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11話 動き出す国々

評価やブックマークありがとうございます。

今回はかなり短いですが、明日あたりにもう1話投稿します。



 医療施設で魔剣の傷の治療を終えた夜は、大事をとってと1日入院することになった。

今現在、夜はあることに悩まされている。


「暇だ……」


元々いた前の世界にはスマホなど暇潰しに最も特化した道具がある。

しかし、ここにはそんなハイテクな電子機器は存在しない。


そこで夜は何度かアスに呼びかけたが、何も返ってこないのでここにはいないらしい。


素振りをしようと思い立つも黒刀がない。特にすることがないので、しかたなく左腕の具合を確かめることにした。


手のひらの開閉や肘の曲げ伸ばし、肩を回すなどの軽く動かしている。

肩を回していると、ふと斬られた所に目が行く。痛みが残っているわけではない。


夜は病院で着るような白いパジャマのような服の袖を肩口まで捲くると、そこには4cmくらいの黒い痣がグロテスクに残っている。


本来、魔法で治療した傷のほとんどは痕が残らず綺麗に治る。その証拠に切り傷は綺麗に塞がっている。

しかし、物にもよるが魔剣の傷は特殊だ。今回のように痕跡が残る場合もある。


夜はその痣に右手を置き、とある決意をする。

今後、こんな傷を簡単に負わないほどに強くなろうと。


その時――


「ヨル、来てやったぞ」


アスの弾んだ声と共に病室のドアが開く。

夜は左肩に自分の右手を置き、決意の表情を浮かべている。


だが、人によってはこう見えたりする。


「ん? なんで痣に手を当ててそんなキメ顔をしているんだ、ヨル。

傷が疼いているのか?」


「違う! もうこんな傷を負わないように強くなろうと決意したんだ! だから刀を――」


「だめですよ? ヨル様はまだ怪我人なんです。安静にしていてください」


「う……」


アスの後から入ったイリーナが夜に大人しくするように言う。

夜はアスを見ると、気になっていたことを聞く。


「そういえば、アスは今まで何処にいたんだ?」


「ん? 我はイリーナと一緒に昨日の後始末をしていたんだ。

なんだ? 我がいなくて寂しかったのか?」


「はっ何言ってるんだ。別に寂しかったわけじゃない」


「ツンデレか?」


「違う!」


イリーナはツンデレがわからないようで「ツンデレ?」と首を傾げている。


(そういば、前の世界でもいたな。テンプレ通りのツンデレが)

「別に、あんたと一緒にいたいとかそんなんじゃないんだから! 勘違いしないで」


ベタな台詞が頭をよぎりる。


(あいつ、元気かな……)


