巡洋艦ルーペシネフ
聖帝崇国の軍宙艦(宇宙軍用艦)、巡洋艦ルーペシネフが任務を遂行中、驚愕すべき存在に遭遇する。そしてクザナラフ・ゴルドフェイト艦長は、ある選択をする。
虚空に光が生まれた。
一つ、二つと生まれた輝きは一気に二万余りに増える。そしてそれらは光というボース粒子(力)からフェルミ粒子(物質)へと変わっていく。それは素粒子の物理学的な変換ではない。光速を超えて伝播した情報が物質に変わったのだ。光はその余波にすぎない。
電磁波のスペクトルが目まぐるしく変わり、虹色に輝く。その輝きは弱まり、やがて消えたその場所に一辺が六二センチの正六角形の薄い物体が残る。『追跡装置』という索敵用の小型無人宇宙船だ。追跡装置は[Ⅻ]一規日(二五時間。『[Ⅻ]**』は十二進法)掛けて全方位を光学的及び重力子的に捜査し、半径四六〇〇万キロメートル以内の三六メートル以上の物体を発見することができる。
総計二万基の追跡装置は一ヶ所に集まっていく。そこには有人の軍宙艦(宇宙軍用艦)、ノマイニセ・クワランヴァデト陸位等藩侯司の侯星宙領行政府に所属する陸位等藩侯司星宙領戦団の軍宙艦、巡洋艦ルーペシネフがあった。全長二六六〇メートルの長身に対して全幅や全高が約一〇七メートル程度と異様に細いのは、宇宙戦における交戦距離が最低でも七〇〇キロメートル以上を想定し、回頭する必要がないからだ。また宇宙船には窓というものはなく、乗組員はカメラで外を見るようになっているが、軍宙艦の場合はカメラがかなり多い。漆黒の船体表面にはランプが所々に設置されているが、現在は全てのランプが消灯し、星々の明かりを遮る巨大な闇と化していた。これは艦が作戦遂行中であることを意味している。
聖帝崇国の戦団(軍隊)は戦場を規模で大きく三つのタイプに分類している。一つ目は『従星戦』。これは惑星領域(惑星の大気圏内)での戦闘で、地球の軍隊でいうほとんどの戦闘、いわゆる『陸海空』が該当する。二つ目は『従星境界戦』。惑星領域側と宇宙側(と言っても衛星軌道など惑星付近)との戦闘で、地球の軍隊なら『陸海空』に含まれない例外である、地上と軍事衛星の戦闘が相当する。最後の一つが『宇宙戦』だ。聖帝崇国戦団にとって戦闘とは多くの場合、『宇宙戦』を指す。『宇宙戦』は更に交戦距離が一〇万七千キロメートル(地球の直径の約八.四倍)以内の『近距離戦闘』、一千五百万キロメートル(地球の直径の千二百倍)以内の『中距離戦闘』、そして二二億キロメートル(地球から太陽までの平均距離である天文単位の一五倍、太陽から天王星までの距離の〇.八倍)以内の『長距離戦闘』に分類される。『長距離戦闘』以上の距離では戦闘が困難、というより現実に起こり得ないため、該当する分類はない。
人類における最大の射程距離を持つ兵器は最大射程距離千五百キロメートルのICBM等の長距離弾道弾及び、ようやく実用段階に入ろうとしている、時速二万キロメートルで二万キロメートル先に攻撃可能な実験機、米国の極音速攻撃機『ファルコンHTV―2d』だ。もっとも二万キロメートルというのはあくまで地球における最遠地、つまり発射地点から地球の裏側までの距離であって、性能限界まではまだ少し余裕がある。と言っても流石に一〇万キロメートル先までは攻撃できない。つまり人類にとって最大距離の戦闘でも、聖帝崇国の『近距離戦闘』の範囲に充分収まってしまう。『長距離戦闘』ともなれば、定義として最短である二二億キロメートルでも光が進むのに二時間、時速一万キロのミサイルだとなんと二五年以上もかかる。これほどの超長距離ともなればミサイルのような質量兵器では時間がかかりすぎて使用に耐えず、レーザーのような光学兵器が中心となる、と思うかも知れないが、実際は逆に質量兵器が戦闘の主役となっている。それがどのような戦闘になるか、人類には想像も付かないだろう。人類が未経験な宇宙での戦闘や、技術的に不可能な超長距離戦闘はもちろんだが、お馴染みの『陸海空』に相当する『従星戦』であっても技術レベルが異なるため、聖帝崇国の戦術の発想は人類のものとは大きく異なっている。
