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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第2章 昔日の思い出
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2-6.『試練』

「各組別々のところで1日かけてサバイバルを行ってもらう!」


 と仁介さんが唐突に言った。剣術を使う何かではなく単なるサバイバル。


「1日かけてやってもらうわけだが、水は各々の魔法で準備しろ。食料も同様だ。テキトーに魔獣でも狩っとけ。文句ある奴は手ぇあげろ」


 圧倒的威圧感。最近は比較的穏やかだったから忘れていたけどこの人はこういう性格だった。

 ダリア王国からこの集落に来た移動手段は魔法道具で作られたものらしく、手のひらサイズの基地を土の中に埋めておくと任意の所に基地間を転移できる。

 今回の試練にも同じものが使われている。もう一組とは全く別の所に行き、樹と初そして俺はあたり一面が森の中に送られた。


「感じからしてここはアシハラですかね?」


 樹が言った。


「多分そうだと思う。私が思うに村からかなり離れてるんじゃないかな? 首都の近くの森は八雲だけどここはそことも違う。本当に場所がわからない」


「場所はこの際どこでもいい。とりあえず俺たちは早く迎撃態勢に入らんと。森は魔獣の住処だ。ぼーっとしてたらいい餌食だよ」


「それもそうね」


「よし、このパーティは全員テイマー。ソーサラーの役目は俺の使い魔にしてもらうよ」


「それ大丈夫? 魔力かなり使うんじゃ……」


「樹君、人の心配する前にまず自分の心配しないと魔獣に襲われて死ぬぞ。俺のことは大丈夫。何とかするから」


 これはサバイバルだ。未熟な自分たちでは自身のことで精一杯になる。今は手持ちも少なく、どんな魔獣が出現するかの情報も全くない。しばらくの間は探りながら食料を調達、余裕ができ次第仮眠して夜を過ごす。


「さて、仁介さんから受け取った荷物を確認っと」


 カバンの中には応急処置用の道具しか入ってない。他には剣が3本、もちろん金属製。


「おっ、俺の剣もある」


「綺麗な剣……」


「オロチの尻尾から出た素材で作ったんだ。少し重いけど振りやすい剣なんだ」


「そうなんだ。私もそういうの欲しいなぁ」


「この試練が終われば幾らでも旅に出て見つければいいよ。とりあえず魔獣が近づいてるから構えて」


 茂みから出できたのは猪の魔獣。鋭い牙を持ち、突進してくる魔獣だ。

 猪の魔獣は俺に突進してきた。俺はすぐに居合の態勢に入った。しかし、


「ッ!? クソッ! 来い、オロチ。1本!」


 居合を中断し、オロチの攻撃で倒した。そしてこの1戦である重要なことに気づいた。


「拓人、何で居合しなかったの?」


「突進してる相手に居合しても意味がない。居合で斬ったからといって突進自体が急に止まってくれるわけじゃないし。むしろ攻撃の的になると思ったんだ」


「あっ、そういうことか。というかそうだよね。私たちの居合程度で魔獣が動きを止めてくれるわけないね」


 初も樹もすぐに察した。そう、このサバイバルにおいて剣術は一切の意味を持たない。剣術というのはいわば対人用であって、対魔獣ではないということだ。


「じゃあ、羅睺はどうですか? 背後に回る技なら何とか」


 樹が言った。俺と初は首を横に振り言う。


「避けるだけならいいけど常に動いている相手に対し見ずに刺せる? 魔獣は人以上に不規則に動き、直感力に優れてる。そんな相手に決まる保証はないよ。それに羅睺は切っ先を人の背中に差し込む技、人なら大怪我でも魔獣にはかすり傷だ。魔獣を倒すには完全に斬り裂くか魔力的攻撃で倒すかのどっちか」


「拓人は良くても私たちは前者しかないね。私と樹は魑魅しかいないし、それも肉体強化に使ってるから他に回せない。頼みの剣術もあんまり効果ないとくるといよいよ危ないってのを感じさせられる」


