3-2.『雷鳴』
西の大陸、その特徴は4大陸で2番目に大きく、列強国が数多く存在する。さらに職人気質な人が多く職人都市のような国も数多くある。東の大陸においてギルドは1つしかないがここは数多くのギルドがある。所謂職人ギルドと呼ばれスミスやメイカーたちが各々に所属し作った物を売っている。
東の大陸の場合、1つのギルドが全てを担っているため『ギルド・ヴェラチュール』が覇権を握っている。各大陸にも支部を設けているが東の大陸に比べて有象無象の1つなのだ。
現在は西の大陸の数ある港の中で1番大きい『ノミエ』にいる。『ノミエ』にあるヴェラチュールにてクエストを受けようとする最中だった。
「で、ここに来たかった理由聞いてないんだけど」
「まぁ、後で宿屋で説明するって。ここじゃ言いにくいんだよ」
レオンはテーブルに座っていた深くローブを被った男に話しかけ何かを受け取った。見てみると、
『反人間共存主義者“リベリオ”のアジトの壊滅』
という内容だった。
俺たちはすぐに宿屋に向かった。レオンは部屋に防音の魔法をかけ、それからポケットから先ほどの依頼書をテーブルの上に出した。
「反人間共存主義者って知ってるか?」
「確かアトラス率いる巨人の軍勢。人と巨人の共存関係を破壊しようと試みた叛逆者、だろ?」
「あぁ、そのアトラスの意思を継ぐと騒いでいる連中の集まりが反人間共存主義者、“リベリオ”ってわけだ。奴らの計画は人間を1人残らず殺し、その光景を巨人アトラスの亡骸に献上するということらしくてな。それを阻止するのが俺がここに来たかった理由だ」
「人間が人間を殺す……か。そもそも理論が破綻している訳だけど、そんなことあってほしくないんだけどな」
「人間の考え方は様々だからどんな思想を持っていたとしてもいいが、だからと言って無辜な人間が殺されるわけにもいかない。そこで俺だ。俺はどこかの国に所属してる訳じゃないし、実力も客観的に見ても一定の評価があるからアジトの壊滅ができる。それに今回はタクトもいるしな。俺たちの役目は一刻も早く壊滅させることだ」
「なら早く行かないと」
「あぁ、今から行くつもりだが、余計な荷物は置いてけよ。現地じゃかなり動き回るから身軽じゃねぇと置いてかれるぞ」
俺たちは必要な分だけの荷物を持ちすぐに宿屋を出てアジトの所へ向かった。
アジトの場所は先程までいた町『ノミエ』近郊の町にある。どうやらアジトは魔法で不可視にされているためわからない。しかしそんなものはレオンにとっては関係ない。その魔法を簡単に解除し入り口が現れた。
「地下なのか?」
「そのようだな。それと、外だけど一見すると穏和な雰囲気が漂う町だがここはもう奴らに占拠されてる。証拠に奴らの胸辺りにワッペン付けてただろ? あれが仲間である証明になる」
「つまりこの町は実質リベリオだらけ……」
来る道中確かに殆どの人間がワッペン(リベリオを表す紋章)を付けていた。付けてない俺らを見ては敵視していたわけだ。
「タクト、ここから先は危険だ。覚悟してけよ」
「わかってる」
俺たちは下に続くハシゴを降りた。
地下は土がしっかりと固められ、さらに魔法で強度を上げられていた。
「中結構広い……」
「大量の人間が行き来するアジトだかんな。通路一つ取ってもかなり広いんだ。さぁ、先進むぞ」
俺はレオンに連れられ先を進んだ。
シーンとした空間で人は俺たちしかいない通路なのに視線を感じて仕方ない。ぐねぐねとしたアジトだが基本一本道で隠れる所なんて通路の角くらいだが隠れている様子もない。
先に進むと扉が1枚。中から光が漏れ出している。レオンが扉を開けるとそこには人がたくさんいた。
「おやおや〜? こんな所に侵入者とはこれはまた命知らずの人たちですね〜」
この物言い、俺たちの侵入に気づいていたな。
