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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第2章 昔日の思い出
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2-5.『修行 ②』

 あれから何日経っただろうか。一部の門徒とは仲良くなったが未だ俺に敵視する奴らも多い。そいつらのことは放って置いて、友人を持つと互いに教え合い自身の至らぬ点を教えてくれるからとてもありがたい存在だ。樹はもちろんだが特に仲が良いのは(うい)という1つ下の女の子だ。

 ちなみにもう邦綱さんの教えは受けてない。6日前くらいに全てを教えてもらい、一旦は卒業してこれからは門徒とともに修行の日々が少しの間だが待っている。

 農作業もかなり慣れてきてはいるが相変わらず筋肉痛に悩まされる毎日を送っている。前に比べたら楽にはなってるんだが。

 今日も農作業を終え、急いで道場に向かう。道場に着くともう稽古が行われている。


「た〜くと」


 後ろから肩をポンと叩く女の子が初。黒く肩あたりまでさらっと伸びる髪。目が大きいのが特徴だ。


「びっくりさせんなよ。こういうの苦手って言ったろ?」


「そう言われるとやってみたくなる性分なんだな〜。ねぇ、今日も一緒にやろうよ試合。実はさ、やっとの思いで六ノ型を完成したんだ。だからその試運転に付き合って」


「やっぱ先越されたか〜。六ノ型むずいんだよ」


「こればっかりは年季の差よ」


 ドヤ顔でここぞというばかりに自慢してくる。愛嬌があるからこういう顔もとても可愛らしい。


「でも拓人もたった数日でここまでの完成度はすごいよほんと。やっぱり才能ってやつ? いつ追い抜かされるか分かんないからヒヤヒヤもんだよ」


「ぶっちゃけ邦綱さんのおかげかな。厳しい人だけど細かいところまで教えてくれるから修正しやすかった」


「あの人は教え上手だかんね」


「初、拓人。やれ」


 仁介さんが俺たちを呼んだ。初はもうあの人に連絡済みだったのか。

 初が居合、俺が普通に構える。

 俺は走り込み、初に対し剣を向ける。初はその剣を軽々と往なし六ノ型のモーションに瞬時に移行する。六ノ型『填星』は三連続突きの技で、一瞬のうちに3回相手を突く高等剣術だ。魑魅か魔法で肉体と俊敏さを上げなければ絶対にできない。

 ドンと足を踏み込み、目に見えぬほどの速さで切っ先が俺の身体を襲う。確かに3回身体を突かれたというのにそれはまるで1回突いただけの単純な動作に見えるほど速かった。

 今の俺には防ぎようがないため確実に負ける。


「すごいな、初。完璧だったよ」


「いや〜、私も頑張った甲斐あったよ。練度が低いからまだまだだけど、とりあえずひと段落」


 照れ気味で笑う初。門徒もその剣を見て思わず拍手を送っていた。


「初、よくやった。お前はこれで試練を受ける権利を得たわけだが、あと2人揃わないといかんから少し待ってろ」


「はい」


「これからお前の鍛錬は自主性にする。お前は反復練習のみだからな」


 そう言って仁介さんは戻って行った。初の六ノ型で盛り上がってもう1回やるはずの試合を飛ばされた気がするがまぁいいや。


「おめでとう。仁介さんが言ってた試練ってのは?」


「六ノ型を完成させた人だけが受けれるもので、内容は秘匿されてるんだけど毎年帰ってくる人たちを見てるとかなり危ないものだと思う」


 危険の度合いがあまりよくわからないが何となくではあるが察した。

 それから2日後六ノ型をできるようまで何回も剣で丸太を突いた。


「だぁ〜! 何回やってもできねぇ。初に少しレクチャーしてもらったけどやっぱできんよなぁ。どうやれば……」


「我がマスターながら情けないのぅ」


 突然ヌゥッと出てきたのはオロチ。巨大な姿ではなく右上腕の紋様から首一本だけ出ている。


「言うの忘れてたけどお前のせいでマジで散々だったよ」


「ふっ! 知るかそんなこと。それより剣術をやっておるのだろう? 我がほんの少しミソを教えてやろう」


「どう言う風の吹きまわしだ、この野郎。力貸してくれんのはありがたいけどお前にそんだけする義理あんまないんじゃないの?」


「確かにマスターにテイムされる前ならそうであるが、我はお前の使い魔だ。この世の掟に従い行動してるまでよ」


 手のひら返されたみたいな感じ。前まで敵対心がダダ漏れだったのにいざテイムされるとこのあり様。複雑な気分だ。


「で、だ。マスターは異世界人だ。緩和の加護が無い分魑魅の力を完全に引き出せて無い。その分のアドバンテージを失ってるわけだ。しかしそれを覆すほどのアドバンテージを持ってるだろ?」


「待て、緩和の加護ってそんな便利なもんなの?」


「あぁ。自身の体に対する異物を文字通り緩和してくれる代物。魑魅のそれはまさに本来身体には備わってない後付けだ。雷による身体能力のみを利用し、それ以外を除外できる」


