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ほのぼの小説談話(1)地の文と会話文

作者: 稲葉有仁

 皆さま、ようこそいらっしゃいました。

 私、マスターの稲葉と申します。

 この機会にぜひ、お見知りおきを。


 まず最初に申し上げたいのですが、この話にオチはございません。

 「小説を書くこと」をゆるくテーマにしておりますが、私、稲葉の単なる思い付きで進んでいきます。

 登場人物だってほとんどおりません。お客様と私、それから私の二匹のペットだけでございます。


 えっ? 来る場所をお間違いになられた? すいません。戻るボタンをクリックしてそっと閉じてください。


 では、前置きが長くなりました。さっそく私の大切なペット二匹をご紹介いたします。

 ほら、ジノブン。隠れていないで出ていらっしゃい。お客様は皆さんお優しいから、大丈夫ですよ。

 こら、カイワブン! ウンチしていないで、ご挨拶なさい。お座り! よろしい。よくできました。


「おいら、ジノブン。よろしくワン」

「あたし、カイワブンニャ。あたしのことをせいぜい可愛がるがいいニャ」

 えーっと、こんな奴らですけど、どうか大目に見てください。

「このへっぽこマスター、偉そうに何を言うワン」

「あたしのこと、『こんな奴ら』ですって? 失礼しちゃうニャ」

 ちゃんと躾けられていませんが、お許しください。


「ところで話は変わるけどマスター。俺たちなんで、ジノブン、カイワブンなんて変な名前にしたんだワン?」

「あたし、これでもメスよ。カイワブンなんて男の子みたいじゃニャイ」

 それはですね。この子たちの名前は、私の心の叫びなのです。

「地の文と会話文って難しいですよね」と、そんなことを言いたいがために、この子たちに登場してもらったのです。

 ちなみに会話文とは「」(カギかっこ)内の文、地の文とはそれ以外の文です。

 読者の皆様には、釈迦に説法ですね。


「地の文と会話文で悩むなんて、やっぱりマスターは人間がちっちゃいニャ」

 ペットにまで指摘されてしまいました。まさにおっしゃる通り。私は小心者です。

 でも、小説を書く人なら一度は悩んだことがあると思うんです。地の文と会話文の役割について。


「そんなの簡単さ。おいら、ジノブンがずっと話していればいいんだワン」

「違うわ。あたしよ、あたし。カイワブンがずっと話しているのが面白いんじゃニャイ?」

「いや、ジノブンだワン」

「カイワブンにゃ」

「ジノブン!」

「カイワブン!」


 例えばこんな風に、バランスよく地の文と会話文が続いていけばいいんですが、実際には次のように誰が誰だか分からなくなることがよくあります。


「あたし、カイワブンよ」

「いや、オレがカイワブンだ」

「なにをいっているのだわさ、あたいがカイワブン」

「やっほー、オレこそがカイワブン」

「五人そろってカイワブン!」


 えーっと、失礼しました。話を戻します。

 会話文って、書き手は当然誰のセリフか分かって書いているはずですが、読み手から見ると誰の発言か分からなくなってしまうことが非常に多いように思います。本当は面白い作品のはずなのに、読者様が離れていってしまう原因にもなる。

「私は自分のことを客観的に見ることができるんです!」って人ならいいんですけどね。


 適度に地の文があると読みやすい。それは、そう思います。

 まず地の文によって呼吸が生まれるし、上手く使われていれば誰が話者か意識せずとも、すっと頭に入ってくる。だけど、地の文が多いと、どうしても会話のテンポが遅くなる。バランスが難しいですよね。


 地の文と会話文の使い方が巧みな投稿者の文章を見かけると、いつも勉強になります。そしていつか、同じように分かりやすい文章が書けるようになればと思うのです。長い道のりです。


「でもおいらとカイワブンの会話だったら、どっちが話しているか分かるワン」

「語尾や口調で分かりやすくするのも、有効な方法かもしれないニャ」

 そうですね。二人とも指摘ありがとう。



 話題を少し変えます。私はずっと会話文が苦手で、地の文の多い小説を書いていました。

「あたしのことが苦手だったの? 飼い主の癖にひどいニャ」

 カイワブンちょっと黙っててね。今だけ真面目な話をしています。最近は会話文の割合の方が多いくらいなんですが、昔は地の文が大好きでした。

 書きたいことや自分の主張をたくさん盛り込める。やたら凝った設定を作ったりとか。

 偉そうに説明すると、気分がいい。超気持ち―! って思うじゃないですか。

 でも、私の師匠とも呼べるあるお方に、厳しくもためになるお言葉をいただいたのです。


「説明しちゃってますね。説明すると、小説はつまらなくなるんですよ」と。


 それ以来、色々な文体を試しているうちに地の文が減り、会話文が増えていきました。

 会話文の役割を増やすことで、説明っぽさをある程度減らすことに成功したからです。

 いまだに文章が説明っぽくなってしまうこともありますけどね。実際には、地の文が多くても説明的にならずに書ける人もいるのでしょうが、私の場合会話文を増やすことが、説明っぽさをなくすための近道でした。


「やったニャ。ついにカイワブンの時代が来たのニャ」

「来るわけないワン。そんな殴られたように潰れた顔面をした、小便臭いニャンコの時代なんて来るわけないわん!」


 例えばこんな風に、本来今まで地の文で語っていた(殴られたように潰れた顔面をした、小便臭いニャンコ)という情報を会話文に取り入れる。それによって、地の文を少し軽くできると思っています。

 あまりやりすぎると、不自然さ満載の会話になるからほどほどがいいんですけど。


 ということで、眠くなったので今日はここらへんで。

 もしコメントを頂けたら需要があるとみて、続編を書きます。


「じゃあニャ!」

「またワン!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 小説の基礎である地の文と会話文の使い方が楽しく学べるところ。 [一言] 会話文で、自然に状況を説明するのって大変ですよね。私は、その場の登場人物がたくさんいるのに会話しているのは二人だけと…
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