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パラディン・ベルヴェルク 〜転移した世界で最強を目指す〜  作者: 天月 能【あまつき あたう】
第7章 相羽リリィの冒険
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7-17.『水宝宮の試練』

 あれから3ヶ月、私はアナスタシアさんとの訓練と同時並行してシーザーと一緒に依頼を受けた。

 正人君も誘ってみたけど3人で一緒に戦ったのは片手で数えるほどしかない。しかしシーザーに聞いてみると個人的には会っているそうで、その時に戦い方や技術面について指導してもらっているらしい。なんだかんだ仲が良い。


「槍術もとりあえず形にはなりましたね」


「アナスタシアさんのおかげです」


「どれだけ対人戦をしたとしても、リリィの仮想敵は魔獣なのでこれからはもっと強い魔獣と戦ってください。もう一つ課題を上げるならS級の使い魔をテイムすることですね」


「そんな簡単にはいませんよ?」


「確実に4体はいますよ。残り2体ですが」


「それって星の属性ですか? さすがに無理ですよ。私そんなに強くないですから」


「テイマーは強い武器や使い魔が増えれば増えるだけ強くなります。実際、その槍を手にしてからあなたはグンと強くなりました。テイマーは道具と使い魔を一流の物を揃えることが強くなることの近道です。もちろん技術面も極めなければなりませんが」


 理屈はわかるが、私にS級の魔獣を扱うことなんてできるわけがない。ましてや星の属性を持つ魔獣なんて尚更想像できない。


「渋る気持ちもわかりますが、人間やってみたら意外といけるものですよ。やらないよりもやることで経験も増えます」


「……そう、ですよね。やらないと始まらないですよね」


「はい。なので、一度行ってみてください。きっとマイナスになることはありません。死なない限りは」


 正人君もいるし、私自身強くなったから簡単には死なないと思うけど、念には念を入れてシーザーも誘ってみよう。

 その日の夜正人君も家に誘って2人にアナスタシアさんとの会話を話してみた。


「正人君はどう思う?」


「僕も彼女に賛成するよ。リリィにはもっと強い魔獣を捕まえて戦いの幅を広げてほしい」


「俺も賛成。一緒に戦ってて少し物足りない感じはある。ラウラもその槍もすごいけど、圧倒的って感じはしない。勝負したい時に必要な切り札的存在がリリィには無いと思う」


「それは自分でも理解してるんだけど、どうしてもイメージができないの」


「リリィ、初めてやることはどんなことであってもイメージなんてできないよ。僕もたくさんの流派を修めてるけど初めは訳も分からず事を進めていくしかないんだよ。でも、時間経過と共に理解度が増すと格段に変わる。それは使い魔だって同じだよ」


「リリィさ。俺や正人に意見聞くのは良いけど結局のところどうなんだよ? お前自身どうしたいかだろ?」


「間違いない。必要なのはリリィの気持ちだけだよ」


 私の気持ち……


「やるだけやってみようかな。失敗したらした時考える」


「それがいい。じゃあいつ行く?」


「明後日に行こう。明日はしっかり準備してゆっくりと休む」


「明後日かぁ……」


「シーザーは何か用事でもあるの?」


「依頼の関係でしばらく王国を離れるんだ。また戻っては来るんだけど、1ヶ月はいない予定なんだ」


「1ヶ月かかる依頼って事はけっこう大きいね」


「実は大賢者からの直接来た依頼で、明日からダリア王国に行くんだ」


 大賢者ってことはマスター・ソーサラーでお父さんの幼馴染と聞いている。


「それは仕方ないね。正人君と2人で行ってくるよ」


「姉を頼むよ、正人」


「頼まれたよ」


「私ってそんなに弱くないはずなんだけど!?」


 ワハハと弾む会話と共に夜が更けていく。

 次の日シーザーはダリア王国に向かった。私たちは旅の準備をして明日に備える。

 向かう場所は西の大陸にある水神の神使がいる水宝宮。名前は『水天竜王メルクリウス』。気性は4体の星の属性の中でもダントツで荒いと言われている。さらに、水宝宮の門はずっと閉じられている。伝承では認められた者のみ開くとされているが果たして門が開いてくれるのかどうか。

 水宝宮までは正人君の使い魔であるカグヤの背に乗って遊覧飛行しながら向かう。空を使えば陸路よりも数段に早く着く。空にいる魔獣は陸よりも少ないため危険はほぼない。ただ、味気ないだけが欠点だ。


