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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第2章 昔日の思い出
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2-3.『六連一刀流』

 国王一家とともに並ぶあの男は、1年前に鳥居を通って消え去ったはずの一条力だ。向こうで何年も一緒に行動した仲だから間違えるはずない。茶髪に大きい目、細い指そして学校に来た時から付けていた綺麗な指輪。なぜあいつがあんなところに……。

 真相は行けばわかる。幸い入城許可はある。この祭りが終わり次第すぐに行く。

 次の日、街はゴミだらけで人々は袋を片手にゴミ拾いをしている。そんな中俺たちはダリア王国のシンボル、エルヴェスタム宮殿に入殿した。案内され着いた場所は廊下の1番奥、大きな2枚扉が特徴の部屋だ。内装は豪華でアンティークが並ぶ古風な雰囲気だ。

 そんな雰囲気の中、ティーカップを片手に堂々と椅子に座る男がいる。あいつだ。


「やぁ、拓人。久しぶり」


「久しぶり」


 数秒のにらみ合い、あいつはスッと立ち上がり近寄ってきた。


「随分と成長したね。アシハラノクニの帝から聞いてるよ。あのオロチを倒したんだって」


「おい」


「流石の一言だ。まさか君があのオロチを仕留め得るなんて」


「いっちゃん……」


 いっちゃんは一条力のあだ名だ。中学でそう呼ばれていてそれが定着した。


「つい最近まではさ、居なくなって悲しい気持ちになってたけど、いざ会ってみると怒りの方が勝るんだな」


「殴るの?」


「したいけどまだ殴らない。まず話すことが沢山あるからその後に殴る」


「えっ、2人はどんな関係……」


 俺といっちゃんの緊張感にベルが心配そうにこっちを見る。


「まぁ懐かしい話は後だ。全てが終わってから存分に聞くよ。拓人には今からやってもらいたいことがあるんだ」


「何?」


「それは現地に着けばわかる。ベルちゃんのことは気にしないで。こっちでしっかり見ておくから。というわけでいってらっしゃい」


「ちょっ! いっちゃん! 何の――!」


 最後まで言おうとした時にはもういっちゃんとベルの姿が見えなくなっていた。そして今いる所は豪華な宮殿とは無縁な野原。


「ここどこ? てか何であいつベルの名前知ってんの。あぁ、くそ! 訳わかんね……」


 少なくともダリア王国領内ではない。空気が違う。この感じはアシハラノクニかな。


「おめぇか、大賢者からの郵便物は」


「郵便物って、俺は物じゃ――」


 その反抗心は一瞬にしてかき消された。厳つい顔に耳飾り。歴戦の勇者のような身体中にある傷跡。そして片方の肩だけはだけた着方をしている服。


「えっと……どなた様でしょうか……」


「あぁ!? どの口聞いとんのじゃあ!」


「すみません! 大賢者からの郵便物は多分俺です!どうか命だけは」


 ヤの付く人なのか、この人。マジモン過ぎて腰が引ける。


「あぁ? 何言ってんだこの野郎。命は取らねぇよ。名前を念のため聞いとくが、おめぇが相羽拓人か?」


「はい、相羽拓人です」


「オロチを仕留めた野郎がこんな貧弱な野郎とはな。世も末だ」


「は、はぁ」


「とりあえず付いてこい。聞きてぇ話もあんだろうからな。逆らったら殺す」


「さっ、逆らいませんよ」


 何でこの人いちいちこう威圧的なんだろうか……。

 案内されたのは沢山の建物が点在する集落。木組みの家で決して貧困そうな感じはなく、道も舗装され、大きな田んぼが沢山ある。

 黙って付いて行くと明らかに他の家とは一線を画す規模の大きい家に案内された。


「ほれ、大賢者からの手紙だ。まず読め」


『拓人へ。

 君弱いからそこの村長さんに育ててもらうように。期間は1ヶ月くらい。短期間だけどしっかり学ぶといい』


 短い。もっと何か書くことあるだろ。この際文の長さはどうでもいい。問題は期間だ。1ヶ月、かなり長いぞ。いや短いのか? 

