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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-18.『水宝宮の試練②』

 瀬戸際で何とか次の場所にワープした。呼吸が荒くなる上に喉が焼けるように痛い。高音の蒸気を吸ってしまったのだ。


「……。ここママの加護を受けられる。これくらいなら僕でも治癒できるから待ってて」


 ベルグローテは地面と接しているならば治癒できる。つまりここはもう海底らしい。


「ありがとう。……試練はもう終わりかな」


 目の前に広がるのは巨大な通路だ。周りからは殺気などは感じられない。ただ通路の奥からはとんでもない魔力を感じる。


「行こう。リリィが待ってる」


 休憩がてらゆっくり歩く。足音だけが聞こえる。そしてついに大きな扉の前に辿り着いた。グッと力を込めて扉を開けると、そこにはちょうどメルクリウスをテイムしたリリィがいた。


 ◇

 時は少し遡る。

 通路を歩いていくと大きな扉が見えてきた。近づくと扉は勝手に開いた。


「あなたがメルクリウス?」


 アクアブルーの美しい鱗、巨大な蛇の様で、口元には立派なヒゲがある。


「いかにも。予の名は水天竜王メルクリウス。水神の眷属にして、この世全ての水竜の親でもある」


「ということはミカハヤミも?」


「そうだ。シーサーペントとミカハヤミをここに連れて来たのは運命に他ならない。ただ、ミカハヤミは武器になっているようだが」


 これ、メルクリウスにとっては子どもを殺して武器に変形させてるから少しやばいのでは?


「えっと、ミカハヤミを倒したのは私ではなくて……」


「よい。ミカハヤミが弱かっただけだ。この世は死ぬか生きるか。そして人の世である限りそのような扱われ方をしても文句は言えん」


 どう返答すればいいか困るなぁ。


「私はこれからどうすればいいの? あなたと戦う? それとも別の試練か何かあるの?」


「予からお前に与える試練などない。あの男にはあるが、そもそもここまで辿り着けるかにかかっている」


「死ぬことはあるの?」


「死ぬ可能性はある。が、死因は溺死くらいだ」


 しっかり死ぬじゃん。正人君は大丈夫なんだろうか。


「あっ、そうだ」


 シーサーペントを出した。生みの親なんだから合わせてあげないと。


「シーサーペントはすごく役に立ったよ。攻撃にも防御にも。ありがとう、この子を産んでくれて」


「数いるシーサーペントの1体だ。その1体が抜けてお前にテイムされここにいる」


 シーサーペントはメルクリウスに近づいて何か話している。人語を話せる訳ではないが、何か一生懸命伝えているようだ。


「久しぶりの会話で忘れるところだった。予の所まで来た者には報酬を与えている。まずはこれを」


 突然上の方が光り出して何かがゆっくり落ちてきた。それは海のように深い青色で、魔力もミカハヤミ以上のものを感じる。


「それは予が何千年と貯め続けた海の魔力の結晶体。これをマスター・スミスの所に持っていけば神器になるだろう」


「そ、そんなすごいものを私に?」


「あぁ、見たところ神器を持っておらんようだ。打ってつけの物だと思うが?」


「いやそうなんだけど」


 正直に言って持った瞬間から伝わるが、一個人が手にして良い領分を超えている。正人君が持つエアドロム以上だ。もしかしたらベルヴェルク以上かも。アナスタシアさんが持ってたオルタナティブくらいはある。


「次はこれを」


 今度はシーサーペントが光り出した。


「シーサーペントはこれからもお前の使い魔としてある為に予の一部を与えた。確認するがいい」


『水天竜公 リヴァイアサン 《水》S級

 →シーサーペントが新たな力を得て変化した姿。水天竜王の力により防御力が格段に上がった。その鱗はマグマの中でさえも耐えてしまう程の強度である』


「すごい。私、防御方面はこの子頼りだったからこれでまた強くなれるよ」


「そして最後は予をテイムしろ。そうすれば攻撃も防御も隙が無くなる」


「うん。これからよろしくね。えーっとなんて呼べばいいのかな?」


「何でもいい。お前の呼びやすい呼び方で」


「じゃあよろしくね、メルクリウス。テイム」


『水天竜王 メルクリウス 《水》S級

 →水神の眷属。水に関わることなら何でもできる。水中にいる場合は呼吸が必要無くなり陸上よりも速く動ける他、水に触れるだけで魔力や傷、ダメージを回復する。ただし自然の水に場合に限る』


