イケメンだった僕は
初めまして、初の小説投稿なので至らぬ点が多々あると思いますが、、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
みなさんはイケメンとは何かご存知でしょうか?
イケメンとは端的に言うと容姿がよい...まあ、目鼻立ちが整っている者の事を言いますよね。それに性格もよくて勉強もできて運動もできたら...これはもう真のイケメンと言っていいでしょう。
ところで、みなさんはイケメンになりたいですか? 憧れを抱いていますか? 「自分もあんなにイケメンだったら……」と思ったことはありませんか?
もし、そう思ったことある人はぜひこの主人公を見てみてください。
イケメンというものの捉え方が変わるかもしれませんよ?
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――――ジリリリリと、先週買ってきたらしいうざったいくらい音の大きい目覚ましのなる音が聞こえる。 「なんだ、もうこんな時間か」 そう呟きながら彼は布団からゆっくりと起き上がった。
時計が指し示す時刻は......午後10時。もちろん午前ではなく、午後である。
普通の学生が学校で青春を育んでいる間に、彼は睡眠をたっぷりととっていた。
そして、今からネトゲに励み、アニメを見まくる。それと同時にカップラーメンやポテチを食べ、コーラを飲む。視力は低下し眼鏡をかけ、髪もボサボサ、肌には油がぎっとりとつき、体はまるで豚の化身。
勉強もせずに娯楽三昧。おそらく大抵の人がイメージするであろうひきこもりの全てを凝縮しているであろうこの男の名は、佐原巧と言った。ちなみに年齢は15歳。
「うーん、こうやって今の自分を文章にしてみると酷いな」
巧は今の自分の酷すぎる現状を再確認し、落胆した。
普通のひきこもりならばわざわざ自分の状態を確認して落ち込むことなんてないだろう。だって、思春期を迎えたころからずっとこんな生活で、もう自分の姿は見慣れているはずだからだ。
ではなぜ、こんなことをしたのだろうか?
答えは簡単。いや、簡単ではないかもしれない。実はこの男、もともと二年前までイケメンだったのだ!!!! ………………本当だからね? 成績優秀、スポーツ万能、眉目秀麗。そのうえ性格もいいという。おそらく大抵の人がイメージするイケメンの全てを巧は持ち備えていたのだ。あくまで二年前までだが。
とにかく、巧はイケメンだったのだ。それもそこらのイケメンなんて目じゃないくらいに。それならば、次はこんな疑問が思い浮かぶだろう。
どうして彼はここまで落ちぶれてしまったのだろうか?
これも答えは簡単。単純明快。ひきこもる原因ランキング堂々の一位を飾れるくらいよくある理由だ。これがわからない人はきっとリア充。そうに違いない。そう考えたらムカついてきた。なんで私はこんなにいじめられてんだよ! 完璧すぎるからか? 私が完璧すぎるからか? 妬むなよ! 私だって努力してんだよ! え? 早くひきこもった原因を言えって? え? さっきまでお前が喋ってたのかよって? もー、二つも一気に質問しないでよ。
じゃあまず、二つ目の質問から返すけど、はい。私が喋っていましたよ。こういう説明みたいのするの好きなの。だからこれからもこういう事していくからね。口調も変わるよ。安心して。私が物語干渉することは多分ないからね。たまにこうやって出てくるときがあると思うけどその時はよろしくね。
次に、ひきこもった原因だね。巧はね。私と同じようにいじめられたんだよ。それも私と同じ原因でね。完璧すぎたのよ。ほら完璧すぎる人って大衆に溶け込めないでしょ?私みたいに。だから、優しすぎた巧は、その優しさに付け込まれて金を巻き上げられ。女を使って騙され。不意打ちや多対一なんかのきったないクソみたいな戦法を使って暴力を振るわれた。反撃が出来ないのを知っててね。それでも巧は一年間その状態で耐えた。親に心配かけたくないからってね。水をかけられても、悪口を言われても、何をされようとね。でもその状態も長くは続かなかった。いじめられるうちに巧の心はどんどん荒んでいったの。
そうしてその次の年の夏。巧は学校へ行かなくなった。
その日から、約一年と六か月。中学三年の二月だ。精神はかなり落ち着いたのだけど、あまりに体が変わりすぎてしまった…………。
それじゃあ、そろそろ巧の方の視点に移るわよ。私はとりあえず消えるわ。
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――――去年の八月。僕は学校へ行くのをやめた。理由は単純明快。いじめられたからだ。一年は耐えたんだけど、流石にこれ以上はきつかった。
まあでも、いじめられたんだ。しょうがない。逆によくあそこまで耐えれたもんだ。褒めてほしいよ。
「あー! ていうか、今そんなこと考えてる暇ないんだって!」
そうだ、そんな暇なんてないのだ。今は中学三年の二月。ということはだ、ということはだよ、もうすぐアレがあるんじゃないか!!