 初の言う通りだ。かと言って俺も魔力をガンガン使えるわけではないから戦法は初たちとほとんど同じになるだろう。

 昼下がり、魔獣たちの多くは比較的弱く小型のものが多い。しかし日が暮れると共に小型から中型そして大型と魔獣の生態に変化が表れてきた。

 魔力的攻撃も朝昼に比べ使う頻度が増して、月が真上に他登る頃には魔力切れを起こしていた。


「どうぞ、食べてください」


 樹から焼いた魔獣の肉をもらい、遠慮なく頂いた。


「拓人、一杯食べなきゃダメだよ。魔力がなさすぎて動けないでしょ?」


「ありがとう。これでも少しは戻ってるから大丈夫」


 魔獣の肉は魔力が宿っているため食べれば少しだが補給になる。魔獣の肉は有り余っているから困らない。

 お腹がいっぱいだからといって気は抜けない。夜中こそ魔獣の真骨頂。強い魔獣がわんさか出てきて襲いかかってくる。そして今まさにその状態なのだ。敵は竜種、大きさやこの威圧感からしておそらくA級だろうな。羽が無く飛べない竜種で、この竜種は待つことなく俺たちを襲ってきた。竜種は樹と初の方を凝視し、遠吠えした。

 このままだと、2人が危ない。俺はすぐに立ち上がり剣を拾った


「オロチの剣、水を纏え!」


 オロチの剣特有の能力。水を蓄え、それを自在に操れる。俺は水をカッターのように鋭く構成し、竜の腕を透かさず4本斬り払った。動けなくなったところで首を切断した。


「大丈夫、2人とも!?」


「大丈夫。拓人今のは?」


「オロチの剣の力。魔力を一切使わずに発動できるからいざと言う時用に取っておいたんだけど、もうこれ以上は出し惜しみはできない。ウィッチクラフト、水を魔力に変換」


 ウィッチクラフトの闇属性の変換魔法。剣に溜め込んだ水を全て魔力に変え体内に取り込んだ。


「よし! 行くぞオロチ! 周囲の魔獣を薙ぎ払え!」


 今ある全魔力を使っての攻撃。俺自身を中心にして8つのオロチの首を使い周囲の魔獣を総攻撃する。


「ひとまず周囲にいなくなったと……思うよ。これでゆっくりできる……」


 俺はその後の記憶が全くない。目が覚めた時、時間はもう朝だった。太陽が昇ってすぐの時間帯。長い間ぶっ倒れていたらしい。


「おはよ、拓人。気分は?」


「気分は……だいぶ良い」


「そう。あの後大型の魔獣は出てこなかったよ。この辺に紛れ込んだ小型だけだったから2人で何とかなった。拓人のおかげでね」


「それなら良かった。樹君は?」


「見ての通り疲労で倒れてる。私もちょっとふらついてる感じ。でもあとちょっとで終わる……から」


 初も死人のように倒れて寝てしまった。常に緊張感が走り、一日中寝ずに頑張ったんだから当たり前だ。終了までの時間は俺が2人を守ってやろう。

 時間が来ると邦綱さんが鈴を鳴らしに来て試練終了を宣言した。その後は行きと同じく転移して集落まで戻ってきた。そこにはもう1組のメンバーも揃っていた。


「で、おめぇら今回の試練で気づいたことあんなら言いな」


 みんな疲れきっていて答える余力がないようだ。よってまだ余力がある俺が手を挙げた。仁介さんが俺たちに求めている答え。そんなのはたった1つだ。


「剣術が全く通用しませんでした」


「まぁ正解だ。そう、外に出て一度魔獣と出くわし戦えば剣術なんてもんはな、ほとんど役に立たねぇ。身をもって感じはずだ。あれだけ鍛錬を積んだと言うのに意味をなさない。剣術ってのは結局対人用にしか発揮されない代物だ。しかしなぁ、全てが役立たずというわけでもねぇ。足さばき、戦場での動き方それらは絶対に役に立つ。特に拓人」


