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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第3章 雷鳴は夕暮れと共に
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3-7.『依頼No.3 黄昏の塔②』

 第1階層を攻略し、続いて第2階層もレオンとのコンビネーションで突破。俺たちは第3階層に突入していた。

 今までの階層は岩でできた床や壁で味気ないものだったが、この階層に来て一変、木や芝生で敷き詰められた床、天井が高く太陽すらもある。


「幻覚魔法でも掛けられてんの?」


「多分そうだろうな。けど太陽から発せられる熱や光が本物そっくりな感じだ。かなり高度な幻覚魔法だ。これほどのものはヴェストフォル王国で出会った奴くらいだな」


「ヴェストフォル王国、確か東の大陸のダリア王国とも引けを取らない列強国。そこにそんなすごい奴がいるのか」


「下っ端だったが幻術のみの実力だけじゃ王国トップだろうよ。キャリア的にまだ足りてねぇから下っ端で落ち着いてっけどあいつは多分これから這い上がっていくんだろうな。話はその辺にして先進むぞ。今回は少し違うから周囲の確認は徹底しろ」


 木が生い茂っているせいで辺りは見渡し難い。より慎重に進み数十分歩いた時のこと。レオンが突然立ち止まりキョロキョロと辺りを確認した。

 無言で剣を抜き俺の顔に向かって突いてきた。突然のことで目を瞑ってしまいまた開けると顔の真横に緑色の魔獣がレオンの剣によって串刺しにされていた。


「タクト、気をつけろ! 敵は保護色で周りと同化してやがる!」


「わかった!」


 保護色の能力を持つ魔獣の対抗策は微量の魔力を体内から放出する方法がある。その魔力の中を通ると自身に伝わり居場所がわかるというものだ。簡単に言うとレーダーの役割を果たす。レオンは広範囲にわたって展開できるが、俺はまだ30センチ以下であまりに実用性に欠ける。

 動きを掴ませないよう立ち止まることなく木を利用し俊敏に辺りを翔ける。

 しかし、ほんの少しの着地時間、5秒もないだろう。その瞬間目の前からヌッと同化していた魔獣が現れ切りつけられた。体重を後ろにかけ何とか躱そうとするも魔獣の腕のリーチが長く、鋭利な刃物のような腕は左目を深く切り裂き大量の血が緑の地に流れ込んだ。

 幸い痛覚麻痺の魔法により痛みはない。ただバランスが取れず、体力も残りわずかでどうしてもふらつく。


「タクト、大丈夫か!」


 俺の目をやった魔獣を瞬殺し、その他の魔獣も素早く撃破したレオンが俺のもとにやってきてすぐに治療してくれた。


「ありがとう。助かったよ」


「安心するのは早い。お前の目が完全に治るかどうかわかんねぇ。うまくいけば治るんだが……」


 治療を終えた。レオンは手を引き、言った。


「タクト、目は見えるか?」


 俺は言われた通り目を開けた。しかし左目は光を通さず真っ黒に染まって見えている。いや、見えているというのも間違いかもしれない。少なくとも左目にレオンの姿はない。


「いや、見えないよ」


「クソ! 遅かったか!」


 レオンは地面を拳で殴りつけ怒りを露わにした。


「目の治癒は早ければ早いほど完治する可能性は高い。タクトの目が見えてねぇってことは治癒が遅かったということ。すまねぇ、俺がもっと速く駆けつければ……!」


「レオンのせいじゃ。元々俺の不注意だからそんなに責めないで――」


「いや、そういうんじゃねぇんだ。これは俺のポリシーだ。味方には絶対に怪我はしてほしくない。もちろん死んでほしくもない。例え怪我をしたとしても絶対に、どんなことに手を出してでも治してやると決めていたんだ」


 レオンの仲間意識は俺の想像の上を行っていた。俺もレオンのことが好きだし、仲間意識はもちろんある。それでもレオンはそれを超える。

 この旅で何度もレオンに助けられた。どんなに失敗しても怒ることなく、常にその時どうすれば良いかを教えてくれた。レオンは俺の友人で師でもある。そんな存在であるレオンからこのような言葉を掛けられたことは驚きもあるが嬉しくもある。自分を何よりも心配してくれてくれているから。