 ベルはあいつが見てくれてるらしいけど、色々と分からないことが多すぎる。


「粗方わかったな」


 わかりませんと言いたい……。


「ここで何学ぶんですか? そこ書いてなくて」


「ここで学ぶのは剣術だ。おめぇのオロチ退治の詳細を見させてもらった。まぁよくこんな酷い戦い方できたもんだ。呆れるを通り越して感心した。大賢者とお上も育て甲斐があるもん届けやがって」


 えっ、帝も関わってんの。マジですか。ある意味高待遇。


「わしがおめぇに教える剣術は『六連(むつらの)一刀流(いっとうりゅう)』という流派だ。ここ東の大陸じゃ、こぞって学びに来る野郎が多いが、ひ弱な精神してる輩は破門だ。覚悟しておけ」


 やはりここでも剣術はあるのか。しかも人気流派ときた。タダで学べる分有難い。


「早速今日から修行に入る。言い忘れてたがわしの名前は六連仁介。六連一刀流第9代目継承者かつこの村の村長だ。言葉には気をつけな」


 最後の余計な一言がヤの付く人っぽく感じる。

 早速服を着替えさせられ、旅装から和服、いやアシハラ服に着替え、靴もボロボロのアップシューズから草履になった。このような服は着慣れてるから問題ないが肌に直に来てるからチクチクする。

 オロチの剣は当分没収で、渡されたのは鞘有りの木刀。かなり良さげな材質だ。それに保存状態もいい。この人見かけによらず器用なんだな。

 修行はもちろん野外で行う。素振りを何回もするのかと思いきや、連れられて来た場所は田んぼ。そしてもう1人俺より年下の、耳飾りをしている少年。


「まずおめぇらはここを開拓してもらう。こいつの名前は(たつき)。歳は15だ。後のことはこいつから聞け。わかったならさっさと手ぇ動かせ」


「は、はい」


 こんな所に突然連れて来られて畑を耕す俺。


「いやほんとどうなってんのさ」


「いや〜、ほんとですね。1ヶ月で六連一刀流を覚えなきゃならないし」


 自然に俺の独り言に割り込む樹君。性格は全体的にゆるい感じだ。


「仁さんああ見えてすごい計算高い人だから1ヶ月で習得できるようにしてくれると思いますよ」


「仁さんとかよくそんな風に呼べるな。俺にはできないよ」


「村のみんなは仁さんって呼ぶからその流れで呼んでるんです。後言い忘れてましたが、この畑作業手を抜かない方がいいですよ。これも鍛錬のうち。鍬を振り上げて下ろす。これだけでも剣術の1つは習得できます。六連一刀流は居合からなる合計6つの型で繰り出す技。ですので本気でやってください」


「居合からね。樹君は修行してどれくらい?」


「5歳の時から振ってます。なのでもう10年ほどでしょうか。それでもなかなか合格点貰えなんですよ」


 10年修行している少年がまだクリアできてないのにわずか1ヶ月でできるのか……。不可能に近いと言わざるを得ない。あいつは習得しろとは書いてなかったからちゃんと戦えるレベルにまで上達させればいいと思われる。

 午前中は耕す作業のみだった。単純作業がこうも大変だとは。身体中から汗が止まらない。


「休憩しろ。飯は樹の家に行ってもらえ」


 時間になると村長である仁介さんが来た。

 樹君の家に着くと誰もいなかった。聞けば両親は魔獣に襲われて亡くなったそうだ。当時は10歳でまだ畑を相続できる歳ではなく、その畑は村の土地になり違う一家に譲渡された。そして14歳になり自分の土地を与えられ、1から耕すことになったのだが村の土地を増やそうという計画を樹君含め14歳になる子どもたちに与えられた。

