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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第4章 ヴェストフォル王国
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4-1.『ヴェストフォル王国』

4章開始です

 それはとある森の中。またしても魔獣の巣に出くわしてしまい逃げている。ただ逃げているわけではない。確実に魔獣を一掃できる機会を伺っているのだ。


「いくぞ、ナルカミ!」


 金糸の竜がまとまった魔獣たちを轟然と鳴り響く雷で刹那の間に一掃した。


「ふぅ。おつかれ、ナルカミ」


「タクト様の誘導のお陰でございます。拙はただ指示に従ったゆえ」


 このかなり丁寧な話口調をする使い魔の名は『雷神の権化 ナルカミ』

 ナルカミはカグツチと同様、武装しても武器に宿らないタイプで、雷を自在に操るS級の竜種だ。武装時は金色の細い糸の様相になる。カグツチとナルカミ、2体の竜種を使い魔にしていることからここ東の大陸ではちょっとした有名人で『2つ名』もある。実は嬉しかったりする。


「さて、ヴェストフォルの王都まであとちょっと。ナルカミ頼むよ」


「拙がお役に立てるなら喜んで」


 ナルカミの武装解除時の姿は中国神話の霊獣、麒麟にそっくりだ。4足歩行だが一応竜種扱いされる。そのことから馬のように乗って駆けることもできる。

 ナルカミの速さは数字ではわからないが少なくとも車よりも速い。これでもまだ手を抜いていると言うのだからとても頼りになる使い魔だ。

 こいつとの出会いは偶然だ。レオンの死後、彼の生家に行こうと向かっている途中西の大陸で出会った。ナルカミは散歩がてら4つの大陸中を巡っていたと言っていた。戦いは荒れに荒れ、最終的に首根っこ捕まえて地に落とし何とかテイムに成功した。


「タクト様、王都が見えてまいりました」


 思い出に浸っているとやっぱり時間の流れが速く感じるな。


「よし、ここからは歩くよ。ありがとう」


 ここに来た理由は特にない。まだ行ったことないから来たというだけで別段用事があるわけではない。

 入国審査を受けるため長い列に並び順番を待つ。並んでいると妙に視線が気になる。

 そして俺の番が来た。役員はとても若い男だ。多分俺よりも若い。


「相羽拓人さん」


「はい」


「風呂入った方がいいっすよ。臭うんで」


「俺臭う?」


「とても。風呂屋あるんで行くことを勧めます。あっこれ、風呂屋の住所」


「ありがとう」


 そういやかなり長い間風呂入ってなかった。髪の毛も無造作に伸びてるし、良い機会だから行こうかね。

 まず風呂屋だ。あの若い子から渡されたメモを見ると久しく見る日本語で書かれてあった。この世界では口語であろうと文語であろうと聴いたこと見たこと問わず『神の干渉』によってその人に理解できるように勝手に調整される。この異世界でも俺は日本語を話しているが当然現地人は日本語なんて通じない。しかし『神の干渉』により日本語が捻じ曲げられ聞き手が理解できるように翻訳される。

 しかしこのメモは俺が19年間使い続けてきた日本語で書かれている。つまりあの入国審査の際の若い男は俺と同じ異世界人だということだ。

 気にはなるがそんなことはさておき、風呂屋で疲れを癒し、床屋で散髪をして服装も一新した。

 さてさて宿屋でも探そうとふらふら歩いていると人集りが出来ている。気になって輪に入り込み先頭に出ていると決闘をやっていた。


「さぁ、次はどいつだ。この『双竜』が相手してやるぞ!」


 ――『双竜』? こいつが?


「俺、俺やる!」


「次は貴様か。いいだろう。形式は使い魔ありだが街への被害を出した瞬間負け。それ以外ならいい」


「りょーかい」


「準備オッケー。群衆も湧いてきたところで俺が使う使い魔はこいつらだ!」


 街中での使い魔使用は基本禁止だ。これは法律ではなくモラル的に。しかしこのような場で使い魔を使用することは端的に言うと自慢。「俺の使い魔スッゲェだろ」みたいな。使い魔の力使っても1割以下。無いに等しいのだ。

 で、身体がゴツい男の使い魔は2体の竜種。見た感じA級といったところ。


「じゃあ俺の番。来てくれカグツチ、ナルカミ」


 2体の竜は俺の周りを自由に浮遊している。これがこの今の俺自身。静かに漂う2体の竜を従える。


「いくぜ! 覚悟しろ、ガキ!」


 一ノ型『六連星』に加え二ノ型『閃雷』。切っ先が当たる瞬間にカグツチの爆発を加え後方に飛ばす。


「そういやアンタさ。面白いこと言ってたな」


 無様に転がる巨漢の男を前に上から目線で見下す。


「『双竜』とか何とか。悪いけどその名前、俺気に入ってるんだ。自分の成長の証でさ」


 カグツチとナルカミの力を混ぜ合わせ剣に上乗せする。剣は閃光を上げ、稲妻を纏い、それをすうーっと静かに持ち上げる。


「人の名前を、勝手に語ってんじゃねぇよ! おっさん!」


 剣は男のすぐ真横に振り下げられた。殺すことなんてない。それが俺の誓いだ。

 男はあまりの恐怖でそのまま気絶。民衆は「えっ? この男『双竜』じゃないの」「じゃあ私達騙されてたの!?」など騙されたことによる怒りが向けられた。


「まぁみんな待って。確認したいことあるから」


 そう言って俺は男の懐を探り、冒険者カードを見つけた。そこに刻まれていた名前は“タクト”の文字。ウィッチクラフトを出し解除の魔法をかけてもらうと名前はグニャッと歪み本来の名前が浮き出てきた。