「そういうお前らは覚悟できてんのか。命取られんのお前らかもしれないんだぜ」
「ははぁ〜ん。よっぽどの自信過剰者か、馬鹿のようですね。よろしい。私の役目はここの警護。お前たち敵は2人です。やっておしまい!」
「御意!」
さっきから話す奴が恐らく幹部クラス。その他の人は下っ端だろうか。
レオンはすぐに剣を構え、態勢をとった。
「タクト、俺があの野郎を倒す。お前はその辺の雑魚を頼む」
「了解。行くぞみんな」
俺は剣と耳飾りに魑魅、指輪にウィッチクラフト、カグツチを武装した。
「ライトニング<コート>!」
レオンが唱えると雷が全身を纏い、その姿はさながら落雷の如く轟々としている。
「ほほぅ。少しはやるようですね。よろしい、では私も。エア――」
「遅い!」
一瞬だった。相手が唱え終えるよりもレオンは敵に近づき蹴りを入れた。
「ぐふぅっ!」
無様に転がる敵は立ち上がろうとすると口から血を吐き、その血を見て突然血相を変えた。
「この私が……、この私が……! お前たち! 何ぼっーとしてやがる! 早くあいつらを殺せ! 今すぐに!」
「御意!」
下っ端たちは速やかに俺たちを囲んだ。
「タクト、行くぞ。ここからは腹くくれ!」
「あぁ!」
走り込みと同時に間合いを計り完璧なタイミングで勢いよく抜刀した。その時、剣の軌道上にカグツチの炎を乗せ殺さない程度に焼いていく。
一方レオンは速さを生かし、素早く敵にぶつかり雷を伝播させている。一挙動が本当の雷のように豪胆と思いきや的確に敵を倒していく。
「クソ! 何者なんだ、あいつは!」
と下っ端が口走った。
「あの雷を纏う姿、あいつ『雷鳴』なんじゃないのか!?」
「『雷鳴』だと!? なんでそんな奴がここに!」
「教えてやろうか?」
「――!?」
下っ端が慌てふためいている時、レオンが突然目の前に現れ下っ端たちは絶句した。そんな奴らを手加減せず雷で感電させた。
「ふぅ、これであとはあんただけだな」
幹部クラスの敵の表情はまさに絶望感に溢れていた。言葉を発することなく慌てて向こうに通じる扉の所に行き、開けようとするが何度捻っても開くことはなかった。
「悪いがそいつはもう開かねぇよ。少なくともお前の手ではな」
それでも必死になってガチャガチャする幹部。
「タクト。目、瞑っとけ」
俺は言われた通り目を閉じた。
「これでもお前の部下には手加減したんだ。けどな、お前はもう許されない罪を犯した。生きる価値なんてもうない」
レオンの声と扉を開けようと必死にドアノブをガチャガチャする音だけが聞こえる。
「じゃあな、リベリオの幹部ルキフェル。ライトニング<ブレイク>」
目を開けた時にはもうルキフェルという名の幹部はいなかった。詠唱の中に“ブレイク”とあった。つまりルキフェルは粉々に砕け散った。
「悪いな、血生臭くて。けどこうでもしないとこいつらはいつどこでも殺戮を繰り返すんだ」
「俺も人が死ぬのは嫌だ。けど、時には許容しなければならない死もある。分かってはいるんだけどやっぱり辛いな」
「お前は本当にいい奴だよ」
俺たちは切り替えて次の通路に進むことにした。
向かう道中、気になることを聞いた。
「『雷鳴』ってなんなの?」
「あぁ、えーとだな。簡単に言うと2つ名。でも俺が付けたんじゃねぇよ? 民間の人が俺をそう呼ぶようになって伝播したんだ。俺も自分の2つ名を作る気にはならねぇからな。でも『雷鳴』って呼ばれて嫌な気はしねぇけど」
「2つ名か……。それくらい人々から認められてるってことなんだろうな」
「どうだか。俺を嫌う奴も山ほどいるし、そうでもない」
話していると次の扉に着いた。
「この部屋も同じような感じだと思うんだが、タクトは大丈夫か?」
「大丈夫。このくらいは我慢してやるさ」
「オーケー。じゃあさっさと終わらせて冒険の続きでもしますか!」
レオンは勢いよく扉を開け次に臨んだ。