「すごい。過剰戦力だよ」


「予は水神の眷属だ。水というものに関われば無敵だ。……どうやら辿り着いたみたいだな」


 扉が開かれた。正人君がここまで来たんだ。


 ◇

 時は現在に戻る。


「今、終わったみたいだね」


「うん。メルクリウスもテイムできたし、シーサーペントもリヴァイアサンになったし、これ見て」


「すごい魔力を感じる。神器の素材じゃないか?」


「そう、メルクリウスがくれたの。私専用の神器がこれで作れる」


「良かったね。メルクリウスを出してくれる?話したいことあるからさ」


「わかったよ」


「よくここまで来たな」


「誰のおかげだよって話。これで試練は終わった。これで十分確認は取れたろ?」


「あぁ、これなら問題ない。だが、試練ならまだある」


「?」


「リリィと戦え。予も久々に暴れたくなった」


 メルクリウスから発せられる魔力が上がった。戦闘態勢だ。


「で、でももう試練は終わったんじゃあ?」


「リリィに対する試練はな。だが、これだけの強者を前にそのまま帰るには惜しい。予は何千年とここで待ち続けた。予の前に立つに相応しい強者を。かつての戦いは消化不良だったからな。ここなら地上を気にせず存分に戦える」


「いいよ。やってやろうじゃないの。ただし、手加減はできない」


「あぁ、そうでなくてはな」


「実際戦うの私なんだけども……」


 私の意見はそっちのけで始まりそうだ。でも、せっかくもらった力を試すには打ってつけの相手だ。


「メルクリウス、早速接続とかできる?」


「できるぞ」


「よし……。水神ポセイドンと接続開始」


 今まで感じたことないものを感じる。そして私の中に一気に魔力が流れ込んで来る。これが無限の魔力。こんなのをずっと正人君は使っていたんだ。


「月神ディアナと接続開始」


 やっぱり正人君は月神の方を使ってきた。長引くとこっちが不利だ。


「行くよ!」


 初手からスピード全開で行く。正人君もこれくらいならまだついて来れるけど、武器を出す前なら対応は後手に回るはず。

 と、思っていたけど手のひらでしっかり押さえられた。


「エアドロムは変幻自在の神器。攻撃箇所さえ分かれば武器なんて出さなくても少しの展開で防御はできる」


 空いていたもう片方の手からいきなり剣が飛び出してきた。避けなければ突き刺さる。その場を離れて再度突進する。正人君も両手に剣を作り出して臨戦態勢だ。ここからはスピード勝負。

 今はまだ互角のように見える。数々の流派を使える正人君にとっては私が使うリベリュール槍術も、六連一刀流も対応圏内だ。つまり、互角のように見えて今追い詰められている。正人君にはまだ切っていないカードが沢山に対して、私はもうない。

 けど、唯一上回れるとしたらメルクリウスの力のみ。


「メルクリウス、力を貸して」


 槍先に水球を作り出してさらに凝縮していく。それを長い剣のように一直線に発射する。


「やっ!!」


 さっと横に回避する正人君だが、これはいわば長い剣だ。槍を横に薙ぎ払うとそれも同じ動きをする。圧縮して解き放たれたそれは正人君の頬を掠めたが、すぐに避けられた。


「難しいなぁ」


「さっき手にした力だ。扱いに慣れないのは当たり前だ。だが、少しはやる気になってくれたようだぞ」


「けど、正人君にとってはまだまだ対応範囲だよ。もっと本気を出させる方法を考えないと」


「ならば先ほどの突進した槍術だが、槍に水を纏え。水も変幻自在なのだ。使う器によって形を変え、注ぐ量も調整できる。器はミカハヤミだ。奴はこの形状を選んだ。ならば、その意図を理解しろ」


