見えない傷跡
小学六年生の春、私はこの日をとても楽しみしていた。
でもまさかこの数日後にあんなことが起きるとはこれっぽっちも思っていなかった。
新学期の朝学校に着き教室のドアを開けると「おはよう」という声が教室に響き渡った。席に着くと一人の男の子が話しかけてきた。
「お前名前なんて言うの?」
「あかりだけど?」
「そうかこれからよろしくな!」
話かけられて嬉しかった。このままたくさん友達を作って最高の一年間にしようと思っていたのにあの女の子と同じクラスになってしまい最悪だった。
「おっあかりじゃん!また同じクラスになったね。よろしく。」
私はこの女の子がすごく大っきらいだ。名前はまな。過去にいろいろあって関わりたくなかった人物。本当は話しかけられてほしくなかったけど無視するのも悪いし「うん・・。よろしくね。」と小さく答えた。
授業が終わりお弁当の時間。去年同じクラスの子たちと食べようと席を離れようとしたらまなに呼び止められた。
「あかり、こっちで一緒に食べようよ!」
行こうか迷った。そこには私の友達もいたから。
「いいよ。」
何でこの時断れなかったのだろうかと自分が情けなく思う。
皆で輪を作って楽しい会話をしながらお弁当を食べた。ワイワイ騒ぎながら食べてすごく楽しかったけどまなのせいで一気に台無しにされた。
「あれ?私とお弁当箱似てるね!真似したの?」
「してないけど?」
「嘘だ!こいつとかぶるとか最悪なんだけど!!」
お弁当箱が似ていたせいでまなが機嫌を悪くしてしまった。周りの子たちもどう反応していいか分からず話題を変え何とかこの場を乗り切ろうとしていたのが伝わった。
私をお弁当をすぐ食べ終え自分の席に着いたがまながニコニコしながら私に近寄ってきた。
「さっきはごめんね!仲直りとして今日遊ぼうよ。」
私はこの時も断れず「いいよ」って言ってしまった。もしこの時断っていたら中学校に入っても苦しまなずに済んだのに・・・・・。
家に帰り集合場所に行った。
「遅れてごめんね。」
「いいよ。それより何か持ってない?」
えっ?どういうこと?よくわからない。なんできてそうそう何か持ってないなの?
「今話題になってるアイドルのカードなら持ってるよ。」
「本当!見せて見せて。」
目を輝かせてカードを見ていたまな。なんだか欲しそうな顔をしていたので「ほしい?」と聞いたら「ほしい!!」と言ってきたので5枚ほどあげた。
その後はいろんな話で盛り上がりあっという間に夕方に。
「そろそろ帰らないと。じゃあねまな。」
手を振りまなを見送った後家に帰った私。今日はいろいろあったけど楽しかったな・・・。
次の日朝学校にいきドアを開け「おはよう」と言った。でも昨日と様子が違う。私にはさっぱりわからなかった。
「何があったの?」
昨日話しかけてくれた男の子に話しかけたらとんでもない言葉を言われた。
「話しかけてくんな。」
ショックのあまり私は何も言い返すことができなかった。
それからはというもの私はクラスの人にひどいいじめを受けることに。悪口の数々。嘘を言っては自分の味方につけ・・・。おかげさまで私はクラスで友達ができなかった。
でもある事がきっかけで一人だけ友達を作ることができた。それは修学旅行の班決め。くじ引きで班を決めるため私にとっては地獄のようなもの。
「私は4番か、4番誰ですか?」
「私だよ。」
返事をした女の子の名前はななみ。同じクラスになって一度もしゃべったことがなかった女の子。
「そうか、よろしくね。」
「よろしく。」
この日を境に私たちは仲良くなった。すごく嬉しく学校に行くのが楽しみになった。しかし私とかかわっていることによってななみも友達がいなくなってしまった。
「私と一緒にいるとはぶられるから話しかけない方がいいよ。」
「別にいいよ。あんなやつらといる方がよっぽど嫌だから。私はあかりの味方だよ。」
温かい言葉をかけられ涙を流した。こんなにいい友達ができて良かった、これ以上失わないように私も強くならないと・・・。
「ありがとうななみちゃん。」
強い意志を持ってこの1年を乗り越えようと思った。でも一つだけ気になることがありななみちゃんに聞いてみることに。
「あのさ一つ聞きたいことがあるんだけど、何で私クラスの皆に嫌われたのかな?」
ななみちゃんはだまったまま口を開こうとしない。
「聞いてる?」
「言っていいのか分からないけどあかりちゃん、まなちゃんと遊んだ?」
「遊んだけどそれとこれと何が関係あるの?」
「それが原因。私が聞いた話だとまなちゃんがクラスのみんなに「ねね聞いてよ、あかりちゃんったら酷いんだよ。私のお金盗んだの!」って。」
私はその言葉が信じられなかった。盗んだ?私が?そんなバカなことあるわけない!だってあの日はわたしがまなちゃんにカードをあげたのに何でそこからお金が出てくる?意味がわからない。
「他にもいろいろあるけどどうする?」
これ以上聞いたら心が壊れてしまいそうだったから聞くに聞けなかった。
次の日の朝いつもどおり学校に行ったがいつもと変わらない様子。今日の朝は百人一首をやった。席の向きを変え隣同士くっけて隣り同士で勝負。先生が上の句を言った瞬間私は素早くとった。でも対戦相手は私が取るたびに舌打ち。嫌気がさした私はわざと負けた。負けると相手が「おめーかっすいな!」と言ってきた。いちいち言わなくてもいいのに・・・・・。