巡洋艦ルーペシネフは辺境での、星宙領(領土)拡大のための遠征の任務はなく、専ら警察では対応できない組織的な凶悪犯罪や抵抗組織鎮圧を任務にしていた。任務の性質上、宇宙戦の武装以外に従星戦、従星境界戦の装備も搭載していた。
時は西暦二〇二〇年四月。そしてここは銀河座標『[Ⅻ]負三.bb八四/正一.三八三一/正四.三四ab』、ヒール・ユートナ星間雲の中。『星間雲』とはガスや塵などの星間物質の濃度が濃い、数百光年に拡がる宇宙の雲であり、ヒール・ユートナ星間雲は地球では『さそり・ケンタウルス・アソシエーション』と呼ばれている。
巡洋艦ルーペシネフの中心部、薄暗い作戦司令室は全方位の景映面(大型スクリーン)に対数距離補正(距離が圧縮)された立体映像の星々が映し出され、まるで宇宙空間に放り出されたかのような錯覚をその場の者に与える。そこでは、横一列に並んだ座席に四人の男女が座っていた。宇宙船を管理する最高責任者たちだ。
その一人、メネウィーネ操機長は絶え間なく計器を操作しつつ、部下からの調査結果をまとめていく。『操機長』とは宇宙船のシステム全体を管理する責任者だ。隣に座るクザナラフ・ゴルドフェイト艦長は、そんな彼女のスラリとした姿を見るとはなしに眺めていた。クザナラフの眼前で、後ろで髪を束ねたメネウィーネの頭がせわしなく動く。地球の多くの国の軍隊では長髪は許されないが、アルタイマトリ聖帝崇国では髪を束ねるなら認められている。彼の娘くらいの年齢でありながら今の地位に登りつめて艦を管理するメネウィーネをクザナラフは頼もしく思っていた。
しかし今のメネウィーネは落ち着きを失っていた。彼女の目の前に表示されたホログラフィを神経質に見詰めている。しばらく躊躇った後、意を決してクザナラフの方を向いた。
「艦長、抵抗組織の逃走した痕跡を発見しました。……ですが、」
それ以上は告げず、映像をクザナラフに送る。
「……どういうことだ?」
眼の前に映し出された文と映像の報告書に目を通したクザナラフは首を傾げてしばらく考え込んだ後、補佐を務めるポリオーファト・サラカンデ参謀に訊ねた。
「私としても信じ難いことです。しかし真偽はともあれ、そこに賊が逃げた以上は追跡しないわけには参りません」
「うむ」
艦長より年上ながら、長年右腕として彼を支えてきた信頼すべき男の言葉にクザナラフは頷く。
由々しき事件が発生していた。この近辺の複数の星系で戦団の地上部隊、星系保安庁の警備隊が抵抗組織の掃討を同時展開している。ところがその一つの星系で予想外の強力な反撃により、警備隊が壊滅状態に陥ったのだ。地球でLHS 311と呼ばれる星系の出来事である。最初に使用されたのは射剱・第三型『灰色雫』という武器。その後、ほどなくしてより高性能な射剱・第五型『大気粒子』も投入された。しかしどちらもほぼ壊滅。聖帝崇国では前代未聞の事態だ。
主に惑星の治安維持で使用される射剱・第三型『灰色雫』は地球の軍隊レベルでは全く歯が立たずに一方的に壊滅させるだけの性能があり、本来なら抵抗組織鎮圧には充分すぎる力だった。ところが『灰色雫』とは性能が桁違いの兵器、戦団でも秘蔵の射剱・第五型『大気粒子』を抵抗組織が入手・使用していたと考えられる信じ難い報告があり、巡洋艦ルーペシネフでも今回に限り特別に『大気粒子』の搭載が承認され、抵抗組織掃討が命じられた。『大気粒子』の有する『不可視化』機能は『皇帝の恩恵』ではないが、軍事上の重要技術として使用が著しく規制され、警察でも使用できず、戦団でさえ中々使用許可が下りない代物なのである。