 ベルにはそこまで教えてもらえなかったが、緩和の加護にはそんな力があったのか。


「話を戻すがお前のアドバンテージはテイマーであるにも関わらず魔法を使えるところだ。ソーサラーの門徒同様に肉体強化と俊敏さを上げれば少しはマシになろうな」


「長く生きてるオロチのことだからあってんだろうな。若干癪だけど」


 まずは言われた通りやるのみだ。


「来い、ウィッチクラフト。肉体強化と俊敏性アップよろしく」


 よし、六ノ型のやり方はもう分かっている。助言ももらった。

 剣に己の全てを集中させ心を落ち着かせる。そして


「ここだ!」


 手応えありだ。ちゃんと3回突けたぞ。確認のため丸太を見ると今までの練習の跡、2個分の凹凸と側面に2センチほど傷跡。


「真ん中に当たってない。てことは失敗か……。でも形はできた。反復すればいける」


「その前にマスター。もう夜だ」


「そうだな。寝よ」


 次の日、起きると樹君はもう農作業を行なっていた。


「おはよう」


「おはよう。どうしたの? 今日早いじゃん」


「昨日の夜中まで鍛錬してるの見てね。ちょっと焦ってるんだ。だから早めに起きて、早くに終わらせて少しでも剣を振らないといつまで経ってもできないままになる」


 いつもの樹から感じる余裕さを全くない。焦っているのがひしひしと伝わる。

 午前の農作業を終え、いつも通り道場に行く。素振り、一ノ型から五ノ型を反復して練度を上げ、最後に六ノ型『填星』を打つ。人と剣を交えながら間合いの感覚を掴んでいく。


「ねぇ」


 後ろから声を掛けてきたのは樹君だ。


「六ノ型を教えてください!」


「俺もまだできてるわけじゃないし……。仁介さんに聞けば……?」


「聞きましたが自分でやれしか言われなくて」


 別にいいんだが剣を扱ってきた長さなら樹君の方が長いからなぁ。せっかくの聞きにきてくれたし手伝ってあげるようか。


(というわけでオロチ、彼のできてないところを教えてください)


 と心の中でオロチにそう訴えかけた。


(マスターがやるんじゃないのか?)


(俺に何がわかるんだよ。昨日だってオロチのおかげやっと出来たんだぜ? ずっと見てるんだろ?)


(……マスターと同じだ。魑魅の力を出し切れてないだけだ。緩和の加護があるからお前とは別の事情だ。こいつは魑魅の力を恐れている。それのせいでできないといったところだ)


(ありがと。何だかんだ言って手伝ってくれるな)


(気まぐれだ)


 ほんとありがとう、オロチ。これで樹君の助けになりそうだ。


「えーっとだな。樹君、魑魅の力にビビってない? そのせいで多分できないと思うよ」


 とオロチが言ってたよ。

 樹君は少し黙り込み、言った。


「確かにそうかもしれません。僕は魑魅の力が怖いからちゃんと引き出せてない……。ありがとうございます。あとは何とかやってみます」


 樹君は道場を出て行った。多分いつも通り裏で1人黙々とやるんだろうけど。

 次の日、俺は徹夜付けで剣の鍛錬を積んでいた。本来はやってはいけないやり方だが一刻も早く完成させたかった。疲れはウィッチクラフトの魔法で癒し、眠気も同様に。

 農作業中は樹君と話しながら俺が教えられる範囲で六ノ型を説明した。魑魅の力を怖がらずに使うために普段から魑魅を武装させ慣れさせる方法で解決に向かうことになった。

 そしていつも通り道場にて。


「仁介さん。俺ってあとどれくらいここに入れるんですか?」


「大賢者が言うにはあと1週間だ。おめぇは六ノ型が大体できてるから試練をしてもらう。それに1日使うとして残り6日だ。できれば樹が早く完成してくれればいいんだがな。あいつはやればできる奴だ。だが、性格は明るい反面、ビビリで慎重だ。そんなんじゃ剣は上達しねぇ。剣は貪欲に前のめりになって挑まねぇと一生身に付かん。オロチ退治をやってのけたおめぇといればちょっとは変化があると思ったんだがな」


 そう思っていてくれたのか。性格きついけどやっぱり仁介さんはいい人だ。

 その日の夜、樹君に仁介さんが言っていたことを伝えた。あの人は伝えてくれとは言わなかったがどうしてもか樹君に聞かせたかった。


「仁さんがそう言ってくれたんですか。そしてあと6日でここを去る……。わかりました。あと6日待っててください。何としても完成させてきます!」


「その意気だ。俺も樹君と試練受けたいし」


 たった6日かもしれないが俺は信じている。道場の裏手で1人一生懸命に剣を振っていたのを知っている。だから樹君ならできると。

 そしてあと6日後、試練の日がやってきた。その日は俺を含めて5人だ。樹君からは先に行ってくれと言われ来たが遅い。早くしないと始まってしまう。


「遅れてすみません、仁さん! できました六ノ型」


 息を切らしながらやってきた樹君の目は以前とは全く違う。


「ならここで見せろ」


 ふぅと一呼吸し、魑魅の力を怖がらずに全開で行使し剣を持ち上げて、六ノ型『填星』を放った。紛れもない3連続突きの技だ。放った後の樹君の顔はとっても爽やかだった。


「合格だ。よし今回の試練は6人だ。樹、初、拓人、おめぇら3人で1組だ。残りの3人で1組。計2組で行うのは……」


 3対3剣術を用いた戦いがセオリーだろうな。今まで剣の鍛錬を積んできたんだから。


「各組別々のところで1日かけてサバイバルを行ってもらう!」


「…………」


 はぁぁぁぁぁ!? 何だってぇ!?



3月21日、数行付け足しました。


六ノ型『填星』は沖田総司で有名な“無明剣”、一般的には三段突きと呼ばれるものをモデルにしてます(フィクションという理由で本当に実在したかは不明)。北辰一刀流のモデルに沖田総司のモデルと無茶苦茶ですがご容赦ください。

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