魔法使いとその使い魔の日常
身の回りの出来事です
ファンタジー要素もあります。
俺はどっさとソファに座ってテレビの電源をつける。
同時にネットを開き、読みかけの漫画や本を手に取る。
「ご主人、それじゃあまるで聖徳太子ですね」
話しかけてきたのは憎たらしい俺の使い魔だ。
猫なんだけど、種類はよーわからん。
とりあえず茶色。
野良猫って種類なんかないよな……?
性別は多分オスで、すぐ俺のことでダメ出しをしてくるおせっかいな奴だ。
「うるさいな、テレビの音量は小さいし、ネットは別に開いてるだけだ。俺は本を読むのに集中するから、少しは猫らしく黙っててくれないかな?」
「猫は四六時中にゃんにゃんうるさいですけどね」
これはある日突然魔力が宿った、俺と使い魔の話だ。
何気ない昼下がりの休日。
俺は特にやることもなく、いつも通りソファに寝転がって退屈しのぎに本を読んでいた。
好きな作家の本だが、すでに導入で退屈になってしまった。
本を額に乗せて居眠りを始める。
心地よい気温に、俺はすぐに寝息を立て始めた。
気づくと夕方近くになっていた。
だるい体を起こして、冷蔵庫をあさる。
「この都会の中で、水分を補給するすべがこの家にはないのか」
喉はカラッカラになっていた。
水道はちゃんと通っているから、蛇口をひねれば水は出る。
だが、俺は基本水道水は飲まない。
なんか変な薬品が入ってそうだからだ。
「仕方ないな、スーパーで買ってくるか」
俺は財布と鍵を持って、歩いて10分ほどの、近所の○オゼキに買い物に出かけた。
道行く人はまばらで、空はうっすらと暗い。
吹き付ける風は暖かく、やっと過ごしやすくなったな、と俺は思った。
線路の脇に生えた桜を眺めながらトボトボと歩いていくと、公園に一匹の猫がいた。
その猫は壁に背を持たせてダルそうにしている。
「なんだよあの猫、片手に一升瓶を持たせたら完全に飲んだくれだな」
含んだ笑いを飲み込んで、俺はその場を通り過ぎていった。
スーパーの中は近所の人たちでにぎわっている。
カゴをつかみ取り、左回りに野菜コーナーから見て回る。
キャベツをつかみ取って、カゴに入れる。
そのまま進んで、豚肉と焼きそば、コーヒーと牛乳を入れた。
そして、レジに進もうとした時、あるものが目に止まった。
「なんだこれ」
それはマジックフルーツ、と書かれた果物だ。
緊急入荷、と書かれており、残り一個だった。
それをつかんで、まじまじと見てみる。
すると、横から声がした。
「はあ、はあ、もうマジックフルーツないんですか?」
駆け込んできたのは20代くらいと思われる女性だ。
長めの髪に色は茶色。
かわいいらしい感じの雰囲気である。
その女性が店員にそう言っていたので、持っているフルーツを渡そうとしたが、
「このフルーツは中々手に入らないんですよ。申し訳ありません」
と店員が頭を下げてそう答えていた。
「これってそんな貴重なのか?」
値札には5000円と書かれているではないか。
高っか!と俺は思い、フルーツを箱に戻そうとしたが、なぜかその手が止まった。
(まてよ、そこまでみんな欲しがるフルーツって、一体どんなんだ?)
好奇心に駆られ、気づいたら俺はそのフルーツも一緒にカゴに入れてレジにならんでいた。
会計を済ませ、俺はレジ袋にそれらを詰めた。
フルーツはどうしようかと思い、一番上に乗せて、店を出た。
そして、帰り道で我慢できず一口かじってみる。
「リンゴ?なんか、大したことないな」
ちょっと前に流行ったバナップルのような、見た目はバナナだけど味はリンゴ、的なのを期待していた俺はがっかりした。
そのまま歩いていくと、まだあの猫がいる。
「まだいるよあの猫」
すると、思いもよらぬことが起こった。
「じろじろと見て、あなたは変質者か何かですか?」
猫がしゃべった!