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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第1章 東国の異形
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1-2. 『悲哀の魔女』

 ベル曰く、この世界には文化が発展した4つの大陸と、海を隔てた先には文明こそそこまで発展してはいないが大きな大陸があると言う。

 そして現在俺たちがいるのは発展している大陸の中の東の大陸“ソルエスト”にあるとある村に立ち寄っている。


「ここが東の大陸のギルドの支店だよ。ギルドでは職業を決めたり仕事をしたりできる場所。東の大陸にはこのギルドしかないからどこの支店を使ってもいいんだ」


 ギルド名“ヴェラチュール”。やっと異世界ファンタジーっぽいものと出会えた気がする。

 ベルに連れられてギルド内へ。中に人はいるが村なだけあって人は少ない。賑わっている事もなくただ座って休憩しているような、村の待合所と化している。

 ベルは受付員の人にお金を支払って何かカードを買った。


「これはギルドカード。会員証だね。これがあれば世界中どこでも使えるし、身分証にもなるから絶対に無くしたらダメよ」


 ベルは指を差して話を続けた。


「そしてこれが職業を判定してくれる魔法道具。指定の所に両手のひらを置けば後は勝手にやってくれる。さぁ」


 ベルに言われた通り手を置き、ベルはカードを指定の所に置いた。次第に光を放ち照射し、査定をしている。カードにはレーザーのようなもので次々と情報が刻印されていく。

 終わると光は消え、手を引きカードを手に取った。


「タクトすごいよ! ほんとすごいよ! SSランクだよ!」


「すごいのそれ?」


「すごいよ! ランクは上からSSS〜Sランク、A〜Cランクの順で決まってて。タクトは上から2番目なの! 初めて見たよSSランク。ちなみにランクの高さは単純な強さじゃなくて、より高い位のモンスターをテイムし易くすることができる基準なんだ」


「てことは俺の職はテイマーか。確か使い魔を使役するんだっけ? どうなのそれは?」


「職業はその人に合うものを選んでくれる。だからソーサラーでもテイマーでもこの職業が『当たり』みたいなものはないんだよ。それにSSランクって言っても、何もせずにいたら努力しているCランカーにも負けるから修行を怠ったらだめだよ」


「わかったよ。頑張る」


 この世界に来て初めてファンタジーっぽいことができた。嬉しくて早く魔獣をテイムしてみたい。そんな感情が湧き上がってきた。

 ベルに連れられて村を出てすぐの平原。辺りを見渡すとあちこちにモンスターがいる。


「とりあえず魑魅(すだま)系の魔獣をテイムしてみようよ。一番使いやすくて、便利な魔獣」


「魑魅? あそこにいるオレンジ色っぽくて丸いやつ?」


 指を差しベルに聞いてみた。


「うん、あれだよ。何回か剣で叩いて、『テイム』って言えばテイム完了になるんだ」


 なるほど。長い呪文やらがあるんだと思っていたが案外簡単そうだ。

 地面に体を落とし休んでいる魑魅相手に剣で1回叩いた。すると魑魅は「キュー!」という鳴き声を最後に動かなくなった。


「あれ? 意外と弱い?」


「敵としては最弱の部類に入るよ。使い魔としては別だけど」


 そうなんだと言い、さっきベルに言われた通り『テイム』と唱えた。魑魅はその声に呼応し光を放ち線状と成り右腕に宿った。


「テイムした魔獣はそうやって身体中に宿るんだ。そして見てくれればわかるけど宿った部分には赤い紋様が刻印される。その紋様を触ってみて、魑魅の能力とか名前とか分かると思う」


『雷炎の魑魅 サンフレイム《雷》《炎》B級

 →素の力は弱いが他の力との相乗効果で発揮する』


「能力は他の力との相乗効果だって」


「そう、それが魑魅の能力。弱い力でも魑魅の能力を駆使すれば通常時の力に底上げしてくれる。魔力の消費量にも繋がるし色々と便利なんだ」


 ベル曰くこの世の魔獣や武器などほとんどのものには上からS、A〜Cのランク付けがされている。武器や防具、指輪などの装飾品の中には『神器』と呼ばれる最高ランクかつ強大な力を持つ物もあるという。

 つまりB級は下から2番目。ベルが皆んな使うというのでそれを信じることにした。

 というわけで早速実戦で使ってみることにした。「来い! サンフレイム」の掛け声で魑魅は反応し、武器に宿った。


 使い魔の使用方法は2つ。1つは使い魔単体として戦う。2つ目は武器に宿し、その使い魔の能力を使うかの2択。

 武器は剣、槍、弓、盾。装飾品だと指輪に宿ることが可能。


「とりあえず試運転だからあの魔獣にしてみよっか。私が後衛、タクトが前衛。火の魔法使うから魑魅の能力で火力上げて倒してみて」


「わかった。やってみる」


 ついに初戦闘だ。ここまでベルに助けてもらったから今回から頑張っていかないとな。

 深呼吸をして、魔獣をロックオン! そして敵目掛けて特攻した。ベルはタイミング良く合わせて剣にベルの火が纏わりつき魑魅の能力を使い威力を底上げし、魔獣に喰らわせた。