「ここが水宝宮に1番近い町だね」


「うん。今日は宿で一泊してから明日水宝宮に行こう」


「そうだね」


 次の日、水宝宮のある海辺にやってきた。見た目はただの砂浜があるだけだが、


「宮殿みたいな建物は無さそうだけど……」


「そりゃ水宝宮は海の中にあるから。こんな浅瀬にはないよ」


「じゃあどうやってそこまで行くの? 船とか?」


「海に足をつけてみなよ。何も無ければ変化はないし、認められれば何かあるはずだよ」


 正人君を信じて海に両足を入れてみた。すごく冷たいが我慢だ。

 すると、使い魔である『水天竜童シーサーペント』が急に現れて遠い水平線に向かって大きな声で叫び始めた。


「僕はね、確信していたよ。シーサーペントはメルクリウスの子どもの一体だから。その子どもを連れてきたリリィを邪険にするはずがない」


 海が突如として割れ始めた。海と海が割れて、一本の道となり遠い所には建物がうっすらと見える。


「あれが水宝宮だよ。行こう、リリィ」


「う、うん」


 ドキドキする。まさか条件がシーサーペントを連れて行くことなんて思ってもみなかった。たまたま使い魔にしてただけだけど縁ってすごいなぁと思ってしまった。


「すごくでっかい建物だね」


「実物は僕も初めてだよ。入ろうか」


 中に入ると見事な装飾であしらわれた内装と2つの扉だ。


『この門が開いたのは実に1000年以上前のこと。お前たちには試練を与える。女よ、名は?』


 突然声が聞こえてきた。この声がメルクリウスなのかもしれない。


「リリィ・ノートです」


『では、リリィよ。左の扉に入るといい』


「僕のことは聞いてくれないのかい?」


『貴様のことは全て知っている。お前は右の扉に入れ』


「じゃあここで一度お別れだね。リリィはきっと良くしてくれるはずだから気楽にやればいいよ」


「何でわかるの?」


「んー? 何となく」


「腑に落ちないけど、正人君も気をつけてね」


「気をつけはするよ」


 お互い左右の扉に入っていった。

 入ってみるとただの一本道だった。でも外から見た建物の大きさよりも大きく感じる廊下だ。空間が歪んでいるのかもしれない。


『まずは我が子シーサーペントを連れてきてくれたことを感謝する。まさかここから抜け出して海に出ようとは思わなんだ』


 気性が荒いと聞いていたけど思ってたよりも穏やかな声の魔獣だ。


「私自身も強力な竜種の使い魔が欲しかったから出会えて良かったよ。そんなことよりも試練は何? ただの一本道の廊下にしか見えないけど」


『そうだ。ただの一本道の廊下を歩いてくるだけでいい』


「それじゃ試練じゃないよ?」


『今、お前に試練を与えるつもりはない。与えるとするならばあの男の方だ』


「正人君の方が?」


『世界の命運を賭けるに相応しい男なのかどうかを知りたい。もしこれで予の所まで来る事ができなければ所詮はそれだけだったと言うことよ』


「いったいどんな試練をやってるの?」


『無限に現れる我が子等の猛襲とだけ言っておこうか。並の人間ではものの数分で食い殺される』


 一体どんな試練なのだろうか。聞くだけで身震いする。


 ◇


「なるほどね。これだけの数の竜種を相手をしながらゴールを目指せばいいのか。リリィは無事なんだろうな?」


『あの娘に関しては予が命を保証しよう』


「じゃあこっちに集中できる」


 ゾロゾロと水面からシーサーペントが顔を出して睨みつけてくる。

 広い空間に一部足場となる浮島があるだけで正面にも、頭上にも次に続く道はない。ということはシーサーペントが現れた水中に道はあると思われる。


「でもまずは目の前のあいつ等からやらないとね。ベルグローテ、準備はいいか?」


「海といっても海底はママの大地の範囲だからいくらでも恩恵を受けられるよ」


「なら苦労はしなさそうだ。カグヤ、正午を過ぎたらベルグローテから交代してお前を使う。時間になったら教えてくれ」


「承知した」


 神器エアドロムによって2本の剣を作り出して目の前のシーサーペントを真っ二つにした。続いて2体目、3体目と斬りつけて数を減らして行く。水面から出ているシーサーペントが半分以下になった所で水中に潜り、道を探す。

 水中であっても容赦なく襲ってくるシーサーペント達に巨大な岩柱をぶつける。

 が、命中したのはたったの1体だけで、その他は避けられた。そして何よりも呼吸が続かない。すぐに浮島まで泳いで息を吸う。


「土神の恩恵受けられるんじゃないの!?」


「あくまで海底と判断できれば恩恵は受けられるよ。水中は適応外」


 思ったよりも厄介だ。呼吸もままならない、水中で視界が悪い、動きも鈍くなる。


「じゃあ僕が君の目になるよ。君はただ教えた方向に向くだけでいい。カグヤも手伝ってよ」


「それは構わないが、その方向に向けたとしても攻撃はあたらないぞ」


「その辺は僕に任せてよ。これでも土神の眷属なんだぞ」


 ベルグローテを信じてまた水中に潜る。全ての感覚を2体の使い魔に預けて、言われた通りの方向に向き攻撃する。さっきよりかは上手く事が運んでいる。深い水中をひたすら泳ぎ、息がそろそろ切れそうな時、底に魔法陣があった。手で触れ魔力を流し込む。

 場所は移り変わり目を開けた瞬間、そこはすでに水の中だった。息も絶え絶えで必死になって上を目指そうとするが、いつになっても辿りつかない。

 遂に呼吸が切れてしまい、海水が口から鼻からどんどん流れ込む。


「ぷはっ、ゲホッ、ゲホッ! ……!」


 使い魔の一体である『変幻自在トリッキー』による能力で助かった。トリッキーは見えない壁を張る。四方全てに壁を張り箱状にし、主人を中心として展開すれば水を押しのけて壁を張れる。しかし問題は酸素がそこまでない事だ。


「助かった……。話せる時間がないから手短にいこう。ここは空間全てを海水で埋め尽くされた場所だと思う。そして、先が全く見えない。魔法陣が上なのか下なのか、それとも側面にあるのかすらわからない。よってあいつを解禁する。全ての海水を蒸発させて視界を良好にして魔法陣の場所を特定する」


「でも、熱気で倒れるよ?」


「トリッキーの壁があるうちにやる。それでも保つかどうかだけどこのまま無作為に探すよりマシだ」


「じゃあ魔力供給は任せてよ。いくらでも使って」


「そのつもりだ。……さてと、やろうかカグツチ」


「主人の命を実行する。あまりの熱さで溶けないことを祈る」


 噴火の化身にしてかつての双竜の相棒であるカグツチが火を噴く。瞬く間に海水が蒸発していき空間が熱気に包まれる。そして遂に空間の側面に魔法陣を発見した。



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