齢な王子なのだ。
「面を上げなさい」
入ってすぐ膝をつき頭を垂れた俺たちは頭を上げた。その後座れと言うのでその通り椅子に座った。
「ミツヨシがいないのは残念だがこのまま話をするとしよう。今回集まってもらったのは外交関係について話しておく必要がある」
なぜ俺たちに外交関係を話すのか序盤から全く理解できなかった。
「陛下が度々赴いているダリア王国との関係だ。ここ最近、どうやら良好ではないらしくこのまま行けば最悪武力行使もあり得るのだ」
最近ダリア王国との関係が悪いのは最近知った。領地内に地雷に似たものを埋めているのも、海に対して制限を掛けているもの全てそこに繋がる。
「武力行使は流石にまともな判断とは言い難いのではないでしょうか」
俺がそう思うのはやはり大賢者の存在だ。大賢者はそれほどに強い。おそらく騎士団と魔法師団が結託しても完全に倒しきれるか分からない。
「双竜の言い分通りだ。ダリア王国は全大陸最強と名高い大賢者を有しておる。あの傑物を相手にどこまで善戦できるかも分からぬ。私がお前たちに言いたいのはもし戦争になれば真っ先に止めに入って欲しい。特に双竜。お前は大賢者と知り合いと聞く。可能ならばその時が来たら大賢者の所に行き説得をしてほしい。責任は私が持つ」
殿下の気持ちはすぐに理解できた。俺も無駄な争いはしたくない。
「その時が来たら全力でその命を全ういたします」
「お前たちは異世界人だからこそ頼める。アイリよ。その時はこの者らの助けとなるよう計らいなさい」
「はっ。そのつもりでございます」
話は終わり部屋を出た。思っていた以上にやばそうだ。いっちゃんとは戦いたくなぁ。そもそも勝てる見込みないけど。
4日後、外交の話でダリア王国に赴いていた国王が帰ってきた。とても険しい顔で機嫌もすこぶる悪い。玉座に着いた途端に、バン! と椅子のひざ掛けを叩きいた。そして、予感していたことが現実となった瞬間でもあった。
「これより騎士団、魔法師団、この国の全ての軍事力を総動員してダリア王国を討つ! 皆の者、戦の支度をせよ!」
なぜあのタイミングで殿下があのようなことを言ってきたのか、それはもうすでにあの時点でわかっていたのかもしれない。
俺は騎士団の隊列から抜け国王と真正面に向かい合った。




