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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第3章 雷鳴は夕暮れと共に
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3-6.『依頼No.3 黄昏の塔』

 悪魔狩りを終え、さらに数々の依頼を受けるとともにレオンの指導の下、特訓を開始した。敵と相対するための力と技術だけでなく、魔獣の特性や対処の仕方などレオンが有する知識のありとあらゆるものを俺に教えてくれた。


「じゃあ、最後に邪竜について教えるぞ」


 木陰で座りながら話すレオン。所謂、座学の授業はこうやって休憩時間を利用して行なっている。


「邪竜ってのはある条件下ならば最強を名乗れるだけ力がある。お前のオロチも邪竜だったよな? なら何かなかったか? オロチが強すぎる瞬間が」


「確か水があれば絶対に傷つくことはなかった。すぐに修復してたし」


「オロチは水さえあればほぼ無敵ってわけだ。じゃあどうやって倒した?」


「結界で水がないフィールドを作った」


「つまりオロチは水が無いと傷の修復はできねぇ。これで1番のアドバンテージを失ったってわけだ。それと邪竜はそのアドバンテージを失うと弱体化してしまう。大体本来の力の半分くらいは減るな」


 だから少人数でオロチに勝てた訳だ。それなら納得がいく。そうでないとたった2人と数体の使い魔だけで倒せるはずがない。


「という感じで全て話し終えたわけだけど、質問あるか?」


「ありませーん」


「じゃあ、西の大陸最後の依頼に行くか」


「この大陸も終わるのか。案外早かったような、そうで無いような」


 向かう先は西の大陸北西部、辺境の地『アストリッド』という村。そこに10年前巨大な塔が突然現れた。中からは獰猛な魔獣がわんさか出てきては村を襲い、村人も必死に抵抗していたが、もう村人たちは限界を超えてしまいレオンに依頼した。辺境の地であるため旅人はほとんど近寄らない。よって今まで放置されていた。


「にしても高い」


「雲より下といえど近くから見ると高いな」


 レオンは何のためらいもなく扉を開け入った。

 グッと扉を押し開けると、中は薄暗く少し湿気ている。

 入るとすぐに身体がピリッと電流が走るような、内部の緊張感を全身で感じた。


「タクト、剣を抜け。ここで抜かねぇと抜刀なんてしてる暇なんてねぇぜ、これ」


 レオンがそう言うと、魔獣の鳴き声が聞こえた。1体だけじゃない。2体、3体、それ以上の数の鳴き声が幾十にも重なって1つの咆哮となった。


「外から見た時とは塔内部の大きさが違うかもな。多分空間が捻じ曲がっているせいで内部はかなり広い。そんでもって大量の魔獣と何階層あるかもわからない塔。こりゃ近づきたくもねぇよな」


「レオン、どうする? ただ戦っても犬死が関の山。早くここから脱出した方が……」


「確かにそうできれば良いがな。見ての通り後ろの扉は完全に閉まってやがる。壊せないこともないが触っただけでもわかるが、かなり頑丈な壁だ。例えばこの壁を壊した場合、その穴から魔獣が溢れ出てくる。そうなれば村が襲われる。俺たちの依頼は村に一切の損害を出さずに完遂すること。言うだけで十分にわかる無茶な依頼だ」


 その言葉とは真逆に口はにやけ、強者を求めて飢えてる魔獣のような顔をしている。


「気合い入れろよ、タクト!」


 レオンが突っ込んで行くと魔獣達も同時に動き出し内部は一瞬にして乱戦状態になった。俺もカグツチや他の使い魔で応戦した。

 1体1体は然程強くない。しかし数が集まればそれは別の話。質より量とはよく言ったものだ。これほど恐ろしいことはないくらい次から次へとやってくる。レオンはいつものように余裕のある戦いをしているが、戦闘技術が未完の俺にとってこの状況はとても辛い。いつ命が持っていかれるかわからない。未だレオンに習った戦い方が出来ていない。それさえできればこちらも余裕が生まれるというのに。

 8割方レオンの活躍によって第1波を乗り越えた。しかし手を膝に付き荒い呼吸だ。この先どれだけの困難が待ち受けているかわからないというのに。


「タクト」


 後ろからレオンが俺の肩をポンと触って来た。


「今までの戦い方よりも断然に良かったと思うぜ。確かにまだ体力面は心許ないがそれでもあの量の敵をしっかりと捌けたんだから自信持った方がいい」


「でも、レオンに習った戦い方の1割もできない。そんなことで自信持っても仕方ないないよ」


「あくまで俺が教えた戦い方だ。それが全てじゃないんだ。それに戦いってのは100%を出し切れるもんじゃねぇ。大体8割出すことができれば十分強敵にも通用すると思うぜ。だから安心しろ。あとたった7割足りてねぇだけだ。2の3倍のプラス1割だ。な? これだと少なく感じるだろ?」