「そうだ! もうすぐ高校入学がある! 俺は、佐原巧は、高校デビューするんだ!!」
そう、僕は高校デビューがしたいのだ。
中学の時はいじめられて、青春なんてもん、一滴も吸えなかったからな。
だからこそ! 高校では中学の分も青春を謳歌したいんだ。
朝学校に登校すると、クラスメイトに笑顔でおはようと言われて、こっちも笑顔でおはようを返したり。
もちろん、嫌な笑顔や引き笑いじゃないほうね。
それで、放課後にはゲーセンで新しくできた友人と楽しくゲームするんだ。
もちろん、僕は奢るだけでただの財布になるとかはダメだから。
それでそれで、休日には彼女と映画とか見に行ったりしてデートするんだ。
もちろん、実はその女の子は同級生の仕込みでセクハラされたとかいう理由をいきなりつけられてお金取られて殴られるとかはダメだから。
それでそれでそれで…………って流石に時間の無駄か。楽しい思い出を想像すると同時に心が抉られたなあ。
とにかく! 僕はそんな黄金の青春を手に入れるためにまず、体と心をあの頃に戻さないといけないわけだ。でも、そのまんま元に戻すとまたいじめられる。ならばどうするか。
僕は考えた。どうすればいい感じの自分になれるのか。取りあえず僕は家にあった資料(ゲームやラノベ、漫画)を読み漁った。そういう生活をして、しばらく経った時。やっと一つの確かな答えが導き出された。
『要は、エロゲーの主人公になればいいんでしょ?』
そう。そうなればすべてが解決するんだよ。エロゲーの主人公(って言うのはめんどくさいからこれからは主人公って言う)になればだよ。さっき言った様なことがし放題なんだよ。だって主人公だから。主人公ならなんでもできるでしょ? だから僕もとい俺は主人公になる!
「それじゃあ、まずは主人公になるためにどうすればいいか考えないと」
考えてみたらエロゲ主人公ってなんなんだろう? こういうゲームには日々お世話になってたけど、いつもヒロインしか見ずに男の主人公の方はあまり気にかけたことなかったからな。 とりあえず調べてみるか。
――十分後
「なになに? エロゲ主人公とは、イケメンで、鈍感で、お人好しで、優柔不断だけど誰かが困っている時にはとてつもなく大胆な行動ができるカリスマ性を持っていて、なぜか高確率で親が家にいないなど明らかに普通の人間ではないモテるために生まれた人間です、か……」
一個も当てはまってないやん! おっと関西弁がなぜか出てしまった。
ごほんっ、気を取り直して真面目に考えるか。 これどうやってなればいいんだ? イケメンは今から頑張れば戻せるとして、それ以外だよ! どうすんのこれ! 鈍感とかカリスマ性とかどうやって習得すりゃあいいの!? その辺の性格系は諦めよう。性格が悪すぎなければなんでもいいだろう。
「それじゃあ、性格以外だとなにがあるかな? えーっと、イケメン、親が家にいない、料理が上手い、運動部じゃないのに体が引き締まっているとかか」
うーん、出来なくもないかな? ただし親は無理。どこの世界にそんな都合のいい家庭があるんだ。それはしょうがないとして、それ以外を頑張って身につけよう。
今は、二月。高校入学まであと二か月だ。それまでにできるだけ頑張ってやってみよう。
「よっしゃー! やるぞーーーーー!!!」
そう決意した、二月の夜、午後十時だった。
※主人公は何年もひきこもりをしたせいで頭が少しおかしくなっています。