 可変式のこの槍を最大限に使う方法を考える。水を纏うだけではダメだ。もっとさっきみたいにリーチを伸ばせれば少しは追いつける。


「考えはまとまったかい?」


「少しだけね」


 リベリュール槍術『蜻蛉』で一気に間を詰める。さっきと違うのは水の魔力を槍に纏わせてる点だ。そして硬度は以前ミカハヤミの方がエアドロムを破っているからきっと正人君はこの一撃を躱してくるはず。

 躱した後、正人君は交戦に出るだろうからその前に槍を三節棍に可変して横薙ぎに振るう。防御して吹き飛ばしてもすぐに追いかけろ。じゃないとせっかくの隙が無くなる。

 距離にしてほんの数メートルだったと思う。砂煙が、一瞬にして真っ二つになり、その斬撃は私に襲いかかった。向こう側の壁まで押し返された。


「うぅ……」


 痛い……。緩和の加護が働いてるのにこのダメージは異常だ。

 砂煙の中からは二刀流を辞めて大剣に持ち替えている正人君が現れた。


「重剣だっけ……」


 初めてまともに受けたけど、なんて重さなの。一発が必殺技レベルの剣技だ。


「今の一瞬正直危なかったよ。もし僕が重剣を使えなかったらあのまま負けていたかもね」


「その割には余裕そうだけど……?」


「ここは海の中と言えど海底だからね。ベルグローテの土神の加護の圏内なのさ。だから回復もできた」


「神様の加護を2つ持つのって反則すぎるよ」


「こればっかりは神様に言ってよ。じゃあ続きだ」


 重剣による攻撃は荒々しい。近づくことができない。このままだとジリ貧もしくは負ける。


「水を纏うことを覚えたな?」


「覚えたけどっ……。こんな状況で何をさせるの?」


 斬撃の嵐の中話しかけられても何もできないよ。


「次は槍ではなく体に纏え。お前には水神の加護がある。ここは建物内で陸上のように思えるが海の中だ。お前はまだ加護を使っていない。戦いながら理解を深めろ。今、斬撃を避けられるだけの余裕があるならできるはずだ」


 言われてみれば、状況はただ斬撃を避けているだけ。一撃がすごいだけで当たらなければどうってことない。メルクリウスは意外と戦いを教えるのが上手いな。

 言われた通りまずは水を纏う。そして加護を見つめ直す。認識を改めろ。ここは海の中だ。海は、水は全て私の味方だ。


「そうだ、それでいい。では、海を泳ぐように水を蹴るんだ。自身の足は魚の尾鰭のように思え。自由に泳ぐ姿を想像しろ」


 水を蹴る。すると、爆発的な加速と速度によってさっきよりも余裕で躱せる。そして空中ならぬ何もないところでもまるで壁があるかのように何もないところを蹴ることで方向転換ができた。

 正人君の顔色が変わった。何かをする少しの間があれば今の私なら近づける。

 グッと足に力を込めて解放する。水中ならリベリュール槍術の技術を使うよりも速く動ける。ただ刺突しただけでエアドロムを貫いた。体に纏っている水の魔力を槍にも広げる。

 すぐに大剣を展開する正人君でも今の打ち合いは私に部がある。このまま攻める!

 流石にあの正人君でも後方に下がらざるを得なかった。けど、そんな距離はすぐに詰められる。


「……! 上に避けろ! 死ぬぞ!」


「えっ?」


「重剣、柔型二節『天城』!」


 横薙ぎ振われた大剣から出た斬撃はこの空間ごと斬りさった。


「は?」


 さらにその斬撃に吸い込まれる……!?

 全力で蹴ることで何とか窮地を乗り切ったけど、その跡は壁も後ろにあった扉も何もかもを斬っていた。


「何なのあれ? 空間を斬ったの?」


「重剣を使う人間にとっての奥義だよ。奥義を使えるの世界に2人だけだけど。空間を斬ることで発生した次元はこの世界の修正力によって元に戻ろうとする。その時に吸引力が出るんだ。もちろんそれに触れれば木っ端微塵だろうね」


「殺意が高すぎるよ」


「本当は使いたくはないんだけど、リリィが思ってた以上に追い詰めてきたからそれを払うためにね。リリィならきっと躱せると思ってた」


 今後何かあればこの技を使ってくる。絶対回避しなければならない。つまり下手に突っ込んだり、攻め続けたらそういうことになる。


「万事休すかも……」



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