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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第3章 雷鳴は夕暮れと共に
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3-4.『依頼No.2』

 俺たちは西の大陸南西部に向かっている。そこに突如現れた大量の悪魔種を討伐するのが目的だ。


「タクト、悪魔種って知ってるか?」


「竜種の対になる存在としか」


「認識としてはそれでいいんだが、もっと詳しく悪魔種とは何なのか、だ」


 悪魔種とは何か。その問いに対し俺は全く知らない。この世界に来て数ヶ月経つがあまり生き物について知ろうともしなかった。

 俺はその問いに首を横に振った。


「悪魔種ってのはある種族が変異して生まれる。その種族が妖精種。妖精が、有り体に言えば堕天すると悪魔種になるわけ。研究者の中には竜種と悪魔種の双璧じゃなくそこに妖精種を加えた三竦みと考える人もいるくらいだ」


「天使、神の使いが堕天して悪魔になるんじゃないんだ」


「神の使いは星の属性を意味する。そんなすごい存在が悪魔種なわけねぇだろ。ちなみに神使は神獣とも言われてるぜ」


 向こうの世界とは少し違うのか。

 レオンはこのようにとても詳しい。いろんな研究者とのパイプ、各地の図書館で見た文献の知識らしい。


「悪魔といえば前任のマスター・テイマーが有名だったか」


「前任?」


「前任のマスターは全てを悪魔種で構成されててな。それだけでも珍しいのに完璧に使いこなしてたんだと。悪魔種は不忠な性格だと言うのによくやるよな。それでも現マスターに負けたんだが」


 とレオンは言う。さらに、


「現マスターは強い。けど前任との戦いで片腕無くしてるから全盛期ほどじゃないとも聞くな。どこかの国に所属してるわけじゃないからどこにいんのか分かんねぇんだけど」


 レオンは普通に言うが、俺にはそうは聞こえない。現マスターはいっちゃんと互角。まして両腕があればさらに強いときた。マスターは『知』や『武』を極めに極めた人間がなるべくしてなるんだろう。

 数日後、目的地に到着した。遠目から見てもわかる。田畑や綺麗に並んでいる木々が荒らされている。


「さてさて。こりゃ住民も困るわな」


「見た感じ悪魔なんて居なさそうだけど……」


「悪魔種は基本夜行性だ。昼近くのこの時間帯は姿は見せることはない」


「そっか」


 荒れた町。せっかくの綺麗な木組みの家が傷や噛み跡で荒れている。人の気配は少しだがする。俺たちを窓から覗く子どもたちがちらほら見える。

 町の中心部、町長の家にやってきた。町長によると、悪魔たちは何の前触れもなく現れた。最初は1体だけで町の者だけで討伐はできた。しかしその悪魔は倒されるや否や分裂し無数の悪魔が生まれた。倒せばまた分離してさらに数は増え最終的に対処できないところまで来てしまいレオンに依頼した。


「なるほど。その悪魔たちはおそらく分身なんでしょうね。悪魔種の性質は場所を見つけその場所が過ごしやすいか否かを判断する。その時自身の分身を使うわけです。分身を攻撃すると、危機本能により分身体をさらに作り上げ数を増やし過ごしやすい環境にします」