抵抗組織の方も無傷では済まず壊滅状態になった。しかし一部が宇宙船での逃亡に成功したらしい。そして巡洋艦ルーペシネフは、星系から離脱した抵抗組織の宇宙船の後を追ったのだった。
巡洋艦ルーペシネフは二〇,七三六基の追跡装置を様々な星系に送り込んだが発見できない。それで敢えて何もない宙域に手当たり次第に送り込む行為を繰り返し、ようやく発見したのだった。いわゆる、ローラー作戦だ。
だが、それは更に予想外の成果をもたらした。
目標の痕跡は発見された。ここから見て天の川銀河の中心部の方角だ。だがメネウィーネの報告によれば追跡装置が記録した光景、周囲の主星の配置は本来のものと異なっていた。違う場所に転送されたのか? だが星系間航行装置を始めとする皇帝の恩恵の誤動作など、アルタイマトリ聖帝崇国の[Ⅻ]八〇〇規年(地球の時間で五六〇〇年)の歴史で一度も報告例がない。メネウィーネも人為的ミスや誤動作がなかったことを確認していた。
「確かに、ポリオーファトの言う通りだ。行かねばならぬ。何が起こっていようとも」
そしてクザナラフはルーペシネフに告げた。
「ルーペシネフ、星系間跳躍に入れ」
『畏まりました』
巡洋艦ルーペシネフ(正確には自我を持ったルーペシネフの演算機)は艦長の音声命令を受理し、星系間跳躍の実行処理を開始する。そして合成音声によって艦内放送で伝達した。
『只今より本艦は星系間跳躍を開始します。総員、跳躍態勢に入って下さい』
すかさずセネンテュエ操舵手が巡洋艦ルーペシネフの進路を設定する。彼女の横でメネウィーネは部下たちに指示を出し、各種設定と点検を行う。
待機中の者、および役割を済ませた者たちは各自の座席に深く身を沈める。座席の前面に現れたフードが座席ごと乗組員を包み込み、卵型のカプセルとなる。『ホロスト・ヨーロ液』という液体がカプセルの内部に注入される。ホロスト・ヨーロ液はカプセル内を満たし、人はその中に沈む。呼吸ができないが、窒息する前に仮死状態になるので問題ない。ホロスト・ヨーロ液に浸された人は代謝、すなわち生命活動を停止させていきながら、全身に均等に、かつ安全に体温が低下していく。軍士服の下に着込んでいる機闘服は簡易宇宙服の一部になる気密性の高い服だが、その横腹にあるスイッチを操作することで、服の内部にもホロスト・ヨーロ液が入り込む。実は伊佐那 潤と初めて出逢った時にヴァルカートワとリュキスヴェトリイェが着ていた服も、素材や意匠が規格品とは異なるもののプミアィエニが着ていた服も機闘服であった。本来は服を脱いで裸になってからホロスト・ヨーロ液の中に入るが、戦団では迅速な仮死化・蘇生を行うために軍人の着る軍士服と機闘服はそのままホロスト・ヨーロ液に浸かることを前提に作られているのだ。
艦内のシステムがことごとく停止し、乗組員も問題なく仮死状態になったことを確認したメネウィーネは、自らも仮死状態に入った。照明も消えた暗闇の中、最後に残ったクザナラフも仮死状態になる。それらを確認した巡洋艦ルーペシネフ自身も眠りに着いた。
艦内が、巡洋艦ルーペシネフ全体が死の静寂に支配された。『情報の転送』という方式で行われる超光速移動である星系間航行の星系間跳躍前の所要時間を短縮するためには、物理変化を最小限にしなければならない。未だ稼動中のものはタイマーの他には反陽子容槽(原子核にある陽子の反物質である反陽子を貯蔵する容器)と、それを維持する電力槽(蓄電池)だけだ。反物質である反陽子が容器に接触すると核反応を超えるエネルギーを放出して対消滅するため、反陽子は磁力で真空の容器の中心に集めておかないといけないのだ。
巡洋艦ルーペシネフは光に包まれて姿を消した。