「何言ってんだよ、レオンは」


 いつもそうだ。レオンは俺を勇気付けてくれる。どんな状況であっても笑わせてくれる。レオンがいなかったらと思うと今頃つまらない旅をしていたんだろうと考えてしまうほど俺の中でのレオンはとても大きな存在なんだ。

 息を整え塔内部を歩き回った。あれから最初のような怒涛の勢いはなく、ちらほら現れるくらいで数は少なくなっている。

 捻じ曲げられた塔内部はとても広く何度も同じ道に来てしまい四苦八苦するも、先程とは明らかに違う道に到達し、その先に行くと自身の身長の2倍くらいの大きな扉に行き着いた。扉を開けるとそこは円形の広場だった。

 その空間に1歩踏み入れると突然周りから円形に沿って1周分の篝火が付いた。辺りは明るくなりそこで初めて敵の存在に気がついた。黒くトカゲのような形でサイズはトカゲなど豆粒程度に思えるほど巨大。見た目とそのオーラからA級の竜種。ギョロっとした黄色い目はこちらを凝視し、いつでもこちらを捕食できる態勢だ。


「なるほど、大体この塔がどんな感じかわかった。タクト、あそこに階段がある。こいつはつまり俺たちを上に行かせない為の番人だ。この上の階層にもこう言う奴がいるんだろうよ。だが奴等さえ倒せば最上階まで行ける。こりゃちっとは本腰入れねぇと」


「……レオン。頼みがあるんどけど」


「なんだ?」


「俺にあいつをやらせてほしい。テイムするわけじゃないけど、さっき出来なかった分をここで取り返したい。レオンにばっかやらせてたら俺は一生成長できないと思う。だからやらせてほしい」


「タクトが言うんだ。別に反対はしねぇよ。だけどやるからには本気でやれ。俺は一切の手出しをするつもりはない」


 レオンは握り拳を俺の胸にドンと当てた。


「信じてるぜ。お前は強い。俺が保証してやる。俺が教えたこと、戦いの中で学んだこと全部ぶつけろ。さぁ、敵さんもお待ちかねだ。存分に戦い、存分に楽しめ! それが強くなるための秘訣だ」


「ありがとう、レオン」


 信じてくれる仲間がいることがこんなに心強いことはない。

 今までレオンに教えてくれたことを思い出せ、レオンの戦い方をトレースしろ。そして俺は六連一刀流の使い手。その全てを出し切ってこそ次のステージに行ける。


 ――さぁ、行くぞ。これが俺の全てだ!


 剣を素早く鞘に納め、耳飾りに武装している魑魅ライコウの力を最大限に引き出した。そしてわずか一足で敵に近づき間合いに入った。六連一刀流一ノ型『六連星』が竜の目を切り裂いた。ここで止まらないのが六連一刀流。2連撃目は六ノ型『填星』を繰り出し片目を完全に潰した。これで敵に視覚が失った。その場合相手が取る行動は一目瞭然だ。痛みで暴れ回り、攻撃が単調になる。3連続突きの内2突きは目を潰し、残り1突きは鼻を潰している。よって俺の居場所は片目と聴覚と触覚のみで判断しなければならない。

 絶好のチャンスだ。例え竜種であっても目と鼻を潰しされたら簡単に敵を捉えることはできない。


「行け、カグツチ!」


 カグツチは敵の竜種を炎で包み込み燃やしていく。A級の竜種といえど、格上の竜種相手には敵わない。それでも敵は番人としての役割を果たすため動けない身体を無理やり動かす。

 レオンに習った戦い方は素早く、急所を探し、確実に打てるように動くこと。敵の急所はカグツチのおかげでもう見切った。場所は腹側から心臓に向けてのたった1筋。斜めに45度くらいの角度に突き刺せば一撃だ。そこ以外は硬い装甲で剣が心臓まで届くかどうかわからない。腹は常に地面に付いている。その状況で鍵を握るのはウィッチクラフトだ。


「頼んだぞ」


 ウィッチクラフトを武装解除し、彼女の魔法で重い竜を重力操作で簡単に持ち上げた。あとは突き刺すのみ。ただの素の剣だけでは流石に無理だ。カグツチを纏わせ、


「終わりだ!」


 サンフレイムの力で底上げされたカグツチを飛ばし、針の如く、細く鋭く伸びた炎竜は敵の急所を打ち、バラバラに砕け散った。


「やればできるじゃねぇか」


 レオンの賞賛の声に俺は親指をグッとと立て笑顔で応えた。



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