 モンスターは真っ二つに斬り裂かれ散り散りになって蒸発していった。

 初めて魔獣を倒した。感触は普通で、ただこれならベルの役に立つ、そう思った。

 息の荒さがなくなり段々と気持ちが落ち着いて、剣を鞘に納め、


「これが魔獣を倒すってことなんだな」


「うん。魔獣も生き物だけど、野放しにしてると動物以上に悪さするから討伐しないとダメなの」


「いや、そうじゃなくてさ。ただこれで俺も戦えるって思って。まだまだ素人だけど、これから頑張っていくよ」


「私もまだまだだけど一緒に頑張ろうね」


 振り向きベルの目をみて微笑んだ。ベルも呼応し笑みを浮べてくれた。

 しばらくの間その近辺で魔獣の討伐を行っていた。体力が無いからすぐに息を切らしバテてしまう。ベルも魔力量の少なさで同じくバテている。

 この世界にはレベリングが無い。ゲームでは無いため当たり前と言えば当たり前だが、この手の異世界ファンタジーではしばしばその傾向がある。少し期待していたが、無いとなると地道に己の力を上げていくしかないようだ。

 ベルと共に村に戻りギルドの2階の宿泊スペースにて横になっていた。金銭的理由で男女が1つの部屋で寝泊まりすることは俺にとって初めてであり、かなり緊張してしまうのだが……。

 そして何も起こらず次の朝が来た。


「どうしたの目の下にクマができてるけど」


「いや、あんまり寝れなかったんだよ」


 ベルに理由は言えない。ベルがぐっすり寝ていたということは緊張していたのは俺だけのようだ。恥ずかしすぎる……。

 今日も魔獣狩りを行い、先に進む。狩りもだいぶと慣れてきた。現状魑魅だけだが今後増やしていきたいと思う。主に強いやつを。

 昼頃、狩りをしていると少し離れた所で人が群がっている。


「どうかしたんですか?」


 ベルは群がっている人々に声をかけた。いかにも冒険者という感じのなりをしている屈強そうな男はベルの存在に気付き、


「いやなに、この先に洞窟があるんだけどよぉ。そこに妙なやつが住み着いちまったんだ。そいつのせいで奥に行けずにいるんだ」


 その男曰く、この先にある洞窟には鉱山都市と呼ばれる場所があり、さらにその奥には出口があると言う。しかしその途中、よくわからないが中々の強敵がいるらしく立ち往生しているそうな。


「えっーと、俺行ってきましょうか?」


「あ? てめぇみたいなビギナーに何ができるんだ? 行って死んでくるだけだろうが」


 威圧的だがこの男、遠回しに心配してくれているのだろうか。

 俺は行く価値があると思う。理由は分からない。モンスターである以上テイムできるし個人的にしたい。

 俺はベルにそのことを言った。ベルも協力してくれることになり、その場から離れ、遠回りしてそこに向かうことにした。

 着くといかにもな感じの洞窟があった。ここに違いない。


「よし、行こうベル!」


「うん!」


 俺たちは暗い洞窟へと入って行く。入った瞬間身が震え、悪寒が走った。何かドス黒い執念や怨みを感じ取ってしまった。

 洞窟の中はとても暗い。ベルのお陰で光はなんとかなっている。しかし道中コウモリやモンスターがゴロゴロといる。

 正直かなり怖い。生まれてこの方ホラー系は大の苦手だ。ベルがいるから怖がる素ぶりは見せれない。これは完全に男の意地だ。昨日まで戦いすらままならない人間だったが、戦える今そんなことは言えない。

 キィキィと魔獣たちの鳴き声に体が震えて、息も荒く、不規則になっていく。


「ねぇ、大丈夫?」


「大……丈夫。怖くないよ。うん、大丈夫」


 ベルが心配してくれてる。情けない男だ。同じ年くらいの女の子が平気だっていうのに。それに強くなろうと取り繕っても体がそうさせてくれない。


「おん……」


 今声が聞こえた。「おん」と確かに聞こえた。もしかするともうそろそろなのかもしれない。

 俺たちは歩いた。ゆっくり慎重に。

 歩いて数分。たどり着いた場所は少し天井が拓けていて、広場の様になっている。そして俺たちの目の前に待ち受けていたのは紺色のローブを全身に羽織り、背の低い子ども位の背丈をしている。