そこから数十光年先の、何もない空間に虹色の光が生まれ、拡がっていく。
虹色の光は全長二六六〇メートルまで拡がると特定の輪郭を形成する。宇宙船の形だ。光が弱まり、そして消えた跡には先程までそこにはなかったもの、情報が転送された巡洋艦ルーペシネフがあった。
乗組員は仮死状態から蘇生し、システムが再起動する。フードが開いて再び座席に変わる。乗組員たちの軍士服と機闘服はホロスト・ヨーロ液をたっぷり含んでいるが、周囲に滴り落ちたり触れたものを濡らすことはない。着ている者にとっては濡れていることによる不快感があるが、任務に専念している間にホロスト・ヨーロ液は除去されるだろう。セネンテュエも蘇生してすぐに担当するシステムを確認し、命令があればすぐに巡洋艦ルーペシネフを動かせる態勢を整えた。寡黙で感情の起伏に乏しい彼女は一連の会話にも参加せず、今まで通り、ただ目の前の任務だけを最善にこなす。メネウィーネの部下の一部はシステムの点検を行い、残りの部下は艦の周囲をセンサーで確認する。最終的にその結果をまとめた彼女は、クザナラフに報告した。
「星系間航行は成功しました。現在位置は銀河座標『[Ⅻ]負四.〇/正一.四/正四.三』です」
彼女の声音と共に、緊張感がクザナラフに伝わる。
「間違いないのだな?」
今まで数百回と行った星系間航行だ。これまで彼女に間違いなどなかったし、今回もないに違いない。それでもクザナラフは聞かずにいられなかった。
「……はい」
歯切れの悪い返答。しかし彼女には他に答えがないのだ。
ここは銀河座標の原点となる主星ユアライカ(地球名はラーナ、またはエリダヌス座δ星)付近からわずか二九光年の場所。六,三〇〇光年の空間に拡がる聖帝崇国の中では中心部に近い。星系ハサードムーラ(ケンタウルス座α星)から四.三光年ほど離れた、周囲数十兆キロメートル以内には何もない空間だ。
しかし、クザナラフたちの眼前に拡がる光景は、そのような『事実』を裏切っていた。
巡洋艦ルーペシネフの八四五億キロメートル前方に直径一四〇万キロメートルの星があったのだ。巨星ではないが赤色矮星のような暗く小さな星でもなく、明るく黄色い光を放っている。そればかりか巡洋艦ルーペシネフの周囲には無数の天体が、直径六〇キロメートル以上のものだけでも万を超えるほど点在している。巡洋艦ルーペシネフは明らかにどこかの星系の中にいた。
「考えられる可能性としては、
転送先とそっくりだがわずかに違う宙域にいる。
星が突然現れた。
この星はこの宙域の外から見えない」
「どれも考えられないな」
右腕として信を置くポリオーファトの言葉をクザナラフはあっさり切り捨てた。もっとも、進言したポリオーファトも本気で信じていない。一方でメネウィーネも、口では否定したクザナラフでさえも、ポリオーファトの仮説を完全には無視できないと感じていた。ポリオーファトの提案はどれも受け入れられるものではないが、その中のいずれかが真実ではないだろうか。もし全てが違うのなら、予想もできない何かが答えとなる。
艦長と参謀の会話に耳を傾けつつも、メネウィーネは手を休めない。やがて完了した解析結果を作戦司令室の周囲に映る星々に重ねた。
空間は天体の引力によって歪曲する。しかし無数の天体の引力を差し引いた後に、なお残った歪みがあった。通常では起こり得ない特殊な歪曲、自然現象に反して重力子を特定方向にのみ放出して進む、宇宙船の軌跡だ。
それは、主星から一億五千万キロメートル離れた位置を公転する直径一万三千キロメートルの従星に続いていた。H2Oを主成分とする物質が気体でも固体でもなく液体の『水』になる、有機生命体が生存可能な表面温度を持つ惑星だ。