 レオンが町長の話を聞き大方の予想をした。


「ということは本体を叩けばこの依頼は終わり?」


「あぁ、けど本体がどこにいるかは流石にわからないからまずは雑魚狩りだな」


「でもそんなしたら……」


「ふっふっふっ。俺を誰と思ってる? それくらいの対処方くらい心得てるぜ」


 俺たちは夜まで町長の家で過ごしついにその時間がやってきた。


「虫のように湧いてんな、悪魔たちは」


 木々や田畑に広がる悪魔たちは俺たちのことなんて見向きもせず荒らしている。


「とりあえず、タクト。お前はカグツチで討伐すればいい。カグツチはデビルスレイヤーなんだろ?」


「そうだけど、それで分裂は防げるんのか?」


「たりめぇだろ? 何のためのデビルスレイヤーなんだよ。お前はそれで行くとして、俺はちょいと工夫しないとな。ルミナス・<エクソシスム>」


 レオンの剣に光が集まった。“エクソシスム”というくらいだから恐らく悪魔祓いの補助系魔法だということはわかる。


「さて、んじゃやろうか。ちょうど向こうもやっと俺たちに目を向けたみたいだし」


 周りを見ると悪魔たちが俺たちを敵視していた。レオンの剣を見て警戒したのだ。


「タクト、全部は殺すな。何体か残しておけよ」


「わかった」


 そこからは悪魔たちとの戦いが始まった。俺は次々と悪魔をカグツチで焼いていく。それでもキリがないほどの量。いつしか俺は背後を取られ小さい悪魔に取り付かれた。


「クケケ。オマエ、ユダンした。アクマにタテツクとドウナルかオシエテやる!」


 耳にキーンと甲高い音がした。頭を抱えるほどに痛い。剣は手から離れ、立っていた足は膝をついた。

 気がつくとそこは数ヶ月前までいた実家だった。布団の上で呆然としていると突然扉がぎぃっと開いた。


「拓人、いつまで寝てるの? 朝ごはんだよ」


「う、うん……」


 起こしに来てくれたのは姉で名前は(みお)。寡黙で感情があまりでない。趣味がガーデニングでその時は楽しそうにしてるのをよく見る。ちなみに家族構成は父、母、兄、姉、俺の順番だ。


「おかしいな。確かレオンといたはずなんだけど」


 窓を開けて確認しても何十年も見た地元の景色。匂いも感覚もまんま実家だ。日にちは5月の土曜日。春の陽気が終わり夏に近づき暑さを感じさせる。


「帰ってきたのか……?」


 実家は一戸建て2階の和風建築。敷地も周りの家に比べたら少し広い。高祖父の代からここに住み、俺が生まれる1年前にリフォームしてるため年季がさほど感じられない家だ。ただの和風というより和風モダンの建築仕様というのが正確かもしれない。

 下に降りると家族みんながもう畳の上に座り朝ごはんの準備をしていた。


「拓人、おせぇよ。飯冷めるだろ」


 そう言うのは兄の拓実。主観だがかなりうざい正確。澪ねぇはよく人格破綻者と言ってたりする。今程度ならよく言うが嫌味を言う時はとことんまで言い、嫌われる天才。


「拓人も揃ったしそろそろいただきましょうか」


「うむ。そうだな」


 父の合掌に合わせて母、姉、兄そして俺が手を合わせ「いただきます」と言う。時代遅れ感があるのは重々わかってるが我が家ではこれが一般的なのだ。休日は家族揃って朝ごはんを食べる。これが相羽家の日常。

 朝ごはんを食べ終え部屋に戻った。1階は畳の部屋が多く、2階の床は木の板でできている。

 俺は椅子に座り今の状況整理した。

 食べてる時に気付いたが、身体に刻まれた使い魔たちの紋様がない。剣も指輪も耳飾りもない。

 俺は確かにあの異世界にいた。けれど目が覚めればそこは実家だった。でも向こうで最初にベルと出会い、旅をして、いっちゃんと再会し、レオンと依頼を受けるため旅をしていたはず。けれどそこまでしか思い出せない。

 これほど暇を持て余し怠惰に過ごした日はないだろう。人生で1番暇な時を過ごしている。窓を覗くと澪ねぇがガーデニングしていた。暇なので下に降りて声をかけた。


「澪ねぇ、手伝おうか?」


「……じゃあそこ新しく植えたいものあるから、土を掘り起こして、ふるいにかけて細かくして」


「はいよ」


 無言で淡々と農具用のザルで土を細かくしていく。澪ねぇもハサミを持って余分な枝を切ったり、成長してきたものを写真で撮ったりとしていた。この時の澪ねぇは1番楽しそうにしている。


「そういや、クソ兄貴は?」


「拓実は多分、出かけてる。どこか知らないけど、どうせパチンコでしょ」


「あいつが家にいないだけでゆっくりできるからいっそ、一人暮らしでもやってくんないかな」


「多分あの性格で一人暮らししたらご近所問題起こしそうでやだ」


「はは、ごもっとも」


 と、言う具合にあのクソ兄貴は性格が悪い。学生時代は問題を起こしたり、一歩間違えれば警察のお世話になりかけたこともある。母さんも父さんも基本甘いから懲りずにまた色々やらかすのがいつものパターン。もう成人しているのにあんなんじゃ先が思いやられる。

 15時くらいになると今日のガーデニングが終わり、澪ねぇも満足気だ。

 風呂に入り汗を流し、また部屋でボッーと過ごした。だんだんウトウトしてきてそのまま寝落ちした。



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