 ふらつきながらもレオンの肩を借り前へ進むことになった。ウィッチクラフトのアシストで左目の役割を担い何とか戦いに参戦。前ほどの動きはできないが少しでもレオンの助けとなるために最善を尽くした。

 第3階層のフロアボス姿はカマキリのような大きな鎌を持ち大きさはレオンの3倍以上はある。レオンを主軸に攻撃、俺は足を狙い動きを止める役割を担った。鎌を切断し攻撃手段を奪ったのちレオンが魔獣に土手っ腹に大穴を開け勝利を収めた。

 しかし第4階層に上がる途中、俺の足はガクガクで体力も魔力も雀の涙ほどしか残っておらず、遂には階段で足を引っ掛けそのまま呼吸困難寸前の荒い呼吸で意識がだんだんと朦朧になっていく。


「ここまでだな」


 レオンの声だけが聞こえた。その後に大きな壊れる音が聞こえ、気がつけば俺はレオンに胸ぐらを掴まれ身体の半分は外に出ていた。レオンは硬い壁を無理やりこじ開けたのだ。


「何を……」


「タクト、よく頑張った。あとは俺に任せな」


 第1階層で励まされた時と同じようなレオンの優しい声。しかしどこか寂しげで儚い雰囲気がある。


「お前はまだまだ強くなれる。俺よりもだ。だから頑張って生きろよ! 俺が見守ってやるからさ。……カグツチ、聞こえてんならでいい。タクトを頼む。カグツチがタクトを導いてやってくれ」


「レオ……ン……」


「じゃあな」


 レオンは俺の胸ぐらから手を離しはるか上空をとてつもない速さで落下した。その時、俺の意識は完全に失った。


 気持ちがいいほどのせせらぎと鳥の鳴き声で目が覚めた。

 どうやら生きていたらしい。近くに綺麗な小さな湖の畔と川があった。澄んだ空気が身体中に染みわたる。

 俺の横にはカグツチが護衛兼看病をしてくれていた。


「主人よ、目覚めてよかった」


「この目の包帯は?」


「主人の目は死んでいる。その目を公に見せるよりはこうする方がまだマシと判断し付けただけだ。その他の怪我はウィッチクラフトが治してくれた」


「そうか、ありがとう。レオンは?」


「レオンハルトについては一切を存じぬ。主人はレオンハルトに落とされ、当方が主人をここに連れてきた。その後のことは誰も知っているものはいない」


 その言葉を聞き、身体を起こした。しかしカグツチがそれを静止させてきた。


「主人の身体は今戦える状況ではない。今は療養に専念すべきだ。レオンハルトについては村で待つことにしよう」


 確かに魔力はまだ満タンではない。身体が疲労した分魔力の回復が遅れている。この状況で戦おうとしたなら一瞬で終わる。カグツチの言う通り村で待つしか今の俺にはできない。

 村はいつも通りの生活が営われていた。衛士が村中を囲うように配置されている。村内は活気はないがとりあえず人の姿は見える。

 ここにはギルドがない。依頼を発行するだけでも遠くの町まで出かけなければならないほどど田舎だ。

 この村の教会にて俺は待つことにした。炊き出しをもらい暖かい食事を口に入れ、一度の休息を得た。

 この教会で一夜を過ごすことになった。宿を探したがどこにもない。よってここになった。毛布を敷いて絡まるように細い木の椅子の上で寝た。何度か椅子から落ちて目覚めたがまたすぐに寝直した。

 次の日の朝。最後に椅子から落ちて以降床で寝ていた。腰や背中を痛め起き上がるのも楽じゃない。こういった生活が2週間も続いた。

 2週間後のある日の夕方前のこと。怪我もほぼ治り普通に走ったり魔獣と戦えるほどにはなった。外に出て村人とも談笑し過ごすようになった。そんな最中ある会話が耳に入った。


「なぁ、婆さん。最近魔獣の出がなくなったようにも思うんじゃが何があったのかね」


「さっぱりね。村長が依頼出してそれっきりわからんの。でも不気味やなぁ。急に出てこんのも」


 老夫婦の会話だ。聞き流せばそれだけのことだがこれはかなり重要なヒントだ。魔獣が出ないということはレオンが何かしらのアクションを起こしたということ。つまり依頼は達成されレオンは今、その帰路につく途中なのかもしれない。

 俺は急いで支度をし塔内に行く準備を整え村を全速力で走りレオンのいる場所に向かった。



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