星系間跳躍前の、ここから三〇光年離れた場所からは、ここの主星が実視等級(その位置から見た明るさ)が四.六五等級(つまり四.七等星)の明るさで見えたはずだ。『等級(星の明るさ)』の目安として、地球の地面、つまり大気の底から肉眼で見える星の限界は、都会の空で四等星、近くに全く灯りのない山中なら六等星くらいだ。しかし大気の層を通して見ない宇宙空間では、充分にはっきり見える明るさなのである。ところがそんな星系は、進行方向なので観測していたにも拘わらず見えなかった。そもそも聖帝崇国の星系地図にも記載されていない。
クザナラフはこのことを三〇光年先で待機している旗艦シューレイテスに報告した。三〇光年=三百兆キロメートルという距離は有線通信が不可能なのはもちろん、無線でも届くまでに三〇年掛かり、それ以前に電磁波が拡散しすぎて通信強度を維持できないので現実的ではない。このため、戦団では『通信小艇』という全長三一ミリの自律航行情報カプセル機に伝達内容を記録して星系間航行装置で転送させる。帰ってきた通信小艇に記録されたシューレイテスからの指令は「そのまま次の指令まで待機せよ。その間、一切の通信を禁止する。また、いかなる知的生物とも接触してはならない」という内容だった。まるでこの宙域に知的生物が存在することを予見しているかのようだ。だが最も恐るべきことは、それがこの侯星宙領の主、ノマイニセ・クワランヴァデト陸位等藩侯司から直々の命令だと言う。藩侯司に限らず聖級輝位が臣民に干渉することは滅多にない。クザナラフのみならず巡洋艦ルーペシネフの乗組員で、これまでの人生で聖級輝位の命令を受けるどころか目の当たりにした経験のある者は一人もいなかった。
クザナラフ艦長は体が震えた。『神の如き』と言われる藩侯司が干渉してきたのだ。彼の想像を遙かに超える事態に遭遇しているに違いない。
少し離れただけで見えない星系などあり得ない。全長が三〇〇光年を超えるヒール・ユートナ星間雲でもそれを隠すほどの分子密度はもちろんない。自然現象でないとすれば人工的な現象か? しかしいかなる種族の技術であろうと半径一四兆キロメートル(一.五光年)以上もの空間を覆うことが可能だとは到底思えない。
一体、自分の眼前に何が起こっているのか? クザナラフ艦長には全く想像の埒外だった。彼は科学者でなく軍人である。指令の内容が理解できないことも問題ない。そもそも軍人には内容如何に拘わらず、指令に忠実に従うことが求められている。
しかし、彼はこの時、軍人としての規範から外れた選択をすることになる。自身が命令違反をすることがあろうとは、これまでの人生で考えたこともなかった。
藩侯司でさえ関心を示す何か。それを得ることは彼の人生にどれほどの変革をもたらすのか?
生涯に一度でも訪れることがまずないような稀有な機会に、クザナラフ・ゴルドフェイトは野心を抱いてしまったのだ。
『本艦は前方、[Ⅻ]三.二星巨橋(八四五億キロ)先の従星に向かう』
クザナラフは艦内放送で乗組員全員に告げた。セネンテュエが進路を惑星に向け、巡洋艦ルーペシネフを加速させた。
この時の彼等は、更なる驚愕が待ち受けているなどとは予想だにしなかった。
更に彼等の向かう先には、信じられないことに彼等貴種天人とそっくりの知的生物『人類』がいるのだ。
そしてその惑星は『人類』によって『地球』と呼ばれていた。
このような星系がアルタイマトリ聖帝崇国に数ヶ所あることを、
それが聖帝崇国の頂点である皇帝や九柱藩侯司によって『被秘匿星系』と呼ばれ、最高機密となっていることを彼等は知らない。
次回のお話、「潤くんがアイドルに惚れた」みたいに勘違いされて、からかわれます。でも本人はそれどころじゃない! そしてミアちゃんが気になり出した潤くん。
また、世間にも変化が。
後、潤くんの剣道シーンがあります。