「はい」


「特におめぇはこれから外に出て旅をするだろうよ。その時剣術を通して学んだことは必ず生きてくる。間違いなくな。剣術は戦いにおける選択肢の1つだ。慢心して驕らぬよう精進せい」


「はい!」


 仁介さんからの激励を受けた。たった1ヶ月での出来事だったがその期間にしごかれて大変な日々だったがこれ以上ない褒美をもらったような感覚だ。


「おめぇら、今まで付けてた耳飾りを渡せ。おめぇらにはもうこれは必要ねぇ。これからはこっちを付けとけ」


 今まで付けていた耳飾りよりも繊細で綺麗な耳飾り。


「これは六連一刀流を合格した者のみ付けられる証だ。一から六ノ型まで全て習得した奴は免許皆伝者でもある。しかしだ、これを付けてるからにはそれ相応の対応をするように。バカな行動をした奴は即刻そいつを回収し破門とする。終わったからといって気は抜くな。むしろここからが本番だ。わかったな?」


「「「はい」」」


 こうして俺の剣術修行はやっと終わった。

 みんなはそのまま家に帰ったが、俺は仁介さん、ここに来た時に降り立った野原に連れて来られた。


「おめぇは筋が良いし、センスも良い。それは1ヶ月で全ての型を習得したことからわかる。だがなおめぇのは所詮まだ付け焼き刃に過ぎん。精度だけで言えば樹よりも低い。火を見るよりも明らかにな」


 仁介さんは一呼吸して言った。


「旅先でも鍛錬を怠るな。剣は1日サボれば7日分は頭と身体から抜ける。弓引いていたなら分かるだろ。だからおめぇはこれから先ずっと剣を振り続けろ。油断も怠慢も妥協も許さねぇ。そこんとこ覚悟してやれや」


「分かってます」


「うし、後のことは大賢者に聞け。わしにできるのはここまでじゃ」


「はい、お元気で」


 俺がこの場から消え去る直前、あの仁介さんが笑っているように見えた。それだけでここでの生活は意味のあるものだったんだと思った。


「やぁ、お疲れ様」


 今まで良い感じだったのにこいつのせいでぶち壊された。そう、大賢者こと一条力だ。


「いや、ほんとお疲れさん。1ヶ月もよぉ頑張ったやん。最初は1ヶ月だけで、とか色々考えとったけど何とかなるもんやね」


「何、その気持ち悪い関西弁」


「そういうタクトは相変わらず若干標準語混じりの喋り方だよね。君も関西圏出身なんだから関西弁喋ればいいのに」


「それは俺の自由だろ。そんなことよりやっと戻ってきたんだ。全部聞かせてもらう」


「そんな睨まれても困るというか、君の試練はまだ終わってないんだけど」


 思わず「はぁ?」と言ってしまった。やっと終わった試練と思えばまだ続くなんて。


「今から君にある者の討伐又はテイムを試みてもらう。もちろん疲労、魔力、体力の回復はするよ」


 いっちゃんは「ほい」と杖を振ると俺自身の魔力と体力、そして溜まっていた疲労が一気に回復した。


「さて、一刻の猶予がない。早速行ってもらう」


 また何の説明もなしに転移させられた。

 行き着いた場所はどこかの火山島。ゴツゴツした地面が広がる。今立っている場所は溶岩が流れて固まって地面になったと考えられる。


「さて、目標物はどこに――」


 すると突然地が揺れ火山が噴火した。そしてその火山から一筋の火柱が天に昇る。それは俺から数メートル離れた所に降下した。

 オロチのように皮膚がある竜種とは違う。身体全てが火でできている豪炎の竜種。大きさはオロチと遜色ないほど巨大で見る者の目を焼き尽くしそうな熱気。


「当方の名はカグツチ。降魔の炎龍にして噴火の化身。挑戦者よ。汝は如何に力を奮う」



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