3-3.『依頼No.1』
次の部屋に入るとそこは大広間。多くの人間が一堂に会し、中心にある大きなオブジェクトに膝を付き祈っていた。
俺たちが入るとすぐに祈りをやめ群衆から2人の男女が現れた。
「テメェ、何者だ?」
ガテン系の男が手をゴキゴキ鳴らしながら近づいてくる。
「俺はレオンハルト・フォン・アイゼンシュタイン。いずれマスターになる男だ」
「ちょっ、レオン。今そんなんいいだろ」
「タクト。口に出して言わないと叶う夢も叶わねぇぞ」
「いや、そうじゃなくて……」
「何無視しとんじゃあ!」
男が渾身の拳を突きつけて俺たちを襲ってきた。俺はサッと躱し、剣を引き抜いた。
レオンはというと避けた時にはもう男の頭上にいた。そして雷を纏う魔法を起動させ男を蹴り落とし地面にめり込ませた。
「で、もう1人の幹部様は来ないのか? 来ないなら仕掛けるけど?」
幹部もモブも一切言葉が出てこない。少しずつ後退りしていた。
「ライトニング<セイバー>!」
幾本もの雷の剣はリベリオの団員を次々と攻撃していく。
「マジですか……」
あれだけいた人数が数秒のうちに皆倒れこみ戦闘不能にした。
圧倒的で純粋な強さ、その一言でレオンを言い表わせる。レオンが繰り出す雷の魔法は通常のそれとはわけが違う。威力はもちろん、自在さ、弱点を見抜きそこを的確に当たる正確さがある。それらの要素を持っているのがレオン。いっちゃんを除けば俺が見てきた中で1番強い。
レオンは団員たちを縄で縛り上げ拘束していく。俺もそれを手伝った。
「これだけいれば重要参考人としては十分だろ。時期に警備隊も来る。とりあえず一件落着だ」
「幹部がいるってことはボスもいるんじゃ?」
「そいつを探すための参考人だ。ボスと残り4人の幹部は今逃亡中で居場所がわかんねぇからこいつらだけは生かさねぇとな。見つかったらまた俺たちの出番ってわけだ」
レオンはそう言った。
アジトを出るとレオンは目一杯空気を吸った。今まで地下にいたから外の空気は気持ちが良い。
「さてさて、次の依頼はっと……」
「えっ、まだあんの?」
「まだって、西の大陸だけでもあと数個あるから」
ポケットの中から数枚の依頼書が出てきた。さらに別ポケットからは別の大陸の依頼が4枚出てきた。
「俺ってば、いろんな奴から指名で依頼来てさ。終わってもまた別の依頼で休む暇ないんだわ」
にこやかに言うレオン。
俺はその時は思った。今までレオンと旅してきた人がなぜすぐ別れるのかを。これに付き合っていたら普通の冒険はできないだろう。
「付き合うよ。やることないし」
「サンキュー! 今までそれで別れてたから今回も心配だったんだぜ〜!」
レオンは俺に抱きついてきた。
やっぱり。そんなことだと思ったよ。
次向かった先は同大陸にある小さな村。最近ここで竜種が住み着き村人が難儀している。それを解決するのが今回の依頼だ。
「まさか『雷鳴』がこの依頼を受けてくださるとは思いませんでした。こんな辺境の小さな村なのに」
「わざわざ指名してくれたんですから当然です。私も冒険者の端くれ。であれば依頼を受けるのは当然でございます」
いつもの荒っぽいレオンとは打って変わり、村長に対してはかなり丁寧に話している。
「して、もう1人の男は誰ですかな?」
「私の協力者です。名前はタクトと言って、つい最近出会ったばかりです。ですがご心配なく。彼はテイマーでS級を2体保持しております。実力は十分かと思いますのでこの者とともに討伐させていただきます」
「そうですか。テイマーがいればさらに安心でございますな。我々は安全のため村の避難区域におります故、終わったらお声掛けを」