 よって1から耕している。広すぎる為1人ではまだまだ終わらない。所帯を持てばもう少し楽と樹君は言った。


「やっぱ米はうまいなぁ。実家のような安心感」


「僕もお米好きです。最近じゃ外国からパンというのも入ってきてますがやはりお米が1番ですね」


「パンはパンで魅力はあるのはわかるけど米はうまいし腹持ちいいし、農作業をする人にとってありがたい食べものなんだよなぁ」


「分かってますね。仁さんから聞いたんですが異世界人だそうで。向こうにもお米はあるんですか?」


「もちろんあるよ。品種改良して沢山の種類の米があってだな。俺は定番のコ○ヒカ○ってのがあってさ、これが最っ高なんだよ。またあの米食べたいなぁ」


「へぇ、いいですね、お米が沢山あるのって」


「あぁ、かなり恵まれてたよ。気候もよくて米が作りやすいんだ。でも場所によってはできにくいからから先人たちはその土地にあった米を作った。そのお陰でうまい米が食べられる。ご先祖には感謝だな」


「そうですね。先祖あっての僕らですから。……話してたらご飯があっという間になくなりますね」


「そうだな。食べすぎると夜のご飯無くなるからこれくらいにしないとな。ごちそうさま」


「ごちそうさまです」


 食器を洗った後は開拓作業ではなく、仁介さんが稽古をつけてくれた。1日500回の素振りをし、終わると居合の練習をひたすらに行った。


「おめぇ、筋いいな。向こうで剣を習ってたのか」


「いや、全く。親の影響で弓なら」


「弓をやっていたくせにこっちでは剣を使うのか。おかしな野郎だ」


「市販の弓は粗悪品ばかりで思うようなものがないんです」


「そうかい。邪魔したな。続きを始めろ」


「その前に仁介さん。六連一刀流はどんな流派何ですか? 樹君から聞いたんですが、詳しく教えてもらえないかなと思って」


「そうさな……。六連一刀流の起源は農民が武士(もののふ)に歯向かった結果できた流派だ。初代吉之丞(きちのじょう)は豪農で良質な米をお上に献上したことから『六連』苗字をもらってな。武士にとってこれが気に入らなかった。理由は武士たちの支配していた領地の米がお上にウケなかっただけの話だ。初代の特技というか、趣味の範囲で居合術を編み出してな。武士たちと戦っているうちに居合の次に必要な2連撃目を編み出して、さらにまた新しい2連撃目を編み出した。1撃目の居合と2連撃目の5つの型を繰り出す技を六連一刀流と呼んだってわけだ。そら、話はしてやった。早く続きやれ」


「はい、ありがとうございます」


 淡々と話す仁介さん。いつものあの怖さがなかった。実は怖くない人なのだろうか。まぁだからって逆らいはしないけど。

 素振り500回、居合の練習を500回。朝の農作業と加えて筋肉痛で身体中痛い。樹君はピンピンしてる。鍛え方が違うんだろうな。

 夜も樹君の家で止まり、次の日。昨日通り朝は農作業をして、昼からは剣の鍛錬を行った。

 ここに来てから1週間後。俺のここでの日常に変化があった。


「拓人! こっち来い!」


 呼ばれたので農作業を止め、手に何か持っている仁介さんの下へ行く。


「これ付けろ」


 渡されたのは耳飾り。樹君が付けているのと同じタイプの物だ。


「後これを使い魔にしろ」


 手に持っていたのは小さな籠だ。中には黄色く丸い魔獣が入れられている。


「魑魅ですか?」


「口聞く前にさっさとしろ。時間押してんだ」


 テイムの掛け声で呼応し左の肩甲骨辺りに宿った。


『雷球の魑魅 ライコウ《雷》B級

→素の力は弱いが他の力との相乗効果で発揮する。さらに肉体を一時的に向上させることができる』


「今日の鍛錬は道場で行う。樹も連れてこい」


「は、はい」


 一体何があるんだろうか。

 昼食後、木刀片手に村の道場の門を叩き中に入ると現実を見せつけられた。今までやってきたぬるい鍛錬とは全く違う。ここにいる門徒全員が人の動きをしてない。抜刀の勢い、背を取る速さ全てが異常だった。





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