 森や平原で見たような魔獣とは違う。完全に人型だ。顔はローブで見えないが人型であるのは間違いない。

 そして洞窟に入った瞬間感じた執念や怨みのようなものもこいつから放たれている。

 俺はこいつを見てそしてその怨みを肌で感じ取り本当の怖さを知った。この世界に来てから味わったモノとは訳が違う。本物の怨念。こいつからはそれしかない伝わってこない。ベルも同様に震えている。


「やるしかない……よな」

 

 俺は目を瞑り両頬を思いっきり叩いた。かなり痛い。けれど我慢して剣を抜き、一歩踏み出した。


「タクト?」


「怖い……か? 俺も怖い。けどやると言ったからにはやらなきゃダメなんだ。これは自己責任。だからやるんだ」


 カッコいい言葉なんてものは言えない。そんな余裕も自信も強さもない。ありのままの言葉、今の俺にはそれしかないんだ。

 剣が震えカタカタと音を立てている。怖がっている証拠だ。でも、それでも立ち向かわないといけない。弱くてもいい。けれど今この場を投げるともっと弱い人間になる気がした。それだけは嫌なんだ。


「なら私も頑張る。タクトだけじゃ心配だもん。いつも通り行こ」


「あぁ、わかってる。ベルが後衛、俺が前衛」


 難しいことはやらなくていい。俺もベルもまだまだ素人だ。基本に忠実にさっきまでの戦いと何ら変わらない。


「来い、サンフレイム!」


 俺が持っている唯一の武器、サンフレイムを剣に宿す。


「やああああぁぁぁ!」


 叫びながら魑魅の能力を使い、ベルも火属性魔法でアシストしてくれる。そうだ。いつもよりも強く! そして鋭く! 纏わりつく炎をもっと剣に収束させろ!

 敵の目前まで来て俺は剣を振り上げ斬ろうとした。しかし敵は水属性の魔法を使い火を打ち消し、水でできた球で俺は吹っ飛ばされた。

 ぐぅ……! 痛い……! 水の球を浴びたことも、そして地面のゴツゴツの所為で服が裂け、肌が露出し深く擦りむいたことも。けれどこれが、これこそが戦いだ。無傷で帰ろうなんてのは甘い。傷だらけになっても何とか生き延びてやる!

 何度も何度も喰らい付いた。けれど全て同じ手で打ち消される。これは俺とベルの手数不足だ。俺には火で攻撃するしかない。しかし、


「あれ……?」


 今思えばこうして立ち上がろうとしている時は完全に無防備だ。けれど敵は攻撃するどころか何もしてこない。


「まさか……な?」


 俺は痛みを我慢し、立ち上がった。そして鞘に剣を納め、ゆっくりと敵に近づいていく。


「タクト、だめ! 死んじゃうよ!?」


 ベルが声をかけてくれる。それでも聞こえないふりをして敵の目の前まで来た。それでも攻撃する気配はない。


「名前はわからない。けれど聞きたいりお前は誰を怨んでいるだ」


 この敵から発せられるオーラ、そして「おん」という泣き声。『おん』はおそらく『怨』ということを示唆しているのかもしれない。こいつはただ復讐に駆られているだけだ。よって俺たちとはもとより戦うつもりはないということだ。


「それだけの怨念、尋常じゃない。けれどお前がいることで迷惑している人もいる。この奥には鉱山都市があって、冒険者にとって重要な場所なんだ。だからここから離れてほしい。お前の怨みはここを通る人にとって関係ないはずだ。そんな人たちを巻き込むのか?」


 戦うつもりのない奴に対しできるのは言葉を並べ説得するのみだ。この世界で通じるか分からないが少なくとも目の前の奴に通じる気がする。


「お前の怨みはどれほどのものかはよく分からない。それでももしそれを晴らせる方法があるんならさ。俺と一緒に来ないか? そもそもそんな相手に出会えるかわからないし、晴らす方法もこれから探すけどさ、約束するよ。俺たちとこの世界の美しいものを一緒にいっぱい見よう。そしたら自然と怨みも無くなってしまうだろうしさ」


 俺はローブの魔法使いに向かって今できる限りの笑みを作り、手を差し出した。そうするとローブの魔法使いは浮いていた身体を落とし、ゆっくり手を出してくれた。


「テイム」


 静かに、そして慈悲を持って唱えた。

 こいつに必要なのは寄り添うこと。ローブの魔法使いは居場所がなく俗世から離れるため洞窟に潜ったのかもしれない。


「これからは俺と一緒に歩もう。ウィッチクラフト」


『悲哀の魔女 ウィッチクラフト《闇》A級

 →大昔あらゆる属性を扱うことができた天賦の才を持つ魔女。その力に恐れた故郷の人間により追放され、最後はその悲しさと自分を捨てた故郷の人間に対する怨みにより自身の魔法を暴走させてしまい死んでいった』


 

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