次の対戦相手はななみちゃんだった。カードを並べ暗記していると後ろの方からこそこそと話声が聞こえた。
「絶対あいつずるするから見ててみな。」
声の主はまなちゃん。残念だけど私はずるい女が嫌い、お前の好きにさせるか。たくさんの視線を感じながら挑んだ勝負。見事に私が勝った。まなちゃんは悔しそうな顔をし私をにらんでいた。
百人一首が終わった後私はいろんな人に悪口を言われた。ずるしたとか、勝ったからって調子に乗るなブスとかたくさん言われてたけど毎日言われ平気に。
だけど昼休みにひどい仕打ちを受けた。この事件がきっかけで中学校に上がってからもドッヂボールが怖くなってできなくなってしまった。
昼休み皆でドッヂボールをしようということになり私も参加。前半はなんとか楽しくできたけど後半、皆がある程度そろってから一人の女子が「ねー今から面白いことを提案します!あそこでぼったっているあかりちゃんを皆で集中攻撃しようよ!」と言いだし「賛成!」という声が上がった。
私は「やめてよ!」っと言ったが皆は聞く耳を持たずすぐさま開始。敵チームから来るボールをよけ続けたが突然見方が私の方に向かってボールを投げてきた。
「逃げんじゃねーよ!さっさと当たれかす!!」
意地でも避けた。でもだんだん体力がなくなり疲れてしまった私は辞退。
「なんだ?逃げるのか?この弱虫が!!」
皆の笑い声が腹正しく思えた。なんでこんな目に会わなきゃいけないの?私が何したっていうの?教室に戻り私は席についてたくさん泣いた。もう嫌だ、学校行きたくない・・・。
「どうしたのあかりさん?」
私のそばに担任の斎藤先生が立っていた。私は出てくる涙を堪え先生に今まであったことを全て話した。
「そうだったんですか。もっと早く相談してくれれば先生助けられたのに。この件は何とかするから頑張って学校きてね。」
私は「うん。」と小さくつぶやいた。
それからとはいうもの相変わらずいじめは続いていたが先生や大事な友達がいるから頑張って学校に来れた。いじめが続いて9カ月が経った。後2か月で卒業とのことでクラス全員で写真を撮ったが私の隣が嫌だとか言って結局はじっこに。写真を撮って1ヶ月後アルバムができみんなに配られた。皆の楽しそうな会話を聞いていると胸が痛む。
「あかり!元気ないぞ!!」
「うん。それよりクラスの人たち何か言ってなかった?」
「もう聞く勇気出た?」
「うん。」
私は力強く答えた。
「聞いてもショック受けないでよ。今さっき女子の一部が言ってたの聞こえたんだけどこの卒業アルバム見て「あかりうつってるとか最悪。うつる存在価値ないっつうの!けがれる。」とか後は今までの悪口まとめた紙持ってきたから見てみなよ。」
渡された紙を恐る恐る見てみるとそこにはたくさんの悪口を書かれていた。
運動できない。
関わらない方がいい、自分の家に入れると、大切なものを盗まれるから。お金も盗まれるから気をつけた方がいい。
髪型替えていい子ぶってる。
卒業式に着てくる服絶対私服。
お前なんか必要ないから消えろ。
カンニングする。
死んだらお葬式ぐらいは出てあげないとかわいそうだよね笑
いつかぶっ殺す。
事実を知った私は涙さえ出なかった。あまりのひどさにぶちぎれまなに直接話をつけた。
「あんた何変な事言いふらしてるの?いい加減にしろよ性悪女。」
まなはにやっと笑い「はぁ?どこに証拠あんの?意味分かんない。」と自分がやったことを認めようともしなかった。
「おめーの頭ん中は腐ってて話にならんな。」
まなは何も言えずその場を立ち去った。よくあんな言葉言えたなと思い一気に力が抜けてしまった。
いろんなことがあった1年間。ようやく卒業することができて安心した。やっと解放されると思ったが現実はそう簡単にはいかなかった。
中学の入学式私はクラスの名簿を見てまなと離れたことを確認。そして教室へ。前みたいなことになりたくなかったから誰ともしゃべらなかった。ずっと3年間誰とも友達にならずにやるんだ。そう簡単にできることじゃないとわかっていたけどクラスの人とはかかわりたくない。でもまさかこのクラスが良かったと思える日が来るなんて思ってもいなかった。
「このクラス担任になる吉田です。よろしくお願いします!」
凄く若く身長が高い男の先生。見た感じはよさそうな人。
「ではさっそく自己紹介してもらいます。」
出席番号順に自己紹介をし自分の番に。
「星野あかりです。1年間お願いします。」
とても緊張した自己紹介だったけど無事に終わって何より。皆の自己紹介が終わったとこでチャイムが鳴り休み時間に。ずっと席に座って読書をしていたらある一人の男の子に話しかけられた。
「お前あかりっていうんだな。よろしく。俺の名前はまさと。覚えておけよ。」
またやっかいなやつと絡んだものだ。なるべく関わらないようにしよう。そう心に誓ったはずなのになぜだかこのまさとという人は今までの男子とは違う。何度か話しているうちに心が開き普通に会話できるようになったし女子の友達もたくさんできた。その中で一番仲が良かった子がさえ。可愛くて活発な女の子。夏休みに入るまでは凄く仲良しだったのに・・・・・・・。