「こいつテイマーだからおそらく悪徳ソーサラーに名前を変えてもらったんだろうな。ったく面倒なやつ」


 カードを民衆に渡してた。すると、


「あなたが本当の『双竜』?」


 と言ってきた。まぁこんなことの後だから疑心暗鬼になる気持ちはわかる。なので俺は自分のカードを渡した。


「解除の魔法をかけるなりしてくれ。正真正銘、俺は“『双竜』のタクト”。2体の竜と銀色とオレンジ色のガーネットの装飾、真珠のような煌めきを放つ宝剣。あとはアシハラ人ぽい見た目。な? 全部一致するだろ?」


 ニコッと笑い親指を自身に向けて指す。

 ちょっとした一悶着を終えその場を去ろうとすると1人の女性が声をかけてきた。


「あなたが『双竜』なら武闘会のエントリーはどうなさるの?」


「武闘会?」


「えぇ、確かこの男が『双竜』として大会にエントリーしたと言っていました」


 無性に汗が出てきた。余計面倒なことになる予感しかない。


「そのエントリーする場所と日時教えてほしいんだけど?」


「エントリーする場所は第2地区、ここの隣の地区です。日時はえっと……」


 女性は何やら目をそらし言いにくそうだ。


「日時は……明日です」


「聞き間違えかな? 何ていった?」


「明日……と」


「……」


 俺は走った。偽装男の服の首元を掴み引きづりながら第2地区の役所まで全力疾走した。そして着くと休むことなく扉を豪快に開け、受付の机をドンと自身のカードと偽装男のカードを両方提示した。


「この男! 明日の武闘会にエントリーしてると思うんだけどさ! 偽装してるから取り消してくれないか!?」


 受付の女性は理解が追い付かずオロオロとした。


「と、申されましても状況が理解しかねます。なので一からご説明を……」


「あぁ、ごめん。まずこの男が『双竜』のタクトとしてエントリーしてないか調べてほしい」


 受付の女性は言われた通り調べ上げた。するとその男の出場枠と提示したカードを見て驚愕していた。


「ち、違うます! どうしましょう!?」


「こいつのエントリー枠を削除してくれ。そうしたら万事解決だ」


「と申されましても、そうできないのです」


「はい?」


「今回、『双竜』のタクトがエントリーするという情報が民衆に渡るとすぐに観戦チケットが完売し、さらに見れない方々からのクレームが押し寄せたので王都中に対戦状況をリアルタイムで投影することになり、さらには国王陛下も『双竜』の戦いに期待するという旨の声明が発表されてまして……」


 事態は思っていた以上に発展していた。この国の王様まで絡んでるとは。


「はぁ、こんなのやらざるを得ないだろ。やるよ。ただし、これからのチェックは入念にしてくれ。この国のシステム()()すぎるから」


「申し訳ありません。以後注意します。では、えっとこれが大会の案内とこの国のパンフレットです。この度はこのようなことになりましたがご武運を」


 腑に落ちないがとりあえず王様のメンツや民衆の期待のためにとりあえず出場を決めた。

 役所を出るとローブを羽織った、体つきから鑑みておそらく男と思われる奴がいた。ローブの男は俺に近寄ってきた。


「探しましたよ『双竜』」


「はぁ」


「これどうぞ」


 渡されたのは鍵だ。


「これはこのメインストリートをまっすぐ4ブロック先にあるホテルの一室の鍵です。ぜひ『双竜』に使って頂きたい」


「感じからして怪しすぎるけどさ、何でそんな変な声作ってんの? わざとでしょ?」


「訳ありとだけ。『双竜』の偽装疑惑を聞きまして急いで駆けつけると本当に偽装していたとは。あと一歩であの男にこの鍵を渡してました。というのはさておき、どうぞ使ってください。今回の大会楽しみにしてますよ」


 そう言うとローブの男は方向を変え去っていった。

 とりあえず、言うことを聞いてみるのもありなので指示通り4ブロック先、5ブロック目の所にあるはず。


「でけーーーー!」


 目的地着いた。そのホテルの大きさに驚いた。5ブロック全ての土地にこのホテルが建っており見た目も古風でありながら決して時代遅れではない。豪華さはもちろん清潔さや気品ある雰囲気。向こうの世界でも張り合っていけるほどの超高級ホテル。一泊いくら程取られるのかわからない。


「あの〜、なんかよくわからない人にここのホテル使っていいと言われて来たのですが……」


「601号室……はい、『双竜』のタクト様。お待ちしておりました。お部屋にご案内します」


 とホテルマンに言われるがまま着いていった。

 場所は6階、最上階のスイートルーム。


「ではごゆっくりどうぞ。何かありましたら、そこの魔法道具を作動させてください。スタッフがすぐに参ります」


 丁寧な所作をしたホテルマンが出て行った。

 今日ここで俺は一夜を過ごすことになった。分相応とはなんだろうか……。



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