「――っというわけで行くぞ」


「あ、ごめん、聞いてなかった。何処に行くって?」


夜はある少女のことを思い出していてアスの話しを聞いていなかった。


「メイデン公爵の屋敷に行くんだ。さっさと行くぞ」


とアスは夜の襟を強引に引っ張って連れられ、公爵家へ向かった。


―――


「ただいま戻りました。お父様」


とイリーナが玄関から先に入り、夜も後に続く。


すると、


「おお、我が娘よ。よく無事に帰ってきた」


「はい。ご心配かけて申し訳ありません。私が帰って来れたのも夜さまのおかげです」


無事にイリーナが屋敷に帰ってきたことに感極まったイリーナの父――ハリー・メイデン公爵がイリーナを抱きしめる。


一旦抱擁から離れたイリーナは夜を紹介する。夜は「ヨル・テンザキと申します」と会釈する。


するとハリー公爵は


「そうか、君が。

歓迎しよう。君は娘の命の恩人だ。気の済むまでゆっくりしていくといい」


「本当ですか。助かります」


「ああ、それに君は少々訳ありらしいが悪人ではなさそうだからな。なにせ私の娘が認めたんだ。

誰か、彼を客間に案内しなさい」


と公爵の指示で現れたメイドに夜は客間へと案内され、部屋でこっそり素振りをしていた。


△▼△▼△


 ヴァルゴ王国の王都の近郊の西に位置する山を隔てて、2つの国が隣接している。

その両国は同盟国で、各国にはピスケス・アクエリアス連合国と知られている。


たった今、2国間で会談が開かれている。


各国の国王が円型のテーブルを模した魔法道具を囲んで座り、それぞれの後ろに宮廷魔術師が控えている。


起動している魔法道具には、数十という複数のブラックハウンドの群れと、並走している1人の黒髪の少年――天裂夜が映し出されている。


それを見た出席者のうちのアクエリアス国王が口を開く。


「ついにヴァルゴ王国も動き出したか」


「ああ、他国を出し抜こうと先に『勇者召喚』をしようと思ったのだろう。甘いな!」


「我々はとっくに『勇者召喚』なんぞ済ませている。

今となってはほれ、【権能】もうまく使いこなしているだろう」


ピスケス国王がテーブルに映し出されている映像を指差す。


「ああ。噂に聞く《ピスケス》の勇者の【権能】がまさかこれほどとは」

「魔物を召喚し使役する。さらに使役している魔物たちと感覚と同調。

これほど偵察に向いた能力はないであろう」


ピスケス国王は自国の勇者を自慢するように話す。

その間アクエリアス国王は「うーん」としかめた表情をする。


「ああ。しかし妙だな。ヴァルゴの勇者がいつも使う武器は銃だ。

それなのにそいつが使っているのは刀。おかしいと思わぬか?」


アクエリアス国王は指先で画面に触れ、一時停止した映像を拡大する。

丁度夜が振るっている黒刀がアップで映し出された状態だ。


「まあ、使用武器は置いておくとして、今回の勇者は魔力操作があまりに稚拙だ。

これでは【権能開放】も使えんだろう」


ピスケス国王は最後に「ふんっ」と鼻であしらい、嘲笑を浮かべる。

そこでアクエリアス国王は話題を変える。


「では早速だが……我らの勇者が【権能】を使いこなせるようになったという事で……何処から落とすか決めようではないか」


それを聞いたピスケス国王はにやりと口元に醜悪な笑みを浮かべる。

それに続いてアクエリアス国王も野心を隠さないような凶悪な笑みを浮かべた。


△▼△▼△


ヴァルゴ王国の北に位置する国――カプリコーン皇国。


 王城内の謁見の間で、夜と対峙していたアサシンの男が地面に膝を付き皇王に、オークション会場で夜が力を振るっていたことを報告している。


「―――これらのことにより、ヴァルゴ国は勇者を召喚したと思われます」


「うむ。【身体強化】なんぞ今の世代の者共は当たり前に使える。それだけではそう判断し難い。お前は何故そう判断した?」


「これをごらんください」とアサシンの男は懐から手のひらに納まるほどの大きさのケースを取りだし、白衣の研究者らしき男にそれを渡す。


「これは……黒髪」


「そうです。はじめは紫色でした。しかし、時間が経つとだんだん黒髪になっていきました。そいつは認識阻害の付与がされた魔法道具を身につけています」


アサシンが報告を聞いた白衣の男は動揺し2,3歩後ずさる。


アサシンの男が夜の髪の毛を持っている理由は、夜に頭突きを食らわされたときに抜け落ちたものが偶然彼の衣服に付着したものを回収したからだ。


白衣の男が騒ぎ出すと、それが伝染して他の家臣たちもざわざわしだした。


「静まれ!」


――ドン!

カプリコーン国王は宝杖で床を強く鳴らし、家臣たちを静まらせる。


そして声を張り上げて王族直属の近衛騎士たちに言い放つ。


「我が国も勇者を召喚する。宮廷魔術師たちに即急に準備を進めるよう言い渡せ!」


『はっ!』


こうして、カプリコーン皇国も勇者を召喚し戦争に参加することになった。



読んでくださりありがとうございます。

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