第二話 虹色の気持ち 〜その4〜
音楽室は、静まり返っていた。
教頭は、音楽室の中に入ると、グランドピアノの上に上がっている紙の山から、楽譜を取り出した。
「3年7組は、この曲でしたね。」
手渡された楽譜を、私は楽譜台に立てると、艶出し塗装の蓋を開けた。
「私は、ここで聞いてますね。」
そう言うと、教頭は一番前の席に腰掛けた。
私は、しばらく譜面を目で追うと、ゆっくりと鍵盤を奏で始めた。
音は大雑把に掴んで弾いているだけで、決して上手に弾けているわけじゃない。
ただ、音が追えているといった感じで、満足がいくようなものではない。
それでも、教頭は黙って私の演奏に聞き入っている。
教頭の様子を横目で見ながら、必死に譜面を追って演奏し終わると、私は背もたれに寄りかかり、大きく息を吐いた。
「いいじゃないですか。」
拍手をしながら、私に歩み寄ってきた教頭は、優しく声をかけた。
「やっぱり私が見込んだだけあります。もう90点といったところでしょうか。細かい点を修正すれば、問題ないでしょう。」
教頭は、楽譜をまとめると、私に手渡した。
「これは、貴方のものです。」
楽譜を手渡した教頭は、そのまましっかりと私の手を握った。
齢を重ねてきた手は、分厚くて温かかった。