そう言って村人たちが去って行った。
俺たちは竜種がいる所へ向かった。現地に着くと丸々とした、亀のような竜種がその場で陣取っていた。
「こいつか、依頼の竜種。まさか鎧竜とはな。これまた厄介な敵だぜ」
「がいりゅう?」
「見ての通り、鎧を身に纏った姿の様でとにかく硬い。竜種というよりこいつは亀みたいだけど一応竜種だ。見た感じおそらくA級だな」
レオンは剣を抜き構えた。
「早速行くぞ。ライトニング<コート>」
雷を纏い、剣先を鎧竜に向け瞬間の速さを持って鎧竜に突き刺したが、刺さったのは僅か。さらに寝ていた鎧竜は目を開けゆっくりと身体を起き上がった。
レオンは剣を抜き距離を取った。
「あいつやばいほど硬ぇな。タクト、1つ聞いておくがテイムすんのか?」
「いや、いい。こいつ俺の趣味じゃない」
「オーケー。じゃあ全力でぶっ潰す!」
レオンは得意の速さで何度も攻撃する。そうすることで硬い鎧の弱点を探るのだ。本来であれば手足の関節や腹の部分など硬くない部分を攻撃すればいいのだがレオン曰く、鎧竜の特徴として、動かない時は皮膚そのものも鎧の如く硬くなる。攻撃時はそれを解く。攻撃を躱せられればいいのだが鎧竜は基本広範囲による攻撃が主なのだと。待っていれば攻撃の餌食になる。だからこうして何度も攻撃して弱点を絞るしかない。
俺はレオンの指示でいつでも動ける準備をしている。レオンが弱点を探し出せた瞬間が俺の役目だ。中途半端に生かすと本能で硬い鎧が全て攻撃に転じもっと悲惨なことになるらしい。一撃必殺が求められる。俺は全神経を注ぎカグツチとサンフレイム、ウィッチクラフトの力を溜め込んでいる。
今か今かと待ちわび、ついにこの時が来た。俺の耳でも聞こえた鎧がピキッと少し割れる音。その瞬間溜め込んでいた力を解放した。
「今だ、タクト!」
その掛け声とともに渾身の一撃、六連一刀流六ノ型『填星』を放つ。一突き一突きが竜の咆哮のように、とてつもない威力が放たれた。
鎧竜には3つの穴が重なり大穴が出来た。完全に貫通し向こう側が見える。
「スッゲェな、お前の力。向こう側が見えてら」
「いや……これ結構疲れるからあんまやりたくない」
「それはタクトの魔力不足だな。身体鍛えねぇと健全な魔力は身につかねぇよ」
あれだけ動き回ったレオンはピンピンしている。よほどの体力と魔力量、
「さすがSSSランカーだよ」
「ん? 俺SSSランカーじゃねぇぞ」
「は? じゃあSSランカー?」
「違ぇよ。俺はSランカー。ほれ証拠見てみ」
レオンはカードを俺に渡してきた。そこに刻まれてあったのは確かにSの文字。
「いやいや、あれだけの強さSなわけない。少なくてもSSランクはあるだろ。俺がそうなんだ。俺より低いわけないじゃん」
「えっ、お前SSランカーなの? 初めて知ったわ。……まぁ簡単に言うと、研究者によればたまにいるんだと。ランクに見合わない実力者が。それに俺が当てはまってるってわけよ。まぁ例えSSランクだろうとSSSランクだろうとマスターになることには変わりねぇけど」
意外な事実が発覚。レオンがSランカーとは夢にも思わなかった。あの強さだ。誰もがSSSランクを想像するはずだ。
思い出した。会ったばかりのベルが確か『努力してるCランカーに負ける』とか言ってたっけ。レオンもそういう類なのだろうか。それとも言ってた通り元々強いのか。まぁどっちだろうとレオンはレオンだけど。
「というわけで、早く村長に報告して次に行くぞ」
「次どこ?」
「次は西の大陸南西部に突如出現した悪魔たち。その討伐だ!」




