第二話 虹色の気持ち 〜その1〜
明くる朝、私は勢いよく玄関のドアを開けた。
明るい日差しと引き換えに肌を刺す寒さが待っていた。
大きく深呼吸して、周囲を見回すと、玄関に寄りかかっている拓海。
「なにしてるの、こんなところで。迎えに来たんだったら、中入ればいいじゃん。」
私はその奇怪な行動を理解できなかった。
「なんとなく、待ってみたかっただけ。」
拓海は本心を隠して素っ気なかった。
「今日から、ちゃんと堂々と行こうね。私、拓海のこと、ちゃんと好きだから。」
私は自分の目に力を込めた。
「今日は、なんだか知らないけど、熱いな。そんな暑い暮葉、いいな。」
今日初めて、拓海は私に笑顔をくれた。
学校が近いと、途中で友達と合流して一緒に通学というわけにはいかない。
拓海と別行動を取るようになって、毎日一人で通った道を、今日からまた二人で歩いてみた。
やっぱり一人より二人のほうが楽しい。
一人より二人のほうが、通学時間が短く感じる。
残り少なくなった中学生活も、これなら退屈しなくて済みそうだ。
学校の校門を通り過ぎると、急に人が増えてくる。
堂々と二人で通学していると、冷やかす人は案外いないものだ、とわかった。
もちろん自分が三年生になったから、ということもあるだろうけど、同級生からも、今日は何も言われなかった。
「なんか、大したことなかったね。」
下駄箱で靴を履き替えながら私は言った。
「元々、公認の関係だからな。」
拓海は私以上に開き直っていた。
もしかすると、拓海のほうは、ずっと割り切っていたのに、私だけが割り切れずに、恥じらいの殻に閉じこもっていたのかもしれない。
私は拓海に悪いことをした、と思った。
だから、何を言われても笑顔で堂々としていようと思う。
それが、拓海が一番望んでいることだと思ったから。
薄暗い廊下を抜けて、二人で教室の入口に立つ。
いつも教卓の周りで暴れている男子。
机の周りを囲んで談笑する女子。
変わらない面々がそこに居るのに、今日は彼らが、とても小さく見えた。




